宇宙戦艦YAM@TOⅢ   作:Brahma

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工作船団が展開し、いよいよ太陽制御がはじまるが...


第23話 太陽系会戦、そして癒される太陽

「展開完了。」

太陽付近の工作船三隻がそれぞれの配置につく。

「磁気シールド発生装置、発射準備完了しました。」

士官の声が艦橋にひびく。

フラウスキーが命じる。

「磁気シールド、発射。」

シールド発生装置から力場が発生し、太陽表面を覆う。

「多弾頭ミサイル発射準備完了。」

「発射!」

多弾頭ミサイルが力場で分解し、反エネルギー物質が散布され、熱吸収シールドがつくられていく。

太陽はもやがかかったような状態となり、気温がさがっていく。

「外気温低下していきます。」

「大統領、第一段階は成功しました。」

「うむ。舞君。きっと成功するだろう。」

大統領も満足そうにうなづく。

 

一方律子の工作船は小惑星帯でアステロイド吸着システムに小惑星を吸着させる作業を行っていた。

「アステロイド吸着システム、投下。」

「牽引ビーム照射。」

「吸着開始。」

アステロイド吸着システムに次々と小惑星が引き寄せられ、数百本あるアステロイド吸着システムは納豆をごっそり箸につけたような姿になる。

「必要量の吸着完了しました。」

「了解。これから金星軌道へ向かいます。」

律子の工作船が金星軌道へ到着するとフラウスキーは命じる。

「工作艇発進。アステロイド岩塊に推進ブースターをセット。」

やがて作業完了の報告がフラウスキーと律子に伝えられる。

「推進ブースター全機、アステロイド岩塊にセット完了。」

「秋月技師長、アステロイド岩塊を太陽に突入させてください。」

律子はうなづき、

「了解。突入させます。」

と答え、

「推進ブースター点火!」

「アステロイド岩塊、太陽まであと0.4天文単位!水星軌道通過!」

「アステロイド岩塊、太陽表面まであと100km。」

「アステロイド岩塊、あと10秒で突入します。9,8,7,....3,2,1,0。」

アステロイド岩塊が突入すると太陽表面からヘリウムガスが噴き出す。

「最終段階にはいる。惑星破壊プロトンミサイル発射。」

惑星破壊プロトンミサイルが数本太陽に向かっていった。

「プロトンミサイル、太陽表面まであと70km。」

「プロトンミサイル、あと10秒、9,8,7,...3,2,1,0。」

太陽は徐々に影って暗くなっていくように見えた。

「外気温さらに低下します。」

皆が固唾を呑んで見つめる。

しかし、太陽の光球表面は激しい動きを繰り返し始め、プロミネンスとフレアを噴出し始めた。そして怒り狂ったように熱防御シールドを突き破って荒れ狂い始めた。

「うわああああ...。」

三隻の工作船はあっという間に飲み込まれる。

「急速反転!」

残る工作船二隻は太陽から急速に離れていく。

地球表面では極地の氷が溶け、アマゾン、カナダ、シベリアの森林では火災が起こった。

「止めろ。本艦は、至急停止するのだ。」

「少佐、停止は、危険です。このまま脱出しましょう。」

「このまま、おめおめと帰れると思うか。総員、救命艇に残り退艦せよ。」

「フラウスキー少佐!あなたは生き残ってガルマンガミラスに、これからもデスラー総統に仕えてほしいのです。」同乗していたハイゲル将軍が叫ぶ。

律子にも、いつまでもフラウスキー少佐の艦が危険宙域から離れるのをとまどっているようにみえたので通信を送る。

「フラウスキー少佐!不可抗力だったのです。仕方ないじゃないですか。それにまだ希望があります。デスラー総統のお言葉をお忘れですか。それに、その艦にはハイドロコスモジェン砲が積まれているではありませんか。」

フラウスキーは思いとどまって、うめくようにつぶやく。

「わかった...。危険宙域から脱出する。」

 

「最終チェックを行う。」フラウスキーが士官に命じる。

「機関室、エネルギージェネレーターの状態は。」

「異常なし。」

「コンピューター室、再計算だ。」

「計算完了。修正ありません。」

「工作船、角度調整。」

「エネルギー充填完了。」

「ハイドロコスモジェン砲、発射準備完了。」

「10秒前、9,8,7....3,2,1」

そのときスッガーンという爆音が響いて船体をゆらし、フラウスキーをはじめ工作船の乗員は床に投げ出される。

 

爆音とゆれはヤマトも同様だった。

「艦載機及び艦隊出現。船籍はボラー連邦です。」

「ええっ。」春香は思わず叫んでしまう。

「ボラー艦隊、その数5000隻です!」

 

そのころ工作船ではフラウスキーが命じる。

「ハイドロコスモジェン砲収納。」

両脇からカプセルが開き、ハイドロコスモジェン砲が収納して半球形となって閉じる。

 

ボラーチウムを含んだ黄色い光線砲がヤマトを襲う。しかし、幸か不幸かボラー艦隊はヤマトにのみ気をとられている感じだった。

 

ボラー艦隊の背後に時空震が起こる。

「なにか巨大なものがワープアウトしますぅ。」

「質量、5兆トン。宇宙要塞と思われますぅ。」

 

その宇宙要塞は、ゼスパーゼのようにぶどうのような形状をしていた。

「メインパネルが反応しています。」

「ふはははは。驚いたか。ヤマト。わたしは、ボラー連邦首相ボロジネフだ。この要塞はわがボラー連邦が誇るセヴァストリュジューンだ。さて、地球とお前たちの最後にボラー連邦からのプレゼントをやろう。ブラックホール砲連続発射!」

 

ヤマトの後方で、光の玉が収縮してミニ・ブラックホールが発生する。そしてその強力な引力がじわじわとヤマトを吸い込もうとする。そこへ、ボラー艦隊の光条がヤマトを襲う。

「波動防壁展開。」

ヤマトはなんとかふみとどまるものの、じわじわとブラックホールにひきこまれていく。

「ふはははは...。」

ボロジネフの笑い声が艦橋に響く。

 

そのときだった。

「10時の方向に、船籍不明の艦隊が出現。その数1500隻!」

「船籍判明。ガルマンガミラス艦隊です。」

工作船とヤマトの艦橋の雰囲気は一気に明るくなる。

「メインパネルに反応。ガルマンガミラス艦隊からですぅ。」

メインパネルにデスラーの顔が映し出される。

「アマミ。」

「デスラー総統。」

「あの要塞には、君も知っているとおり我が宿敵ボラー連邦首相のボロジネフがいる。戦闘はわたしが引き受ける。一刻もはやく太陽を撃つように工作船に命じるのだ。」

「デスラー総統。ありがとうございます。」

「うむ。勝利のあとに再会しよう。」

 

 

「全艦デスラー砲発射。目標ボラー連邦艦隊。」

デスラーの親衛艦隊は、デスラー砲の斉射を行った。薄赤色のエネルギーの奔流が一斉に放たれ、たちまちボラー連邦艦隊の6割を葬り去った。

「ボロジネフ君。先代のベムラーゼ君には、シャルバート教で葬式が出たそうだが、君の葬式はどうしたらいいのかな。」

「なにを。葬式をだしてやるのはこっちだ。ブラックホール砲発射。」

「デスラー砲発射。目標ボロジネフ首相旗艦起動要塞!」

「デスラー砲第二波発射。目標ボロジネフ首相起動要塞!」タランが復唱し、再び薄赤色のエネルギーの奔流がボラーの起動要塞をつつむ。

一方、ボラー起動要塞の球体からはブラックホール砲が放たれ、光球がデスラー艦隊の後方でつぎつぎとブラックホールに変わっていく。デスラー艦隊の艦艇はひしゃげてのみこまれていく。

「ふははははは。」

ボロジネフが笑い声がヤマト艦内とデスラー艦隊艦内に響く。みるとデスラー砲を受けてもまったく無傷の起動要塞が姿を現す。デスラーは唖然とする。

「総統。あの要塞の装甲はデスラー砲をまったく受け付けません。1年前のギドラ星域会戦で破れた対策だと思われます。」

士官が告げる。

デスラー旗艦の船体はブラックホールにひきずられてこきざみにゆれる。

 

そのころヤマト後方のブラックホールはだんだん引力が弱まってきていた。

「バース星のときと同じね。」

「うん。波動カートリッジ弾発射用意。目標、ブラックホール砲口。」

「波動カートリッジ弾発射用意。目標、ブラックホール砲口。」

伊織が復唱し、

「にひひっ。発射~。」

発射された波動カートリッジ弾は、しかし、ブラックホール砲口の前ではねかえされる。

「!!」

「ふはははは。同じ手は食わないのだよ。ブラックホール砲発射!」

再びヤマトはミニ・ブラックホールに引きづられる。

 

「コスモファルコン発進。山本さん、鞘葉君、工作船を守って。」

「了解。」

ボラー艦載機が工作船に気が付いて襲うところをヤマト艦載機が迎撃する。

 

「ハイドロコスモジェン砲が作動しないようです。みてきます。」

「ハイゲル将軍、危険です。戻ってください。」

フラウスキーが呼び止めるが、ハイゲルは宇宙服を着て甲板上のハイドロコスモジェン砲の格納部分を調べようとする。そこへボラー艦載機が襲ってくる。

鞘葉がそれに気づいてボラー艦載機に狙いをつけるが不運なことにその射線はボラー艦載機をかすめてむなしく宇宙空間を通過する。

そうこうしているうちにボラー艦載機の機銃掃射がハイゲルの背を撃つ。致命傷にはならなかったものの、ハイゲルは甲板上でどうと倒れた。

「ハイゲル将軍!」思わずフラウスキーは叫んでしまう。

鞘葉は、上昇しようとする敵機をようやく撃墜することに成功したが、くやしさで顔をゆがめていた。

 

そのときヤマトのメインパネルに律子の顔が映る。

「春香。」

「律子さん。」

「あのブラックホール砲のバリアの時間を解明したわ。発射5秒前にバリアが解除され、発射7秒後に再びバリアが展開される。当然、デスラー砲が効かなかったようにバリア展開中は波動砲は効かない。」

「アマミか。」

「デスラー総統。」デスラーがメインパネルに映る。

「話は聞いた。あの要塞の装甲とバリアは、ハイパーデスラー砲でしか破れない。小ワープで発射直前の砲門をねらおうとしても危険だ。残りのボラー艦は、あの要塞のバリア内で待ち構えているから集中砲火を浴びる。こちらはブラックホール砲の連射を食らい、脱出はできたのだが、無理な操作をせざるをえなくて、かじが壊れてしまった。なんとかヤマトの前の球体のブラックホール砲だけは照準がつけられる。こちらがハイパーデスラー砲を撃って、やつの球体を破壊したらすかさず破壊された箇所を攻撃するのだ。それしかない。」

「はい。」

「タラン、ハイパーデスラー砲用意だ。」

「はい総統。」

さらに連射されるブラックホール砲をたくみに逃れて新型デスラー艦はヤマトの前の球体にハイパーデスラー砲の照準を定める。

「収束モードだ。ヤマトにあたってはならない。」

「了解。」

「発射10秒前,9,8…..3,2,10」,

「ハイパーデスラー砲、発射!」

薄赤色の奔流が一直線に起動要塞へ向かうが球体をかすめるにとどまった。しかしその破壊力は球体の半分を溶解してふきとばした。

「今だ、波動カートリッジ弾発射!」

波動カートリッジ弾は、半球状にまっぷたつになって内部のメカがむき出しになった要塞の傷口に次々に吸い込まれていったとおもうと、まばゆい閃光をはなち、大爆発する。それとともに起動要塞の内部に誘爆がひろがり、ブラックホール砲口から火と煙が吹き出したかとおもうと、セヴァストリュジューンの堅牢な装甲にひびが広がって大爆発を起こし、宇宙空間を昼間のように照らした。その爆発は残り4割のボラー艦を全て飲み込み、引き裂き、吹き飛ばした。そして月くらいあるかと思われる巨大な爆煙とともに衝撃波と金属片を撒き散らした。

地球の大気中ではその衝撃波がドッガアアアアーーーンという爆音となって響いていた。

 

「こ、これか...。」

そのころ、工作船の甲板ではハイゲルが断線箇所を発見し、つないだ。

「はあはあ…フラウスキー少佐、たのみます。」

「ハイドロコスモジェン砲。発射。」

フラウスキーが命じると砲手が引き金を引き、ハイドロコスモジェン砲が発射される。

その光が太陽を包むとみるみる太陽の活動がおさまって縮まっていった。そしてもとのように穏やかな光を放つ姿に変わっていった。

「ハイゲル将軍!」

フラウスキーと工作船旗艦の乗組員は、甲板上に倒れているハイゲルのところへかけよる。

「フ、フラウスキー少佐...、太陽は元にもどりりましたか...。」

ハイゲルは息も絶え絶えであった。

「もどりましたよ。ごらんなさい。」

フラウスキーはすっかり穏やかな光をはなつ太陽を指差した。

「よかった...。」

「科学者のわたしがいうのもおかしいが、地球の皆さんとあなたの情熱が奇跡をもたらしたとしか思えません。」

ハイゲルの体から、がくっと力がぬけて頭が横へ向き、目が閉じられた。

工作船の一同は敬礼した。

 

旗艦ほか数隻になったデスラー艦隊がヤマトに接近してきた。

「アマミ。これで地球はよみがえったな。おめでとうを言わせてもらうよ。」

「ありがとう。デスラー総統。あなたとあなたの部下の皆さんのおかげです。ハイゲル将軍についてはご愁傷様でした。」

「いや、彼は最後に自分の納得のいく人生を生きたのだ。満足しているだろう。彼にとっては我が帝国にいることがジレンマだったのだろう。アマミ、わたしは、われわれの過ちを償うことができてほっとしているだけでなく大変満足している。そうだ、フラウスキーがぜひ話したいと言っている。」

デスラーに変わりスクリーンにフラウスキー少佐の顔が映る。

「アマミ艦長。」

「フラウスキー少佐。ハイゲル将軍についてはご愁傷様でした。」

「総統も言っておられたように彼は満足して人生を終えたのだ。気になさることはない。

それから、地球の大気温がさがって、正常値にもどってきているようだ。近い未来に青くよみがえった地球を見ることができるだろう。わたしは、お役にたてて非常にうれしく思う。」

フラウスキーの顔が消えて再びデスラーの顔が映る。

「アマミ。シャルバート信者についてはハイゲルに免じてふつうに礼拝するぶんには黙認しようと思う。また帝国に忠誠を誓うことを条件に特赦しようと思う。それが彼への手向けになるだろう。」

「そうですね...。政治的にも平和のためにもそれがいいかもしれません。」

春香が微笑んで答える。

「うむ。さらばだ。いつかまた会おう。」

デスラーは満足そうに微笑んで画面から消えた。

数隻づつになったデスラー艦隊と工作船団は、メインエンジンを全開して銀河系中心方向へ帰っていった。

 

「ヤマト、地球へ向けて発進。」

「了解。メインエンジン点火。」真が唱和する。

「ヤマト、発進。」千早が操縦桿を握って唱和する。

ヤマトも水星軌道付近から地球へ向かっていった。

 

 




太陽制御が成功し、太陽系と地球はもとの姿をとりもどした。

ボラーの要塞名は、ロシアの有名な要塞の名前を二つくっつけたものです。戦史好きな方は、にやりとするか無茶だと思うか^^;

そして、後日談...
ヤマトが地球に到着し、土門には、慰労の休暇と昇進、鞘葉と山本には休暇、昇進に加えて異動が言い渡される。
一方、他のヤマトクルーは...
「春香。わたしはこの航海を最後に退役するわ。」
「伊織。どうしたの?」
「この航海に旅立つのには、かなり大変だったんだから。政治的に。」
「うん。聞いているよ。太陽系外周パトロールってことになってたから。」
「必要なところに必要な予算が行くためには政治の力が必要だと痛感したの。
だからわたし政治家になる。ほら某ニ○×コ動画にもわたしを元老院議員にしてるのがあるでしょう。「スーパーアイドル元老院議員」なんて恥ずかしいフレコミだけど。
それに、親友のように貧困で苦しんでいる人や才能があるのにチャンスが与えられない、そういうのをなくしたい。わたしはアイドルで苦労してきたし、ヤマトで戦ってきた経歴がある。実家は大きな会社だし、人の役にたつことであればパパも納得してくれると思う。」
「そうだね...。じゃあ戦闘班長はだれにやらせたらいいのかな。」
「土門でいいんじゃない。あいつもこの航海でだいぶ成長したわ。
まあ、まだこの伊織ちゃんの足元にもおよばないけどね。」
春香は苦笑する。
「う~ん、なんかさびしくなるなあ。」
「何言ってんのよ。元艦長もいつまでも防衛軍司令長官やってないでしょ。」
「そうだね。?えつ....。」
「政治力があれば、必要な費用を工面できるでしょ。」
伊織は数ヵ月後、地球連邦議会に出馬した。ヤマト戦闘班長の知名度を武器に、機会均等、「すべての家庭に子どもが学校へ通い給食費が払える家計を!」をスローガンにトップ当選し、「スーパーアイドル連邦議会議員」になった。
議場で、額を光らせ、ピンク色のスーツにシャルルをかかえた彼女が熱く演説する姿がテレビ中継されるようになるのはそれからまもなくのことである。

後の設定につなげるため修正(9/16.23:19)

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