宇宙戦艦YAM@TOⅢ   作:Brahma

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ヤマトとルダ王女は、ボラー艦隊が自分たちと惑星シャンタスマルゴレーを狙っているのに気づくが、波動砲発射が間に合わず、爆発に巻き込まれることを避けるため、やむなくワープする。その先には、伝説の惑星への入り口があった。


第21話 伝説の星

第一艦橋へいくと春香は工作船団を率いるフラウスキー少佐に連絡をとった。

「フラウスキー少佐、ようやく発進できそうです。」

モノクルをした長髪で、細面のいかにも学究肌の人物が画面に現れる。

「こちらのハイゲル将軍が申し訳ありませんでした。」

「いえいえ。思わぬ人道的な問題が生じたのでご理解いただけたら幸いです。」

とりあえず春香は一部始終を話す。

「ハイゲル将軍がわたしのことを...しかし、心配はご無用です。帝国の名誉のためにも友好国をお助けするこの任務にわたしは誇りを感じています。ところで、シャルバートの王女ですか....。あなたがたが人道的動機で保護したのはよくわかります。しかし、ガルマン帝国としては見過ごしならない問題です。ボラーにシャルバートの王女を再び引き渡してはならない。わかりました。我が船団とあなたがたの安全のこともありますので東部方面軍と総統に伝えることをお許しいただきたい。」

「はい、わかりました。」

 

「あのう...伊織、お願いが。」

春香は少しばかりの恥ずかしさと安堵を含んだ微笑で伊織のほうへむく。

「にひひっ。わかったわ。波動砲照準解除ね。」

「ありがとう。」

「!!」レーダー手がなにかを見つけて驚きの表情を示す。

「どうしたの?」

「上空100宇宙キロに艦影です。」

「艦首識別、ボラー連邦艦隊です。ギドラ星域と同じ敵と思われます。」

「やはりきたのね...。」

律子がつぶやく。

 

そのとき、ルダ王女が真っ青になって立ち上がった。

「惑星シャンタスマルゴレーが危険です。ボラー連邦艦隊に狙われています。」

「王女いかがなさったんですか?」

ハイゲルがルダ王女にたずねる。

「私にはテレパシーと宇宙空間で起こっていることを透視できるのです。はやくヤマトの天海艦長に伝えてください。」

「わかりました。」

 

「天海艦長。」

ハイゲル将軍の顔がスクリーンに映る。

「どうなさったんですか、ハイゲル将軍?。」

「ボラー艦隊は、シャンタスマルゴレーを狙っているようです。至急攻撃中止を要望してください。」

春香はボラー連邦艦隊に対し通信する。

「ボラー艦隊司令官に要望します。シャンタスマルゴレーへの攻撃を中止してください。」

「ボラー第五艦隊司令ジャーコフだ。ふふん。われわれは、お前たちを抹殺するためにきたのだ。そんな話が聞けると思うのか。ルダ王女を引きわたせ。それによっては考えないこともない。」

「ルダ王女の引渡しには応じられません。」

「よし、全艦惑星破壊ミサイル発射。ヤマトとシャンタスマルゴレーを抹殺しろ。」

「敵艦から惑星破壊ミサイル発射されました。」

「波動砲は間に合いません。」

「主砲発射!」

主砲がミサイルに当たるもののむなしく泡のようにはじかれる。

「発進と同時にワープしかないね。通常航行では爆発に巻き込まれて逃げ切れない。」

真がつぶやく

「メインエンジン接続点火。」

「波動防壁展開!ワープ準備。」

「10,9.8,...3,2,1ワープ!」

 

ヤマトと工作船団がワープした直後、惑星破壊ミサイルがシャンタスマルゴレーに命中した。シャンタスマルゴレーは大爆発を起こし、その肉体と体液が宇宙空間にばらばらになって飛び散った。

 

「ヤマトワープした模様。」

「ワープトレースだ。」

「はっ。」

 

ワープアウト位置がわからなくなるよう、3回にわけてワープしたヤマトと工作船団は、ケプラー186の近傍を航行していた。

「わたしがいることであなたがたはガルマンガミラスとボラーに追いかけられることになります。ですからわたしをシャルバート星へ送ってください。とりあえずクラセビ・ソルベ、あなたがたがケプラー186と呼んでいる恒星までワープしてください。」

ワープの直前にスクリーンに映ったルダ王女が語ったとおりにワープケプラー186星系にワープしたのだった。

「あなたがたをシャルバート星へご案内します。」

うす暗いM型の恒星ケプラー186、すなわちクラセビ・ソルベが見えてきた。画面のルダ王女が片手を挙げると、薄暗い惑星のようなものが浮かび上がる。

「もしかして、あれがシャルバート星?」

「いえ、あれはシャルバート星への門です。」

「コレハ、第5惑星ノ公転軌道上デス。」

アナライザーがすばやく軌道計算して発声する。

「どういうことですか?」

「シャルバート星は、クラセビ・ソルベの周囲を公転しておりその影のみがほかの星から観察できるようになっています。それは惑星プロバダとされていますが実態はないのです。」

「だから無人探査機が着陸できなかったのね...。」

律子がつぶやく。

画面上のルダ王女は両手を胸の前に組んで目を閉じる。

すると薄暗い惑星のようなものは縮小してトンネルのようなものが現れる。

「あれがシャルバート星の入り口なんだ...。」

春香が目をみはる。

ヤマトは、そのトンネルへ入っていく。

トンネルを抜けると明るくなり、地球と同じくらいの赤、緑、黄色、青がまだらになった惑星がうかんでいた。

「あれがシャルバート星です。」

「ヤマト、着陸体勢へ移行。」真が告げると

「ヤマト、着陸体勢に入ります。高度20000」

千早が操縦桿をにぎりながら高度を告げる。

「高度10000、9000、8000...。」

やがてエーゲ海に浮かぶ島々とギリシャの沿岸にみられるような白亜の都市が見えてくる。

「艦長、コノ星ノ大気ヤ環境ノデータハ地球ソックリデス。窒素72%、酸素21%、平均気圧1016ヘクトパスカル、自転周期24時間9分39秒3」

「えっ...。それならアナライザーさん、第二の地球発見ですね。」

「でもここには人が住んでいるわ。」千早が口をはさむ。

「そうだね。60億人が移住するとなると....。」

真が言いかけるがすぐに口をつぐむ。先住者がいる星は移住対象にしないということになっているからだった。

 

やがて、花畑、森、滝、茂る樹木、鳥、りす、うさぎ、鹿、果樹園など地球の農村というか楽園のような風景が眼下に広がる。

「高度30m、20m、10m、9,8,7,....着水します。」

バシャーーーンという水音がたつ。ヤマトクルーにとっては久しぶりのというか、もはやなつかしいという水音だった。

どこかしこからヤマトクルーたちは甲板にあがり、

「地球だ!」

「地球と同じだ。」

歓喜の声をあげていた。

 

さて、いったんヤマトを見失ったものの、ヤマトが到着したのが恒星クラセビ・ソルベの星系であることをようやくつきとめたボラー連邦、ジャーコフ将軍の第五艦隊は、惑星プロパダが変貌して異次元トンネルになったところへヤマトが進入していくのを目撃していた。

「ゴルサコフ参謀長。」

「なんだ、ジャーコフ。」

「とんでもないことが判明いたしました。クラセビ・ソルベ第5惑星プロパダは、シャルバートへの入り口だったのです。」

「なんだと!」

「ヤマトがプロパダが変化して生成された異次元トンネルへ入っていっています。われわれもそれを追跡して通過中です。ただちに本国艦隊を数個艦隊ほど派遣して占領するよう提案いたします。」

「わかった。本国の第一、第二艦隊を派遣しよう。]

ジャーコフの姿が画面から消える。

「バルコフ将軍!」

画面にいかつい顔で顔に頭髪がかかった人物が映し出される。第一、第二艦隊司令のバルコフだった。

「ゴルサコフ参謀長?いかがしましたか?」

「シャルバートの入り口が発見された。クラセビ・ソルベの第5惑星だ。ただちに占領するためむかうのだ。」

「ジャーコフ将軍が向かっているとの話ですが?」

「ふふ。ヤマトがいるのだよ。」

「なるほど...ヤマトにシャルバートの科学力をわたすわけにはいきませんな。直ちに出撃いたします。」

おびただしい数の水色のとがった船体をもつ戦艦とずんぐりした細長い樽状の戦艦で編成される二千隻近い数の艦隊がボラー本星から出撃するとオリオン腕方面へ向かう最初のワープトレースを残し、はるか4万光年の空間から姿を消した。

 

一方、ガルマンガミラス東部方面軍司令官としてガイデル解任後に派遣されたのは、ルントであった。ドメルの後任として第8軍を率いて小マゼラン方面の司令官として派遣され、グデルの空間機甲軍とともに、白色彗星の残党を制圧後、大マゼランを暗黒星団帝国の力が弱まったのを機に一気に奪還に成功した功績で、後任にふさわしいとガイデルに変わって派遣されたのだった。

「デスラー総統。」

「何だねキーリング。」

「東部方面軍ルント提督から通信です。」

「うむ。わたしだ。」

「ボラー連邦の大艦隊がクラセビ・ソルベ周辺に集結しています。シャーコフの第五艦隊とバルコフの第一、第二艦隊が集結し、三千隻近い数とみられます。フラウスキー少佐の報告、ヤマトはギドラ三連星で遭難しそうになったところをとっさにワープし、たまたま漂着したシャンタスマルゴレーで偶然にシャルバートのルダ王女を保護し、クラセビ・ソルベへワープしたようです。通信は傍受されないように注意していましたが、ボラーもヤマトを追跡していて状況を把握した模様。わが監視衛星と再度のフラウスキー少佐からの報告によるとクラセビ・ソルベの第5惑星プロバダ軌道上にはシャルバートへの入り口があるようです。」

「なんだと!ただちに出撃準備だ。」

緑色の大型戦闘艦、中型戦闘艦、空母と新型デスラー艦がガルマンガミラス本星上空に集結すると、ただちに2万7千光年のオリオン腕方面へ向かって最初のワープをおこない、姿を消した。

 

ヤマトからタラップを降りて上陸しようと春香、鞘葉、土門、千早、そして工作船から律子、ルダ王女とハイゲル将軍が甲板に出ると、一見トトラであんだカヌーを両脇に連ねたようなイカダがやってくる。

イカダには数人の若者と長髪の白髪、胸にまで達する白いひげを蓄えた老人が乗っていた。

「姫。よくぞご無事で。」

「あなたも。」

ルダ王女は老人と抱き合ってから、老人をヤマトクルーに紹介する。

「シャルバート星を治める長老です。」

「航海に出たルダ王女がボラー連邦なる無法な勢力の艦隊に襲撃され、いずこへ連れ去られたと聞き絶望しておりました。王女をお連れいただき心から感謝しております。」

と長老はあいさつした。

「いいえ。無事に王女をここまでお送りできほっとしています。」

「あなたがたは、シャルバート星の大事なお客様です。歓迎の宴を催しますのでどうかお受けください。」

ヤマトクルーとハイゲル将軍は王宮へ案内される。

王宮は白亜の美しい建物で歓迎の宴の催された中庭も白亜のアーチが連なり、赤、黄、紫、橙など色鮮やかな花が点々と咲いている非常に上品な空間だった。

人々はギリシャ・ローマ風の白い衣をまとっている。にぎやかに会話が続く。

(これがシャルバート星?たしかに楽園って感じだけど...優れた科学力の伝承は??)

春香は祝宴を抜け出してもの思いにふけっていた。

「天海艦長。」

「土門君。」

「これが宇宙のいたるところで救いを求めて信仰を集めている星ですか...たしかに楽園だ。しかし、地球よりずっと遅れた...平和だけど事なかれ的な...力なんか何にもなさそうな星じゃないですか。」

「....。」

「艦長。この星を占領しましよう。そして第二の地球に。」

「土門君。」

「なんですか。」

「恥ずかしいことにわたしも一瞬そう考えてしまったけど、ガミラスがかって地球に遊星爆弾をふらせたときもそうだったよね。そして今のボラーやガルマンガミラスも同じことをやっている。それでいいのかな。」

そこへハイゲル将軍がやってきて話しかける。

「土門さん、シャルバートの核融合を抑制する装置をいっしょに探すんじゃなかったんですか。」

「そんな装置があるんですか?」春香が問いただす。

「そもそもハイゲル将軍がシャルバートの科学力の話をしたんじゃないですか。でもこの星にそんな科学力があるなんて信じられません。」

「私の調べた情報では、持っているのは確実です。ただ、どこにあるかはわかりませんが。土門さん。」

「なんですか?」

「わたしは、天海艦長をはじめとする地球の方々の平和を愛する考え方に感動し,事実上自分の信仰に忠実でありたいと思い、ガルマンガミラスでの地位をなげうって、皆さんについてきたのです。ルダ王女にお会いしてその考えが間違っていないと確信しました。いまのシャルバートと伝承とのつながりを探る方法があるはずです。ですから占領しようという安易な考え方はおやめになって冷静になってください。」

「でも、その装置がどこにあるかの保障もない、それから...。」

そのとき春香の通信機が鳴り出す。

「どうしたの?」

「ボラー艦隊が来ましたぁ。それから別の艦隊があとから...ガルマンガミラスの艦隊です。」

「!?」

 

「ボラー連邦艦隊、前方20宇宙キロ。」

「よし、主砲発射用意。」

 

「後方からガルマンガミラス艦隊が接近してきます。」

「主砲発射用意。第五艦隊は、シャルバート制圧のため、第一、第二艦隊はガルマンガミラス艦隊攻撃のため艦載機発進!」

 

「「主砲発射!」」

ボラー艦隊から黄色い光条が後方のガルマンガミラス艦隊へ向かって放たれ、薄赤色の光条がボラー艦隊へ向かって放たれる。ボラー艦とガルマン艦は、つぎつぎに火球と爆煙に変わっていく。




ヤマトの後から付いてきたボラー艦隊とガルマンガミラス艦隊は、シャルバート上空で戦闘を始める。

気が付いた方もおられるかもしれませんが2199ネタ入れました(9/16注記)

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