宇宙戦艦YAM@TOⅢ   作:Brahma

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ボラーの新兵器ワープミサイルは、雨あられとガルマンガミラス本星に降り注ぐ。


第19話 ガルマンガミラスからの旅

ヴィーッ、ヴィーッ、ヴィーッ...突然デスラーパレスの総作戦司令室に警報が鳴り響いた。

マルチパネルにボラー連邦のものと思われる褐色のミサイル群が映し出される。

「外郭防衛線衛星、ミサイル群多数捕捉!。ボラー系ミサイルと認識。」

「ミサイル、XYL区及びWZA区に侵入。広範囲に拡散しながら侵入してきます。」

「!!わが帝国の防衛ラインは突破できないはずだ。どうしたのか。」

「新型のワープミサイルと思われます。」

「侵入方向付近の戦闘衛星と地上基地にスクランブル指令を出せ!」

「はっ」

「アマミ、このようにボラーは絶えず攻撃をしかけてくる。しかし、わが防衛システムは完璧だ。あらゆる攻撃も十重二十重に防ぐように設計されている。」

戦闘衛星からミサイルが発射され、ボラーのミサイルが爆発音とともに火球に変わる。残ったミサイルも地上基地からの地対空ミサイルでほぼ一掃される。

「敵第二波ミサイル捕捉!ボラー型ミサイルが本星上空にワープアウト。」

「敵ミサイル、分解し四散します。」

第一波の倍はあるだろうミサイルが次々と「開封」され、おびただしい数の小型ミサイルとなり、流星のごとく降り注ぐ。

「XYL区及びWBZ区及びZLY区及びXBL区へ侵入!」

「XYL区及びWBZ区及びZLY区及びXBL区へスクランブル指令だ!」

「了解。」

戦闘衛星と地上基地の地対空ミサイルによって次々とボラーのミサイルは破壊され火球と爆煙になっていく。

「XYL区及びWBZ区ミサイル群撃破確認。」

「ZLY区及びXBL区ミサイル群撃破確認。」

「ボラー型ワープミサイル、第三波捕捉!首都西側地区へ向かってきます。」

「戦闘衛星半数間に合いません。」

「地上基地対空ミサイルシステム半数稼動しません。」

「どうしたのだ。なぜ西側地区の防衛システムが稼動しないのだ。」

「破壊行為が確認されました。メインコンピューターの識別、指令系統が破壊されているのを発見。」

「何!!」

「駆逐艦と中型戦闘艦を発進させろ。高圧直撃砲を斉射して敵ミサイルを破壊するのだ。」

「了解。」

そのときフラウスキーがメインパネルの画面に映る。こういう事態なのでやや不安の色が見える。

「デスラー総統。フラウスキーです。工作船の準備は完了しました。緊急事態ですし、延期しますか。」

「いや。それには及ばない。アマミ、我が帝国の防衛力を信用してくれ。」

駆逐艦と中型戦闘艦がミサイル迎撃のために飛び立っていくのが窓から見えた。

 

春香がデスラーパレスのコンピュータールームの近くを通りかかるとハイゲル将軍が破壊箇所を調べているところだった。

「この部署の担当者は集まるように。」

ハイゲル将軍の声でオペレーターたちは蒼白な顔で集まってくる。

副官が

「一人足りないな。」

といって見回すと出口へ向かってこそこそ出て行こうとする者が1名いるのを見つける。

「待て。お前は何をしている。」

そのオペレーターは振り向きざまに出口へ走りながら叫ぶ。

「ガルマンガミラスなど滅びるがいい。」

副官はその背に向かってブラスターを発砲する。

バシューン、バシューン...

発射音がしてそのオペレーターの胸を光条が貫く。

そのオペレーターは、のけぞりつつも残る力をふりしぼり、

胸のペンダントを空へかざして叫ぶ。

「ムターニャ・シャルバート!」

(ここにもシャルバートの信者がいたのか...)

シャルバート信者のオペレーターは捕らえられて連行されていく。

 

ハイゲルが破壊行為摘発の報告にデスラーパレスをおとずれて報告を終えると勇気をふりしぼって恐るべき上司にひとつの提案をしようとしていた。

「デスラー総統...。」

「なんだね。ハイゲル将軍。」

「わたしも総統の友人である地球の皆さんと一緒にいきたいのですが...聞くところによると彼らもボラー連邦の攻撃だけでなくシャルバート教徒の被害を受けているとのこと。きっと彼らの役にたてると思います。」

「それからシャルバートの伝説化した軍事力についてもな。ハイゲル将軍。」

デスラーはにやりと笑みを浮かべる。

「ご存知だったのですか。ではなぜ..。」

「わたしは落ち度のない忠実な部下を処刑する気はないのだよ。シャルバート教徒も一枚岩ではないのだろう。君のようなボラーの圧制にもどりたくないという一派と過激な原理主義の一派がいて、原理主義の一派が破壊活動をした。しかし反ボラーのシャルバート教徒のネットワークで君は破壊活動を摘発し、最小限に抑えることによってわたしへの忠誠と信仰を両立させているのだろう。また君がシャルバートの伝説的な軍事力について我が帝国に貢献するために調査したいと考えているのも知っている。あわよくばわたしを改宗させたいと考えているのもな。しかしガルマンに神は二人もいらないのだ。どうしても信仰を捨てられないのならいままでの忠誠に免じて行きたいところへいってもかまわないのだぞ。」

「....。」ハイゲルは言葉につまった。

「わたしへの忠誠を果たしたければシャルバートの伝説化した軍事力について調べて戻って来い。どうしても信仰を捨てられないならヤマトの旅を助けた後はどこへでも好きなところへいくがよい。」

「はっ。ありがとうございます。」

ハイゲルは片膝をたててひざまずき、搾り出すように答えた。

デスラーはきびすを返して立ち去っていった。

こうしてハイゲルは工作船団に乗り組むことになった。

 

ベオバレラスの上空ではガルマンガミラスの駆逐艦と中型戦闘艦がミサイルや高圧直撃砲でボラーのミサイル群を8割破壊にすることに成功したものの、ついに地上へも一部のミサイルが降り注ぎ、ガルマンガミラスの基地や施設を破壊していく。地上からは炎上して煙が昇っている箇所がちらほらみられる。

春香が宇宙港の工作船の前にたどりついたとき、律子と坂東をはじめとする技術班は緊張した面持ちで春香をみつめる。

「この分だと第4波があってもおかしくない。早いところ発進しようと思いますが。」

「お願いします。律子さん、この太陽制御が成功すればヤマトの使命を果たしたことになります。しっかり頼みます。」

「よし。わたしたちも出発だ。」

「本艦は、工作船護衛と未調査の探査のために発進します。千早ちゃん、発進準備は?」

「いつでも発進できるわ。」

そのときレーダー手が血相を変えて叫ぶ。

「!!敵超大型ミサイル発見。」

「波動エンジン点火10秒前...3,2,1,0!」

「フライホイール、接続、点火!」

「ヤマト発進!」

メインエンジンが炎を吹き出し、ヤマトは力強く進み、宙に浮かぶ。

「敵超大型ミサイルは惑星破壊ミサイルと同定。方位40、距離550宇宙キロ。」

「反転左40度!」

千早が操縦桿を傾ける。

「波動砲、発射準備!」

春香が叫ぶ。

「了解。波動砲エネルギー充填開始します。」

真が応じる。

「エンジンへのエネルギー弁完全閉鎖。回路艦首波動胞へ。艦内システム停止。」

窓から工作船団が離れていく様子とボラーの巨大な惑星破壊ミサイルが接近してくる様子が見える。

「波動砲安全装置解除。」

「ストライカー圧縮機作動。最終セイフティロック解除。」

「波動砲発射用意。土門頼んだわよ。」

伊織が土門を指名する。

土門は発射レバーを握り締めたものの、春香のほうへ振り返る。

「艦長。このままあの星が滅んでしまったほうが...。」

「土門。あんたバカ?ガルマンガミラスがふっとんだら工作船も巻き添えを食うのよ。感情的になるなってあれほど言ったでしょ。ほら目標惑星破壊ミサイルよ。あなたの忍耐と決断が地球を救うの。覚悟しなさい。」

伊織が土門をにらみつける。伊織の一喝で土門は波動砲の発射レバーを握りなおし電影クロスゲージを見つめなおす。

「電影クロスゲージ明度20、対ショック、対閃光防御。」

「誤差修正0.2、波動砲発射10秒前、9,8,7....。」

「発射!」

ヤマトの船体を一瞬揺さぶると、波動砲口からあふれ出したエネルギーの奔流は宇宙空間を昼間のように照らす。惑星破壊ミサイルを飲み込んであっというまに溶解し、なおも宇宙空間をうなりと衝撃波を発しながら流れていく。

土門の額からは汗がにじんだ。発射レバーをにぎったまま硬直してしまう。

「土門君。見事な発射だったよ。」

春香は微笑みながら土門をねぎらった。

「やるじゃない。それでいいのよ。」

伊織は笑顔で土門の背中をたたく。第一艦橋の面々は笑顔で土門を見つめて拍手する。

土門もようやく微笑を浮かべることができた。

そのときメインパネルにデスラーの姿が映し出される。

「アマミ。よくやってくれた。ヤマトのおかげでガルマンガミラスは救われた。礼を言う。」

「デスラー総統。わたしは、工作船団を救いたかったのと、ガルマンガミラス本星で普通に暮らしている市民の皆さんの生命が奪われ、明日からの生活や幸せが失われるのが耐えられなかったんです。バース星でボラーに捕らえられた囚人さんたちを救えなかったから...わたしには難しくてよくわかりませんが、現にこうやってボラーの攻撃はあったわけだから総統さんのお考えのほうが正しいのかもしれません。ただ、力でいろんな考え方やいろんな民族を押さえつけた結果でこういうことになったのも事実だと思う。舞さんは総統さんになんていうかなあ。よく考えてほしいんです。舞さんは白色彗星のときの総統さんの立場をよく理解してほめていましたよ。あのときの総統さんは、ガミラス再興のことだけを考えていたと思います。」

春香は笑顔でデスラーに答える。春香のなかでもこの問題への解答は見つからない。地球が中立を守れるのはただ幸運なだけかもしれないし、実際にデスラーのおかげかもしれないのだ。だがどうしてもそれだけでは吹っ切れない、言葉にできない思いを春香は吐き出した。

 

ヤマトと工作船団はガルマンガミラス本星を出航し、1回ワープをして数光年のの宙域にいた。

「もうすぐギドラ三連星の近くを通過するわ。」千早が現在位置を告げる。

「!!」レーダー手の顔に驚きの色が走る。

「10時の方向、500宇宙キロに艦影!」

「ボラー連邦の艦隊です。数50」

「雪歩、通信をつないで。」

 

「ボラー連邦第五艦隊司令ゲオル・ジャーコフだ。」

春香は無駄だと思いつつも一縷の望みを託してメッセージを伝える。

「こちら地球の宇宙戦艦ヤマト。貴艦隊へ攻撃する意思はありません。戦闘体制をとかれることを望みます。」

「問答無用だ。ガルマン艦と一緒にいるではないか。ベムラーゼ首相を倒したガルマンの犬め。」

「ボラー艦隊から砲撃がはじまりました。」

ボラーチウムを含んだ数十もの光条が流星のようにヤマトを襲う。

「工作船団をまもらなきゃ。千早ちゃん!」

「ええ。」

 

ヤマトは工作船団をかばうようにボラー艦隊との間にわりこむ。

「ギドラ三連星の気流と磁気嵐が激化。宇宙竜巻が発生。ひとつが直径10数キロあります。」

「あれに巻き込まれたらひとたまりもないわね。」

「波動防壁展開。」

「波動防壁は20分しか持たないわ。」

「千早ちゃん。この気流抜けられる?。」

「...。」千早は無言で操縦桿を握っている。

「宇宙気流が激しくなってるよ。」雪歩が不安そうにつぶやく。

ヤマトの船体は激しくゆれ、船内はがたがたと音を立て、キイイ、キイイ、キシキシキシと船体の外側からと思われる音が艦内に響いてくる。

「機関室。エンジン全開だ。」真が命じる。

「まこちん。いまやっってるけど...。」亜美と真美が答える。

「宇宙竜巻接近。4時の方向3宇宙キロ。秒速500キロです。」

「くつ....。逃げ切れない。」

「全船団ワープ。とりあえずはぐれないように予定宙域の座標送ります。」

「宇宙竜巻急速接近!巻き込まれます。」

「うわああああああ「きゃあああ「ワープ!」」」

ワープと同時に宇宙竜巻によって時空震が起こり、ヤマトと工作船団はまきこまれた。

 

「ヤマトとガルマンガミラスの船団、ワープした模様。」

「宇宙気流と磁気嵐の影響でワープトレースできません。」

「逃がしたか...。」ジャーコフは唇を噛んだ。

 

ヤマトと工作船団はある惑星の近くに投げ出されるようにワープアウトし、惑星にゆっくりぶつかる。

ドスン、というなにかにぶつかったような音と衝撃がしてヤマトと工作船団は止まる。

皆は一時的に気を失っている。

ヤマトでは土門と鞘葉の脳裏に響く声がする。

「ドモンサン、ドモンサン。」

「サヤバサン、サヤバサン。」

同じことは工作船団にのっていたハイゲル将軍にも起こっていた。

「ハイゲルショウグン、ハイゲルショウグン。」

「ううう..ん。」

土門と鞘葉が目をさます。見ると褐色の長髪をして、薄い水色の長いワンピースをまとった美しい少女のすがたがあった。

 




宇宙竜巻の危機からヤマトと工作船団は、辛くもワープでのがれたものの...

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