宇宙戦艦YAM@TOⅢ   作:Brahma

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ガルマンガミラス東部方面軍の大艦隊にヤマトの亜空間兵器の攻撃が始まり、ギドラ三連星星域会戦の第二幕がはじまる。


第16話 ギドラ三連星星域会戦後編

「亜空間マンタ2号より、1宇宙キロに敵艦隊発見の模様。亜空間音響魚雷及び亜空間キャニスター投下!攻撃開始します。」

「亜空間マンタ3号より、1宇宙キロに敵艦隊発見の模様。亜空間音響魚雷及び亜空間キャニスター投下!攻撃開始します。」

 

第9機動艦隊では、瞬間物質移送機で艦載機をヤマトまでワープさせる直前だった。

「艦載機、出撃準備、瞬間物質移送光線範囲内に集結完了。」

「司令!敵潜航艇発見。あ、ジャミングです。ロストしました。」

「ええい。それほど移動していないはずだ。亜空間爆雷発射!」

「亜空間爆雷発射!しかし、敵は亜空間音響魚雷で位置確定できません。」

「ああ、敵魚雷6出現至近。亜空間ソナー、及びソノブイに命中。敵影完全にロスト。」

「敵魚雷天底方向から出現!150!」

「回避だ!」

「ホーミング魚雷です。回避不能!」

「第1、第7、第11空母撃沈。2番大型戦闘艦、5番大型戦闘艦、8番大型戦闘艦撃沈!」

ソナーやソノブイを破壊され耳と目をふさがれた第9機動艦隊は、一方的に亜空間マンタと亜空間キャニスターの餌食になるだけだった。

たった旗艦含めたった3隻になったところで亜空間マンタから春香の声で降伏勧告がメッセージされる。

「司令官さん、とどめですよ。とどめ。もし、降伏していただけるなら生存者の生命は保障されますから総司令官さんに降伏をすすめてください。」

「一機も飛び立たせることができずにこのざまか...。」

バキューンン….

ブラスターの銃声が艦橋に響く。

副官が

「指揮権をひきつぐ。」

と厳かに宣し、

「通信回路開け。総司令官に戦況を伝えて指示をあおぐ。」

と苦渋に満ちた押しつぶしたような声で通信士官に命じていた。

 

似たようなことは、第11機動艦隊でも起こっていた。

「天底方向より魚雷200接近。うわあああああ。」

第11機動艦隊司令は、時軍の空母が次々と魚雷に貫かれて炎上し、爆発するさまをみせつけられていた。撃沈、大破という被害報告を伝える士官の声はもはや悲鳴のようであった。

「一機も飛び立たせることができすに...なんということだ...すこし、時間をもらう。」

ブラスターをもち自室へ向かおうとするがそのときレーダー手の悲鳴のような叫びが聞こえる。

「直撃5、来ます。」

「回避不能!」

爆音とともに第11機動艦隊旗艦はへし折れるようにして炎上し、爆発四散した。

 

「ガイデル総司令、総司令!。第9機動艦隊及び第11機動艦隊、敵の攻撃を受けて、すでに半数以上の被害が出ている模様。」

「なんだと!?」

「敵は音響魚雷で姿を隠し、亜空間ソナー、亜空間ソノブイを破壊し、丸裸にしてから大量の魚雷で一方的に攻撃してきたようです。」

「ガイデル提督、わたしが行って援護してきます。しょせんは無人の潜航艇。同じ手は食いません。」

フラーケンが進言する。ガイデルは迷った。ここでフラーケンに援軍にいってもらえば二つの艦隊は助かるかもしれない。しかし、そうなるとガイデルの本隊は丸裸になる。そこをおそわれたらひとたまりもない。

「もうすこし、待ってくれ。」

「放っておくと全滅ですぞ。」

「第9機動艦隊より入電。『ワレ、旗艦ホカ二隻残スノミ。敵カラノ降伏勧告ヲ受諾セシガ如何』、とのことです。」

「すぐに援護におもむくと...。」

「待ってください。第11機動艦隊より入電。『当艦隊ハ、旗艦撃沈サレ、大型戦闘艦1、駆逐艦1ヲ残すノミ。敵カラノ降伏勧告ヲ受諾セシガ如何。敵ヨリ、生存者の生命ハ助ケルユエ、総司令官ノ身柄ノ引渡ヲ要求サレタシ。』、とのことです。」

フラーケンは意を決して、ガルマンウルフ号をワープさせ、第9機動艦隊のいた宙域に接近する。亜空間マンタ2号を発見するとたちまちのうちに魚雷を放って撃沈した。亜空間キャニスターも距離をたくみにとって感知されないようにして次々に破壊する。

 

すこし時間をさかのぼり、ヤマトでは、ガイデル本隊から瞬間物質移送機で送られてくるガルマンガミラス艦載機の迎撃を行なっていた。

「敵戦闘機隊50機、10時の方向に出現。」

「敵戦闘機隊50機、さらに2時の方向に出現。」

「戦闘機隊50機、4時の方向に出現。」

「第一主砲10時の方向,仰角30度、誤差修正0.5、発射!」

「第ニ主砲2時の方向,仰角35度、誤差修正0.2、発射!」

サーバリックモードで熱波と燃料引火で次々と戦闘機隊が火球と爆煙に変わっていく。

「この数から考えて亜空間マンタの攻撃は成功したわね。」律子が満足そうに話す。

「うん。敵本隊を丸裸にすることと、少しでも航宙戦力を減らしておく必要があったから。」

「亜空間マンタからも敵の残存数が報告されてきますぅ。順調なようです。」

「!!」

雪歩の顔が青くなる。

「敵潜航艇接近!」

次の瞬間、亜空間マンタからの送信画面がザザッと軽い音を立てて消える。

「あ、亜空間マンタ2号通信途絶!。」

「亜空間マンタ2号撃沈されました。敵の生き残りの潜航艇のようです。」

「亜空間マンタ3号にソノブイ打ち上げを指令して。」

 

「!!艦長。敵次元潜航艇がワープアウトし出現。距離1宇宙キロ!。」

「亜空間魚雷発射反応あり。」

「波動防壁展開!亜空間SUM発射。」

 

「20分だ。20分耐えればいい。ヤマトめ。こうなったら道連れだ。」

フラーケンはつっこんでくる。

 

「亜空間マンタ1号発進とともに、亜空間キャニスター放出。」

右舷から亜空間マンタが発進されるやいないや亜空間キャニスターが投下される。

「敵、亜空間マンタ出撃確認!」

「ヤマトめ。ガルマン・ガミラスの軍人魂を、このフラーケンの恐ろしさを味あわせてやる。」

フラーケンは不敵な笑みを浮かべた。

「敵亜空間マンタを盾に波動防壁を打ち破る!」

ガルマンウルフ号は、亜空間マンタの艦腹に艦首をめり込ませた。SUMを防ぐとともに、波動防壁の衝撃波面を耐えてヤマトに魚雷を打ち込もうというのだ。

 

第一艦橋のヤマトクルーはフラーケンのすさまじい闘志に目をむいた。春香と律子は冷静だったが、雪歩はすっかりおびえている。

「すさまじい闘志ね。だが、遅かった。」律子がつぶやく。

「ワープ準備。」

「ワープ。」

ガルマンウルフ号は、亜空間キャニスターからの多量のSUMに貫かれ亜空間マンタ1号とともに爆発し、四散した。ガルマン帝国東部方面軍の切り札として、ガルマン帝国の機甲部隊が苦戦した数十もの強敵との征服戦争において、膠着状態を圧勝に導いてきた猛将のすさまじい最後だった。

 

そのころガイデルの艦隊もまっさきに亜空間ソナーと亜空間ソノブイをつぶされ、なすすべもなく亜空間マンタと亜空間キャニスターのために次々と撃沈されていく。

「総司令..このままでは全滅です。」

そのときガイデルのゼルグート級旗艦にスゴオオオンという轟音とともに激しい振動が走る。

「総司令...ヤマトです。」

 

「戦闘班白兵戦部隊と土門、雷電、真は旗艦の艦橋に乗り移って。」伊織が命令する。

「ボクは白兵戦要員だけど本当は機関長で伊織より階級は上なんだぞ。」

真が呼び捨てに抗議する。

「戦闘行為はわたしに指揮権が委譲されてるから階級は関係ないの。」

「ふたりとも落ち着こうよぅ。」

雪歩が言い争いを止めようとする。

「「雪歩はだまってて!」」

雪歩はふええと弱弱しい涙声を発する。

強襲揚陸艇が白色円盤状の艦橋の底部へ向かって発進され、艦底部に密着すると高熱を発する突入用シリンダーが装甲を溶解させて打ち込まれる。

戦闘班のえりすぐりの猛者たちはガルマン兵をたちまちたおしてガイデルのところまでたどりついた。

「ガイデル総司令ですね。」真がたずねる。

「....。」

ガイデルは無言で屈辱に体をこわばらせる。

土門と真と雷電は、ガイデルを押さえつけて捕縛し、自決しないようさるぐつわをかませた。

スクリーンに春香の顔が映し出される。

「もう、フラーケン大佐は壮烈な戦死をされました。それに残りの艦もその気になれば全滅させられます。降伏して、あなたの元首のいるガルマン帝国の本国まで案内してください。」

こうしてガルマン帝国東部方面軍は、ギドラ三連星にヤマトを追い込むはずが、なすすべもなく完敗して、ヤマトに降伏し、ガルマン帝国本国まで案内することになった。

 

その頃、ガルマン帝国本星では、ボラー連邦首相がバース星宙域において敵と戦闘した結果、機動要塞ごと爆破され死亡したとの連絡がはいっていて緊急作戦会議がもたれていた。

銀河系の星図が映された討議卓を二列に囲んで居並ぶ将軍たちを見回して総統デスラーは会議の開始を宣告した。

「先般、バース星空域にて状況視察に訪れたボラー連邦のベムラーゼ首相がオリオン腕方面の小規模な国家と交戦中、機動要塞ごと破壊され、死亡したとの連絡がはいった。ボラー連邦は後継者争いとなり不安定になるであろう。いまこそ宿敵であるボラー連邦を一挙にたたきつぶすチャンスがやってきたのだ。そこで諸君には忌憚のない意見を述べてもらいたい。」

デスラーは居並ぶ将軍たちの顔をみまわしていたが、ふとガイデルの席が空席であるのに気がついた。

「東部方面軍のガイデルはどうした。」

「手強い交戦国が現れたため、直接指揮をとって敵を倒すために、今回の会議についてはやむをえず欠席するとのことです。」

「そうか。では、会議をはじめよう。」

「総統閣下。」

「何事だ。」

「東部方面軍のガイデル提督より緊急連絡です。」

 

ビデオパネルに焦燥とした表情のガイデルが映し出される。

「総統...。」

「ガイデル。君にしては珍しいな。どうしたのだ。」

「われわれは、総統にプレゼントするはずの星、オリオン腕のG型ゾル星系第3惑星テロンを征服しようとしましたがヤマトなる宇宙戦艦に邪魔をされ...。」

「何?テロンだと...。そのテロンの戦艦の名前をもう一度言え。」

「宇宙戦艦ヤマトです...。」

デスラーの顔がこわばる。

「総統...。」

「ガイデル。いつテロンを攻撃しろといった。いつヤマトを襲えと言った。オリオン腕最辺境の星には手を出すなといったはずだぞ。お前は我が国を滅ぼす気なのか。」

「滅相もありません。じつは、そのヤマトの捕虜になりまして...いま本星から2光年の宙域におります。」

デスラーは言葉につまってしまった。

「デスラー総統ですか?おひさしぶりです。」

スクリーンには見間違いようもない黒い閣下服に赤いネクタイ、頭の右側と左側に赤いリボンをつけた「小娘」の顔が映し出される。画面の「小娘」はデスラーをみて少し驚いたようだった。

「ヤマトの艦長になったようだな。アマミ。おめでとうを言わせてもらうよ。それから我が艦隊を打ち破った手腕はみごとというほかない。」

「デスラー総統、やっぱりガルマン帝国というのはあなたの国だったんですか。」

「総統としておわびをせねばならん。聞けばわたしの部下が独断で地球を攻めたという。申し訳ないことをした。許してくれ。アマミ。わたしは、地球をヤマトを友と思っているのだよ。」

「デスラー総統。わたしたちこそ知らなかったとはいえ自衛するためにあなたの部下の大切な艦隊を撃沈しまくってすみませんでした。でも、ボラー連邦とは交戦中だったんですよね。代わりといっては何ですがベムラーゼ首相を倒しましたよ。」

春香はうれしそうにVサインをしてみせる。

「ですから必死に戦った部下さんたちには申し訳ないですけど水に流してもらえればありがたいです。それにしても宿願をはたしたんですね。すばらしいです。舞さんにも報告しておきます。」

デスラーは、舞の名前を聞くと一瞬ぎくりとしたものの、気を取り直して春香の発言に答える。

「うむ。ボラー連邦は我がガルマン民族を隷属してきた仇敵だった。わが艦隊ともやむなく戦ったということは十分理解できるし、仕掛けたのはわれわれのほうだという情報もはいっている。すまなかった。今回はお詫びをかねてガルマン帝国へ君たちを招待したいのだが。ヤマトが出てきたということは地球に深刻な事態が生じたということではないのか。相談にも乗りたい。受けてもらえないだろうか。」

「わかりました。喜んでガルマン帝国をたずねさせていただきます。」




ガルマン帝国はデスラー総統が支配する国家だった。春香たちヤマトクルーはガルマン帝国への訪問を提案される。

ガルマン帝国東部方面軍の艦隊名を固有名詞ではなく番号にしました(8/29-30)。

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