「敵反応10隻確認しましたがつぎつぎに消失!」
「敵次元潜航艇一隻ロスト。」
「ワープしたみたいですぅ。」
「これ以上戦っても損害がますばかりだからね。」真がつぶやく。
「相手も驚いたでしょうね。」律子が微笑む。
「律子さんありがとう。千早ちゃんも隠れ場所をみつけといてくれてありがとう。」
春香の笑顔は明るい。
「航海班長のつとめだから。万が一戦闘になった場合の隠れ場所ということでチェックはしておいたんだけど、惑星探査に直接関係のない情報が役に立つなんて...。」
「千早、たすかったわ。時間が稼げなかったら、製作する前にやられていたわ。マンタが一隻やられたけど、コスモファルコンを守るためには仕方なかったわね。」
歴戦のガルマンウルフが煙を出しながら東部方面軍機動要塞付近にワープアウトする。
「東部方面軍機動要塞まであと5宇宙キロ。」
「ガイデル提督につないでくれ。」
「了解。」
「ガイデル提督...。」
普段不敵な笑みをうかべているフラーケンが青ざめている。
「どうした、フラーケン。」
「敵の対潜装備は完璧でした。あんな敵ははじめてです。」
「うむ...おまえがやられたということは...只者ではないな。」
ガイデルはフラーケンをなじらなかった。ガルマンガミラス最強の次元潜航艇艦隊である。
おそらくその変幻自在、神出鬼没の戦闘力は、方向性こそ違え、デスラー砲の斉射を行うことのできる強力な打撃艦隊であるデスラー総統の親衛艦隊と同じくらい敵にとっては脅威にちがいないのだ。
「新反射衛星砲も短期間で打ち破っているのでかなりの強敵だと覚悟はしていましたが異次元戦闘すらも対処してのけるとは...信じられません。」
「うむ...わしみずから艦隊を指揮して対処しなければならないか...。
相手は戦艦一隻だったな。圧倒的な航宙戦力でいっきょに沈めるしかないか...。」
「東部方面軍の空母を200隻集めるのだ。いっきにヤマトを沈める。」
「リバアカァン星(ケプラー4)系の第2機動艦隊、コアトロンセ星(CoRot-11)系の第6機動艦隊、セクソキグナ星(ケプラー6)系の第9機動艦隊、サジタモアブルグ星(MOA-2007-BLG192L)系の第11機動艦隊は、3日以内に集結できます。」
「よし。第2機動艦隊は、ヤマトを宇宙気流や宇宙竜巻の発生しやすいギドラ三連星の宙域にさそいこむのだ。そこで、6機動艦隊、第9機動艦隊、第11機動艦隊で包囲網を築き航宙隊の全方位からの波状攻撃で一気に沈める。」
「ヤマト発見。距離5宇宙キロ!」
「第2機動艦隊、第一次攻撃隊、発進準備!」
第2機動艦隊の二連三段空母の先端レーンに戦闘機が次々のせられる。
40隻の空母から瞬間物質移送機で次々とヤマトのいる空域に次々と戦闘機が送られる。
「!!」レーダー手が突然出現した戦闘機隊に驚きをかくせない。
「5時の方向至近に敵の戦闘機隊100機出現!」
「第三主砲、第二福砲サーモバリックモード、発射準備!」
「第55装甲板被弾!」
「第38装甲版被弾!」
「発射~!」
伊織の号令で主砲と副砲が発射される。
敵戦闘機隊は、木の葉のように揺れて熱波と燃料引火でたちまち火球に変わる。7~8割が戦闘不能になる。しかし、残った機体は執拗にヤマトを攻撃する。
「7時の方向に敵戦闘機隊100機出現!これも至近です。」
「第393装甲板被弾!」
「第172装甲板被弾!」
「第三主砲、第二福砲発射!、コスモファルコン発進準備!残敵掃討おねがい。」
「波動防壁展開!」
「どこかに敵艦隊がいるはず。どうせこちらの位置がわかっているんだから遠距離アクティヴレーダーでさがしてみて。」
「敵艦隊発見。6時の方向、距離4万5千宇宙キロ、空母40隻、戦艦5隻、駆逐艦10隻の大艦隊です。」
「護衛艦が少ないのは、直援機でまもれるという自信の表れね...。」
「ここにいたらやられるだけですぅ。」雪歩が悲鳴のように叫ぶ。
「千早ちゃん、ワープで敵の背後に回ろう。」
「春香、敵の背後に回るのはいいけど、ギドラ三連星がちかくにあるわ。宇宙気流が発生しやすい連星系よ。」
「春香、これはわたしたちをさそいだす罠のような気がする。要するに三連星の近くにわたしたちを誘い出して、波動砲で艦隊を撃滅したところで、エネルギーが足りなくなったところを新たな艦隊が現れて連星系の宇宙気流に追い込んで攻撃される可能性があるわ。」
「わたしもそう思う。」
千早も律子に同意する。
「ヤマトがワープする気配はないか。」
ガイデルは、確認する。
「今のところありません。ねばって戦っています。」
「あの主砲と副砲がくせものだな。戦闘機隊があっというまにやられてしまう。
急降下爆撃機であの主砲と副砲をねらえないか?」
「今、ヤマトは波動防壁を展開しています。防壁の衝撃波面で、投下した爆弾も防がれますし、爆撃機が防壁に衝突したら犬死になります。ただ、あの防壁の効果は20~30分くらいですから。」
「しかし、その間にワープで逃げられたら元も子もないぞ。」
「あの、律子さん、先日の亜空間マンタは1機残ってるんだよね。」
「そうだけど。」
「三連星の逆側で亜空間マンタの航続距離のぎりぎりにワープしてもぐってもらって、沈めてもらうのはどうかなあ。」
「それがいいかもね。万一次元潜航艇がいてもキャニスターでたたけるしね。」
真が同意する。
「この宙域には宇宙用音響魚雷を打ち上げて、魚雷の効果時間内にワープすればワープトレースを消せる。デコイを放出しておくわ。」
律子が提案する。
「ワープ準備!宇宙音響魚雷及びデコイ発射準備!」
「ヤマトが反撃をやめました。コスモファルコンを収容していきます。」
「ふふふ。ワープの準備だな。いよいよ音をあげたか。」
ガイデルはほくそえむ。
「10,9,8,....。」
「宇宙音響魚雷発射!」
「デコイ発射!」
「3,2,1,0,ワープ。」
「ヤマトより魚雷発射反応あり。しかし、魚雷はヤマトの周囲で爆発した模様。」
「戦闘機隊が魚雷爆発にまきこまれましたが損傷軽微。」
「戦闘機隊より連絡。一瞬計器にジャミングのような異常反応あり。」
「ヤマトに波動防壁の反応ありません。」
ガイデルは首をひねる。
「ヤマト、パルスレーザーで戦闘機隊を攻撃。ただちに反撃します。」
「ヤマト撃沈。」
「なんかあれだけ激しく抵抗していたわりにはずいぶんあっさりだったな。」
「そうですね。まあ撃沈したのは事実ですし。」
「そうだな...。」
ガイデルは腑に落ちずにうなづく。
そのころ第2機動艦隊では...
「雷跡10、10時の方向からです。」
「何?どこから出現したのだ。敵艦はどこだ。」
第2機動艦隊の司令はレーダー手に問い返すが
「わかりません。」
との返事だった。
「魚雷が...大量に...天底方向から出現。」
「ぎゃああああ...。」
「第7空母、第10空母、第21空母撃沈。第13空母、第1戦艦、第2戦艦、第40空母大破!」
「駆逐艦に敵がいないか探らせろ。」
「亜空間からの攻撃の可能性がありますが...。次元潜航艇は我が帝国だけの技術と考えているのでソナーがありません。」
「まさか、敵は次元潜航艇技術をもっているというのか。」
「仕方ない。救援要請だ!」
「当艦隊は敵の攻撃を受けている。至急救援を請う。救援を請う。」
第2機動艦隊司令はうめくがなすすべがない。
「ぎゃあああ。」
第2機動艦隊の船の中は悲鳴にあふれた。亜空間マンタと亜空キャニスターからの魚雷は、次々と第2機動艦隊の船体を貫いて、火球と爆発煙に変えた。やがて、無数の金属片にかわった第2機動艦隊の残骸のみが宇宙空間にうかんでいた。
「第2機動艦隊から敵の攻撃を受けているとの通信が入電!」
「何?」
「敵の攻撃はどこからかわからないとのことです。10時方向から魚雷攻撃があった後、天底方向から無数の魚雷が出現したと。」
「ガイデル提督。」
「フラーケン、何だ。」
「わたしが受けた攻撃とそっくりです。敵も無人の次元潜航艇を使ってきました。無数の亜空間キャニスターでやられたのです。1隻の敵潜航艇は沈めましたが、亜空間キャニスターの攻撃が激しく逃げるのがせいいっはいだったのです。」
「次元潜航艇の技術は我が帝国の技術のはずだが、スパイでもいるのか?」
「それはないとおもいます。無人潜航艇や亜空間から魚雷を大量に打ち上げる技術は我が帝国とは異なる発想の技術ですから。しかし有人の潜航艇を逆に持っていないのでそれが付け目ともいえます。」
「ヤマト発見!第2機動艦隊から10時の方向、4万宇宙キロの宙域です!現在位置からは2光年。」
「やはり、あそこで爆破したのはデコイだったか。」
「ワープトレースをたくみに消されました。魚雷発射反応は空間を乱してワープトレースを消すための一種の音響魚雷だったようです。」
「よし、今度は全艦隊をもってヤマトをギドラ連星方向のみをあけて包囲するのだ。ヤマトから6万宇宙キロに展開してすぐに瞬間物質移送機で戦闘機隊を発進させるのだ。」
「第6機動艦隊ワープ準備完了。」
「第9機動艦隊ワープ準備完了。」
「第11機動艦隊ワープ準備完了。」
「第6機動艦隊は、ヤマトとギドラ連星系を結ぶ軸線から15時30分の方向へワープせよ。」
「第9機動艦隊は、ヤマトとギドラ連星系を結ぶ軸線から13時の方向へワープせよ。」
「第11機動艦隊は、ヤマトとギドラ連星系を結ぶ軸線から8時30分の方向へワープせよ。」
「我が第一機動艦隊は、敵から11時の方向へワープだ。」
ガルマン帝国東部方面軍の大艦隊は姿を消した。
「亜空間キャニスターの回収終わりました。」
「よしよし。さすが伊織ちゃんの部下ね。残しといたら敵にこっちの手の内をばらすようなもんだからね。」
部下の報告に伊織が答える。
「俺ほめられてんだよな?」
「ツンデレいおりんだからな。」
「そこ!なにひそひそ話してんのよ。」
「「へーいい。」」
「敵は、ギドラ連星系にわたしたちを追い込もうとするはず。偵察衛星を打ち上げるとともに亜空間ソノブイもばらまいといて。」
「了解。偵察衛星を16時と14時と12時と10時と8時の方向へ打ち上げ、亜空間ソノブイを15時と13時と11時と9時の方向へばらまきます。」
律子の指示に坂東が答える。
「いまのうちにこの宙域から逃げちゃったほうが...。」
雪歩が皆に提案する。
「でもずっと戦い続けてきたからね。逃げても追いかけてくるだろうし。」律子がつぶやく。
「敵の司令官をつかまえて、本国に案内させるしかないのかな...ガミラス系の技術をもつガルマン帝国の本国に...。」春香が腕組みをして小首をかしげてつぶやく。
「敵を降伏させて、司令官を捕まえちゃえばいいかもね。」真がつぶやく。
「そ。全員命を補償するから降伏しろって。」伊織がそれに応じる。
「え?たった一艦でどうするの??」雪歩が問い返す。
「亜空間マンタと亜空間キャニスターの攻撃で。敵の次元潜航艇は、こないだやっつけたものしかもってないみたいだから、亜空間はきっとがらあきだよ。」
「ええっ。でもそんなことして待ちかまえていたらどうするの?」
「雪歩、そのための亜空間マンタなんだから。だれも乗っていないというのは強みなのよ。」
「でも、もう1台しか…。」
「まあ、役にたたなければいいのにと思ってたけど思いのほか効果あるみたいだし、使い勝手いいから新しく3台つくったわ。まあ、コスモハウンドのような大きさだから、右舷1台左舷1台づつしか発進させられないけどね。敵の攻撃がない今のうちに発進させとくわ。
敵も亜空間ソナーくらいの対策はするだろうから亜空間音響魚雷もつんでおく。」
一方、ガイデルはあせっていた。次元潜航艇を本国に要請すればもっと戦局を楽にできるだろう…しかし、作戦討議で新鋭艦隊をあずかったうえに豪語してしまった。いまさら苦戦しているとはいえない…
そのため、亜空間マンタへの対策は中途半端なものになった。
「主要艦艇に亜空間ソナーと亜空間爆雷を用意させよ。念のために亜空間ソノブイもまいておくのだ。」
亜空間ソナーは亜空間爆雷の爆発音や音響魚雷を使われた場合、ほとんど意味がなくなる。索敵は最終的に亜空間ソノブイだよりになる。その場合、哨戒機が撃墜されないことが条件になる。
「15時30分の方向に敵艦隊出現、二連三段空母13、三段空母27、大型戦闘艦15、中型戦闘艦10、駆逐艦20、距離6万宇宙キロ。」
「同じく13時の方向で敵艦隊発見。二連三段空母2、三段空母38、大型戦闘艦20、中型戦闘艦15、駆逐艦30、距離6万宇宙キロ。」
「8時30分の方向でへ敵艦隊発見。二連三段空母10、三段空母30、大型戦闘艦15、中型戦闘艦20、駆逐艦15、距離6万宇宙キロ。」
「11時の方向で敵艦隊発見。二連三段空母10、三段空母30、戦艦45のうち、大型戦闘艦23、中型戦闘艦21、駆逐艦30。戦艦には、総旗艦と思われるゼルグート級が一隻確認されています。距離6万宇宙キロ。」
「亜空間マンタ2号、対哨戒機、対亜空間ソノブイ、亜空間ソナー発見及び攻撃プログラム追加入力OK。」
「亜空間マンタ3号、対哨戒機、対亜空間ソノブイ、亜空間ソナー発見及び攻撃プログラム追加入力OK。」
「13時の敵のいる亜空間に2号、同じく8時30分の敵に3号をワープさせます。」
「亜空間マンタ2号及び3号ワープ準備完了。」
「ワープ!」
第2機動艦隊苦戦を聞いたガイデルはただちに包囲網でヤマトを叩こうとするが、ヤマトは敵航空戦力を抑えるべく「最大の防御のための攻撃」を準備していた。
リバアカァン、コアトロンセ、セクソキグナ、サジタモアブルグという星の名は元ネタというか語源があります。21世紀の地球から呼ばれているこれらの恒星が何座にあるか調べていて名称を思いつきました(9/6,2amあとがき加筆)
ヤマトでは艦隊名に固有名詞を使用しないので艦隊名を番号にあらためました(8/29)