宇宙戦艦YAM@TOⅢ   作:Brahma

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バース星から脱出しようとするヤマトを地上から出現したボラー艦隊と衛星軌道上のボラー艦隊が攻撃する。


第13話 独裁者ベムラーゼの最後

総督府の演台から眼下には、ミサイル装甲車や戦車が整然と行進する脇で、警備兵と春香たちヤマト乗組員の銃撃戦がおこなわれている。

べムラーゼは閲兵式で手を上げているが、満悦しきれずにいぶかしげにその光景にちらりちらりと視線を向ける。

 

「せっかくの閲兵式を…申し訳ありません。」ボローズが頭をたれる。

「ボローズ、ガルマン帝国に艦隊を撃滅されたことといい、今回のことといい君の失態は万死に値する。」

ぎろりとべムラーゼはボローズをにらむ。

「責任は、わかっているだろうな。」

「は、はい。」

「君の手でヤマトを撃沈するのだ。この星から脱出させてはならぬ。わかっているな。」

「は、はつ。」

べムラーゼは壇上から護衛の部下とともに立ち去っていった。

 

「ええい、あの連中を逃がすな。ミサイル、戦車砲発射!」

ボローズは、戦車とミサイル装甲車に発射を命じる。

「残りの全艦隊を出撃させろ。ヤマトを撃沈するのだ。」

バース星の地表、森林あらゆるところに隠されていたゲートが開き、

地球で戦艦Aタイプと呼ぶ艦首がとがったタイプとBタイプと呼ぶ艦首が平坦でぷっくりとした船体の戦艦が数十隻も出現する。

そのわきをべムラーゼを乗せた円盤がゼスパーゼに向かって飛んでいった。

 

さて、ボラーの戦車、装甲車、警備兵の弾幕のなかをコスモハウンドが無事ヤマトに着艦する。

「千早ちゃん、全機無事着艦。発進準備お願い。」

「春香、いつでも発進できるわ。メインエンジン接続点火、ヤマト発進!」

「敵艦隊接近!10時の方向、距離1万5千!」

「反転右30度。」

「主砲発射準備!」

「にひひつ。発射!つぎ右10度、仰角修正5度、発射!」

ショックカノンが地上からあらわれるボラーの戦艦を次々貫ぬく。

ズガーン、ドッガーンと爆破音が響き。火球に変わっていく。

 

「こしゃくなヤマトを沈めるのだ。全艦主砲発射。それからあんな醜い星は二度と見たくない。惑星破壊ミサイル艦、超大型ミサイル発射準備。」

ベムラーゼが命じ、ボラーチウムを含んだ黄色い光線砲がヤマトに向けられる。

そのとき赤いずんぐりした戦艦がそのまえにたちふさがった。

ゼスパーゼの複数あるパネルにラム艦長の姿が映し出される。

「ベムラーゼ首相、ヤマトはわれわれを...なのになぜ...。」

「ラム、お前はしょせん属国の一艦長に過ぎん。属国の分際でこのわしに逆らうならヤマトと運命をともにするがいい。」

ヤマトをかばおうとする赤いラジェンドラ号の船体を数十条もの光線砲がつらぬく。

「ラム艦長!」

「アマミ艦長...独立国家バースは30年前からボラー連邦とサルデス星域会戦、サラミス星域会戦、テルモピレー星域会戦、サク=ダハラ星域会戦、トイシ要塞会戦と戦い勝利をおさめてきた。しかし、損害も大きく、友好国の寝返りや、物量に押されて基地の用地を提供することを条件にボローズ総督と10年前に講和したのだ。基地のはずが実際に設置されたのは流刑地だったが。しかし、宗主国がここまでひどい国とは思わなかった。本星がとおいから支配の強制力が弱いだけだったのだ。わたしは、誇りあるバースの軍人として地球の皆さんの恩義を忘れるわけにはいかない。さらばだ、アマミ艦長!最後にあなたのような人物と出会えたことを光栄に思う。」

「ラムかんちょううううう!!」

ラジェンドラ号は味方であるはずのボラー連邦の艦隊によって沈められたのだ。

「波動防壁展開」

「千早ちゃん、反転して。」

「春香?何をするの?」

「囚人さんたちを助けるんだよ。約束を破るわけには行かない。」

「春香ちゃん!巨大ミサイルが接近。」雪歩が叫ぶ。

「春香、間に合わないわ。」

生来優しい心の持ち主である春香は心に痛みを覚えざるをえない。

(ごめんなさい。)

しかし、自分たちには地球を救う使命がある。ここで沈むわけにはいかないのだ。

もう間に合わないから助けようがないというあきらめが春香の決断をうながした。

「....。左70度、急速反転!」

「了解。」

千早が巧みに操縦桿かを動かし、巨大ミサイルを避ける。

巨大ミサイルはバース星に次々と命中していく。

やがてバース星全体にひびがはいりマグマが噴出していく。

やがて数分後に溶岩が噴出して、赤く輝いてから、大爆発がおこり、その衝撃波がヤマトを襲う。

ボローズは総督府で

「うわああああ...。」と絶叫するがそれも数十秒のことだった。

「ヤマトよ。よくミサイルを防いだな。ほめてやろう。だが、今度こそおまえたちはおしまいだ。わしに逆らったものを生かしておくわけにはいかん。ブラックホール砲、発射!」

機動要塞ゼスパーゼの球体から砲門がせりだし、光球がいくつか撃ち出される。

光球はヤマトの後方へ行くと自重でつぶれてブラックホールになった。

「くつ...引っ張られる...。」

「マイクロ・ブラックホールを発生させているんだわ。」律子が叫ぶ。

「恐ろしい武器だ。亜美、真美、エンジン全開だ!」

「がってん。」

亜美と真美がレバーを降ろしエンジン全開させる。

「波動防壁消失まであと5分。」

「律子さん、このままだと...。波動砲を...」

「春香、波動カートリッジ弾をつかいましょう。」

「そうですね。波動砲を使ってしまうと、それからのエネルギーが..。」

「それもあるけど、あの要塞の装甲を光学的に分析してみたところ、どうやら波動砲が効かない可能性が高い。もし、波動砲が効かなくて、あのブラックホール砲を撃たれて、エネルギーが不足してメインエンジンが全開できなかったら...。」

「ブラックホールにのみこまれてしまうわね。」千早がつぶやく。

「波動カートリッジ弾を使いましょう。目標は...。」

「ブラックホール砲口。」

「波動カートリッジ魚雷、一番から六番まで装填準備。一番主砲、二番主砲も発射用意!」

「波動カートリッジ魚雷にブラックホール砲口のエネルギー反応データと座標データのプログラムを入力。」

「同じく一番主砲、二番主砲の波動カートリッジ弾に同じプログラムを入力。」

「波動防壁消失まであと2分!。」

「ふはははは。もう一度ブラックホール砲を撃ってやる。今度こそヤマトお前の最後だ。わしに逆らうやつの末路だ。」

「マイクロ・ブラックホールの反応が弱くなります。あつ、ブラックホール砲口にエネルギー反応!」

「いまだ、波動カートリッジ魚雷、一番から六番まで、発射!」

「にひひっ。発射ー」

「第一主砲10時30分、仰角+30度、第二主砲1時50分、仰角+27度、発射!」

波動カートリッジ魚雷がゼスパーゼの下部のブラックホール砲口、主砲は、船体より上のブラックホール砲口へ向かっていく。

「マイクロ・ブラックホール消失します。」

「今だ!、亜美、真美、メインエンジンに加えてサブエンジンも全開!」

「がってん。」

「てか、亜美たちこればっかりしか言っていない気が...。」

 

「ブラックホール砲口に1番、4番あと10秒、9,8,7....3,2,1命中!」

「やったあ。」

 

ゼスパーゼでは激しい爆音と振動が起こる。

「なにが起こったのだ?」

「ブラックーホール砲口に敵の魚雷が命中した模様。」

「こちら第7球体、誘爆がつづ....うわああああ...。」

「こちら第9....ぎゃあああああ。」

ゼスパーゼのブラックホール砲口を持つ球体部分の被害報告がベムラーゼの中央作戦室にもたらされる。

 

「波動カートリッジ魚雷、2番、3番、5番、6番も命中!」

「第一主砲、第二主砲も命中!」

「春香、スーパーチャージャーのおかげで連射はできないけど小ワープのあとに波動砲が撃てるわ。」

「ワープ準備。」

「目標、艦隊の少ない要塞の天頂方向、12時、仰角80度、6宇宙キロの空域。」

「10,9,8,....3,2,1,ワープ!」

ボラー艦隊の黄色い光条がヤマトに命中せずに何もない宇宙空間を通過する。

「ワープ終了。波動砲発射準備。」

 

ゼスパーゼでは、誘爆が繰り返し起こっている。ズギャーン、ズゴーンという爆音が繰り返し響いている。

べムラーゼのいる司令室に士官が飛び込んできた。

「首相閣下、各球体に誘爆が繰り返されています。脱出のご用意を。」

ベムラーゼは愕然とする。例のガルマンのデスラー砲対策までしている無敵の装甲をもつゼスパーゼ。この無敵の要塞がいま破壊されつつある...そんなことがありえるのか...

そのとき春香の不敵な笑顔がゼスパーゼの4つか5あつあるパネルに映る。

「べムラーゼ首相、とどめですよ。とどめ。さて何宗でお葬式をだしますか?」

【挿絵表示】

 

「ぐぬぬ…。」

 

「エネルギー充填120%、電影クロスゲージ明度20!」

「対ショック、対閃光防御!」

「目標、敵機動要塞誘爆部!発射10秒前,9,8,..。」

秒読みが終わるとヤマトの艦首から光とエネルギーと熱の奔流が輝きながらほとばしっていく。光とエネルギーの奔流は、爆発を繰り返す機動要塞の誘爆部を正確に捉えて貫き、大爆発を起こす。すると、煙の中から損傷しながらふらふらと動く円盤が見える。

「伊織ちゃん。」雪歩が伊織に声をかける。

「「伊織!」」律子と春香が円盤の主を見破って伊織に声をかけた。

伊織は黙って軽くうなずき、

「にひひっ。逃がさないわ!土門みててよ。伊織ちゃんの実力を。」

「主砲!発射~~」

ショックカノンの光条は円盤を貫いた。

乗っていたベムラーゼが「ぎゃああ...。」と叫ぶが最後は声にならずに気化し、円盤は大爆発を起こし火球にかわった。

 

「念のため聞いとくの忘れてたけど結局何宗でお葬式を出してあげればよかったのかな。」

春香が機動要塞の大きな爆発煙とベムラーゼの円盤の小さな爆発煙を見ながらぼそっとつぶやく。

「シャルバート教にしておけば?」

「千早ちゃん、それってすごい皮肉。」

第一艦橋は笑いに包まれて、ささやかな休息のときが訪れた。

ヤマトはガルマン帝国とボラー連邦というふたつの敵を抱えながら可住惑星探査をしなければならなくなった。ガルマン帝国が繰り出す恐るべき攻撃をヤマトクルーはまだ知らない。

 




全てを呑みつくすブラックホール砲の攻撃を退け、起動要塞ゼスパーゼを返り討ちにしたヤマト。しかし、ガルマン帝国東部方面軍ではガイデル提督みずからが新鋭艦隊を率い、切り札の部下フラーケン大佐に次元潜航艇艦隊の準備をさせていた。

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