正義の味方にやさしい世界   作:アンリマユ

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みなさんこんにちは、お盆ぶりですかね。
あまり休みがあるわけではありませんが、来週ちょっと連続して休みができそうなのでちょこちょこ更新していきたいと思っています。
これからもよろしくお願いします!


学園祭 超の企み

 

「只今より、第78回 麻帆良祭を開催いたします!」

 

アナウンスと共に麻帆良祭が始まった.。

 

「わーすごいや!僕こんな大きなお祭りとは思ってませんでした」

 

祭りの凄さにネギは驚きの声を上げる。だが、その気持ちもわからなくはない。

麻帆良の小、中、高、大、全ての学生達が合同で行う学園祭は、一般入場者の数も合わせれば相当なものである。

 

「ネギ先生、衛宮先生これ麻帆良祭のガイドマップですー」

 

「ありがとう、のどか」

 

祭りの凄さに圧倒されていると、一緒に歩いていた図書館探検部ののどかがガイドマップをくれた。

早速ガイドマップに目を通すと出し物の全体像がわかる。

 

「これは凄いな、もはや学園祭というレベルではない」

 

大きなきな遊園地と言っても問題は無いくらいだ。

マップにはまるで東京○ィズニーランドのようなアトラクションや、パレードの時間まで書かれている。

本当に麻帆良の生徒達はこういったイベントごとに対してのやる気がもの凄い。

 

「ネギ先生ー、士郎先生ー。そろそろクラス行くよー」

 

ネギと2人してマップに夢中になってしまいハルナに呼ばれてしまった。

しかし、クラスは見たいが魔法先生は中々に忙しい。

 

「ネギ君、私は件の世界樹伝説のパトロールがあるから行ってくるよ」

 

「えっ、クラスは見ていかないんですか?」

 

「見たいのはやまやまだが、相方を待たせているのでね。空き時間にでも顔を出すさ」

 

パトロールは念のため、最低2人一組で行動する事になっている。

待ち合わせ時間までもう少し時間はあるが、彼女の事だから既に準備をしているだろう。

 

「そうですか。じゃあ頑張ってください。僕も後でパトロールしますので」

 

「ああ、楽しんでくるといい」

 

ネギと別れた後、私は待ち合わせ場所である教会の塔の頂上(鐘の設置されている場所)へと移動する。

するとそこには予想通り、入念に銃の手入れをする龍宮真名の姿があった。

 

「待ったかね?」

 

「いや、それほどでもないよ」

 

真名は一度銃から視線を私に写し、口元に笑みを作って答える。

そして腕時計で時間を確認すると、直ぐに狙撃手としての顔に戻った。

 

「さて、そろそろ時間だ。私は北と東側を担当するから、士郎さんは南と西側を頼むよ」

 

「了解した」

 

そう言って私と真名は互いに自身の得物である弓とライフルを構えた。

 

 

 

「せ、先輩! 俺、前から先輩のこ、つっ?」

 

告白の最中、突如その場に力なく倒れこむ男子高校生。

 

「佐々木君、私前からあなたの事が好、ぴゃっ!?」

 

次いで告白の最中に声を上げて、まるで体当たりでも受けたかのように倒れこむ女子大生。

 

「あなたの事、ふぁ?」

 

倒れる女生徒。

 

「ずっと前から、ぎゃっ!?」

 

吹き飛ぶ男子生徒。

現在、告白しようとしていた生徒が原因不明の衝撃を受けたり睡魔に襲われたりと、ことごとく医務室送りになっている。

その犯人は精神的な疲労からか溜息をついた。

 

「はぁ、一日目なのにこの量とは……先が思いやられるな、っと」

 

言いながらも弓を構え告白しようとしている生徒に矢を掠らせる。

 

「ははっ、仕事だから仕方ないよ士郎さん。それにこの仕事、内容の割には儲かるしね」

 

真名も銃を撃つ手を休めはしない。

ちなみに真名が撃っているのは麻酔弾なので、生徒に深刻な害は無い。学祭期間中は体が麻痺して動けないらしいが、互いが想い合っている関係の男女ならば医務室でいい雰囲気になると真名は言っている。それに関しては同意見なので特に異論はない。

ちなみに、シロウの矢にも即効性の麻酔が塗られているので、掠った相手はすぐに眠る事になる。矢は投影品なので破棄すれば証拠も残らない。

 

「君はそうかもしれんが、魔法先生には特別手当なんて無いからなっ。ふぅ、今のでとりあえず最後か」

 

「そうだね、ここら辺のターゲットはあらかた片付いたし休憩するかい? ん、あれは」

 

真名は光と共にいきなりネギ達が現れるところを目撃する。

挨拶をしに行くというのでシロウも同行することにした。

シロウと真名は塔から飛び建物の屋根を伝いネギ達の下へ向かう。

 

「やあ、ネギ先生」

 

「あ! 龍宮さん。シロウさんも」

 

「クラスの方は大丈夫だったか?」

 

「はい大成功で皆でパーティ……じゃない、きっとすごいお客さんが来ると思います」

 

は? 始まったばかりでもうパーティーをするのか?

いくらうちのクラスが騒ぐのが好きでも、客をほったらかして遊ぶような子たちではない……と思うのだが。

その旨を確認すると、ネギは慌てながら何でもないと答える。

何か隠してるような気がするが……なんでもないというのなら、たとえ何かあっても私には言えない、もしくは私の力を借りるまでもないことなのだろう。ならば、深くは追及しまい。

 

「そうだ! シロウさん僕がパトロール代わるので少し学園祭を見て回ったらどうですか?」

 

「ふむ」

 

あからさまにネギは話を逸らしたが、私自身、学園祭を見て回りたいと言う気持ちもある。ならば、ここはそれに甘えさせてもらおう。ネギの事は優秀なパートナーに任せておけば心配もいらないだろうしな。

 

「では、お言葉に甘えるとするよ。真名、ネギ君を頼む」

 

「了解」

 

ネギたちと別れ3-Aへの道すがらいくつかの店を回り、差し入れを購入してから3-Aのお化け屋敷へと向かう。

 

「あ、士郎先生だ」

 

「ホントだ。おーい!」

 

「ああ、裕奈に桜子か。どうやら盛況の様だな」

 

声をかけてきたのは入り口の前で列の整列をしていた、明石裕奈と椎名桜子だった。

ヴァンパイアと化け猫のコスプレをしている2人は少々露出が多いような気もするが、とても可愛らしい。

なるほど、この格好ならばお化け屋敷のクオリティに加え男性客の増加も間違いないだろう。

 

「中見てく? なんならお客さんより先に案内するけど」

 

「いや、客を待たせて私が入るわけにもいくまい」

 

「ええー、大丈夫だって」

 

「私は一応パトロールの仕事もしているのでね、今回は様子を見に来ただけさ。それと、これは私からの差し入れだ」

 

そう言ってシロウが差し出したバッグには、チョコのお菓子と飲み物が入っていた。

甘いものに目がない女子中学生たちは、キャーキャー叫びながら差し入れを喜んだ。

喜んでくれるのは嬉しいが、客をほったらかしにしてはいけないぞ?

 

「わーい。ありがと士郎先生ー」

 

「みんなにも言っとくねー」

 

「ああ、頑張れよ」

 

私は手を振りながら3-Aを後にする。少し休もうかと特に出し物のない教室の方側へ歩いていると、「エミヤ先生」と誰かに声をかけられた。振り向くとそこにいたのは3-Aの生徒、超鈴音だった。

 

「超か。珍しいな、君が私に話しかけてくるとは」

 

「フフ、学園祭の雰囲気に乗じて仲良くなろうかと思てネ。少しいいかナ?」

 

「ああ、構わんよ」

 

3-Aに顔を出した以上特に行く当てもないし、生徒が話しかけてくれているのだ、断る理由わない。

シロウは超につれられ、麻帆良大学の出し物である飛行船へと向かった。

中にはテーブルやイス、軽い飲食店なども設置されていて、見晴らしのいいレストランのような感じになっている。

 

「さて、わざわざこんな所までやってきて何の話かな?」

 

「……」

 

超はしばらくの間無言でコーヒーを飲んでいたが、カップを置くと口を開いた。

 

「エミヤ先生……貴方は、魔法が公になった方がイイと思うカ? それとも今のまま隠匿された方がイイと思うカ?」

 

「いきなりだな。何故そんな事を?」

 

超から魔法と言う言葉が出た事自体は驚かない。茶々丸を作ったのは聡美と超だから知っていて当然だ。

だが、いきなりそんな問いを投げかけてくることに驚いた。

 

「答えてほしい」

 

超の目は真剣だ。どうやら何かの冗談というわけではないらしい。

 

「ふむ。どちらがいいかといえば、隠匿すべきだろう」

 

「何故? 魔法が公に使えれば、救えない人が救えるかもしれないのに?」

 

魔法(チカラ)というのは、なにもいい方向にのみ使われるものではない。君の言う通り、魔法が公に使えれば、現状では救えない者を救う事ができるようになるだろう。だが、その逆もありえる。」

 

「逆?」

 

「そうだ。人智を超えた魔法(チカラ)というのは恐怖を生み争いを生む。はじめは小さな恐怖でも、それはいずれ広まり、格差を生み、争いに発展する。それに対抗する為、更なるチカラが求められる。すると、それに反発するために新たな争いが生まれる」

 

それは、私自身が体験してきた出来事。何度争いを止めようと、また新たな争いは起きてしまう。

チカラがあれば、その分被害も大きくなる。それを収める為に魔術を使えば、それは恐怖の対象となり罰せられる。

 

「だから私は、わざわざ公にする必要はないと考えている」

 

「そう…カ」

 

「だが、大切な人を救うのに必要というのであれば、私は一切の躊躇なく魔術を使うがね」

 

「ふふっ、ウム。私は先生のそういうとこ好きネ」

 

「それは光栄だな」

 

私の話を聞いた超は一度何か考え込むような仕草をした後、何かを決意し顔を上げる。

 

「では、質問を変えよう。もし、とても悲惨な事件がおきてしまい、それを未然に防ぐ為に過去に戻れるとしたら。エミヤ先生、貴方なら過去を変えようとするカナ?」

 

「しないな」

 

私は迷い無く答えた。考える間など必要ない。

この身はすでに答えを得た。自分の行動に許せないことも、悩むこともある。

だが、これだけは言える。今のオレは後悔だけはしていない。オレは、間違えてなどいなかったのだと。

その答えを聞いた超は残念そうに、けれど納得したように頷いた。

 

「即答……か。まぁ、薄々そんな気はしていたネ」

 

話を終えた時、丁度空を遊覧していた飛行船が地上に不時着した。私と超は席を立ち、飛行船を降りる。

飛行船から降りる人ごみの中、不意に足を止めた超に合わせて足を止める。

 

「エミヤ先生。過去を変えないと言った理由を聞いてもイイかナ?」

 

「超鈴音よ、何故君があのような質問をしたのかは聞かん。だがな、 死者は蘇らない。起きた事は戻せない。そんなおかしな望みは持ってはいけない」

 

こちらを見ようとしない超の背に言葉をかける。

それは、かつてシロウが士郎だった頃に言峰に言った言葉。

まだ青年だった頃の衛宮士郎が持っていた、言峰奇礼にも、英霊エミヤにも負けなかった強さ。

 

「たとえ君の言う事件がどれほど酷いものだったとしても、その悲しみを乗り越えた人が、乗り越えようとした人がたくさんいるはずだ。それなのに、その想いを無かった事にするなんて間違っている」

 

「フフ、そうだネ。そんな望みは間違っているのかもしれない」

 

シロウの言葉を噛みしめるように空を見上げた超。しかし、そんな超の雰囲気はガラリと変わり、こちらへ振り向く。それは、何か覚悟を決めたような人間の姿だった。

 

「それでも、私には過去を改竄してでも、想いを消してでも救いたい人達がいるんだヨ」

 

「超……まさか、君は!」

 

いつも飄々としている彼女が見せた本当の顔。

何を犠牲にしてもやり遂げると決めた、悲しい覚悟の灯った瞳。

今までの言動から考えられる可能性。今目の前にいる彼女から導き出される答え。

まさか、彼女は……。

 

「……っ!?」

 

瞬間、私は自分に向けられた強烈な殺気に振り返った。

しかし、周囲には一般生徒や来場客しか見当たらない。殺気も先ほどの一瞬以降消えている。

 

「獣のような今の殺気、アレは彼の……」

 

その殺気が誰のものだかすぐにわかった。何せ、聖杯戦争で一番剣を交えた回数が多い相手だったのだ。

そして、最後まで決着の着くことがなかった相手。忘れられるはずがない。

 

「はっ、超!」

 

思い出して振り返ると超はすでにいなくなっていて、地面には意思を重石変わりに置かれた一枚のメモ用紙が残されていた。

 

『貴方は私の敵ネ』

 

 

 

「……ああ、ではよろしく頼む」

 

携帯電話で学園長への報告を済ませ、真名との合流地点へ向かう。超のことは気になるが、そろそろパトロールに戻らなければならい。

 

「む?」

 

真名との合流場所である告白禁止地帯に入ると、魔法先生 生徒達に支給された告白しようとしている人を感知する機械が反応を示した。

数値を見ると告白しようとしている人の人数が5、10、15と、見る見るうちに増えて20人を超した。

 

「何だ、この人数は!? くっ、いた仕方あるまい。来たれ(アデアット)

 

出したのはアーティファクト『全てを救う正義の味方(エミヤ)』。イメージするのは相手の意識を刈り取る能力。

日本刀は少々派手かもしれんが、矢でいちいち狙っていては間に合わない。学園祭の最中ならば何かのアトラクションとでもいいわけできるだろう。

よく見れば告白反応のある人ごみの反対方向からは真名も銃を構えて走ってきている。

 

風を切る斬撃音と銃声。

 

一瞬のうちに大量の死体の山(気絶しているだけ)が出来上がった。

 

「映画の撮影でーす。お気になさらないでくださーい」

 

普段は見せないような営業スマイルで周りの人たちに説明する真名。さすがに、仕事だと笑顔でも(なんでも)するのだな。

すると再び告白感知器に反応が。

 

「旦那! 姉御! まだ一人残ってるぜ!」

 

「「何っ!?」」

 

カモの声に振り替えると、高校生くらいの爽やかそうな青年がこちらへ歩いてきていた。

 

「あれ……龍宮君? どうしたんだい、こんな所で」

 

「せ、芹沢部長……」

 

どうやら告白しようとしている青年は真名の知り合いらしい。

 

「どど、どうしましょうシロウさん!? あの人は龍宮さんが好きな部長さんなんです!?」

 

「何?」

 

真名の事だから仕事に私情を挟むとは思えないが……

シロウはすぐに行動できるように『全てを救う正義の味方』を構える手に力を入れる。

 

「ちょうどよかった、今日はこの場所で、君に話したい事があったんだ」

 

「……!?」

 

「実は俺、君の事を……」

 

私は姿勢を低くし、いつでも斬れるように足に力を込めたが、真名の表情を見た瞬間全身の力を抜いて、アーティファクトをカードに戻した。

 

「ありがとう先輩。お気持ちだけ受け取っておきます」

 

そう言って、真名は青年に向かって引き金を引いた。

 

「私の戦場に、男は無用だ」

 

不敵に笑う真名の姿にガタガタと震えるネギの肩に乗るカモが持っているペンダント。

おそらくは真名のものだろう。そこに入れられている写真を見て、私は納得した。

 

(なるほど、そういうことか)

 

その後、小太郎と合流し。しばらく4人でパトロールをした後ネギ達と別れ、再び真名と2人きりになる。

 

「士郎さん。もし、さっき私が告白を受けようとしたらどうするつもりだったんだい?」

 

「無論。その時は、あの青年に医務室送りになってもらったさ」

「それが、両想いだとしてもかい? ネギ先生に聞いただろう。彼が私の想い人だということを」

 

真名は何か試すような眼をしている。

そんな彼女に、多少の皮肉を込めて言った。

 

「両思いだというのなら、尚更世界樹の魔力を使わせるわけにはいかないな。それに、彼と君は両思いではないだろう」

 

士郎の言葉に真名は眼を見開いた。

どうしてわかったのか? そう言いたげな真名の瞳に満足しつつ、シロウはやさしく微笑みかける。

 

「なに、たまたまカモが持っていたペンダントの写真を見ただけさ。似てはいるが、写真の人物と、先ほどの青年は別人だろう」

 

「……ふふっ、さすが士郎さんだ」

 

真名は満足そうに、そして普段の彼女を知る者からは驚かれるであろう年相応の笑顔を見せ立ち上がった。

 

「さて、そろそろ学園の仕事は終わりだ。今から龍宮神社に行くが士郎さんもどうだい? 飲み物くらいならご馳走するよ」

 

「では、ご馳走になろうか」

 

 

 

 

 

 

「まほら武道会予選会会場?」

 

龍宮神社の入り口に立てかけられた看板を見て思わず首をかしげる。

ネギと小太郎が出場すると話していたものだと思うが、確かまほら武道会の会場はここではないはずだ。

 

「お待たせ、士郎さん」

 

考え込んでいると、巫女服に着替えた真名が飲み物を持ってやってきた。

何故か、楓や古、鳴滝姉妹を連れて。

 

「真名、何故神社が武道会の会場になっているんだ?」

 

「ああ。それは、超が学園祭内の大小様々な武道会の権利を全て買い取ったからだよ。私は超に神社を会場として使えるよう許可を出した」

 

「超が?」

 

『貴方は私の敵ネ』 超のメッセージが頭をよぎる。

あのメッセージの後に、狙ったかのように起こった大規模の武道会。

境内に設置された舞台の方を見ると和美が司会をしており、主催者の挨拶と言う事で超も出てきた。

 

「私は表の世界、裏の世界を問わずこの学園の最強を見たい。飛び道具及び刃物の使用禁止。そして呪文の詠唱禁止! この2点を守れば如何なる技もOKネ!!」

 

(呪文の詠唱だと?)

 

超のやつ、この大会を利用して魔法を公にするつもりか? だとすればそれはあまりにも幼稚。

天才とまで呼ばれ、わざわざ私にまで話を持ちかけてきた彼女にしては安易すぎる。これは、何かあると考えた方がいい。

目的はおそらく魔法を公にすることではなく、周囲の注目を集めるといったところか。その間に何かを仕込むための準備時間と考えた方が自然。

 

「念の為、私も参加するか」

 

超の企みも気になるし、上手くすれば()をおびき出すこともできるかもしれん。

先ほど感じた殺気の主が、彼であったならばだがな。

 

「フフフ、中々面白い事になってるな。賞金一千万なら私も参加してみるか。なぁ、楓?」

 

「そうでござるなぁ……ばれない程度でなら」

 

どうやら、真名と楓もでるらしい。この流れなら必ず古もでるだろう。

 

「えーー!? 皆さんも出るんですかーーーー!!」

 

いつの間にいたのか、そばにいたネギが驚きの声を上げる。

ああ、そういえばネギも参加する予定なのだったな。

 

「私もでる事を忘れているんじゃないか? ぼーや」

 

「マ、師匠(マスター)ーーーーー!!!」

 

さらに現れたエヴァから告げられる残酷な事実。どうせエヴァが出る理由はネギへのいやがらせだろうが、これは思いのほか大変な戦いになるかもしれない。

 

「ネギ君達がでるなら僕も出ようかな?」

 

「タカミチも!?」

 

ほう、タカミチも出るのか。派手に魔法は使えないが、この間の続きをするのもいいかもしれん。

その後、楓、古、真名、エヴァ、タカミチだけでなく、挙句の果てには後からやってきたアスナや刹那まで武道会にでるというのでネギは完全に沈んでしまっていたのだが……。

 

「ああ、一つ言い忘れた事があるネ。実質上最後の大会となった25年前の優勝者は、学園にフラリと現れた異国の子供。ナギ・スプリングフィールドと名乗る、当時10歳の少年だった。この名前に聞き覚えのある者は……頑張るとイイネ♪」

 

超のその言葉を聞いたネギの眼には焔が灯っていた。

 

 

 

まほら武道会予選ルール

予選会は20名1組のバトルロイヤル形式

A~Hグループまでの各2名が翌日の本線に出場する事ができる

 

私が引いたくじはA。幸いな事に知り合いは一人もいなかった。

 

「まあ、一般人相手ならこれで十分か」

 

シロウはあらかじめ投影しておいた虎竹刀を構える。その竹刀についた虎のストラップとシロウの風貌を見た瞬間、舞台上がざわめいた。

 

「おい、あれジャスティスじゃねえか?」

 

「げ、マジかよ!?」

 

そんな喧噪もなんのその、試合開始の合図が出される。

 

「とりあえず……まずはジャスティスを潰せーーーー!」

 

「「うぉぉおおおお!!」」

 

シロウには強さを知り勝てないと悟ったのか、本来ならば敵同士の者たちが手を組み一斉にシロウに飛び掛った。

 

「ふむ、その意気込みは買うが」

 

飛び掛かった者達は一瞬にして虎竹刀の餌食となり、屍の山となった。

 

「1人1人の鍛え方が足りん。強者相手に数で相対する考えは悪くないが、もう少し策を加えるべきだったな」

 

「ぐぇ、こんな時も説教か…よ」

 

「さすがジャスティス……勝てねぇ」

 

今の一瞬で大人数が脱落し、残った数名も虎竹刀の餌食になりたくはなかったのか棄権してしまい、残ったのは私と黒いローブを纏った少女? だけだった。

 

「おおーっと! Aブロック早くも本選出場者が決まったーーーー!! 勝ち残ったのは黒いローブに身を包んだ少女、佐倉愛衣選手と我らがヒーロー!麻帆良の『ジャスティス』こと、エミヤシロウ選手だーーーー!!」

 

ワァァァアアアアアア!!!!

和美の実況でヒートアップする観客達。盛り上げるのは別にか構わないのだが、人の事を変な風に紹介するのは止めてほしい。

……ん、まてよ? 佐倉愛衣? 確か学園長から世界樹の説明を受けた時、魔法生徒の中にそんな名前の子がいたような。

 

「ん?」

 

クイッ クイッ と服の端を引っ張られたのでそちらを向くと、私にだけ顔が見えるようローブを捲る佐倉愛衣が立っていた。

 

「衛宮先生、私です。佐倉愛衣です」

 

「何故君が参加しているんだ?」

 

「えっと、私はでたくなかったんですが、お姉さまが……」

 

話を聞くと、高音がネギお仕置きする為(ネギが何か失態をしたらしい)に武道会に飛び入り参加し、愛衣はそれに巻き込まれたらしい。なんだろうか、この子はには親近感を覚える。なにか私と同じ苦労をする気がする。

 

「君も大変だな」

 

「いえ、なれてますし、お姉さまのお力になりたいので」

 

「ふむ。まあ、怪我と魔法の事は気をつけてな」

 

「はい。衛宮先生も頑張ってください」

 

ワァァァァァアアアアアアアア!!!!!

観客席から大歓声が起こる。どうやら話している間に、他のブロックも本選出場者が決定したようだ。

結果をまとめる為に一度下がった和美だが、数分後再び会場へ出てきた。

 

「大会委員会の厳選な抽選の結果決定した、トーナメント表を発表します。こちらです!!」

 

和美が手にした本戦のトーナメント表が映像として和美の背後に現れる。

 

一回戦

 

田中 VS 高音・D・グッドマン

 

ネギ・スプリングフィールド VS タカミチ・T・高畑

 

神楽坂明日菜 VS 衛宮士郎(エミヤシロウ)

 

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル VS 桜咲刹那

 

佐倉愛衣 VS 村上小太郎

 

大豪院ポチ VS クウネル・サンダース

 

長瀬楓 VS 中村達也

 

龍宮真名 VS 古菲

 

 

これほどの武道会ならば彼が出場するかと思ったが、それらしき人物はいない。しいて言えばクウネル・サンダースという人物が怪しいが、彼なら自分の姿を隠すような面倒な真似はしないだろう。

 

「超の動向に注意はしておきたいが……それよりも今は一回戦の相手か」

 

神楽坂明日菜 VS エミヤシロウ

 

「まさか、アスナと戦う事になるとは思わなかったな」

 

 

 

 

 

 

麻帆良祭1日目が終了し中夜祭。クラスの皆で軽いパーティーが行われていた

 

 

「ネギ君今日はありがとね!」

 

「可愛かったよ、ネギ君」

 

「うちの部にも来てくれて、ありがとうございます」

 

「ネギ先生。今日は最高の時間をありがとうございました!」

 

ネギは生徒達の間で揉みくちゃである。どうやらパトロールや武道会に参加しながらも、ちゃんと生徒達の方にも顔を出していたようだ。10歳とはいえ流石は教師だ。

と、そんな事を思っているとアスナが何か言いたそうにこちらを見ていた。

 

「士郎……武道会参加してたんだ」

 

「ああ、少し思うところがあってな」

 

「そう」

 

アスナの顔は思いのほか真剣だ。アサシンの襲撃があって以来、アスナはシロウを避けていた。

だが、今は目を背けることなくしっかりと見つめてくる。

 

「答えは出たのか?」

 

「うん。だからね、明日の試合本気で戦ってほしいの」

 

その眼には迷いなどは一切ない。なるほど、彼女は確かに自分を動かすだけの答えを見つけたようだ。

 

「……そうだな。君の出した答えが本気で応えるにたるものだったその時は、本気で相対すると誓おう」

 

「うん」

 

アスナはこの数日間悩み、葛藤し、それでもなお考え続け答えを見つけた。

後は彼女がその答えに劣らない想いを持っているかどうか。

明日の試合、その答えを試させてもらうぞ───神楽坂明日菜。

 

こうして学園祭1日目の夜は過ぎてゆく。

 

 

 

 

 




はい。というわけで超の企みでした(笑)
皆さん期待してたかもしれないあの人はまだ出てきませんでしたね。その分まほら武道大会の方を楽しんでください! というか、楽しんでいただけるよう頑張ります!
次回はシロウVSアスナです。お楽しみに!

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