少女は運命と出会う
その日、少女は運命と出会う──────
「はっはっはっ……!」
近衛このかは今、必死に走っていた。
「いそがな、追いつかれてまう」
このかの後ろからは黒いスーツを着た男たちが数人追いかけてきている。
「見つけたぞっ、こっちだ!」
「しもた!」
見つかってしまった。動きずらい着物を着た状態ではすぐに追いつかれてしまうだろう。
必死になって逃げるも虚しく、近づいてきた男たちがこのかを捕まえようと腕を伸ばす。
このかはもうダメだと思い目を閉じた。
「……?」
だが、男たちの腕はいつまで経っても来なかった。
おそるおそる目を開けると、そこには───
「やれやれ。たった一人の少女に大の大人が数人がかりとは情けない」
───赤いコートを着た白髪の青年が立っていた。
目を開けると、そこは広場のようなところだった。
「ここは、どこだ?」
イリヤの話が本当ならば、ここは平行世界ということになる。
幸いな事に周りに人は見当たらなかったので、シロウがいきなり現れたところは誰にも見られていないだろう。
「
まず、自身の状態を把握するべく体に魔力を通す。
身体年齢、18歳、身長体重それに伴い低下。
身体能力、筋力、耐久力。共に低下。
魔術回路、27本正常稼動。
魔力量、英霊時と同等。
固有結界、“
肉体、完全に受肉。
「18歳? 確か私の姿は20代後半だったはずだが? いや、そもそも受肉しているだと? ……まさか」
イリヤの言っていた事を思い出す。
第三魔法とは確か魂の物質化。イリヤは自分には魂しか蘇生できないと言っていた。そして、自分の姿をイメージしろと。
シロウはそれを霊体を形成するものだと思い込んでいた。わかりやすく言えば、魂という粘土を、エミヤシロウという形に変形させるのだと。
しかし、聖杯の力が作用し結果は受肉。聖杯の魔力という粘土でエミヤシロウという人形を精製。その中に、エミヤシロウという
そういえば、あの英雄王も聖杯の泥を浴びて受肉していた。
「身体能力低下や体格によるリーチの変動は痛いが……まあ、望みすぎるのは贅沢というものか」
若返った理由は、おそらく最後にぶれたシロウのイメージと、イリヤの知る衛宮士郎の姿が混ざってしまった結果だろう。
「この服装は……ああ、あの終わることのない4日間での私の私服か」
着ていた服は黒いシャツとズボンに変わっていたので、とりあえず赤いコートを投影し、シロウは広場を去った。
しばらく歩いていると、着物を着た女の子が走っているのが見えた。
「?」
その後ろからは、数人の男たちが少女の去っていった方へ走っていく。
「追われているのか?」
そう考えた瞬間、シロウは走り出していた。
転んでしまい逃げる事の出来ない少女へ男たちは手を伸ばす。
「……ギリギリ間に合うか」
シロウは男たちを追い抜き、少女と男達の間、男達の前へと立ちはだかった。
「答え」を得て、自分の理想は間違っていなかったと信じる事ができた。
そして、目の前に困っている人がいれば黙ってはいられない。
なぜならこの身は“エミヤシロウ”なのだから。
「やれやれ。たった一人の少女に大の大人が数人がかりとは情けない」
───こうして、異世界の正義の味方と1人のやさしい少女は出会った。
はい、早々の2話です。まあ、短いですし以前書いたものを修正しているだけなので当然と言えば当然ですね。
さて、今回まではいいところで区切る為に短めですか、次話から段々と文量を多くしていきたいと思います。
それでは、また次回お会いしましょう!!