もう忘れられているかもしれませんが、どうぞよろしく。
ネギの過去
ネギの過去
「よし」
満足げに寮の玄関に仁王立ちするエミヤシロウ。彼の視界には、隅々まで綺麗に掃除された寮が映っていた。
今はゴールデンウィーク中で人が少ない為、いつもはあまり掃除ができない場所を掃除する事ができた。実に満足だ。
「む、少し遅くなってしまったか」
時計を確認するとすでに時刻は夕方6時。エヴァには「夕方頃修行に来い」と言われている。
何でもネギには
それで時間を潰す為、寮の掃除をいつもより徹底していたのだが思ったより時間がかかってしまった。
「やあ、エミヤ。これからどこか行くのかい?」
「ん? タカミチじゃないか、久しぶりだな」
急いで寮を出ると、最近出張が多く会うことが無かったタカミチがいた。
どうやら麻帆良に帰ってきていたようだ。
「ああ、エヴァに魔法を習っていてな。これから別荘で修行だ」
「懐かしいな。エヴァに用事もあるし、僕も一緒に行っていいかな?」
「構わんよ」
タカミチはエヴァに詠春からの礼の品を届ける所らしい。
しかも「ついでに修行もしていこうか」などといっている。
「そういえば、君は魔法使いじゃなくて魔術使いだったね」
ふとタカミチは思い出したように言う。
タカミチは学園長からシロウの事情を聞いているので変に隠す必要が無い分、気軽に話ができるのでシロウとも仲がいい。
「ああ。魔術の才能が無いからこちらの魔法なら、と期待したが……どうやらこちらの魔法も才能が無いみたいでな、偏った魔法しかできん」
そう言うとタカミチは哀れむような顔をして、シロウの肩を組んで握手をしてきた。
「エミヤ……君には妙な親近感を覚えるよ」
「嫌な親近感だ」
自分自身、魔法の才能が無いタカミチはシロウの気持ちがよくわかった。
が、たとえわかったとしても、わかってほしくなかったなどと矛盾した考えが浮かぶシロウである。
男2人で森の中を進んでいく。すると、エヴァ家の前にはネギがいた。
「やあ、ネギ君」
「あ! タカミチ、シロウさん」
タカミチの声でこちらを振り向くネギ。その足元には魔方陣が浮き上がっている。
「何をしてるんだ?」
「えーとですね」
シロウが何をしているのか聞いた瞬間魔方陣は光だし、
「し、士郎! それに、た……高」
シロウとタカミチと目が合い涙目になるアスナ。
そして、無意識なのかその拳には魔力が収束され、
「いやーーーーーーー!!」
ネギを殴り去っていった。……裸のまま。
「はは……僕達はタイミングが悪かったかな?」
「そのようだ」
シロウとタカミチは苦笑いするしかない。
その後、おろおろするネギ君をタカミチが何とか落ち着かせ、シロウに詠春からの土産を渡し、ネギを連れて寮へと向かった。
ネギとタカミチを見送ってから家の中へ入ると、中には茶々丸、チャチャゼロ、刹那、聡美、がいた。
「ん? エヴァはいないのか?」
周りを見渡すがエヴァはいない。そういえば、このかの姿も見当たらない。
「マスターなら下でこのかさんと話をしています」
「そうか」
答えてくれた茶々丸に軽く手を上げ地下へと向かう。
その時、刹那に呼び止められた。
「士郎先生……」
「どうした」
「貴方は……いえ、私はもう帰りますのでお嬢様をお願いします」
何か言いかけた刹那だが、そう言って帰ってしまった。
「この間の一件からアスナ達の態度がおかしかったが、刹那は特におかしいな」
刹那の行動に試験後すぐに皆に事情を説明しなかったことを激しく後悔しながらも地下へと降りる。
地下ではこのかとエヴァが話し込んでいた。
「ああシロウ、来たか」
「あ、しろう」
エヴァとこのかは私に気づきこちらを向く。
「何を話していたんだ?」
「なに、正式に詠春からこのかが望むなら
「ほう」
確かにこのか程の魔力量があれば
それにしても、魔法使いに魔法剣士とは。タイプ分けの話ではあろうが、まるでRPGのクラスみたいだ。
「治癒魔法に長けているこのかは遠距離の魔法使いタイプだと思うが」
「ん~、ウチまだよくわからへん。あ、でも魔法剣士もええかなって思っとるんよ」
なんとこのかは魔法剣士に興味があると。
失礼な言い方かもしれないが、身体能力的にも性格的にも難しいのではないだろうか?
「シロウの戦い何度か見たけど、舞を舞ってるみたいでかっこよかったしウチもあんな風に戦えたらなぁって」
「む、そう思ってくれるのは嬉しいが、あの戦い方は私にしかできないからな」
「あーやっぱウチ運動神経よくないし無理なんかなぁ」
「いや、そういう意味ではなく。あれはエミヤシロウに合った戦い方だから、他人が模倣したところで合わないんだよ。このかにはこのかに合った戦い方があるはずだ」
「むー」
「まぁ、焦る必要もあるまい。修行していればそのうち自分の戦い方というものが見えてくるものだ」
「うん」
それで話は終わり、シロウとこのかは別荘で魔法の修行をはじめる。
矢の本数を増やしたり新たな魔法を使うことは出来なかったが、毎日の修行の成果か闇の魔法の持続時間と取り込める矢の本数が増えた。
キリのいいところで今日の修業を終えると、ネギを送って寮へ向かったはずのタカミチがやってきていた。
「修行に来たのか?」
「久しぶりにね。そっちは終わったところかい?」
「ああ」
会話をしながらタカミチは柔軟やストレッチなどの準備運動を始める。
そして、準備運動を終えると帰り支度をしていたシロウに声をかけた。
「エミヤ、僕と勝負してくれないか」
「何故だ」
タカミチの真剣な表情を見る限り、どうやら冗談ではないらしい。
「ネギ君のサポートもそろそろ必要なさそうだからね。明日から魔法使いとしての仕事も再開することになった」
タカミチの魔法使いとしての仕事と言うことは「
「その前に、鈍っている体のカンを取り戻したいんだ」
そういうタカミチは既に戦闘態勢。断ることができる様子ではない。
無論、断る気はない。
「いいだろう。私もここで身に着けた技術を実戦で試してみたかったところだ」
それに、彼のサウザンド・マスターの仲間がどれほどのものか。今後の戦闘に備えて見極めさせてもらう。
「む!?」
了承の言葉とシロウが構えるのを合図に戦いは始まった。
開始早々、タカミチが両手をポケットに入れた瞬間シロウは盛大に回避行動をとった。
「今のは拳か。珍しい技を使う」
「驚いた。見えたのかい? まさか初撃をかわされて、あまつさえ見破られるとは思わなかったな」
それこそタカミチが得意とする戦闘技術。その名も居合拳。
ポケットを鞘代わりにして、拳を目にも止まらぬ速さで打ち放つ。常人はその速さに何が起きたかさえ分からないだろう。
「眼の良さだけは自信があるのでね。次はこちらがいかせてもらう」
瞬間、タカミチの視界からシロウが消える。
瞬動術。この世界に来て日が浅いシロウが瞬動術を体得していたことにタカミチは驚きつつも、その後の反応は早かった。
振り返るまでもなく気配のする背後へ居合拳の乱打。確実に獲物を捕らえたであろう拳の弾幕は、鈍い金属音と共に失敗を告げる。
振り返るとそこには両手に夫婦剣を構えたシロウの姿が。そして───
「
シロウの背後に停滞していた7本の氷の矢がタカミチを襲う。
「!!」
直撃に備え体を固めたタカミチは後悔した。7本の矢は一見タカミチ自身を狙っているように見えるが、その実矢が狙っていたのはタカミチの足場。
7本の矢はタカミチの体すれすれを通り抜け砂地を抉る。体を固めてしまった上に体勢を崩したタカミチは完全に無防備。
更に、追い打ちをかけるように頭上に見えるのは束になって一つの大きな魔力の塊となっている10本もの闇の矢。
「はは、まいったな」
額に汗を浮かべつつ軽口をたたくタカミチ。シロウは勝利を確信した。
しかし───
「───左手に「魔力」、右手に「気」」
「なに?」
浜辺に響く轟音。空へと翔る魔力に似た なにか の閃光。
一瞬にして消えた閃光の発生源を見ると、そこには無傷で頭を掻くタカミチがいた。
「いやー危なかった。これは僕の負けかな。これ以上やるとお互い無傷では終われないだろうし」
「タカミチ。今のはなんだ」
「何って、魔力を放出して君の闇の矢を防いだのさ」
「とぼけるな。確かに魔力は感じたが、純粋な魔力だけではあるまい」
「あー……やっぱりわかるかい? つい使っちゃったけど、できれば秘密にしておきたいんだ。僕の数少ない切り札だから」
タカミチの表情を見るに、からかっているわけではなく本当にバツが悪そうだ。
確かタカミチは魔力と気がどうのと呟いていたはずだ。おそらくはそれによる特殊な技法なのだろう。
そしてあの威力。いくら気が合うとはいえ、ここにきて数か月の人間に来やすく教えることはできないのは頷ける。
「まぁ、無理に詮索はしないさ。私も切り札はできるだけ知られたくないからな」
「はは、助かるよ。今日はこれで帰るけど、今度時間ができたらその時は改めて手合せ願うよ」
「ああ。その時は君の切り札を敗れるモノを用意しておこう」
帰るタカミチを見送り掻いた汗をシャワーで流した後、修行を終えたこのかと合流し寮へ帰る。
その途中、ふと刹那の事を思い出しこのかに聞いてみることにした。
「そうだこのか。先程刹那の様子が少し変だったんだが、何か知らないか?」
「へ、せっちゃんが? ウチと話してる時は普通やったけど」
「そうか……」
ということは、やはりシロウに対して何か思うことがあるということになる。
「ウチがそれとなく聞いておこうか?」
「……そうだな。頼んでもいいだろうか」
おそらく刹那の様子がおかしいのはネギの弟子入り試験の一件が原因だ。
が、確信が無い上に、もしその件が原因ならばシロウが自ら聞いても答えてはくれないだろう。
翌日
夕飯の買い物を終え寮へ帰る途中、楽しそうに歩くあやかに会う。
「こんにちは、衛宮先生」
「ああ、こんにちは」
「あの、衛宮先生は今週末は空いていまして?」
「週末は特に予定は無いが?」
「でしたら、衛宮先生も南の島の海へ行きませんこと?」
海か。確かに最近は夏も近いせいか気温が上がってきていて、海に行きたくなる気持ちもわかる。
それに 衛宮先生も ということは、他にも誰か行くということになる。
「他にも呼んでいるようだが、私も同行していいのか?」
「ええ、構いませんわ。一緒に行くのはネギ先生と千鶴さん達ですし、この前付き合っていただいたお礼もかねて是非」
そう言われては断る理由が無い。ありがたく厚意に甘えさせてもらおう。
「ありがとう、では一緒に行かせてもらうよ」
それから数日、あっという間に週末はやってきた。
「「海だぁぁぁぁああああーーーーーー!!」」
南の島リゾート地、あやかの誘いで南の島に来たのだが……クラスの約半数の生徒達が来ていた。
あやかが千鶴達と言っていたから複数だとは思ったが、まさかこれほどの多人数とは思わなかった。
しかし、それ以上に自家用機でこれほどの人数を旅行へ連れていける雪広財閥の凄さを改めて実感した。
「それにしても、この暑い中皆元気だな」
みんなが海で遊ぶ中、シロウははパラソルの下で休んでいる。
すると、このかが飲み物をもって近づいてきたので、ありがたく受け取る。
「しろう泳がへんの?」
「ああ、私は遠慮するよ」
海に来たからはしゃいで泳ぐなんて歳でもないし、そもそも泳ぐと言うことは水着になると言うことだ。
肌を露出すれば、この体に刻まれた様々な傷が皆の気分を害しかねない。
それに、無邪気に遊ぶ子供たちをのんびり眺めていられるというのは、シロウにとってはこの上ない幸福なのだ。
「む~、あっそうや! せっちゃんに話し聞いてみたえ」
「そうか、すまないな。どうだった?」
「ん~よう分からんけど、なんかしろうとネギ君が戦った時の事がきになってるみたいや」
「やはりそうだったか……さて、どうするか」
さすがにずっとこのままと言うわけにもいかない。
自分が招いてしまった種でもあるので私が嫌われる分にはいいが、そのせいで周りにまで迷惑はかけられない。
なにより、刹那がすごし辛くなってはいけない。
「ありがとうこのか、今度刹那と話してみるよ」
「ん、しろうも気が向いたら一緒に遊ぼうな~」
このかは手を振りながら去っていく。
このかが去った後、シロウは辺りを散歩する事にした。
太陽の心地よい暑さを感じながら浜辺を歩いていると、浜辺が騒がしいのに気づく。
「どうした?」
「サ、サメが襲われてネギ先生を!!」
質問に対し意味不明のことを言うあやか。
とりあえず海を見渡すと、ネギが2匹のサメに囲まれていてアスナが海に飛び込むところだった。
「ん? 鮫にしては動きがおかしいな?」
視力を強化してよく見てみると、鮫から足が生えている。
これは、どうやら脇の茂みに隠れている人物に話を聞いた方がよさそうだ。
「和美、どういうことか説明してくれるかね?」
「ははは……さすが士郎先生、ばればれか」
気まずそうに茂みの中から現れたのは、朝倉和美だった。
どうやらこの間の一件(タカミチにアスナの裸が見られた)からギクシャクしていたネギとアスナを仲直りさせる為の作戦らしい。
ちなみに、サメの中身は古と夏美だそうだ。水の中だというのに古はいい動きをする。
「サメなんかーーーーーーー!!」
アスナの雄叫びに振返ると、アスナがアーティファクトで海を真っ二つにしてネギを救出していた。
「……何だ、あの剣は!?」
海を割ったアスナの実力は驚きだが、シロウが一番気になったのはアスナの剣。
解析をしてみて驚いたのは、あの大剣が前に見たハリセンと同一のものだという事。
アスナ自身の能力と同じ魔法を掻き消す事ができる力があるようだ。
あの剣の投影は『
しかし、あの剣はまるでアスナの為に存在しているかのような剣だ。
「バカッ!」
ネギを救出後、サメが偽者だという事に気づいたアスナは、泣きながらネギを殴り去っていった。
そんなアスナの後姿を、シロウは唖然と見送る。
「アスナ、君はいったい……」
その後皆で夕食(もちろん料理はシロウ特製のBBQだ)を取り、それぞれ部屋へと向かう。
明け方、シロウは外へ向かう人の気配がしたのでこっそりと後を追うとそこには。
「……あんたのこと、守らせてよ」
アスナとネギがいた。
「私を……アンタのちゃんとしたパートナーとして見て、ネギ」
不安げに、けれど真剣に見つめるアスナの眼差しに、ネギはしっかりと頷いた。
「フッ……どうやら、ちゃんと仲直りができたようだな」
その光景を見てシロウはは2人に気づかれないよう部屋へと戻るのであった。
数日後
「いかんな」
シロウは困っていた。何故ならネギ君の弟子入りテストの一件で、数人の生徒に警戒されてしまっている状況がいまだ続いているからだ。
1人は前から様子がおかしいと思っていた刹那。あとはアスナ、古、楓、真名、のどかに至っては怯えて逃げてしまう。
「どうしたものか」
今更ながら自分がやりすぎたことに反省するシロウであった。
刹那達をどうするか考えながらも放課後はいつも通り魔法の修行。それに、今日はいつものメンバーに加え、和美、古、夕映、楓や真名まできている。
楓と真名曰く「士郎殿/士郎さんが何をするか分からないから」らしい。相当警戒されてしまっている。
何も状況を良く出来ぬまま、修行を終え夜になった時、ネギが部屋を訪ねてきた。
「あのシロウさん」
「何かな?」
「見てもらいたいものがあるので、ちょっといいですか?」
「ここでは駄目なのか?」
「はい。アスナさんも一緒に見てもらいたいので」
「わかった」
いつにも増して真剣な表情のネギに着いていくと、既にアスナが待っていた。
そして、シロウの顔を見るなりあからさまに嫌そうな顔をするアスナ。
「士郎にも見せるの?」
「はい、その方がいいと思って」
「なんのことだ?」
2人の言っていることが分からなくて問いかける。
どうやらネギが父親を探すきっかけとなった過去を魔法で見せたいらしい。
「何故私に?」
「シロウさんには見てほしいんです」
先程と同様、真剣な表情のネギ。その表情からは不安と希望の入り混じったような感情が見て取れる。
どんな思惑があるにせよ、ここまで真剣な表情をされては断るわけにはいかない。
「わかった」
カモが床に魔法陣を描き、ネギが意識をシンクロさせる魔法を使う。
アスナはネギと額を合わせ、私シロウが2人の肩に手を乗せ目を瞑る。
すると、魔法陣輝きだし、目を開けた時には景色が変わり雪の降る町へ立っていた。
「ちょっ!? なんで私裸っ!!」
((すいません、そーゆーものなんですよ))
慌てて手で体を隠すアスナに、天からネギの声が響く。
どうやらここがネギの記憶の中と言うことらしい。
「じゃあなんで士郎は服着て……あんたホントに士郎?」
アスナに言われて自分の姿を確認すると、身長は伸び、体は黒いボディアーマーと聖骸布に包まれている。
つまり、英霊エミヤとしての姿だった。
「これは……そうか」
今ここにいるシロウとアスナはネギの意識の中にいる魂だけの精神体。
魂が服など着ているわけもなく、アスナは裸に。そして、シロウは既に英霊エミヤという姿に魂は固定されているが故、元の姿に戻ることになった。
「ねぇ! ちょっと聞いてんの?」
「ああ、すまない。何故こうなったかは説明できんが、正真正銘私はエミヤシロウだよ」
アスナは未だにブツブツと文句を言っているが、そんなことはお構いなしにネギは自分の過去を話しだす。
ネギの姉であるネカネや幼馴染のアーニャと過ごした日々。
ピンチになったら現れる
その光景はまるで切嗣と暮らし始めた頃の衛宮士郎そのものだった。切嗣の様になる為、町中を駆け回り人助けをした。
「……(やれやれ、完全に忘れてしまったと思ったのだがな)」
この世界に来てからというもの、磨耗していた記憶を思い出すことが多い。
釣りをしていたネギはネカネが帰ってくる事を思い出し村へ向かう。
すると、村は火に包まれていた。
「「なっ!?」」
その光景にシロウとアスナは思わず声を上げる。ボロボロに崩れて燃えている家。何者かに石化させられた村人達。これではまるで第四次聖杯戦争が原因で起きた大火災の様ではないか。
そんな中、小さなネギはネカネを探し炎を海を駆け回る。そんな少年の行く手を阻んだのは、漆黒の異形の存在。
「魔族だと!?」
突然現れた魔族に襲われるネギ。魔族の拳がネギ君に当たる寸前───1人の男が魔族の拳を止めた。
男は体術と魔法で次々と魔族を倒していく、ネギはその光景に逃げ出してしまう。
その記憶に引きずられ、シロウとアスナも男から離れていく。
「ネギっ、危ないわよ!」
届かないと分かっていながらも思わず声を出してしまうアスナ。
逃げた先でまたも魔族に教われそうになるネギは、ネカネと
そこに先程の男が現れ、ネギとネカネをつれて村を離れた。
「すまない……来るのが遅すぎた」
謝罪する男にネギは杖を構えた。その体は恐怖と不安に震え、目には涙が溜まっているにもかかわらず。
そう、まるで動けない姉を守るように。
「お前がネギか」
男はネギに近づいてくる。しかし、その姿に敵は全く感じられなかった。
むしろ暖かな雰囲気まで漂わせ、しゃがみこんでネギの頭をなでる。
「お姉ちゃんを守っているつもりか? 大きくなったな……そうだ、こいつをやろう」
そう言って男はネギに自分の形見だといって杖を渡す。
「そうか……この男がネギ君の」
たぶんこの男がネギの父親。千の呪文の男とよばれるサウザンド・マスターなのだろう。
「悪いな、お前には何にもしてやれなくて。こんなこと言えた義理じゃねぇが……元気に育て、幸せにな!」
その言葉を残し
その後ネギは魔法使いの町へ移り、魔法学校で勉強を重ね今に至る。
魔法が解除され景色が薄れゆく中、最後にネギは言った。
「あの出来事は
「……それは違うぞ、ネギ君」
シロウはネギが自分に似ているとは思っていたが、まさかここまで似通っているとは思っていなかった。
それ故にわかってしまった。おそらくネギには何を言っても無駄だ。あの頃のシロウが、周りから何を言われてもその理想を変えなかったように。
もしもネギの考え方を変えられる可能性があるとすれば、それは───
「「うう~(泣)」」
ふと気づくと別荘に来ていた全員がその場にいた。
泣いている輪の中の中心人物、のどかの手には彼女のアーティファクトが。
「アーティファクト「いどのえにっき」か」
つまり皆でネギの過去を見ていたということか。だが、みんながここに集まっているなら都合がいい。
皆がネギ君の周りに群がる中、ネギの過去を見たせいか珍しく目に薄っすらと涙を浮かべているエヴァに声をかける。
「エヴァ」
「なんだ?」
「私の過去を皆に見せる事はできるか?」
「貴様の過去だと!?」
私の発言に驚くエヴァ。
しかし、その表情は見るいるうちに真剣なものに変わる。
「できるが……いいのか」
「ああ、ちょうどいい機会だ。全てを話そう」
エヴァはカモの描いた魔法陣を基点とし、更に大きな魔法陣を描く。
そして、その魔法陣の上に皆を立たせ、シロウの周りを囲むように手を繋がせる。
「これから私の過去を見せるが、ネギ君の過去以上に酷い光景が映る事もあるだろう。見たくなければ部屋に戻ってくれ」
忠告はしたが誰も戻る気配は無い、皆了承と言う事だろう。
「……わかった。では頼むエヴァ」
エヴァが先程のネギと同じ魔法の強化版を発動させ────景色はあの忌まわしき大火災へと変わった。
久々すぎてキャラたちの性格がぶれてないかとても心配です。
次回はシロウの過去ですかねぇ……たぶん長くなるんで、2話か3話くらいかかると思いますが。
それでは磁界をお楽しみに……してくれる人いるんですかね?