修学旅行三日目
「ちょっと、どうすんのよネギ!こんなにいっぱいカード作っちゃって、いったいどう責任取るつもりなのよ!?」
朝からアスナはネギに怒る。
その理由は、昨晩の和美のイベントのせいでパクティオーカードをスカ5枚、成立1枚の計6枚も作ってしまったからだ。
「アスナ、作ってしまったものはしょうがないさ。それに悪いのは和美だからな」
言いながら和美を見ると たははー と苦笑いをしている。
本当に悪いと思っているかどうかは分からないが、とりあえずやりすぎたとは思っているようだ。
「それで、ネギ君はのどかに魔法の事を話すのか?」
「いえ、のどかさんには秘密にしておこうかと」
「賢明な判断だな。中途半端にかかわらせるのは危険だ」
その後、カモがカードの
そして話し合いの結果、シロウと刹那はこのかの護衛。ネギとアスナは本山へ親書を渡しに行く事になった。
「では私と刹那はこのかの護衛をする為に5班のメンバーと回る。ネギ君とアスナも気をつけてな」
「はい」
「任せといて!……ください」
「よろしい。修学旅行も学業の一環、他の生徒がいる前では敬語を怠らないように」
一度シロウと5班の班員である刹那とアスナはネギと別れ、後でそれぞれ落ち合う手筈なのだが、ネギの下を離れてカモがやってくる。
「旦那、旦那」
「どうしたカモ?」
何か伝え忘れた事でもあったのか? とも思ったが、カモの様子がおかしい事に気づく。
なにやら、にやけている様な……
「昨日の夜、俺っちの所に旦那のカードが出てきたんだが、誰かとキスしたんですかい?」
ムフフと笑うカモ。
「なん……だと……!?」
シロウはこのかとキスをしてしまった事を思い出す。
確かにあの時、微弱な魔力を感知したがまさか契約が実行されていたとは。
「……カモよ、そのカードの複製もくれないか?」
「いいっすよ、ところで旦那は誰と仮契約したんすか?」
「ちょっとした事故でな、相手はこのかだ。すまんがこの事は皆には秘密にしてくれ」
「いいっすけど、何でですか?」
このか自身が魔法の存在に気づいてない今、この事は伏せておいた方がいいだろう。
話せば刹那やアスナ達は黙っていてくれるだろうが、いかんせんこのかは勘が鋭いし、追及されれば刹那達では隠し通すのは難しい。
いや、難しい所ではない。刹那やアスナがこのかに嘘をつくのは不可能だろうな。
「このかの父親はこのかに魔法の事を知られたくないらしくてな。多少危険ではあるが、私もできればコチラの世界には足を踏み入れない方がいいと考えている」
「わかったぜ旦那。じゃ、俺っちはこれで」
「ああ、わざわざすまんな」
カモを見送った後このかの下へと向かった。
「今日はしろうも一緒に回れるんよね」
「ああ、その予定だ」
「ほか、よかった~」
「……」
魔法の存在を教えるかどうかはともかく、現状では何かあったときの為にこのかにカードを持っておいてもらった方がいい。
いざという時は何かしら加護くらいはあるだろう。
「そうだ。このかにコレを渡しておこう」
シロウはカモから貰った
「あ~! しろうの絵が描いてあるカードやん! ウチも自分の絵が描いてあるカード欲しいわ~」
このかは羨ましそうに言う。
が、動きをピタリと止めてこちらに向き直った。
「でも、なんでウチがしろうのカードを持つん?」
「あー、それはだな。え~と……」
しまった。渡す理由を考えていなかった。
突然他人の絵が描いてあるカードなんて渡せば、不審がるのは当然だろう。
「お守り……かな」
「お守り?」
「ああ、お守りだ」
「うん、わかったわ。ありがとうなしろう」
一瞬怪訝な顔をしたこのかだが、何かを納得したのか、一変して笑顔になり受け取ってくれた。
その後、アスナはこっそり抜けてネギと合流する……筈だったのだが。
ハルナに見つかりしばらく皆で回った後、ハルナ達がゲームに夢中になってる間に、こっそり合流したネギとアスナは本山へと向かった。
「しまった、のどかも行ってしまったか………」
いつの間にか、のどかがいなくなっていた。
班行動を始めた時から、のどかがネギを気にしているのは気づいていたが、まさかついて行くとは思わなかった。
いや、ついて行くと思わなかったというより、ネギ達が素人の尾行にも気づけないとは思わなかった。
てっきり、気づかれないように行ってくれると思っていたのだが……
「しかたない、ここはネギ君を信じよう」
シロウ達は、しばらくゲームセンターで遊んだ後、観光を再開した。
人もそれなりに多い道。
まさかとは思ったが、確実に敵意を持った者がこちらを見ているのを感じる。
「……刹那、気づいたか?」
「はい、何者かに見られていますね」
シロウと刹那がお互い周囲を警戒し、このか達を連れ場所を移動しようとした瞬間、何かが空を切る音が聞こえた。
シロウは一瞬で飛来してくる得物を確認すると、
チラリと横目で地面を見ると、そこには鉄針が落ちている。飛んできた方向を見ると、一瞬だが人影の様なものが見えた。
「まさか白昼堂々攻撃してくるとは」
シロウは目で刹那に合図を送り、このか達をつれ走りだす。すると、シネマ村が見えてきた。
確実に敵が狙っているとわかった以上、ハルナ達を巻き込むわけにはいかない。
「刹那、行け」
その言葉だけで刹那はシロウの言わんとする事を理解する。
「わかりました……すいません早乙女さん、綾瀬さん。わ、私、このか……さんと2人きりで回りたいんです。ここで別れましょう!!」
「「え?」」
驚く2人を無視し、刹那はこのかを抱えシネマ村へと文字通り跳んでいく。
緊急事態とはいえ、一般人の目は気にしてもらいたい。
「すまんなハルナ、夕映。私も用事が出来た」
シロウも踵を返し逆走。全力でその場を離れる。
「ちょっ! 桜咲さんも、士郎先生もなんなのよー!」
賑やかな昼の京都、ハルナの叫びが空しく響いた。
ハルナ達と別れてすぐシロウは先程までの敵意とは違う、自分に向けて殺気を放つ人物の下へ行き先を変えていた。
「貴様は、あの時の」
そこにいたのは、二日前呪符使いと月詠を逃がした白髪の少年だった。
「よく僕の場所がわかったね」
「クッ、自分から殺気を出しておいてよく言う」
「へぇ、やっぱり気づいたんだ。って事は本人で間違いないのかな?」
「何を言っている?」
「まぁ、なんでもいいさ。はっきり言って君の存在は邪魔なんだ、だからここで消えてもらう」
そう言って、白髪の少年は周囲に魔力の球体を浮かべ襲い掛かってくる。
「やってみるといい。私が勝ったらじっくりとさっきの言葉の意味を聞かせてもらうとしよう」
干将・莫耶を投影し少年を迎え撃つ。
接近してきた少年は、周囲に浮いていた魔力球を石の槍にして飛ばしてくる。
シロウはそれを最小限の動きでかわし、飛んだ先が民間人に危害が及ぶ可能性のある石の槍は、干将・莫耶で叩き落す。
対する少年も時にわざと民間人を石の槍で狙い、シロウの攻撃範囲を狭め、干将・莫耶をかわす。
そんな攻防戦を続ける事数分。
(……妙だな)
シロウは違和感を感じた。
自分を消すといいながら、少年の攻撃はどこか本気ではない。
まるで、時間を稼ぐかのような動きさえ感じられる。
「……!! まさか、貴様」
「ふむ。どうやら気づいたようだね」
少年は驚いたとも感心したとも取れるような表情をした。
どうやら少年の目的は足止めで間違いない様だ。
「ちっ……!」
「今頃は、千草さんと月詠さんが上手くやってるはずだよ」
シロウは干将・莫耶を
「君ほどの人物が、敵に背中を向けるとはね。正直、失望したよ」
少年は無防備のシロウの背中めがけ狙いを定め、呪文の詠唱を始める。
「私を失望するのは別に構わんが……悠長に呪文の詠唱などしていてもいいのかね?」
そういうシロウの手には新たな干将・莫耶。
「……? なっ!?」
風切音に少年が振り向くと、
「くっ!」
予想外の方向からの攻撃。
少年が干将・莫耶を魔法障壁で防いだ瞬間。
「
爆発が起こる。
手応えはあった。しかし、あの妙な雰囲気を出す少年これで倒せたとは思わない。
「……ふん。
煙が晴れ少年がいた場所を見れば、またも少年は瞬間移動により逃げた後であった。
「こちらに少年がいたという事は、刹那の方は呪符使いか月詠か。どちらにしても急がなくては」
シロウは思考の切り替えも兼ねて投影した外套を纏い、身体を強化しシネマ村へと急ぐ。
一方その頃、刹那は月詠と死闘を繰り広げていた。
「くっ!」
「あはは~。てや~!」
一合。二合。三合。
四合目で僅かに手がしびれ、距離を取る。
「くっ、きりがない」
刹那の斬撃は全て月詠に防がれる。
それどころか、月詠は見かけによらず力が強く、何度も打ち合えば刹那の握力がもたない。
(士郎先生はいったい……)
中々来ないシロウに焦りを覚えつつも、刹那は月詠に攻撃を続ける。
「あれ見てあれ」
「おおっ! 城の上でも劇が」
観客? の声を聞き城の方を見ると……このかとネギが、城の屋根の上へと追い詰められていた。
「お嬢様!」
「ダメですよ先輩♪ 死合い中によそ見したら」
このかの下へ向かおうとした無防備な刹那へ月詠から刀が振るわれる。
「しまった!」
反応した時には、既に月詠の刀は回避不能な軌道を描いている。
容赦なく振るわれた月詠の刀が、刹那を斬りつけようとした瞬間。
「……だれですか~? じゃましはるんは~」
一本の
刹那が振り向くと、塀の上に赤い外套をなびかせる弓兵が立っていた。
少し時間は巻戻り、シロウはシネマ村まであと少しというところ。
鷹の目を持つシロウは、橋の上で月詠に無防備に背中をさらしている刹那を目撃する。
「戦闘中に何をしているっ!」
それを見たシロウは、すぐに弓と剣をを投影し放つ。
間一髪の所で、刹那を狙う月詠の動きを止める事が出来た。
「だれですか~? じゃましはるんは~」
口を膨らます月詠を無視し、刹那の見ていた方向を目で追い、城の上にこのかとネギ確認する。
ネギの様子からして、あれは実態ではないと判断。刹那は月詠に苦戦し、長期戦は難しいとなれば。
「刹那、月詠は私が抑える。このかの下へ行け」
私は刹那を庇う様に、2人の間に降りる。
「わ、わかりました。お願いします」
多少動揺していた刹那だが、すぐにこのかの下へと向かった。
「あ、シロウはん。お久しぶりやな~」
「二日前に会ったばかりだろう」
刹那を逃がしてしまったというのに、月詠はがっかりした様子はない。
むしろ、これからの戦闘にワクワクしている様に見える。
「でも、ウチはシロウはんと戦いたくてうずうずしてたんやえ」
「そうか。悪いが私は会いたくなかったよ」
干将・莫耶を投影する。
「シロウはんはいけずや~」
月詠も二刀を構える。
「ふっ!」
「え~い!」
2本の中華剣と2本の刀が交差する。
前回の戦闘で月詠の剣撃は重く、何度も受けるのは得策ではないと学んだ。
故に、シロウは魔力で身体強化を施し、月詠の剣撃を力を受け流すように受け完璧に防ぎきる。
「やっぱりお強いどすな~」
「それはこちらのセリフだ。剣技のみでなら君の方が上だろう」
シロウには経験によって鍛え上げられた心眼がある。にもかかわらず、月詠の刀をいなすのが精一杯で反撃ができない。
このままではらちが明かないと思ったシロウと月詠は、互いに一旦距離を取る。
「これならどうですか~、ざ~んが~んけ~ん!」
斬岩剣。
それは、前回たったの二撃でシロウの筋力を奪い、干将・莫耶を弾き飛ばした神鳴流の奥義の1つである。
月詠は今回も斬岩剣でシロウの武器を弾きとばしシロウの魔術のからくりを見破るつもりだった。
しかし───
「ほえ?」
月詠の刀は難なくいなされてしまう。いつの間にかシロウの持っていた、長刀によって。
「ふわわ!?」
シロウからの鋭い反撃。今までの戦い方と全く異なる太刀筋に、月詠は全力で距離を取った。
シロウが投影した刀は第五次聖杯戦争でアサシンのクラス、佐々木小次郎の名で召喚された侍の刀。
刀の名は備中青江、通称「物干し竿」。
シロウは投影する際、刀の所持者の経験、技術までも読み取り、月詠の剣を防いだのだ。
「なんですいまの~? 今までと太刀筋が全然違いますえ~」
「なに、私は剣士ではないのでね。自分の技量で勝てないのであれば、他人の力を借りるまでだよ」
「あ……」
煌めく剣閃。先ほどまでと段違いに速く鋭くなったシロウの一閃は、驚きで油断していた月詠の刀を弾く。
武器を無くした月詠に警戒しつつもこのか達の方へ目を向けると、呪符使いの式紙である鬼がこのかへ向かって矢を放っていた。
「このかっ!」
急いで向かうが間に合わない。
矢が式紙のネギを貫いてこのかに当たる寸前……刹那が間に入り込んだ。
「せっちゃーん!」
このかが叫びながら刹那に抱きつき落下する。シロウは落下位置に先回りするべく走るが。
このかと刹那の2人は光に包まれ、何事もなかったかのように地面へと着地していた。
「せっちゃん……」
「お嬢様……
「ウ、ウチ今何やったん? 夢中で……」
どうやら、このかは自分が魔法を使った事に気づいてないようだ。
「このか! 刹那! 無事か!?」
「あ、しろう」
「士郎先生」
私が顔を出すと、驚いたようなこのかと、呆けた刹那がいた。
「怪我は……大丈夫の様だな」
「はい、お嬢様のおかげで何とか」
刹那の肩を見ると、矢による傷が跡形もなく消えている。
大切な人の危機で眠っていたこのかのチカラが目覚めた。それと同時に判断した。
無意識とはいえ能力に目覚めてしまった以上、詠春にもその事を話さねばなるまい。
「刹那、このかを本山に連れて行こう。既に詠春から許可は貰っている」
「そうですね。わかりました」
刹那もそれが最善と思ったのか、即答で返してくれた。
「ネギ君も本山で合流と言う事でいいな?」
傍らを浮遊していた式紙である、ちびネギに問いかける。
「はい。親書も渡さなきゃいけませんし、僕もそれで構いません」
「よし、行くぞ」
シロウの言葉と同時に刹那はこのかを抱える。
「ひゃ!?」
「お嬢様、これからお嬢様のご実家に参りましょう。神楽坂さん達と合流します」
こうしてシロウ達は本山へ向かう事になった。
シロウと刹那はこのかを連れて、このかの実家である西の総本山に来たのだが……
「ちょっと! 士郎、桜咲さん。なんでみんなまでついてきてるのよ!?」
「いや、それがいつの間にか和美が刹那の鞄にGPS携帯を入れていてな」
「すみません」
「いや、私もまさかそこまでするとは思わなかったしな」
シロウは思った。
魔術師には近代機器が有効と自分でわかっていて、それを利用した事も生前はあったはずだ。それなのにこんなミスを犯すとは、まるで遠坂凛の様ではないか。
「凛……まさか君のうっかりがうつったのではあるまいな?」
うっかり属性がうつってしまったのではないかと本気で心配しながらも、ネギと共に歩くのどかを見て、のどかがネギ達について行ってしまったのだったと思い出す。
「そういえばネギ君。のどかがここにいると言う事は、魔法の事がばれたのか?」
「はい……あ、でもそのおかげで僕達は助かりました」
「そうか……」
できれば関わらない方が良かった。
だが、ネギ君の怪我を見るに、止むを得ない事情があったのだろう。
仕方ない、で済ませられることではないが。
「のどか」
「なんですか? 衛宮せんせー?」
「魔法の事を知ったんだってな」
「えっ! じゃあ、あの、衛宮せんせーも?」
魔法という言葉が出て驚いたようだが、すぐにシロウが魔法の関係者だという思考にたどり着き問いかけてきた。おっとりしているようで中々頭も回るし冷静だ。
「ああ、私も関係者だ」
「そうだったんですかー」
「のどか、魔法に関われば危険な目にあうかもしれない。それでも関わるのか?」
「……はい、私ネギせんせーの力になりたいです!」
のどかがはっきりと言う。
普段の気弱さはどこへ行ったのか、前髪で隠れた瞳の奥には強い意志が見られた。
「そうか。なら私は何も言うまい。でも、困った時はネギ君でも私でも構わん、絶対に相談すると約束してくれ」
「はい!」
そうこうしている内に門に着く。
相変わらずの大きな門をくぐると、
「「お帰りなさいませ、このかお嬢様」」
何十という女官達に盛大な出迎えをされた。
……詠春よ、いくらなんでも私の時と対応があまりにも違いすぎないかね?
やってきた詠春に広間へと案内され、ネギは詠春へと無事に親書を渡す。
その後、詠春の計らいで泊めてもらう事になった。
「ネギ君、私は一度ホテルに戻る」
「え、なんでですか?」
「君達は刹那が身代わりの式神を置いてきたからいいかもしれんが、私はそんな準備はしてきていないからな。それに、担任も副担任もいないのは拙いだろう」
「あ、そうですね。それじゃあすみませんがお願いします」
「ああ」
ネギに話を終えた後、詠春にも帰ることを告げる。
「このかと他の子達の事は任せてください。此処の結界は強力ですから」
此処の結界は強力、か。よほど結界の強度に自信があるのだろう。
事実、私も解析してみたが、本山に張られている結界は相当強力なものだということがわかる。
だがそれに慢心して最悪な事態にならなければよいのだが……
「では後は任せる」
少し不安は残るものの、ネギに刹那、詠春に数十名の呪術師がいるここならばそう簡単に落ちる事はあるまいと自分を納得させ、シロウは帰る事にした。
「ああ、エミヤ」
帰ろうとしたら、詠春に呼び止められた。
「なにかね?」
「言い忘れていましたが、敵の目的はおそらくこの地に眠る鬼神を利用しようとしていると考えられます」
「鬼神だと?」
鬼神───鬼ではあるが、式紙の鬼達とは格が違う。
シロウの世界で言えば、鬼は人々の怨念や恐怖心が具現化した言わば悪霊の類だ。
しかし、鬼神ともなればそれは神霊レベル。幻想種とほぼ同格の高位種とされている。
「ええ、この地にはリョウメンスクナノカミという大鬼神が封じられているのです」
リョウメンスクナノカミ。
その名はシロウの世界の文献にも載っていた、英雄とも妖怪とも言われている
「その鬼神の実力は?」
「かなりのものと見て間違いないかと」
真剣な表情の詠春。
これは最悪の場合、アレを使うことも考えておいた方がいいだろう。
「わかった、用心しておこう」
「お願いします」
今度こそホテルへ向かう。
ホテルへ向かう途中、近くを飛んでいた鳥を一匹捕まえた。もちろん怪我をさせないように。
「ふむ。一応保険をかけておくか」
ナイフを投影し、指の先を軽く切る。
そして、捕まえた鳥に自分の血を一滴飲ませ、簡易契約を施す。
これは、確か生前に師事を仰いでいた人に教えてもらった魔術だ。
「まさか、こんなところで役に立つとは───
シロウの手には歪な短剣が現れた。
シロウは歪な短剣と、何かをメモした紙を鳥の足へと結びつける。
「コレを麻帆良のエヴァの所まで届けてくれ」
「キュィー」
投影した短剣とメモを持って鳥は飛んでいく。
「出来れば、使わずにすんでほしいものだ」
はいどうもアンリです。ここ最近気づいた。ない様考えんのも難しいんですが、タイトルはもっと難しいですね。
さて、雰囲気的にもわかるとは思いますが、次回は戦闘回です。おそらく後2話で京都編が終わりになるでしょう。
それではまた次回……の前に、武器の紹介。
『備中青江』
Fate/stay nightにて剣豪・佐々木小次郎が携えていたとされ、第五回聖杯戦争におけるアサシンが使う物干し竿と呼ばれる長刀。
『物干し竿』はあくまでも限りなく蔑称に近い通称にすぎず、銘は二天記に伝えられる備前長船長光ではなく備中青江。青江一門ではあるが、どの刀工かは不明。刀身の装飾と鍔はともになく、樋も掻かれていない。
記録では長さ三尺余とされるが、アサシンのものは五尺余に及ぶ規格外の長刀で、その間合いは槍に近い。
それでは、また次回!!