にじファン、理想郷、と移動してきましたが、使いやすさということもあって、ここハーメルンで頑張らせていただきたいと思います。
始めましての方も、お久しぶりの方もよろしくお願いします!!
正義の味方の旅立ち
『答えは得た。大丈夫だよ遠坂、オレもこれから頑張っていくから』
少年のような笑顔を浮かべ赤い騎士の戦いは幕を閉じた。
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衛宮士郎のなれの果て。英霊エミヤは何もない無の世界を彷徨っていた。
「ここは……聖杯の中か」
“座”に戻ればこの記憶も『記録』になってしまう。
それでも、英霊エミヤは遠坂凛のサーヴァントアーチャー、遠坂凛の友人エミヤシロウとして、凛と約束したように頑張っていこうと静に目を閉じた。
「貴方は本当にそれでいいの?」
聞こえるはずのない声。勘違いだろうか?
いや、それにしてもありえない。何故なら、今の声は……。
「今の記憶が記録になってしまってもいいの?」
「イリヤスフィール……」
目を開けると、そこには声の主。救うことができなかったはずの白き少女がいた。
「ひさしぶりねアーチャー……ううん、シロウって呼んだらいいのかな?」
白い少女は、無邪気に笑い話しかけてきた。
彼女はアーチャーの真名がエミヤシロウだとわかっている。何故?
いや、わからない筈がない。彼女は聖杯なのだから、ここに来た時点で正体なぞすぐにわかるのだろう。
「ああ、久しぶりイリヤ。だが、なぜ君がここに?」
肩の力が抜けているからなのか、それとも姉を前にして気が緩んだのか。
口調こそいつもの無愛想なものだが、その言葉に込められた思いは、とても柔らかなものになっていた。
「だって、私はシロウのお姉ちゃんだもん。頑張った弟を褒めてあげなくっちゃね」
イリヤは小さな手をシロウの頭に乗せ、いい子いい子をしてくる。
傍から見ればおかしな光景かもしれないが、されているシロウ自身は気恥ずかしさ以上に嬉しさや懐かしさといった感情が湧き上がってくる。
「ねぇシロウ、本当にこのまま“座”に戻ってもいいの?」
「む……」
いいかどうかと聞かれれば、答えは当然「否」だ。
しかし、シロウにはそれに抗う術が無い。
「それは……オレだってできればこの『答え』を記憶として残したい。でも、こればっかりは仕方がないだろう」
そうだ。どんなにこの記憶を覚えておこうとしても、“座”に戻ればそれは記録となり、守護者として様々な世界に召喚され掃除屋として過ごす日々がまた始まる。
それでも忘れない。誓ったんだ、頑張っていくと。記憶にではなく、魂に。
「うんっ! じゃあシロウの願いを叶えてあげる! だって私はシロウのお姉ちゃんだもん!」
「なっ! そんなことできるわけ……!?」
その瞬間、白い光に包まれた。
「大丈夫。第三魔法で物質化したシロウの魂を、聖杯の願望器としての機能を使って平行世界へ飛ばすわ」
体が何かに引っ張られるような感じがした。おそらく、イリヤの第三魔法によって魂の物質化が始まったのだろう。
「だからシロウ。正義の味方もいいけど、誰かを切り捨ててまで理想を求めるのはもうやめてね。護りたいんだったら無様でもカッコ悪くてもいいから、最後までちゃんと足掻きなさい。お姉ちゃんとの約束」
シロウに向けられた小さな小指。その白くか細い指に、シロウも小指を差し出して結ぶ。
指切り。日本人なら誰でも知ってる契約だ。
「私が蘇生できるのは精々魂だけ。だからイメージしなさいシロウ。自分の体を」
「……
何も無い無色の魔力の中で、シロウは自分の体があるものとして魔術回路に魔力を通す。
───体は剣で出来ている。
そう、この身は一振りの剣だ。
ならば、イメージ出来ぬ筈が無い。
「それと、これはリンとシロウのよく知るセイバーからの餞別」
それは、エミヤシロウの命を救った赤い宝石と聖剣の鞘だった。
《ああ────本当にオレは助けられてばっかりだ》
その一瞬がいけなかったのか、過去の自分の姿と今の自分の姿の両方のイメージが混ざってしまう。
そして、魔法を発動させようとしているイリヤの衛宮士郎のイメージも混ざり合う。
今さらどうしようもない。ならば、覚悟を決めようではないか。
「ありがとう。それと、いってきます“姉さん”」
「うんっ! いってらっしゃい、シロウ!」
光に包まれていく最中、シロウが最後に見たのは、雪のように白い姉の眩しいくらいの笑顔だった。
───こうして正義の味方は新たな世界へ旅立った。
あらためまして皆様、アンリマユですよろしくお願いします。私の事は気軽にアンリとお呼びください。
さて、前書きでも書きましたが、この小説は以前他サイトで書かせていただいていたものを修正し投稿させてもらっています。なので、タイトル内容も若干変えさせて頂きました。
頑張って続けていこうと思うので、よろしくお願いします!!