雪の中からこんにちは、飼い主さん!   作:ものもらい

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※「なろう」様では掲載していない追加(元ネタは掲載しましたが)エピソードです。

※割とあやふやなので突っ込まないであげてください……。





雑談の中の彼ら
ある不思議ハンターカップルと、


 

 

「あの子、可愛いな」

 

そう呟く俺の名はナナ。そして指差す先に居るのは兎耳ひょこひょこさせた女の子だ。

 

「おま……ロリk」

「違う」

 

ウルクススの亜種――の毛皮にしろ、変わった型だ。オーダーなのかもしれない。とりあえず作っただろうおやっさんに親指を立てたい。

 

なお、尻尾のもふもふさがたまんねーぜ、と口にしたのは俺の双子の弟であるハチだ。

 

「一人かな。だったら誘ってみる?上手くいけばちゅーくらいはできるかも!」

「二十代の半分過ぎたおっさんが何言ってんだよ……ほら、さっさとクエストの紙取って来いよ」

「ちぇー…って、おお!?もしやあの子も俺らと同じクエスト希望か!?」

「何!?オイさっさと行ってこい!」

「任せろ!」

 

女の子との狩は楽しい。装備によってはキノコ採取してるときが至福の時になるからな。怪我の手当てとか言ってちょっとエッチなことできるからな…!

 

上手くいけば夕食にも誘えるしベッドの展開だってあり得る!新人の女の子ほど、年上ハンターには抵抗できないんだよなぁ…げへへ。

 

 

「お嬢ちゃん、そのクエスト受けるのかい!?」

「ぴゃあっ!…あ、あぅ……はい、あの……だ、だめですか……?」

「いやいや、…丁度俺たちもそれ狙っててさ、もしよかったらどうだい、一緒に一狩行こうぜ!」

「でも……あの…」

「あ、もしかして誰かと行く予定?(できれば女の子で!!)」

「は、はい…咲さんと……」

「おお!?(名前的に女の子だな!)じゃあ丁度いいな、俺も兄貴と受けようとしてたんだ!」

「お兄様と…仲がよろしいのですね」

 

 

びくつきながらも丁寧に返していた兎耳ハンターが、弟に応えて手を振る俺を見てふわっと微笑んだ。……か…かわいいいいいいいいいいいいいい!!!

 

可愛いしロリ…いやいや、世間知らずの良い子そうだし、これはベッドコース狙えるな!

ハンターの職に就いてる女ってのは大抵ゴツイもんだけど、あの見るからに華奢で色白な体!十分すぎる上玉ですわ!くぁー楽しみッ!

 

「…分かりました、咲さんと一緒なら…」

「よっしゃ!じゃあその子の分も含めて払っておくよ!」

「え……でも――悪いです、ちゃんとお金払います!」

「いいのいいの。お嬢ちゃんみたいに可愛い子と一狩行けるんだから…!」

 

困ったように慌てる姿もまた好印象だ。思わずハチと同じくにやけた顔で兎耳ハンターを見ていると、彼女は気づいたらしくて「み、ないで…ください…」と兎耳を引っ張った……かわいいいいいいいいいいい!!!夜が楽しみです本当に!!

 

 

 

 

 

「―――金以外にも、払ってもらわなくちゃいけねェみたいだな」

 

 

ハチの顔を掴んだナルガ装備の男は、そのままぐしゃっと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲さん咲さん、このお花きれーです!」

「うん、そうだな。摘んでおいで」

 

 

きゃっきゃとはしゃぐ兎耳ハンター・夜ちゃんは「大好きです!」全開で男に花を見せる。

 

ハチはフツメンがえらい不細工になったまま、血をだらだら流したままの姿でぶるぶる震えていた。

 

(で、出会って早々に『ぐしゃあ』をされるとは思わなんだ…!)

 

あんなに別嬪なんだ、彼氏がいるだろうなとは思っていたけども。

「たまの火遊びもいいじゃないっすか!彼女さんと寝たいんです!」とか開き直ったらあの太刀を抜身のまま口に突っ込まれかねない…!そんな明らかに怖い人と何故に付き合ってるのよ!?

 

「咲さーん!(´,,・ω・,,`)ノシ」

「夜、あまり向こうに行くな」

 

無邪気な夜ちゃんの言葉にだけは、この男も柔らかく返す。

彼女が言うには、用事で住んでた村から出たものの、帰り道が何らかの理由で塞がってしまい、復旧作業待ちなのだという。

まあずっとぶらぶらしてるのも暇なわけで、二人は狩に来たと。

 

夜ちゃんは密林が初めてだったらしく、あっちへふらふらこっちへそわそわで大変楽しそうだ――そんな彼女にべた惚れ(なんだろうな…)な男だが、モンスターが沸きそうな所や遠く以外の場所では彼女の自由を許している。

 

地図で場所の再確認などをしている姿は真面目なもので、俺はそろそろぉっと声をかけた。

 

「あ、あのぅ、俺たちも…そう、採取したいんですが」

「あ?」

「いや、あの……――もうッ椅子を辞めてもいいですか!!」

「却下」

「ひどいっ」

 

……そう、俺はさっきからこの男の人間椅子になっているのだ。orzの状態でずっと…!ああもう、う、腕が……!

 

頼りの弟は怯えて使い物にならないし、あの可憐な少女は初めて見る密林に夢中で気付いていない。見てるのは遠くか空だけだ。

 

「咲さーん!すごいです、これがしんじゅっていうのですか!」

「そうだ。すごいな、夜」

「えへへ、はいっ」

 

海の方に目を向けてばしゃばしゃ遊んでいた夜ちゃんは、頬を染めて男の手に真珠を乗せた。

 

「……どうした、いらないのか?」

「えへへ。おすそ分けなのです!大好きな咲さんにもっともっと喜んでもらいたいから!」

「……よ……夜ッなんて可愛いんだ!!」

「むぐっ」

 

嘘偽りない、無垢で幼い言葉だ。――あのちょっとマジでごめん二人分の体重は死にますッ!

 

「ん…わあ!さ、咲さん!どうしてナナさんを…!?」

「知らないのか夜。ハンターはこうして足腰鍛えるんだ」

「えっ」

「し――信じるな!こんな鍛え方あるわけないだろ常識的に考え…ぎぎぎ…」

「さ、咲さん!大変です、ナナさんが!」

「なんだ、はだしのゲ○みたくなったか」

 

重いんですもう無理、と懇願するのも忘れ、俺は口をあんぐりと開けてただただ「アレ」を見る。

震えているだけだった弟が武器を抜くのに気付いて男が素早く構えをとる頃には、アレは「ぐごごご」と近づいてきて、

 

 

「ダイミョウザザミ……さん…!」

 

 

何か前狩ったのよりも大きい気がして、俺は思わず「さん」付けをした。

震える腕で放り出された笛を取ろうとしたら、俺よりも小さく華奢な夜ちゃんがまるで庇うようにハンマーを構える。

ヤダ、嬉しい…とか思ってるとナルガよりも怖い顔した男に足を斬られそうになったので、慌てて無表情を装います。

 

「夜、無茶はするな。初めての相手なんだ、俺の補助を―――」

 

言い切る前に、まさに兎の如くぴょんと、彼女は駆け出していた。

 

 

「馬鹿っ、飛び込むなんt」

「カニ鍋!」

「」

「カニ鍋!カニ鍋!」

「「「……」」」

「カニ鍋!カニ鍋!ご飯!ご飯!」

 

 

なんということでしょう

 

―――いやっ、ふざけてる場合じゃない!……でも…だけど…なんということでしょう…。

のんびり可憐な美少女ハンターが、大きなハンマーを軽々と振り回し、野性的な掛け声と共に「打つべし!打つべし!」とありえないほどの威力で連続攻撃している…。

 

目はキラキラしており、あのカニさんが食えるものだと信じてらっしゃるようです。

たぶんあんまり美味しくないよ……どうすんのこれ、もう俺、笛吹きたくないよ…。

 

 

「カニ!鍋!カニ!鍋!(;`・ω・´)」

「「「…………」」」

「カニ!カニ!鍋はもうすぐ!カニ!カニ!(;`・ω・´)」

「「「…………」」」

「カニ!カニ!あと少し!カニ!カニ!頑張れ!(;`・ω・´)」

 

 

おいおいおいおいおい!!カニさん死ぬまで頑張れって聞こえるからその掛け声やめろ!

 

「お、お嬢ちゃーん!もうやめるんだ、カニがブチ切れる前に逃げろ!」

「カニ!カニ!(;`・ω・´)」

 

駄目だこの子アホの子だよ……――とりあえず少ないやる気をかき集めて笛を吹こうとしたら、鬼畜ハンター、咲という男がぼそっと呟いた。

 

 

「夜……そこまでカニ食いたかったのか……嫁がそこまで言うならッ俺だって!!」

 

 

そうして料理人(ハンター)が新たに追加された。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「カニぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!(`,,・ω・,,´)ノ」

 

 

まるで彼女を讃えるように雨雲が晴れ、勇ましくハンマーを掲げて勝利の雄叫びを上げる美少女の頬にはミソが飛んでいる。

 

冷淡にバラして狩った男はそんな彼女を愛しそうに見守っていたが、正直男の好みが分からなくなった。……例えどんなに美少女であろうとこれはアカン。

 

ちなみに影の薄いハチは「女の子怖い……」と呟くとキノコを採取し始めた。どんな現実逃避なのだろうか…。

 

 

「夜、さっさと剥ぐぞ」

「食べるのですか!」

「…夜、これ()っといてアレなんだがな、このカニは食えないカニだ。……そもそも食いたいか、これ?」

「食べれないのですか!?た、食べれないのに、私……この子を殺めてしまったのですか…」

「いや、お前がやらんでもこいつらが殺していたぞ。村民に被害が出た時点でしょうがないことだ」

「そうですか……むぅー、チェダーさんがカニ食べたいというから…婚約のお祝いにと思いましたのに……」

「だいぶワイルドな祝い方だな」

「どうしましょう、チェダーさんに食べきれないカニを持ってくると約束しましたのに…これでは嘘つきになってしまいます」

「市で普通の(サイズな)ヤツをたくさん買えばいい。前の狩でたっぷり金貰ったしな」

「うー………―――う?」

 

 

ばさっ。ばさっ。

 

羽ばたきの音に空を見上げると、白い巨体――フルフルが、何故か密林にやって……来た!?

 

え、ちょ、どどどどどどどうしよう、と心臓ばくばくしてる(だってすっごく大きいよこれ)俺を気にせず、羽ばたくせいで起きる風に巻き込まれて飛ばされるハチすら気にせず、マジキチカップルは呑気にフルフルを迎えた。

 

「フルフルさんだー!お久しぶりです!(´,,・ω・,,`)ノ」

「何でこんなところにいるんだよお前」

「ぶおっ」

「うーっ、くすぐったいのです!」

「死ね。マジ死ね」

 

すりすりとフルフルが夜ちゃんに頭をすり寄せる(怖ぇぇぇぇ!!)のに男はガンガンと蹴りを入れていた。ねえやめてよ!喧嘩売らないでよ!

 

 

「……ん?咲さん――フルフルさん、あのカニさんが欲しいみたいです」

「ハッ、欲しけりゃ自分で狩れよ!」

「でも――私はあげたいのです……だ、だめですか…?咲さん…」

「いいぞ」

「やったあ!」

 

 

置いてけぼりの俺などすでに忘れられている。

 

大きなフルフルは慣れた様子で長い首をカニに向けてもごもご(?)するだけで意思疎通(?)できた夜ちゃんのおねだりに男は簡単に許可した。もう駄目だこのカップル爆発しろ。

 

「ぶぉぉー」

「え、ギギさんにあげる?――ちょうどよかった!じゃあこのお花も届けてくれませんか?」

「どうやって届けんだよ夜……」

「爪に括りつければいいのです!(ドヤッ」

「可愛いな、夜」

「えっへん!」

 

きっと見たことないだろうから、と嬉しそうに花を括りつける夜ちゃんと、それをほっこりした顔で見つめる男――と大人しいフルフル。割とシュールである。

 

 

全てが終わる頃にはフルフルは無理やり丸め何とか上手く持ち上げると、羽をばさばささせてじっと二人を見つめていた。

 

「あと、ベリオロスさんたちも誘ってくださいね。皆で食べた方が美味しいのです」

「ぶぉー」

「それでは道中、お気をつけて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ていう、狩があったのよ……」

「ははっ、嘘つけよぅ!フルフルに話しかけてすり寄られてもきゃいきゃいできるハンターなんて――それも女の子だろ?ないわー」

「マジだって!あれ以来弟はロリに近寄らなくなったよ…」

「良い事じゃん――あ、そうそう」

「なに?」

「いやさ、そのフルフルで思い出したんだけどー、ユクモ村の近くに凍土があるじゃん?」

「うん?」

「その凍土の奥でさー、なんか煙が出てて、不思議に思った調査隊…おれの幼馴染が見に行ったらモンスター共がモンスター食ってるって」

「共食い!?」

「そいつビビりで新人だからもしかしてちゃあんと宴を見れなかったのかもな、本当はカニ鍋してたりして」

「ふーん……」

「フルフル、楽しんでたかねえ」

 

 

 

 

 

その後、カニは凍土のみんなの好物になったらしい…。

 

 

 






◆補足◆


・夜は元モンスターの名残で「聴力+腕力が人間以上」。狩りにもだいぶ慣れたのでちょっと好戦的。でもモンスターだったころの性分か、倒すからには「食べる」などの理由で以て狩ります。死を無駄にしないというか。
そして食いしん坊なので張り切ると目も当てられない……やろうと思えば大きい猿さんだって引きずり回せるよ!

・フルフルさんは雪山以外の所にも飛んで行ったり。新作(書ければ)への伏線ですたぶん。



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