雪の中からこんにちは、飼い主さん!   作:ものもらい

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※最後ら辺でホラー&グロ表現が少しあります。ご注意ください。





咲ちゃんインワンダーランド2

 

 

【天使がいる】

 

 

「パパ…おかあさん…」

「………ぃ…」

「パパ?」

「可愛いぃぃぃぃ!!!何だこれ、天使か、天使なのか!?」

「ぱ…パパ…?」

「ぷにぷに過ぎて可愛いなちくしょう!パパとかキちゃうだろぉぉぉぉぉぉ!!」

「……(((´;ω; `)」

「泣き顔も母親にそっくりとかぁぁぁぁ!母娘に挟まれて死にたい!!」

 

「おとうさーん?」

 

「……は?…ちっさい俺…じゃない、息子まで…?」

「!…お父さんまた姉ちゃんばっかり!俺も!俺もだっこ!」

「え、いや、俺……」

「俺は駄目なの!?…また、俺ばっかり差別するの…?」

「や、そんなつもりは…」

「お父さん俺のこと嫌いなんだ!!」

「思い込み激しいな!!」

「ばかばかっお父さんのばか!」

「てめっ」

 

 

「 さ く さ ん … … … ? 」

「ひっ」

 

 

 

 

 

【女神であり鬼でもある】

 

 

「よ、夜…!」

「またこの子のこと、差別したのですか…?」

「あ、いや、違…」

「では娘をこちらに。あなたの大事な息子を抱き上げて下さいな」

「だ、だって、おま…娘可愛いし…(ぼそっ」

「咲さん!!」

「はいっ!」

「何度も何度も同じ事を言わせないで下さい!!この子達は二人等しく!大事に大事に愛して下さいと何度も言ったでしょう!」

「は、はい…」

「お母さんっ」

「よしよし、酷いお父さんですね。今お母さんがお小言をしますから、お姉さんと一緒に遊んでて?」

「姉ちゃん……」

「………弟ちゃん、…一緒に…いいですか…?」

「………………しょ、しょーがねーな」

「ふふ、あなたは良い子。私の可愛い可愛い息子です。こんなお父さんのせいでめげないでね?」

「うん!」

「…………さあ、娘を下ろしてこちらに。座って下さいませ」

「いや、でも、」

「座りなさい」

「…………はい…」

 

 

 

 

 

【その頃、とある一家は】

 

 

 

「うっし、天気も絶好調だ。……山狩りにいくどー!」

「「いくどー!」」

「いや、山狩りじゃなくてピクニックね、ピクニック」

「娘っ子どもは武器(※練習用)を持ったかー?」

「ボウガン!」

「弓!」

「「ちゃんと持ってるの!」」

「……なんで双剣がいないんだろう…」

「女の子に双剣とか危ないでしょーがー」

「ていうかー、双剣とかダサいしー」

「アレが許されるのって若い時だけだよねー」

「「wwwww」」

「なんなのお前たちは!?そんなに父さんに自殺して欲しいの!?」

「ううん!(食卓事情上、あってはならないよねー)」

「お父さん大好きだよ!長生きしてね!(衛生事情上、あってはならないよねー)」

「…あれ、何か父さん泣きそう…」

「こら娘っ子!お父さん泣かしていいのはお母さんだけって言ったでしょうが!」

「う、ぅぅぅぅぅ…!やっぱりお前だけだよ、イー…」

 

「あっ、夕飯みっけ!」

「者共撃て―!」

「「撃てー!」」

「え、ちょ、待っ…」

 

 

 

 

 

【不甲斐ないぞ咲ちゃん!】

 

 

「――…でしょうに。…私があんなにお腹を痛めて産んだ子を、最初あんなに喜んでいたではありませんか。アレは演技だったんですか?それとも若い女の子がいいとかそういうことですか?もし前者ならば張り手、後者であれば離婚も辞しません」

「すいませんごめんなさいどっちでもないです俺には夜だけなので許して下さい本当にごめんなさい」

「あなたは何度もそう言ってばかり!今度ばかりは誠意を見せて下さい!今が一番大事な時なのに、あなたったら放置して放任して放棄して!あの子の何が嫌いなのです!?あなたそっくりの綺麗な髪に格好良い顔立ちに宝石みたいな瞳の、あの子のどこがお嫌いなのですか!?」

「……格好良い……お、俺、お前から見たら格好良いのk」

「あなたの容姿の話をしてるんじゃありません!!」

「はい…………」

「…………もういいです。咲さんはちゃんと愛情のある方だと信じていましたのに…」

「え、ちょ、ま、待て!夜!」

「ひゃっ、急に抱きつかないで下さい!」

「ごめんっ土下座でも何でもするから!見捨てないでくれ、俺、お前のことが好き過ぎて…どうしてもお前そっくりの娘ばかり…あ、いや、別に性的な目とかじゃないぞ?俺は夜以外には欲情出来ないから!夜一筋だから!だから俺を信じてくれ、な?なっ!?」

「……………」

「……………!」

「……………分かりました。"今回は"信じましょう」

「………はい」

「…それじゃあ、咲さんは"息子達"の面倒を見て下さいね」

「はい…」

「…………私は、お昼ご飯の生姜焼きを作りますから」

「えっ(※咲ちゃんの好物料理の一つ)」

「……ちゃんと面倒見ないと、変な味にしちゃいますからね、旦那様」←頬っぺちゅー

「………!」

 

 

 

 

 

【ムラっと来たんだよ!】

 

 

「きゃ―――!」

「ああもう夜は本当に可愛いなマジで可愛いお母さんになっても若々しくて美人だしていうか着物姿の人妻とかすっごい興奮するって今気付いたんだけどこのちょっと乱れた裾から覗く足袋と足がいいよな髪も綺麗に伸びててマジ―――」

「……お、お父さん!?」

「あん?」

「お父さんがお母さんを虐めてる―――!!」

「え、いや、確かに虐……違う!母さんを可愛がろうとし―――」

「息子の前で何て事を言おうとしてるのですか変態!」←ビンタ

「変た……くそっ、ちょっと強気で反抗的な夜も可愛い!!」

「こ、こらっ、だめ、何し―――」

「お父さんの変態!」

「「」」

「変態!変態!!姉ちゃんも言ってやれ!」

「ちょ、居るの!?言うな!お父さんそんな娘見たくな―――」

「…………|ω・`)」

「あっ」

「……………お父さん……気持ち悪い……|ω・`)」

「」

 

 

 

 

「……そうだよな、俺ってこの世で最も気持ち悪い男なんだ。おふくろを薬中で死なせるくらい不甲斐ないし親父を返り討ちにして悪評広めたり親父の愛人を殴り飛ばしたり暴言吐き捨てるくらい最低な男だし誰かの温もりが欲しくてウルクススに会いに行くくらい寂しい奴で夜を大事にするとか言って性的な目で見るくらい気持ち悪い男なんd」

 

「さ、咲さん、ごめんなさい、お、怒り過ぎました。別に気持ち悪いなんて思ってませんよ、咲さんは私の大事な大事な旦那様ですもの」

「お母さん!前もそう言って調子付いたお父さんに…同じ事されるんだから放っておこうよ!」

「……|ω・`)」

「こら、二人とも今は黙っているのっ……ね?咲さん、こちらに出て来て下さいな、夜は咲さんに甘えたくてしょうがないのです」

「…………とに?」

「ええ!咲さんの膝枕が欲しいです!」

「しょ、しょうがないな…!」

 

 

 

 

 

【出来るもん!】

 

 

「んん…むにゃ…」←咲ちゃんに膝枕して貰ってたら育児疲れで寝た

「ふがー」←お母さんの髪とお父さんの腹に無理矢理突っ込んで寝た息子

「くぅー…」←お父さんに寄りかかってお母さんの袖掴んで寝てる

「何コレ天国じゃねーか…!」←萌えてる

 

「ふぁ…さくひゃん……んー…」

「夢の中でも俺と一緒の夜…可愛い」

「ふんがっ」

「……おい、こいつはさっきから呼吸出来てんだろうな…」

「おとーさ……わるい…」

「ごめん…何かごめん…」

 

 

「おじゃましてもいいですか――――!!」

 

 

「…これは…若干低いけどスウィーツの声k」

 

「どうでもいいからさっさと入ろうや」

「「入ろうやー!」」

 

「…………これは…ババアの…」

「むぅ…さくひゃん…?」

「あ、夜。ごめん、起こした―――」

「狩りに行くど――――!!」

「」

「あ、イーシェさんこんにちは」

「夜ちゃんこんにちはー」

「「兎姉弟が寝てるぞー!」」

「あ、こらっ、寝てる子を起こすんじゃ…」

「イリスさんもこん―――その、格好は…?」

「…本当だ。…どうしたその浮浪者が山賊にあって何とか逃げてきたような格好は」

「そこまで酷くないよ!?」

「実はさー、山狩りしようとしたらジンオウガに会っちゃってね?無事に逃げたは良いんだけどさ、あの子人里に近い所にいるし…追っ払う為に力を貸してくんない?」

「…ギルドには?」

「村人に伝えてくれって頼んどいた」

「…実質被害が出たわけじゃないから額は少ないだろうけど、受けてくれる?」

「………別に、かまいやしねぇけど―――」

 

「―――俺も行く!」

 

「兎(弟)が行くならあたしも!」

「あたしも!」

「わ、わた…(置いてかれたくないから)私も…」

「ガキんちょが何言ってんの。アンタらみたいにピーピーでちっこいのがモンスター…それこそケルビだって倒せやしないよ。もっと大きくなってから言うんだね」

「そうですっ子供が遊びで行く所ではないのですよ!」

「でも!俺、毎日父さんと稽古した!俺だって出来るもん!」

「あたし、遠くからお父さんのマグカップ狙撃できたもん!」

「あたしなんかお父さんの刺繍を的にして頑張ったもん!」

「お前らそんなに父さんが嫌いなの!?」

「「大好きー!」」

「ほ、ほんt「そんなのはどうでもいいでしょーが!」…はい…」

 

「―――とにかくっガキどもは家でおねんねしてなっ。…悪いけど夜ちゃん、ウチの娘どもの面倒見ててくれる?」

「はい。かまいません」

「「えー!」」

「だまらっしゃい!」

「やだやだっ、俺も行く!俺だってジン、ジンオウ…倒せる!」

「名前も覚えれないのにか?…ほら、アレだ、お前はお母さんと姉ちゃんの面倒見て…な?」

「やだやだ!」

「あーもー、とりあえず15分後に此処に戻ってくるから。多分まだあそこら辺うろついてるからさ、徒歩で良い?」

「いいけど」

「やだやだやだ――――!!」

 

 

 

 

 

「……はい、留め具もしっかり閉めました」

「悪いな。……あの馬鹿息子は?」

「拗ねてて…双子ちゃんに弄られててお姉ちゃんに慰められてます…」

「頑固な所似たな…まあいい。行ってくる」

「…………」

「夜?」

「……お怪我、しないでください…」

「!」

「これからも、ずっとずっと、私には咲さんが必要です。…だから…きゅっ」

「あああもう可愛いなあ夜はッ!流石は俺の嫁だよちくしょー可愛い!!」

「」

「帰ってきたら俺とイチャイチャして布団の中d」

「迎えに来ましたーwwww」

「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

【だってあいつらのガキなんだぜ?】

 

 

「兎(弟)元気出せよー」

「なっさけなぁい!」

「……す、すねちゃ、だめ…です」

「……だって、俺、昨日父さんに『お前が立派なハンターになれる日も近い』って…」

「リップサービスに決まってるじゃんかよォ」

「」

「ていうかー、『近い』って言ってるだけで『なった』とは言ってないしー」

「」

「ふ、ふたりとも、この子のこといじめないでっ」

「だって兎(姉)…」

 

 

「……そうだ。おいっお前らモンスターの居所知ってんだろ!?」

「知ってるけどー?」

「大体ねー」

「俺を連れてけ!」

「「「!?」」」

「そこで俺だって出来る子なんだって、父さんに見せつけるんだ!俺だって…!」

「木剣でー?」

「無理無理。無理ゲー」

「そんな危ないこと…!」

「ようは追っ払えばいいんだろ!?上手く誘導すればいいだけじゃんか!」

「「それが難しいんだろチェリーボーイ」」

「「……ちぇりーぼーいって何…?」」

「知らなぁい」

「兎姉弟知らないのー?」

「……とにかくっ!場所を吐け場所を!」

「一本杉に向かうまでの道で会ったよー」

「一本杉な…!」

「だ、だめだってば―――」

 

 

「みなさーん。お菓子にマフィンを焼きましたよー?」

「「「「いただきまーす!!」」」」

 

 

 

 

 

【狩るか狩られるか】

 

 

「……ちっ、本当に居たのかよ?もう陽だっておっ死にそうだぞ」

「誰か千里眼持って来なかったのかよぉー、役立たずー」

「……ごめん…」

「…なんでお前が謝ってんだよ」

 

「……左か」

「え、何?咲ちゃんって獣並に察知出来る子なの?」

「……耳澄ませば聞こえんだろ、あの鼻息の荒さ」

「聞こえねーよ…」

「………とりあえず、俺が特攻、ヘタレは嫁を気にしつつ攻撃して来い」

「え?俺別に…」

「今回の太刀は長めだからきっと巻き込むぞ」

「サポートに徹しますッ」

「じゃあお姉さんはいつも通り援護…と見せかけて前線出てやろ」

「出んな」

 

「ぐおおおおおおお……」

 

「……何か獲物でも見つけたのか、まだ気付いてないな…閃光玉―――投げ、れるよな…?」

「もう投げれるもん!!」

「たまに失敗するけどね」

「―――~~くそっ、投げる―――「待て!」…はい!?」

 

 

「…お、俺が相手だ!」

「ぐるるるるるるるるる…」

「あたしもー」

「じゃああたしもー」

「…わた、しも…?」

 

「「「」」」←絶句した親たち

 

 

 

※その頃の兎ちゃん↓

 

「みなさーん、お風呂からそろそろ上がり……あら?」

 

「みなさんもう、上がって……」

 

「まさか……!!」

 

 

 

 

 

【これが狩り】

 

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「「「「ひっ」」」」

 

「…っ、チェダー!」

「狙い撃つぜ!」

「ぐおっ!?ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

「お、お父さ…!」

「こんの…悪ガキどもが―――!!」←スライディングで子供全員掬い取る

「こっちだ!」←ヘタレが注意を引く

「後ろ脚行きまーす」←淡々と狙撃

 

「お、お父さ…!」

「こんの…馬鹿!!俺の古い太刀(※当然子供には重くて抜けない)まで引っ張り出して…!母さんはどうした母さんは!?」

「………」

「他の子供まで巻き込んで…もしお前のせいで死んだらどうする!?お前一人の命じゃ責任とれねーんだぞ!?」

「………っ…、…」

「泣くな!…お前らもお前らだ!!なんでノコノコ付いてきた!?」

「だ、だって…」

「そりゃ…」

「………ごめん、なさい…」

「…反省会はひとまず後だ。お前らは近くの茂みに隠れてろ。絶対に出てくるな―――」

「父さん!!」

「なん…」

 

「ぐるおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「なっ―――ボディプレ…」

 

 

どごおおおおおおおん!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【母は強し】

 

 

「……か、かあ、さん………!?」

 

「ようやっと、見つける事が出来ました……」

「ぐ、ぐおおおお……っ」

「夜…!(…飛び上がってハンマーで殴った…だと…!?)」

「か、かあさ」

 

ぱんっ

 

「…母さんはさっきまで、あなたの叩かれた頬よりも胸が痛かったのですよ」

「……」

「お姉ちゃんが行き先を書き残していなかったら、今此処に間に会う事も出来ませんでした」

「………お、おかあ…」

「私がどれだけ……心配したことか……!――――このっ、馬鹿息子!!」

「っ!」

「っぐ、ぐぅぉぉぉぉぉぉぉ…!」

「…夜、お前は子供達を―――」

「咲さん。この子達をよろしくお願いします」

「えっ」

 

 

「…例えどんな子であろうと…私の可愛い子供達に牙を剥いた子は、絶対許しません」

 

 

「―――このハンマーで、………叩き伏せるのみ!!!」

 

 

「ちょ、ま、待て、お前しばらく狩りに出てな―――」

「いざ参らん!!」

「ちょっ」

「か、母さ――――ん!!」

 

 

どごぉっ

 

 

 

 

 

 

【母親舐めんな】

 

 

「ぐおっぐっ――ぐふぉおっ」←頬やられて顎やられて大きく仰け反った所で腹に一発

「せいっ!」

「げぶぇっ」←角欠けた

「はっ!」

「ぐぷっ」←脳味噌出そう…

 

「か、母さ……母さん……!!」←あまりの戦いぶりに怯える息子

「………((´;ω; `))」←怖すぎて震える娘

「」←言葉にならない夫

 

 

「―――こ、これは、どう援護…い、イーシェ―――」

「徹甲榴弾行きまーす」

「聞いてない!?」

「「あたしたちも!」」

「お前らはどこから沸いて出たの!?」

「「お母さんに続け―――!!」」

「……あれ、何これデジャブ……?」

 

 

 

 

【その後、ジンオウガ君の姿を見た者はいなかった…】

 

 

「まったく馬鹿娘どもが!下手したら死んでたんだからね!」

「「…はい…」」

「罰としてお父さんの家事手伝い一か月!お父さんの後ろ姿から女らしさを学びなさい!」

「ちょ、女らしさってどういうk」

「私に似てじゃじゃ馬な所も、丁度いい機会だから直す事だね!じゃじゃ馬が過ぎるとお嫁にいけないよ!」

「「……はーい」」

「伸ばすな!」

「「はい……」」

 

 

「…お、おか、さ…ご、ごめんなさい…おとうさんも、ごめんなさい…!」

「ごめんなさい…」

「まったくだ。ちょうど鉢合わなかったら死んでたんだぞ」

「「ごめんなさい……」」

「………」

「……あ、あの、ね。俺、…がんばって、ジンオウガ、追い払えたら、お父さんに、認めて……」

「………」

「……そ、そしたら、お母さんもいっぱい褒めてくれるって…だからぁ…!」

「………お馬鹿さん」

「!」

「そんな無茶して、追い払えたって。お母さんはあなたを褒めません。お父さんだって認めません」

「……!」

「お父さんは口下手な人で、分かり辛いかもしれないけれど、ちゃんとあなたを認めていますよ。稽古の後、いつも楽しそうにあなたの成長ぶりを教えてくれますもの」

「…えっ」

「………(…そうなのか…)」

「無理に背伸びなんかしないで。少しずつ少しずつ先を進むあなたが、頑張り屋で、手が傷だらけになっても我慢して泣かないあなたが、…お母さんは大好きだし、褒めてあげたい。……だから、もうこんな無理をしては駄目。―――お母さんと、約束できますか?」

「……うん…約束、する…!」

「…よしよし、あなたは良い子です。…叩いてごめんなさいね。…お姉ちゃんも。怖かったでしょう?」

「……お、かあさん…っ」

「ふふ、もう怖いのはお母さん達が倒したから、皆で帰りましょうね。今日は鍋ですよ」

「「うん!」」

 

「…じゃ、帰るか…ほら。」

「え…俺…」

「なんだ、俺とは手を繋ぎたくないのか」

「う…ううん!繋ぐ!」

「じゃあもう片方は私と。お姉ちゃんは腰が抜けたでしょうから、私が―――」

「いや、俺が背負う」

「………では、お願いしますね」

 

 

「さあ、お家に帰りましょう――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

 

「ふがっ」

 

「……ゆ、夢か……夢だよな…?」

 

「咲ちゃんー?」

「!…チェダー!?」

「何、寝てたの?」

「え、あっ…まあ…」

「もー、さっさと支度してって言ったでしょ。早くしないと遅れるよ?」

「遅れるって…何に?」

「何って…」

「…?」

 

 

「―――スウィーツと夜ちゃんの、結婚式」

 

 

「……え?」

「夜ちゃんの体調もあって伸びたけど…プロポーズして一年かー。いやーきっと花嫁衣装の夜ちゃん可愛いんだろうなー」

「……え?夜と…スウィーツ?何で!?」

「何って……夜ちゃんがアンタのこと好きって言ったのに、『ガキはお断り』ってアンタが…ていうか、"婚約者"に苗字(チェダー)呼びって余所余所しいんじゃないのー?」

「…は?」

「は?」

「……え、俺の、婚約者…」

「私だけど?アンタがプロポーズしてきたんじゃん。流れに飲まれてって感じだけど」

「………!?」

「まったくもう、変なこと言って私に心配かけさせないでよ。お腹の子に触るでしょう?」

「お腹の子って…俺の…!?」

「そうだけど」

「う……嘘だ!!俺がお前と!?無い無い、絶対無い!!」

「変な咲ちゃん。疑うんなら、ほら、」

「は…?おま、包丁で何する気―――ひぃっ」

「んっと、ここら辺だよね…ほら、見えるかな?もっと大きく切った方が良い?」

「………!!」

 

 

「ほら、お父さんにご挨拶してご覧?」

「……うぶあぁぁぁ」

「や、破っ………――――――――!!!」

 

 

 

 

 

 

 

【????】

 

 

「うっ…わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ひゃあっ」

「あぶっ」

「おわっ…吃驚した、起きるんなら静かに起きてよね」

「ば―――化け物ぉぉぉぉぉぉ!!」

「……え、こんなに美しいお姉様が化け物?」

「寝惚けていらっしゃるのでは…」

「だからってさー…寝惚けたイリスは私を見て何故か拝みだす可愛い子なのに…」

「えっ、俺拝んでたの!?」

「うん。むにゃむにゃ言いながら拝んでた」

 

 

「夜…夜っ、夜は!?」

「咲さん、夜は此処に居ますよ。どうしたのですか?」

「さ、さっき、お前とスウィーツが結婚して、ババアがババアから化け物ぐふっ」

「あんコラ?」

「さ、咲さん…悪い夢を見ていたのですよ。咲さん、さっき私を庇って頭を打ってしまったから…」

「……………夜」

「はい?」

「夜は、俺の…俺のだよな?他の…そこの女みたいな男と結婚なんて―――」

「ありえません」

 

 

「……ありえませんって言われた…いや、それでいいんだけど何か悲しい…」

「何よー浮気かこのやろー」

 

 

「…夜はいつまでも咲さんのものです。ずっとずっと咲さんと一緒に居ます」

「だよなっ。そう、だよな…」

「はいっ」

「……………うん、そうだ……」

 

 

 

 

 

 

 

「―――とか言って続きがありますオチだったらどうするよ?」

「チーズてめえこのしっとりした空気を壊すんじゃねーよ」

 

 

 

 

 

長い旅だったね(笑)咲ちゃん。

 


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