雪の中からこんにちは、飼い主さん!   作:ものもらい

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※シリアス(前回ほどじゃないよ!)

※暴力表現あり

※安心のオトメンと安心のお姉様ストーリー

※咲ちゃんマジで咲ちゃん

などなどありますのでご注意ください。






あの子の帰りを待ってるんだろうなー

 

 

俺はリオレウス。数の暴力で人間に捕まり―――実験動物(モンスター)に成り下がった。

 

 

麻酔のせいで動けない俺はリオレイアのいる檻の中に放り込まれ、……まあ、種馬的な?何かそんな感じのを期待されたワケだ。

 

…だけど先住民ことリオレイアはかなりの暴れっぷりで…何もしてないのに急に肩噛まれるわ尻尾でぶんぶん威嚇するわで、俺は怯えて部屋の隅に引っ込んだ。……マジで怖かった…。

 

今思えばアレは薬の副作用か何かの暴れっぷりだったのかもしれない…そんぐらいの暴れっぷりで、俺はじくじくする肩を庇いながら小さく蹲っていて。

 

その横を――――火炎がぶっ飛んできた時はもう、心臓止まるかと思った。

 

 

炎は暴れるリオレイアにぶつかり、悲鳴を上げてなお暴れる。俺は攻撃してきたモンスターに慌てて目を向けた。

 

 

『若いのが怯えてるでしょうが。少しは落ち着きな』

 

 

そこには――――檻を炎で溶かし、凛と此方を見るリオレイアが居た。

 

 

 

暴れる事に夢中になったリオレイアに、彼女は通常のリオレイアでは考えられぬ程の火炎で仕留め、道連れに何人か白い服の人間も殺した。殺して―――彼女は、燃え上がる火を淡々と見つめていた。

 

すぐさま天上から水が降ってきて、ぼんやりとしていた俺は彼女の檻に放り込まれ、……身構える俺を無視して、彼女は螺子が切れたように眠ってしまった。

 

後に知るが、これは彼女の長年の実験のせいだった。

 

 

 

 

 

―――そこから気まぐれな彼女との生活が始まった。

 

狭い檻だったから、どんなに頑張ってもどこか身体をくっつけてしまうし、食事は俺の口に合わない。始終人間に観察されるわ変な薬を投与されるわでストレスはどんどん溜まっていった―――けど。

 

少しだけ、幸せだった。

 

 

『我慢して食べなさい。此処じゃあ食べないとやっていけないんだよ』

『ほら、こっちに寄りかかって羽を伸ばしなさいな』

『どうせ怯えて何も出来ないんだから、放っておきなさい』

『……大丈夫、死にはしないから。……ね?』

 

 

打たれてじくじくする所を優しく舐めて、彼女はよく俺を励ましてくれた。もう嫌だと俺が泣いたら代わりに暴れて、人間から遠ざけてくれた。

そのせいで彼女が罰を受けても、彼女は何も言わないで傍に居させてくれた。

 

『君って私の弟に似てる』と教えてくれた彼女は、とてもとても優しくて、強い奴だった。

 

 

 

 

 

……ある日、彼女は血だらけの状態で帰って来た。

 

慌てて駆け寄って傷口を一生懸命舐めれば、彼女は『頑張って引き分けたんだよー』と能天気な、空元気な声をあげて。

 

彼女をこんな目に遭わせた―――いいや、実験で行われた試合の、その相手は。彼女と同じく古参のモンスター、ナルガだった。

 

 

彼女は息も荒く眠りにつき、段々反応も弱くなり―――それでも俺はずっと傷口を舐めていた。身体を温めていた。

 

……だけど白い服の人間に彼女は連れ出され、リオレイアが帰って来る事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

帰って来たのは、………一人の、人間の女だった。

 

 

 

―――戸惑った俺は彼女に近寄らなかった。檻の隅で彼女を見るだけだった。

 

最初は怯えていた彼女は、上手くない、千鳥足で俺に近づき、懐かしい凛とした瞳で俺を見上げた。俺は――――

 

 

人間になってしまった彼女を、絶対護ろうと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――護ろうと、思って。俺は人間が彼女を連れていかないように、昔の彼女のように牙を剥いた。

人間を真っ二つに引き裂いて、間違って飲んじゃっても、それで叩かれようが俺は彼女を連れて行かせなかった。

 

彼女は申し訳なさそうで、でもほっとした顔でよく俺を見た。俺はそんな彼女を羽の下に隠したり、たまに細い腕が俺の頭に伸ばそうとするのを黙って受けていたり。

 

言葉は通じないけれど、どこかで通じる仲になった――――頃。

 

 

俺は無力になった。

 

 

 

変な食い物を突っ込まれた後、雷を落とされた。………気付いたら、人間に、なった。

 

 

後に知るが、俺は彼女を護ろうと奮起するあまり、危険視され―――無力化しよう、という事で、人間に……。

 

白い部屋の隅でめそめそしていたら、白い服の人間が何故か彼女を連れて来てくれた。…連れて来てくれた人間は、人間たちの中でもまだ良心の残っていた奴だったらしい。

 

「元モンスターが人間同様の知識を得るか」とか何とかの名目で始まった実験で、俺は彼女に泣きついたり慰められたり寝かされたりした。完璧情けない男だった。

 

だけど彼女は「可愛い」の一言で済ませ、一緒に勉強した。昔の投薬の副作用で時々こてんと寝てしまうけど、ギリギリまで勉強していた。

 

そうして勉強していく内に、俺達は名前を持つ事にした。

 

俺は"イリス"。どっかの国の虹の女神様。……決めたのは勿論彼女だ。俺は反論せずに頷いてしまった…。

 

どうにも頭の上がらない彼女の名前は"イーシェ"。俺が付けた。一緒に読んだ物語に出てくる、空に住む巫女様の名前だ。

 

すっごく名前が女々しいけれど、…でも、彼女がくれた名前がとても誇らしかった。

 

 

―――ああ、俺は「イリス」……番号なんかじゃない。俺だけの、名前だ。

 

 

 

 

 

「……イリス、イーシェ。…おめでとう。これで君達は自由だ」

 

 

そう言われて、俺とイーシェは一緒に手を繋いであの施設を出た。

 

【保護区】に住む事になったけれど、外に出る時はめんどくさい手間がかかるけど、でも―――自由だった。

 

保護区はだだっ広くて、時折モンスターの姿になって(施設の時はモンスターの姿にならないよう変な薬を飲まされ続けたけど)空を飛んだりすることも出来る。

ちなみに被検体の俺らの中でもモンスターのままでいたい奴が何人かいて、空を飛んでいると偶に会えたりして、のんびり話したりもする。

 

―――偶に偉い人から仕事が与えられる以外は、特に何も無くて。皆が皆、今までの傷を癒すようにのんびり暮らしていた。

 

 

俺は当然イーシェの傍に居て、気まぐれで面倒臭がりの彼女の世話をして、甘える彼女に振り回されている。

今なんて雑誌を読んで彫刻に興味を持ったイーシェが「鉱石!鉱石!」と強請るから、しょうがなくリオレウスに姿を変えて上空を飛んでる。…ちなみに、今は帰り道だ。

 

 

 

「きゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!(´;ω; `)」

「……………」

 

 

…………。

 

…………な ん だ 、 ア レ ?

 

 

真っ黒兎(人間になって勉強してる頃に出会って以来の仲)とナルガ(イーシェをズタボロにしやがった猫野郎)が俺の遥か下で鬼ごっこをしている。…いや、そんな微笑ましいものじゃあない。

 

必死に泣きながら逃げる兎を仕留めんと迫る目つきの悪い猫…あ、目つき悪いのはしょうがないのか…じゃない、凶悪な猫が赤い光をあまりの速さに置き去りにしながら、たったかたったか逃げる兎を狙っている。

 

しかも埒が明かないと短気な猫は尻尾の棘を飛ばして兎を怯ませると、跳躍して兎に襲いかかった。

兎の首を噛んで固まった兎の、今度はその足を噛んで、ずる、ずるっと自分の巣に持ち帰ろうと……いやいやいや!!!

 

何してんのあいつ!?何してくれちゃってんの!?

 

 

「きゅ―――!きゅぅぅぅっ!!(;`・ω・´)ノ」

「………」

 

 

せめてもの抵抗にと腕をバンバンするその顔は、まだほんのちょっとの余裕がありそう―――だったが、猫野郎は俺に気付いて痛まない噛み方から痛む噛み方にしてお持ち帰りのスピードを上げた。

 

痛みに高い悲鳴を上げた兎は、「きゅぅぅ…きゅぅ……」とぽろぽろ泣きながら引き摺られ………。

 

 

『そこの誘拐犯!止まれぇぇぇぇぇ!!』

 

 

原則「喧嘩はしない」、「喧嘩に割り込まない(保護区が滅茶苦茶になるから)」を破り、俺は牽制に火炎を一つ吐いた。

 

猫野郎は兎を離すと、器用に彼女を転がして避ける。―――ああくそ、その余裕っぷりが苛々する!

 

 

『…何だよヘタレが』

『ヘタレじゃない!イリスだ!』

『はんっ、どうでもいいな―――…どっか行け』

『行くわけないだろ!?彼女をどうする気だ!』

『連れて帰る』

『そ、その後食う気だろ!?これだから肉食モンスターは嫌なんだ!』

『テメーも肉食だろうが……帰ったら怪我の治療して、風呂入れて食事を食べさせるだけだ』

『えっ』

『……ただ、もう帰さないが』

『だ―――駄目駄目!!そんな事させるか!』

『……じゃあ止めてみろよ。イーシェ以下のお前がなッ!』

 

 

ぶん、と投げた棘を火炎で燃やすと、近くの岩からあり得ない高さまで猫野郎は跳ねて、

 

 

『うっわ、お前、マジで弱いな』

 

 

―――猫に引っかかれた。

 

そのまま落ちる俺に尻尾の棘を飛ばし、俺の尾を咥えて岩に叩きつけ、喉に食い、つか、

 

 

 

 

 

………………え?

 

 

 

 

 

 

全く歯が立たないけど別に俺が弱いわけじゃない。あいつが強すぎるだけだ(キリッ) byイリス

 

 






キャラ紹介:

イリス:リオレウス。案外実験動物の中では一番運が良い子だったかも。
いっつも庇ってくれるイーシェに惚れた。イーシェが人間になってから騎士気取りをしてみるもすぐに駄目な子に……。今はイーシェの嫁として本編と同じ事してる。

戦闘経験はそれなりにあるけど、咲ちゃんの相手にはなれないレベル。よくしょんぼりしてるけどイーシェによしよしされて毎日頑張ってる健気な子。


イーシェ:リオレイア。咲ちゃんと同じ時期に実験動物に。同期の子はかなりの数死んでて、そんな中でも実験が上手くいった一握りの子。
咲ちゃんともタメ張れる。ていうか卑怯臭い事を平然とやる二人なので、お互いがお互いの戦闘を避けてる。
イリスを弟みたいに可愛がって自分を慰めていたんだけど、「頑張るお!(`・ω・´)」状態のイリスを見てちょっと惚れる。……本人にそんな事言わないけどね!

薬の副作用に今も悩まされてて、急にこてんと寝ちゃったりする。だから基本的にヒッキー生活。


※ちなみに咲ちゃんは一部の子とは交流を持ってるので、今回ヘタレウスの名前を知らない癖にイーシェお姉様の名前を覚えてても変なんかじゃないんだからね!


追記:

空のwww巫女様wwうぇwwテラwwヤバwww適当過ぎるwwwww本当にすいませんwwwwww


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