雪の中からこんにちは、飼い主さん!   作:ものもらい

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※暴力表現+血の描写あり
※皆がモンスター
※タイトル詐欺。鬱過ぎて死ねる(ラスト以外)
※厨二過ぎて死にたくなる(作者が)

動物(モンスター)実験的なアレ(ノリで読んでください)で捕獲された皆は色々改造されて人間にもなれる。
※偉い人が代替わりして、皆を実験から解放→色んな理由で何箇所にも在る保護区で人間らしく住んでもらってる。(※皆は同じ保護区)
※偶に偉い人から仕事的なアレを貰う
※他にも色々ありますが、とりあえずノリで流せる方だけどうぞ、





もんすたー☆ぱにっく!
にーんげーんっていーいーなー


 

 

私はウルクスス亜種のモンスターです。

 

この前、凍土でひとりぼっちで居た所をたくさんの人間が遊びに来てくれて―――気付いたら、この真っ白でいくつもの棒で閉ざされたお部屋、…ええと、檻と言うのですよね……その、白い檻の中で寝させていただきました。

 

 

お部屋はとっても温かくて、綺麗で。

私は「人間って優しいなあ」と、寝て食べて起きるだけの毎日を過ごしていたのです。

 

 

―――そしたらある日、真っ白な服を着た人間が大きなお部屋に連れてってくれて。

 

何するのかなーと思っていたら、壁が急に開いたのです。

 

 

そこにいたのは人間……だったのですが、たくさんのモンスターの血の匂いがして、とても怖くて。

人間が長い刃物を抜いた時、私はその刃の鋭さに吃驚して。……ぴーぴー泣いてしまったのです。

 

私の涙を拾う人間は宥めてくれないし、むしろ私を突っつくし。やだやだと動かない私に、あの怖い匂いのする人間は、「ぶすっ」と私のお腹に刃を突き刺しました。

 

痛くて熱くて、私はもう兎にも角にも辺り構わずもきゅもきゅし倒して――――色んな物が壊れて、色んな人間が吹き飛んで、それでも私は止まりませんでした。

 

 

何とか暴れる私の隙を突いて、一人の白い人間が血の匂いのする人間に喚くと、人間は頷きもせず――――急に、ナルガクルガに変わったのです。

 

 

『……おい、いい加減にしろ。迷惑なんだよ』

 

 

低い低い声で、『黙って俺に刺されてろ』と続けるナルガさん。

だけど私は怖い事を言うナルガさんに怯えもせず―――久し振りに 同族(モンスター)と会えた事が嬉しくて、ぎゅっと抱きつきました。

 

……いいえ、アレは体当たりと言うのかもしれませんね。

 

 

『触んなデブ!』

 

 

――――尻尾で叩かれたり噛みつかれたりしても、私は上に圧し掛かったりお腹をぐいぐい鼻で押してみたり、ゴロゴロゴローっと上にのし上がってから転がったり。

 

そうこうする間に白いお部屋は壊れていったのですが―――次第に、ナルガさんが私がただ遊んでいるだけだと気づいたらしく、適当に尻尾でぺしぺしと叩くくらいになりまして。

構って貰えたと思った私が部屋の事を考える訳も無く、ぷすっとした痛みと共に寝てしまうまで、ころころと転がっていたのです。

 

 

 

 

 

――――それ以来【危険度S級モンスター】というものになったらしい(後から聞いたのです)私は、あの綺麗な部屋から冷たくて薄暗い檻の中に、入れられてしまいました…。

 

 

環境の変化に、しょぼんとして丸まっていたら―――人間のうるさい声が聞こえて。

 

例のナルガさんが、私の檻の前で。開け離れた扉の前で、人間に怒鳴られて、殴られていました。

 

 

ナルガさんは手が縛られていて、されるがまま。……だけど、ずっと人間を睨みつけていて。

そのままじゃ死んじゃうのではないかと思った私が「止めてあげて」と近づいて、顔(と言っても鼻先ですが)を扉から出してみたのです。

 

すると人間は反対側の檻にまで逃げて、その檻に居るモンスターに吠えられて、前のめりにこけると―――真っ赤な顔で、私の鼻を蹴り上げました。

 

(´;ω; `)となった私は、鼻先を引っ込めて、今度は蹴られても痛くない手で兎パンチ。

……私はちょいちょいってしただけの心算だったのですが―――あまりの威力に吹っ飛んだ人間さん、真っ青の顔でナルガさんを檻に突っ込んで、さっさと帰ってしまいました。

 

 

(´・ω・`)?と首を傾げる私は、何故か笑いを堪えるナルガさんを黙って迎え入れたのです。

 

本当は急いですり寄ってみたかったけれど、あの人間のように怒られるのが怖くて、どうしようかとそわそわしてて。

 

ナルガさんがゆっくり私の様子を窺いながら近寄ってくれるまで、動けないでいました。

 

 

「―――――」

 

 

何かを呟いて、そっとあの―――刺された、お腹に触れるナルガさん。

 

そのままゆっくり擦ってくれる手が気持ち良くて、私は頬をすりすりしたのです。

 

ナルガさんはびくっと固まっても、怒らずにされるがままで。ナルガさんの血の滲む場所を舐めてあげたら、ぎこちなく頭を撫でてくれました。

 

撫でるナルガさんの息が白くなるほど―――時間が経てば経つほどに寒くなる檻の中。もふもふの毛が無いナルガさんは辛いだろうと思って……その日から、私達はずっと寄り添い合って過ごしたのです。

 

 

もふもふの私の毛はとても温かかったようで―――いつもひとりぼっちの私が、初めて誰かの役に立てて、とてもとても嬉しかったのでした。

 

 

 

 

 

 

――――ナルガさんは、ちょくちょく檻から出されます。

 

その度に血だらけだったり、顔色が真っ白だったり。一度も出ていく時と同じ状態で帰って来た事は無くて。

血だらけの身体を舐めとって、ふらふらの身体を私の毛に埋めてあげて、寒風から庇ってあげたりするぐらいしか、私には出来なかったのです。

 

でも私がどんなに身体を舐めても、温めてあげても、―――ナルガさんの調子が悪いままの日が続いて。

 

それでも無理矢理連れてこうとする人間に、私は初めて牙を剥きました。………ええ、私は。

 

 

私は―――鞭を取り出して、ナルガさんを打った人間を、この手で。引き裂いて殺してしまったのです。

 

 

驚いて目を見開いたナルガさんしか正直覚えていないのですが……私は他にも居た人間を弾き飛ばし、噛みつき―――凄惨な檻の中で、ずっとずっと暴れていた、気がします。

 

鼻息荒い私を抱きしめて、人間(少し違うかもしれませんが)で初めて宥めてくれたナルガさんの腕の中で、やっと事態が飲み込めた私は、怯えて丸くなって。

たくさんの涙が零れたけど、ナルガさんはあの人間達とは違って、一生懸命涙を拭ってくれたのです。

 

――――私達が引き離される、その時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから。それから、……ほとんど、覚えていません。

 

嫌がる私に無理矢理食べ物を食べさせ、雷光を落とされたのは覚えているのです。

 

 

そして大きな身体が小さくなって、黒髪の包帯だらけの人間になって。

 

点滴を毎日打たれて、夢にあの真っ赤の檻を思い出して―――私は。

 

 

―――――自分を守る為に。…無意識に、その記憶を堅く閉ざしました。

 

 

だけど、何らかの拍子で現れる檻や白い人間たち、真っ赤な惨劇に怯えて、息が苦しくなる事や、寂しくて泣いてしまう事があって。

 

 

………その度に、セピアゴールドの男の人が私を抱きしめに、夢の中に会いに来てくれるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の髪が腰のくびれ程にまで伸びた頃。

 

相変わらず薬品の匂いがする部屋で、私は枕を胸に抱きしめて、ぼんやりしていました。

 

今日は何だか皆慌ただしそうで、私に優しくしてくれる人の服を掴んで「どうしたのですか?」と聞いたら、周りの人に聞こえないように「やっと君が自由になれるんだよ」と自分の事のように喜んでて。

 

「自由ってなあに?」と首を傾げたら、勢いよく扉が開け放たれました。

 

 

皆が動きを止める中、汗だくの―――夢の中で慰めてくれた男の人が、ふらつきながら私に近づいて。

 

傷だらけの腕を伸ばして、強く腕を引っ張ると、彼は破顔して「はっ…離して!離して離して!!」辺りの点滴を倒して暴れる私に驚いて「来ないでッやだやだ、やだぁっ!!」…その驚いた顔が、余計にあの、赤い檻を思い出して「嫌!やだやだ―――」

 

 

――――過呼吸を起こした私が、新たに住む事になる【保護区】の病院から与えられた家に移り住んで、のんびり散歩をするまで、彼に会う事は無かったのです。

 

 

 

 

 

 

「今日のご飯は林檎、お夕飯も林檎!」

「……兎ちゃんよぉ、それじゃあまた倒れちまうぞ」

「…(´・ω・`)」

「肉食えとは無理に言わんけど、せめてパンとかさ、林檎以外にも食おうぜ」

「……(´・ω・`)」

「お嬢ちゃん、その顔止めような。おじさん罪悪感で苦しくなるんだ」

 

 

な?と頭を撫でてくれるこのおじさんは【監視】さん。変な人が 私達(モンスター)を攫わないように、守ってくれる人。

私に文字と読み方を教えてくれた人で、「先生」と呼んでいるのです。

 

 

「先生は、今日の献立…」

「肉だぞー!」

「……(´・ω・`)」

 

 

「これ、お裾分け」と渡された包みの中は、きっとお肉なのです……。優しくて温かくて、尊敬してて…大好きな人なのですが、こればっかりはちょっと……。

 

 

…だけど突き返す訳にもいかないので、そのままペコリと頭を下げてお家に帰る事にしました。

 

 

イーシェさんの所に持って行ったら、イリスさんが何とかしてくれるかな、と能天気に歩きながら。

 

 

「―――――おい」

 

 

その途中、低い声の割には優しく肩を掴まれ―――私は急に沸いた恐怖を隠しながら、恐る恐る振り向いたのです……。

 

 

 

 

 

 

こんなお話は如何でしょう?

 

 






キャラ紹介:

兎ちゃん(=夜):珍しいウルクスス亜種。ハブられている所を捕獲され、大きい見た目に反し大人しい子だったので、わりと良い部屋を貰っていた。
ナルガさん(=咲)の実験の為に試験場に連れ出されてから危険認定を貰い、これまた実験でナルガさん改め咲ちゃんと同じ檻に入れられる。

その大人しさから殺めた事のない兎ちゃん改め夜は「殺した」事実に押し潰されて、自己を守る為に記憶を封印。
偶にトラウマ的なアレで暴れたり過呼吸になったり、無理に食事をさせても泣いてワーワー騒ぎを起こしてしまう為、点滴やら何やらで面倒を見てもらっていた。=実験は中断されていた。
※夜ちゃんが人間にされたのは暴れる危険性から、無力化を図る為に……みたいな?←

薬のせいでぽんやりとした子になり、元々のんびりさんでもあるせいでだいぶ危なっかしい子になってしまった。人間になってから良くしてくれる人間が居た為、人間に嫌悪感とか持っていない。むしろ懐いてる。



ナルガさん(=咲):ナルガクルガ。古参の実験動物ちゃん。実験が上手くいった集大成の子なので、あっちにこっちに引っ張られた結果、荒んじゃった子。
身体能力向上云々の実験で夜と初めて出会うも、今までのモンスターと同じく無感動に殺そうとしたら暴れる→じゃれつくのコンボで「もういいや、めんどくせ」になった。

反抗的な子なのでよく殴られる。同じモンスターのせいか夜の行動の無邪気さに気付いて、新鮮さを感じたというか懐かしさを感じたというか……。
夜の親身な行動に心開いていくわけだけども、夜が騒ぎを起こして引き離されてから、好きだったんだと気付く→夜の面倒を見てた医師が堪りかねて夜の事を教えてあげる→夜に出会うまで何が何でも生きる→やった!自由になったよ!…と、なり。

夜が咲と過ごした今までがトラウマと化していたせいで、大ショック。ストーカー化。……に、なる予定。


更に備考:

白い人達:科学者的なアレ
監視さん:夜には「部外者の監視」と言ったけど、本当はモンスターの監視も含まれる。全員ハンターさん。
保護区: 動物(モンスター)実験の被害者の為の施設。国からの援助とかで生活が成り立ってたり。
モンスター:実験の結果、普通のモンスターよりも強く、人間になれたりする。何故か外見が変わらない=実験の弊害で、きっと「そういうもの」になっちゃった。


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