雪の中からこんにちは、飼い主さん!   作:ものもらい

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※オトメンのせいで少しばかり艶やかです。





泣き虫な男の子は好きですか?

 

 

皆さん。前回の話を覚えているでしょうか?

 

急に神話の話を振り、水の中にばっしゃーんしてくれたチェダー、それを助けに水の中にダイブ(※装備のまま)した俺、若干溺れかけつつその白い肌に手を伸ばし―――変な意味じゃ無く!白い肌に指を這わ―――あああああ!!だからッ………きゅ、救助、しました!

 

 

運悪く、…いや、幸いにも水を大量に飲んで無かったようで、チェダーは白い喉を曝して咽てた。銀髪が神懸かり的、芸術的にチェダーの胸とか隠してて、残念なような良かったような……。

 

「イ……リ、ス」

「はいっ」

「……ごめん、貧血……」

 

 

貧血気味なら入浴したいとか言うなよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん……」

 

 

貧血気味のチェダーを抱きかかえて猛ダッシュ、チェダーが着替えている間にチェダーの装備を取りに行ったら、パンツだけ穿いて紫の長いガウンを着て丸まって……胸も着て下さい!!俺を殺したいのかお前は!?

 

 

「イリス、ごめん、鞄からアレとって……」

「はい」

 

 

でも即答しちゃう俺くたばれ。「はい」以外の言葉が喋れない俺爆発しろ。あと煙管は見つかっても薬が見つけられない役立たずな俺も失せろ。

 

「えっと、あれ、……どこだ……」

 

しかもこういう時に限って俺の手際は悪い。

前も三人で狩りに行ってチェダーが貧血で倒れた時も、オロオロしてる俺に咲が「役立たずは失せろ。もしくは一人で狩ってこい」って冷めた目で言われるくらいだ。

 

チェダーは「こうして手を握ってくれるだけでいいよ」って笑ってくれたけど……。

 

 

――――俺も、咲みたいになれたら、いいのにな……。

 

 

火を点けて、その煙から溢れる甘い香りが、とても苦いものに思えた。

 

紫煙に包まれながら、チェダーは震える唇で咥え、吸ったり吐いたり、ぼんやりしてる。

 

 

「大丈夫か……?」

「ん……」

 

 

伏せ目で咥えるチェダーは相変わらず寝そべったまま、腕を組み―――豊かな、胸が。

 

 

「エロイ?」

「くたばれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そうして、とにもかくにも何とかその夜は越せたわけだ。

 

アレからチェダーは部屋に籠りっぱなしで、俺はちょくちょくやって来てはチェダーの身の回りの事をしていた。

 

料理も栄養満点、あまりチェダーが嫌いな味にならないように手を加えまくり、取り寄せたヘリオトロープを贈ってみたりもした。

 

「……私、ヘリオトロープ、大好きだよ」

 

薔薇が好きかなと思ったが、嬉しそうに受け取ってくれて安心した。

 

 

 

「――――バスケット、終わったぁ…」

 

あまり家には長いしないで(迷惑だろうし)自宅でせっせと刺繍、刺繍、刺繍――――やっとバスケット(リボンで花を繕い、ビーズで品の良いキラキラ感を出した)の制作が終わり、手鏡にはバスケットのデザインをもっと大人っぽくした風で繕う事にした。

 

やがて手鏡の制作も終わり、ブローチに猫を繕っていた頃。

 

 

 

――――夜が、何処かに消えてしまった。

 

 

チェダーも責任を感じてるのか、ここ暫く、とても暗い。咲なんて暗いの吹っ飛んでイっちゃってる。包丁を研いで目がヤバい咲なんて一生見たくなかった。

 

 

村の雰囲気が暗くなって――――やっと、咲の知り合いが夜を見つけたが……状況はよろしくないらしい。

 

俺はギルドの気球に乗り込む咲を見ながら、不安と焦りと、どこか安心した横顔を見つめていた。

 

 

「気を付けてね。飛竜に喧嘩売っちゃ駄目だよ」

「売らねーよ」

「事が上手く丸まったら教えろよ」

「ああ。てめーは俺が帰る頃にはまともなハンターになってろよ」

「ま、まともなハンターだろうが!」

「ハっ」

 

 

鼻で笑って、「村の事、頼んだ」とだけ言って空に上がった咲。

 

不安そうに見守っていたチェダーの横顔がどうにも気に食わなかったけど―――まあ不謹慎というか、拗ねるのもアレだし黙っていた。

 

チェダーは普段は能天気だけど、案外心配性な奴だし―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲ちゃん、どうしてるかなー?」

「さあ…」

「あの子って変に喧嘩っ早いから。……何にも無いといいけど」

 

 

――――だから、そんな所が嫌いなんだ。

 

チェダーはいっつもそうだ。

咲が風邪を引いた時は何度も家を覗いて心配そうだったのに、俺が風邪でダウンした時はこれほど心配しなかった。……俺が傍にいてくれって泣きつかないと、傍にいてくれなかった。

 

夜の失踪だって―――俺が迷子になって森丘をずっと一人で彷徨ってた時は「やれやれ」って感じで、夜が明けてから欠伸を漏らすくらい能天気に迎えに来たくせに。夜の時は咲と一緒になって、日夜構わず探し続けた。

 

 

(……俺は、どうでもいいのか?)

 

 

――――俺がこうして食事を作って家事までして、こんなに尽くしてるのに。夜はまだしも、咲ばかり優遇するのか?俺はチェダーにとって何なんだ?

 

ブローチがどんどん歪んで見えるくらい、俺は、

 

 

「咲ちゃん不器用だし。ちゃんと仲直りできるかな…?」

「………」

「咲ちゃん、夜ちゃんの事ばかりでちゃんと食事とか睡眠とかとれてないんじゃないかな…」

「………」

「…ねえ、咲ちゃん――――」

 

 

落ちる前に、俺はドンッとテーブルを叩きつけて。

 

ソファで煙管を口に花を見つめていたチェダーに近づき、吃驚して俺を見上げる姿もぼんやり歪んだまま、思いっきり吐き捨てた。

 

 

「咲ちゃん咲ちゃんってうるさいんだよ!」

「へ?」

「こんなにッお前の為にって尽くしているのにッお前はいっつもいっつも『咲、咲』って!お前に何もしてくれない男の方ばかり気にして!!…俺はお前にとって何なんだよ、俺はお前の召使じゃない。俺の行動すべてに下心があるに決まってんだろ、見返り求めて尽くしてるに決まってんだろ!?」

「ちょ、す、スウィーツ、落ち着いて…」

「別にだからって無理に応えてくれなくてもいいさ―――だけどな、普通、俺といる時に俺以外の男の話をするなよ!それぐらいッそれぐらいの……思いやりを、見せてくれたって…ッ…いいだろ……!」

「イリ――――」

 

 

――――宥めようと、伸ばされた手を掴んで。

 

大きく見開いたチェダーの、薔薇色の唇に、思いのままに。

 

「……、…」

 

床に転がり落ちて、高い音を奏でた煙管だけが、やけに現実味があった。

 

 

 

 

 

 

 

わんこだって怒るんだ!…の、巻。

 

 






補足:

貧血⇒貧血なのか喘息持ちなのか過呼吸なのか?→特に考えて無い。とにかく身体が弱くて、それを補う為に煙管型の薬で頑張ってる。

何でヘリオトロープ?⇒花言葉の関係上。チェダーさんはその意味を知ってる上で受け取ったんだよ!

チェダーさんって悪女?⇒↑の花言葉の意味を知ってる上で受け取った事を考えると、悪女では無いかな!


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