まどか☆マギカ in Magic Land   作:ウボハチ

4 / 14
この話はぼのぼのいかせてもらおうと思います。
駄文ですが、よろしくお願いします。


それぞれの足取り

見滝原のオフィス街、そこには多くの店が立ち並んでいた。この世界にも『日本銀行』というものは存在するらしいので、マミが持っているお金はちゃんと使えるようだ。

そんなマミはなぎさの我儘により、一軒のパスタ屋に入っていった。パスタ屋だというのに、店の中から異常なほどチーズの匂いがするのだ。おそらくなぎさはこれにつられたのだろう。二人は店に入って席に座ると、マミはミートソーススパゲッティを、なぎさはゴルゴンゾーラチーズがふんだんに使われたペンネを頼んだ。

 

「美味しいわね」

「はい!! この絶妙な味わい……やっぱりチーズは最高なのです!!」

 

なぎさは非常に喜んだ様子でペンネを頬張る。そんな光景をマミは笑みを浮かべながら見ていた。

 

「ふふっ、ここにしてよかったわ」

 

マミはなぎさに聞こえぬようぼそっと呟く。なぎさの方を見ると、彼女の口周りにチーズがくっついていた。マミは「もうっ」といいながら手元にあったおしぼりをとり、彼女の口周りについたチーズを拭き取った。拭き取られている時のなぎさはなぜか顔を赤らめながらじっとしており、それを見ているのが何よりの幸せだったのか、マミは「ふふっ」と声を漏らした。

 

「さて、食べ終わったことだし、この見滝原の探索でもしましょうか。あの『魔法使い』や鹿目さんの手掛かりがどこかにあるかもしれないわ」

「はいなのです」

 

ご飯を食べ終わった二人は会計を済ませると、一度オフィス街を離れ、近くの公園を探索し始めた。しかし、そう簡単にお目当てのものは見つからない。探し始めてから数時間経ち、少し疲れた二人は近くのベンチに座って休憩することにした。

 

「あれっ、ない……ない!!」

「あら? あの人、何か落としちゃったのかしら?」

 

マミがふと辺りを見回した時、一人の女性が顔を下に向けながら何かを探していた。なぎさがベンチの下を覗いた時、そこに一つの指輪が落ちていた。チーズのような絵柄が指輪に記されている。彼女はそれを拾うと、その女性の元へ向かった。

 

「もしかして探しているのはこれなのですか?」

 

女性はなぎさの手に握られた指輪をみて、大いに感激した。

 

「えっ……こ、これよっ!! 見つけてくれてありがと……」

 

礼を言おうとした女性がなぎさの顔を見た時、彼女は言葉を失ってしまった。なぎさも女性の顔を見るや否や、動揺した様子で唇を震わせる。

 

「お、お母さん?」

「なぎさ? 嘘……本当になぎさなの?」

「えっ、えっ?」

 

女性となぎさの間で異様な空気が流れた。ベンチに座っているマミは何が起こったか理解できず、自分一人だけが取り残されたかのような感覚に陥った。

 

 

 

 

 

『チーズ・ナウ』

「わーい、チーズなのです!!」

 

女性は先程なぎさから受け取った指輪をはめ、ベルトのバックル部に翳した。すると、なぎさの目の前にはいろんな種類のチーズが出現する。彼女は歓喜のあまり現れたチーズを全て抱えると、口の中に頬張っていった。

 

「魔宝石には色々な種類があるって聞きましたけど、まさかこんなものまであるなんて……あっ、なぎさちゃん。そんなチーズを一気に入れちゃ駄目でしょ?」

「チーズが目の前にあったら、食べるしかないのです」

 

なぎさはそう言って胸を張っている。彼女はすでに先程出てきたチーズは食べてしまった様子だ。そのせいか、彼女のお腹周りが少し膨れている。そんな彼女を見た女性は笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、このなぎさもチーズが好きなのね。全然変わらないわ……あの子、大きくなったらこの指輪を使って沢山チーズを出して、美味しい料理を作ってくれるって言ってくれたのに……」

「あの、この世界の……いえ、あなたのなぎさちゃんは?」

 

女性はそう話すと、悲しげな表情をし始め、目から涙を零した。そんな女性を心配そうに見つめているマミはその訳を尋ねた。

 

「なぎさは……」

「私がどうしたのです?」

 

自分の名前が出てきたため、なぎさは咄嗟に反応してしまう。そんな彼女を見ると、女性は両手で口を抑え、目一杯涙を流した。

 

「なぎさ……うっ、エグッ……」

 

泣いている女性を心配するマミとなぎさ。マミは彼女の背中を摩り、なぎさは手をぎゅっと握った。しばらくして落ち着きを取り戻した女性は、ポケットからハンカチを取り出して涙を拭うと、話を始めた。

 

「なぎさは絶望して魔女になってしまったの……『古の魔法使い』の手によって……」

「い、『古の魔法使い』!!」

 

彼女の口から出てきたのは、この見滝原で恐れられている魔法使いのことだった。こんなところから情報が手に入ると思わなかったマミは、女性の肩に自分の手をのせ、彼女の眸を見つめた。

 

「その話……詳しく聞かせてもらえませんか?」

「えっ……」

 

マミの行動に一瞬困惑してしまう女性だったが、彼女の真剣の表情を見てゆっくりと頭を縦に振った。

 

「わかったわ。それは今から二週間前……学校が終わって帰宅する頃の時間。あの子、いつまで経っても家に帰ってこなかったんです。同じ学校に通っている子の母親にも遊びに来てないか聞いたんですが、全然見つからなくて……だから心配になって街中を探し回りました。そしたらあの子、隣町の公園で倒れていたんです。慌ててあの子の元へいきましたが、すでに手遅れ。なぎさのソウルジェムは穢れを溜め込んだせいで、魔女になりかけていたの」

 

女性はその時の体験談を淡々と語り始めた。そんな女性の顔はとても辛そうだった。マミだけでなくなぎさも姿勢を正して黙って聞いている。

 

「私は訳が分からず、無我夢中であの子を抱きしめた。そしたらあの子、私にこう言ったの……『お母さん、ごめんなさい……私、ライオンの姿をした魔法使いに負けちゃった……お母さんを驚かせようとせっかく指輪を作ったのに……』って……」

 

そういうと、女性は手に嵌められた先程の指輪を二人にちらつかせた。

 

「その指輪にはそんな大事な思いが込められていたのですか。それなのに私……」

 

罪悪感にかられたのか、なぎさは非常に申し訳なさそうに頭を下げた。女性はそんな彼女の頭を優しく撫でると、自身の頭を横に振る。

 

「ううん、いいの。別の世界とはいえ、もう一度なぎさと会えたから……」

 

女性はなぎさに笑みを見せているが、ある程度無理してその表情を作っているのだろうとなぎさは察した。

 

「そのあとなぎさちゃんは?」

「私に魔法少女が危ないってことを伝えて、この指輪を渡すと魔女になってしまったわ。本当は倒さなくちゃいけないはずなのに私……あの子の魔女を逃がしたの」

 

女性は話を終えると、目に涙を浮かべた。なぎさは慌ててハンカチを取り出し、彼女の涙を拭き取る。その行為に女性は「ありがとう、なぎさ」と小さな声で伝えた。

 

「そう……ですか」

「今もあの子はどこかを彷徨っているのかもしれない。けどいつか、元の姿で私の前に来てくれる。そう信じているから、私は絶望しないで頑張ろうと思っているの」

 

そう語る女性だが、そこに覇気のようなものは感じられない。すると、なぎさは女性の両手を強く握り、満面の笑みを見せた。

 

「大丈夫なのです!! きっとそのなぎさも元の姿でお母さんの前へ戻ってくるのです!!」

「なぎさ……ありがとね」

 

なぎさに励まされた女性はにっこりと笑顔を見せ、彼女に礼を言った。女性の頬には涙が通っているが、おそらく先程の涙とは別物だろう。マミとなぎさはベンチから立ち上がると、しばらくその女性と行動することにした。

 

 

 

 

 

そんな三人を木の陰から眺めているものがいた。髪は金色に染まって、後ろと両サイドは刈り上げている。黄色の長袖Tシャツの上に赤いベスト着こなし、野生感溢れる男だった。

 

 

 

 

 

「へぇ、この世界じゃ眠ればソウルジェムの穢れを浄化できるんだ」

 

その頃さやか達は魔女探しをしていた。魔女は元の世界と同様に魔力を探って見つけるらしい。それは魔法少女だけでなく魔法使いにもできるようだ。

 

「じゃあ、わざわざ魔女を倒さなくてもあたし達生き残れるんだ。なら行かなくてもよくね?」

「そうはいかないよ。ファントムや魔女は他の生き物に対して色々な被害を与えてくるからね」

 

真面目な表情で恭介はそう答える。その隣でクスクスと笑う仁美はその話にこう付け足した。

 

「あと、学校の課題になってますし」

 

仁美の言葉に恭介は少し顔を顰める。彼の表情を見てさやかは首を傾げた。

 

「学校も酷いことさせるもんですなぁ。そういえば恭介ってヴァイオリンやってるの?」

「うん。今度発表会もあるんだけど……」

 

さやかの問いに恭介はばつの悪そうな顔をする。その理由が仁美の話を聞いて理解できた。

 

「上条君、ヴァイオリンの練習に時間を費やしているせいで学校の授業についていけず、このような課題を出されてしまったんですの」

「それで志筑さんに手伝って貰っているんだ……」

「あちゃあ、こっちの恭介はちょっと残念な感じなのかぁ」

 

そう答えるさやかの顔は少しにやけていた。彼女は恭介の前に出ると、冷やかしの言葉を投げかける。彼女の言葉は彼の痛い所をついているため反論できず困っていた。そんな光景を見ていた杏子が一言。

 

「まるでさやかだな」

「なんだと!!」

 

杏子の言葉を聞いて、さやかは彼女に襲い掛かる。杏子もそれに応戦すると、またも乱闘が勃発した。止めることができずオロオロしている恭介の隣で仁美はその光景を楽しんで見ていた。すると、四人の前に大きな影が現れる。

 

「あら、話している間に魔女から出てきましたわ」

 

四人の前に現れたのは、ちょうど探していた魔女だった。犬のような姿、形をしている。

 

「へっ、手間が省けたってもんだな。早くあいつやっちまおうぜ!!」

 

杏子は立ち上がると、興奮した様子で魔女の方へ向いた。彼女の目の前にはさやかが転がっている。恐らく、また負けてしまったのだろう。

 

「この世界の魔女は結界いらないんだね。なるほど……じゃあ、いきますか!!」

 

そういうと、さやかはすぐに起き上った。杏子にやられたにも関わらず、彼女はピンピンとしている。

さやか、杏子、仁美はそれぞれ指輪をソウルジェムに変えると、魔法少女の姿になった。恭介は右手に嵌めた指輪をベルトに翳してバックル部を浮かび上がらせると、琥珀色の指輪を取り出す。彼はパームオーサーの向きを操作して、その指輪を左手の中指に嵌めた。

 

「変身!!」

 

『チェンジ・ナウ』

 

ベルトから音声が流れると同時にオレンジ色の魔法陣が目の前に出現すると、そのまま恭介の体を包み込み、メイジの姿に変わった。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

さやかは長い刀身の剣を手元に召喚させると、先陣を切って魔女の方へ向かっていった。魔女を切り裂こうと彼女は剣を振りかざすが、ギリギリのところで避けられてしまう。魔女はそのまま仁美の方へ向かった。

 

「仁美、そっち行ったよ!!」

「わかりましたわ。では、いきますよ……」

 

「こぉ……」とゆっくり息を整え、拳を前に出してファイティングポーズをとると、仁美は魔女との間合いをつめてお得意のボディーブローをかました。魔女相手でも彼女の技は通じるらしく、その光景を見たさやかは震えあがる。

仁美を相手するのが嫌になったのか、魔女は体の向きを変えると、今度は杏子に襲い掛かる。魔女が迫ってくる中、彼女は八重歯を見せて笑みを浮かべた。

 

「編み込み結界!!」

 

杏子は魔女が自分の元へ辿り着く一歩手前で、マフラーの網目のように組まれた結界を発動させた。急に現れた結界に驚く魔女だったが時すでに遅く、突進する形で結界に絡まり、地面に転がってしまう。どう足掻いても魔女はそこから抜け出せそうにない。

 

「みんな、離れて!!」

恭介の合図で三人は一旦魔女から距離を取ると、彼は右手に新たな指輪を嵌めた。その指輪は今まで使っていたものと違い、魔宝石が青かった。パームオーサーの向きを操作して、『ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!』の音声が流れると同時に彼はその指輪をバックル部に翳す。

 

『イエス! ブリザード!! アンダースタンド?』

 

ベルトが反応すると、恭介は右手を前に出して青い魔法陣を出現させる。その魔法陣が身動きの取れない魔女の前にくると、中から冷気を放った。冷気を受けた魔女は凍えだし、やがて体中が氷のように固まってしまった。

 

「ナイス、恭介!! よーし、トドメいっちゃいますよ。仁美、杏子!!」

「はいですわ!」

「言われなくても!!」

 

二人はさやかの言葉に反応すると、それぞれの武器を構え、凍っている魔女の頭部に向けて容赦なく振り下ろした。魔女の頭に亀裂が入ると、それが体全体まで広がり粉々に崩れ去った。

 

「ふぅ……ありがとう、みんな。お陰で課題が終わったよ」

 

恭介は元の姿に戻ると、三人の前に来て礼を言った。さやかと杏子もすでに元の姿に戻っている。

 

「あたし達は魔女の方しか手伝ってないけどね」

 

さやかがそう答える中、元の姿に戻った仁美は笑みを絶やさずに注意をする。

 

「今度はこういうことが無いよう気をつけてくださいよ、上条君?」

「うん、わかったよ」

 

上条は申し訳なさそうに頭を掻きながらそう答えた。すると、杏子のお腹から「グゥ~」という大きな音が鳴り響く。彼女は少し顔を赤らめると恭介と仁美の方へ向いた。

 

「この後あんたらなんか予定ある? あたし腹減っちゃったんだ」

「もう、恭介はこれからヴァイオリンの稽古なんだよ?」

「ははっ、いいよ。せっかく手伝ってくれたんだ。僕だってみんなにお礼したいし。だから何か美味しいもの奢るよ」

「マジか!? さすが恭介さん、太っ腹!!」

 

杏子は口に手を添えてメガホンのようにすると、恭介をおだてていい気にさせる。彼は「そんな~」などと遠慮している姿を見せるが、口元がにやけている辺り、まんざらでもない様子だ。そんな彼の姿を見たさやか、仁美の拳は強く握りしめられ、手の甲には怒筋が浮かび上がっていた。

 

「はあ、調子いいんだから……仁美はどうするの?」

「私もこのあと予定はありませんし、ご一緒させて頂きますわ。それにこんなにソウルジェムが穢れてしまったもの。何か食べないと魔女になってしまいますわ」

 

不敵な笑みを浮かべる仁美から何かを感じ取った恭介は丁寧な口調でこう伝える。

 

「空腹が満たされても穢れは浄化されないよ、志筑さん」

「あら、それでも今日使った分の体力は戻りますわ。上条君の奢りですわよね? 覚悟して下さいね。働いた分だけ私、美味しいもの頂きますわ」

 

仁美の笑みを見て恭介は体を震え上がらせた。彼は三人に背中を見せ、財布の中身を確認する。

 

「うーん、足りるかな……」

 

恭介が財布の中身と相談している中、仁美は彼の手を取って飲食店が多く立ち並ぶオフィス街の方へ引っ張っていった。さやかはそんな彼女の勇ましい後ろ姿にサムズアップをして、二人の後を追う。杏子も頭の後ろで手を組みながら三人の元へ向かおうとした時、恵方巻のようなものが宙に浮いているのに気が付いた。

 

「んっ? あれって……まあいいか。それより飯めし!!」

 

空腹に負けた杏子は恵方巻のようなものを無視し、三人が向かった方へ駆けて行った。

 

 

 

 

 

「まどか……」

 

ほむらはさやか達から離れた後、『銀色の魔法使い』と『古の魔法使い』を手掛かりのネタして、『金色の魔法使い』とまどかを探していた。歩いている人に声をかけては、『銀色の魔法使い』と『古の魔法使い』の名前を出して話を聞こうとする。ただ街の中を歩いて情報収集するより効率がいいと思ったからだ。しかし、彼女が話しかけた人の殆どが二人の魔法使いの名前を聞くと恐れおののき、逃げるように立ち去ってしまう。彼女は溜息をつきながら下を向いた。

 

「今のところの収穫はこれだけね」

 

ほむらの手には銃剣のような武器が握られていた。『ウィザーソードガン』というらしい。なんでも『銀色の魔法使い』が愛用しているとの噂だ。しかしこの武器、街の至る所で販売されているらしく、日本人は必ず一つ護身用として持っているらしい。これでは手掛かりにならない。

それでも彼女はこの武器を一つ買ってしまった。剣として使える他、魔力を込めれば無限に弾丸を発射できるからだ。一万円といい値段はしたが、今の彼女は武器の数が乏しかったため、つい手を出してしまった。

ほむらは顔を上げてウィザーソードガンを盾の中にしまうと、今いる場所から離れようとした。

 

「ほむらちゃん」

「えっ!?」

 

ほむらの背後から聞き慣れた声が響いてきた。彼女は動き出そうとした足を止め、ぐっと息を呑む。恐る恐る後ろへ振り返ると、そこにはあの竜巻の中で助けられなかった桃色の髪の少女が立っていた。

 

「ま、まどかなの?」

「うん!」

 

ほむらの問いに少女は元気よく答える。そこにいたのは紛れもなく鹿目まどかだった。

 




次の話から少し話に動きが見られると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。