まどか☆マギカ in Magic Land   作:ウボハチ

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第三話です。仁美の華麗な戦いをどうぞ。
駄文ですが、よろしくお願いします。


『魔法使い』と『魔法少女』

「さあ、いくよ。志筑さん!!」

「はい!!」

 

恭介の掛け声がファントムとの戦いの合図となった。仁美は握っている巨大なブーメランをファントムに向けて投げる。ブーメランは弧を描きながらファントムの前まで飛んで行くが、咄嗟に避けられてしまった。

 

「まだですわ!!」

 

仁美は右腕に魔力を込めると、投げたブーメランは緑色の光に包まれた。彼女が腕を右に動かすとブーメランは右へ、左に動かすと左の方へ飛行し続ける。ブーメランを包んでいる緑色の光は彼女の魔力らしく、右腕を動かすことでブーメランの軌道を自由自在にコントロールできるようだ。さすがのファントムもこの攻撃を避けきることができず、直撃してしまう。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ファントムがよろめいた隙に恭介は相手との距離を縮め、左腕のスクラッチネイルを振りかざす。彼の攻撃は直撃し、ファントムは大きく一歩後退した。

 

「よし!!」

 

恭介はすかさずベルトのレバーを引いてパームオーサーの向きを操作すると、新たな指輪をバックル部に翳す。

 

『チェイン・ナウ』

 

音声が流れると、恭介の前に魔法陣が出現する。その中から白い鎖が現れると、ファントムを拘束してしまった。

 

「今だ、志筑さん!!」

「はい、いきますわよ!!」

 

気合の入った大きな声で仁美は叫ぶと、拳を前に突き出してファイティングポーズを取り、動けないファントムの懐に潜り込む。彼女は目を大きく見開きながら、相手の腹部目掛けてボディーブロー決めた。ファントムは「うっ」という声を漏らして悶える。

 

「あんなの……仁美じゃない……」

 

怯えた表情で親友の戦いを眺めるさやかがそう呟く中、仁美は顔、胸、横腹に拳をぶち込み続ける。拳についた棘の装飾がファントムの体へ何度も突き刺さり、鮮血が辺りに飛び散っていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『ジャイアント・ナウ』

 

力が入った声をあげながら仁美は両足を地面から離し、恭介は新しい指輪をバックル部に翳して彼女の目の前に魔法陣を出現させる。彼女の右腕から放たれたジョルトブローが魔法陣を通過すると拳は大きくなり、そのままファントムに直撃する。相手を拘束していた鎖は千切れ、ファントムは大きく殴り飛ばされた。

 

「今ですわ、上条君!!」

「うん!!」

 

恭介は頭を縦に振ると、右手に新たな指輪をはめ、ベルトのバックル部に翳す。

 

『イエス! キックストライク!! アンダースタンド?』

 

ベルトから音声が流れてくると共に恭介の両足に魔力が集中する。よろよろと立ち上がったファントムを見るや否や、彼は相手の胸部に向けて両足で跳び蹴りを放った。

 

「これで終わりだ!!」

 

恭介はその場にうまく着地すると、今度はファントムの顔目掛けて跳び回し蹴りを入れた。

ファントムは苦悶の呻き声をあげると、そのまま後ろに倒れて爆発、そして消滅した。

 

「これであとは魔女だけだね」

「そうですわね」

 

ファントムを倒すと二人は変身を解き、にこやかに語り合っている。戦いの一部始終を見ていたほむら達はただ驚くしかなかった。

 

「じゃあ、行こうか」

「あっ、ちょっと待って!!」

 

その場から立ち去ろうとした二人をさやかは慌てて引き留めた。恭介は不思議そうに彼女達の方へ向いた。

 

「あれ、まだいたの?」

「えっ……あっ、うん。話を聞きたくて……本当に恭介と仁美だよね?」

 

さやかの質問に二人は顔を顰めてしまう。

 

「そうだけど……僕達どこかであったことあるかい?」

「うん……まあ、特殊なんだけどさ」

「特殊?」

 

仁美の問いかけに少し言いにくそうにしているさやかは、後ろにいるほむら達に同意を求めた。四人は一度顔を見合わせてから、彼女の方に向き直って頭を縦に振ると、さやかはゆっくり頷いて恭介、仁美の方に向いた。一度深呼吸して自分を落ち着かせた後、さやかはゆっくり語り出した。

 

「あたし達……違う世界から来たの」

 

 

 

 

 

「そっか……君達がいた世界では僕達は知り合いだったのか。しかも『科学』といる非現実的なものが存在するなんて……信じられないよ」

 

恭介と仁美はさやかの話を聞いて、非常に驚いた様子だった。それでも信じてくれそうな二人を見て、彼女はほっとする。

 

「えっと、仁美と恭介はどんな関係なの?」

 

さやかは心臓をバクバクさせながら二人に問いかけた。彼女の表情に首を傾げる仁美は躊躇せずに答える。

 

「関係ですか? そうですね……私達は幼馴染なんですよ」

「お、幼馴染!?」

 

驚いたさやかは大声で叫び、杏子のほうに顔を見合わせた。面倒事に巻き込まれたくはない杏子は顔を背けてしまう。

 

「嘘!! えっ、じゃあ……」

「美樹さやか、少し落ち着きなさい」

「だ、だって……」

 

興奮しているさやかに対してあきれた様子のほむらが彼女を注意した。さやかは少し肩を落とす。

 

「上条さん、よかったらこの世界のこと教えてくれないかしら?」

 

こちらの事情を軽く説明し終わった後、今度はマミが恭介に尋ねた。彼は嫌な顔一つせずに頷く。

 

「あっ、いいですよ。この世界には主に二つの人種が存在しているんですよ。一つは僕のような『魔法使い』、もう一つは志筑さんのような『魔法少女』なんです」

「それしかいないのか?」

 

恭介の話を聞いていた杏子は頭を掻きながら疑問を投げかけた。

 

「うん。あっ、ごく偶にどちらでもない存在……後の『ファントム』や『魔女』が生まれることもあるみたいだけどね」

「『魔法使い』と『魔法少女』の違いは何かしら?」

「大きな違いはないんです。 第二次性徴期の女性がなれるものが『魔法少女』で、それ以外の人が『魔法使い』になるんです」

「ってことは、仁美もいずれは『魔法使い』に?」

 

さやかはそう仁美に疑問を投げかける。彼女はにこりと笑い、そして頷いた。

 

「ええ、そういうことになります」

 

仁美は淡々と答えた。彼女の『魔法使い』の姿を考えたからのか、さやかは頭を抱えて悩んでいる様子だ。

 

「なんで分ける必要があったんだ? 全員『魔法使い』でいいじゃねぇか」

「僕にもその辺りのことはよくわかっていないんだ。まあ、違いといえば固有魔法を持っているか持ってないかぐらいかな」

「固有魔法?」

 

恭介の口から新たなワードが出てきた。頭を抱えていたさやかはその言葉を聞いて咄嗟に反応を示す。

 

「うん。この世界の人は小学校四年生くらい……つまり10歳くらいから『魔法使い』、『魔法少女』として活動できるようになるんだけどね、僕達男は魔宝石に秘められている魔法しか発動できないんだ。魔宝石は指輪にしなくちゃ効力が発揮されない。だから、沢山の魔宝石を探し出して指輪を生成しなければいけないんだ」

「一方、私達女には一人一つずつソウルジェムが生み出されますの。それで『魔法少女』になることはできるけど、その代り大人になるまで魔宝石に秘められた魔法は使えず、特定された固有魔法しか使えませんの。私の場合はブーメラン生成と操作魔法ですわ」

「ああ、あのナイスファイティングは魔法のお蔭じゃなかったんだね」

 

さやかは先刻の戦いを思い出したのか、仁美に聞こえぬよう小声で呟く。彼女の話が正しいのならば、彼女は魔法に頼るだけでなく、肉体も鍛えているようだ。さやかが知っているお淑やかな仁美とはだいぶかけ離れているため、困惑している様子だった。

 

「ただ女性は成長して『魔法使い』になると、魔宝石に秘められた魔法以外に『魔法少女』時代に使っていた固有魔法を自由に発動できるんです」

 

恭介は仁美の話に補足を付け加えた。

 

「なんだ。じゃああたし達女のほうが断然有利じゃねぇか」

「そうとは限りませんの。『魔法少女』は『魔法使い』に比べて弱く、絶望しやすいんです。絶望すれば『魔法使い』からはファントムが生まれ、『魔法少女』からは魔女が生まれます」

「ああ、やっぱそういうカラクリはあるのか」

 

仁美の話を聞いて、杏子は納得した様子だった。

 

「はい。特に魔女はファントムと比べて強いんです。『魔法少女』は弱いのに、絶望すれば強い魔女が生まれる……こんな手っ取り早く同胞を増やす方法、ファントムや魔女は見逃す理由はありません」

「そっか。じゃああたし達『魔法少女』はハイリスクハイリターンってわけだ。どこの世界もそれは変わらないんだね。けど、仁美が弱そうには見えなかったけど?」

 

仁美の闘い方は実に清々しいものだった。魔法使いである恭介が一緒とはいえ、あそこまで華麗にボディーブローをぶち込むことはできないだろう。微塵の弱さも感じられなかった。

 

「志筑さんは学校内でも上位の『魔法少女』だからね」

「まあ、上条君ったら」

 

恭介が褒めると仁美の頬がリンゴのように赤くなり、照れくさそうに手で顔を隠した。そんな光景を悲しげな表情で見守るさやかがいる。

 

「あっそう……」

 

今にも泣きそうなさやかの肩になぎさがポンっと手をのせた。空いたほうの手でサムズアップすると、なぎさは笑い出しそうな表情をしてしまう。そんな彼女の行動にさやかは顔を顰め、おでこに努筋が浮かんだ。

 

「一ついいかしら?」

「なんだい?」

 

さやかがなぎさに襲いかかろうとした時、突然ほむらが恭介に向けて口を開いた。

 

「この世界には金色の装飾で施された『魔法使い』はいないのかしら? そいつのせいで私達この世界に飛ばされたのだけれども……」

 

強張った表情でほむらは恭介にそう尋ねた。彼は「うーん……」と考えだし、少し困った様子だ。

 

「金色か……志筑さん、何か心当たりはないかい?」

「そうですわね……あっ、もしかして!!」

「何か知ってるの!?」

 

仁美が何か思いついたのを見て、ほむらは目を見開き二人に急接近する。ビクッと体を震わせた二人は怯えた表情を見せ、すぐさやか達の止めが入る。落ち着いたほむらが二人謝罪すると、話の続きが再開された。

 

「あなた方がお探しになっている魔法使いなのかまではわからないのですが、この見滝原には、遭遇したら絶対に逃げろと言われるくらい恐ろしい『魔法使い』が存在しますの」

「ああ、『銀色の魔法使い』と『古の魔法使い』のことだね」

「何、その『銀色の魔法使い』と『古の魔法使い』というのは?」

 

ほむらはその名前を聞いて疑問を浮かべる。

 

「私達も小耳にはさむくらいの知識しか持ち合わせていませんが……」

「いいわ、聞かせて!!」

「その二人の『魔法使い』の噂が流れ始めたのは今から一か月前……あるベテランの『魔法使い』が絶望してファントムになったことから始まりました。警察がこの事件を調べていく内に、これは魔法使いが起こした事件だとわかりました。そこで警察は犯人と思われる『魔法使い』の元へ向かったんです。でも……」

 

仁美はゆっくり息を飲み、さやか達にも緊張が走った。

 

「警察はその『魔法使い』……いや、正確には二人の魔法使いの手によって全滅したそうです。たまたまその『魔法使い』を見たという人の証言によると、一人目は上条君が使っているものより少し白っぽいベルトを装着し、ダイヤモンドのような輝きを放つ指輪をはめていたそうです」

「もう一人はみんなが使っているものとは全く違うベルトを装着し、金色の指輪をはめていたそうですよ。どちらとも個性的な指輪をはめていたことから、一人は『銀色の魔法使い』と、もう一人は『古の魔法使い』と呼ばれるようになったんです」

 

二人がその『魔法使い』達の話を終えると、ほむら達は「なるほど」と数回頷いていた。

 

「もし、その話が本当なら、私達が探しているのは『古の魔法使い』なのかもしれないわね。その『古の魔法使い』のことで他に特徴は?」

 

話に一区切りついた後、今度はマミが二人に問いかける。

 

「そうですわね……確かはめている指輪がライオンのような形をしていたとか……」

「ライオン!!」

 

あの『魔法使い』と戦った時、相手はそんな指輪を使っていなかったのだ。

 

「あたし達が見た『金色の魔法使い』ってそんな指輪はめてた!?」

「さあな」

 

さやかの問いに杏子は頭を横に振った。

 

「ちなみになんで『古』なの?」

「その魔法使いがはめていたライオンの指輪……古代の文献に似たようなものが記されていたかららしいですよ」

「ほうほう……」

 

さやかは顎に手を置き、探偵気取りのポーズで深く頷いた。

 

「けど、これで有力な情報は手に入ったわ……」

 

ほむらはぼそっと呟くと、さやか達に背を向け、その場から離れようとした。

 

「ちょっとほむら!! どこにいくのよ!!」

「言ったでしょ? 『金色の魔法使い』かまどか……どちらかの手掛かりを見つけるまで一緒に行動すると……ここからは私一人でいくわ。さよなら」

 

毅然とした態度でさやか達にそう告げると、彼女は人混みの中へ消えていった。

 

「あの……何かありましたの?」

 

二人のやり取りを見て心配になった仁美は恐る恐るさやかに尋ねる。

 

「いやね……あいつ、捻くれてるんだ」

「さやかも同じようなもんだろ」

「何を!!」

 

杏子のツッコミに反応したさやかは飛び上がり、彼女に襲いかかる。杏子はそんな彼女に対して応戦し、乱闘へと発展させた。そんなやり取りを仁美はくすっと笑っている。

 

「ふふっ、賑やかですわね。あっ、これからはどうしますの? 私は上条君と一緒に魔女を探しにいくのですが……」

「じゃあ、あたしもそれに同行しようかな。この見滝原のことも知りたいし。マミさん達は?」

 

地面に転がっているさやかはその態勢で仁美に返事をした。どうやら杏子に負けてしまったらしい。その様子をなぎさは蔑んだ目で見つめ、呆れていた。

 

「そうね、私は……」

「チーズが食べたいのです、マミ!!」

 

マミの隣で眸を輝かせながらなぎさは駄々をこねる。先程の目付きはどこへいったのやらというくらい彼女の移り変わりは早かった。マミは母親のように彼女に頭を撫でて落ち着かせる。

 

「はいはい。ということで、私はなぎさちゃんと一緒に何か食べてくるわ」

「おっ、じゃああたしも……」

「杏子はこっちね」

 

『食べる』という単語を聞いた杏子は敏感に反応し、マミ達の方へついていこうとする。しかし、そんな彼女の服をさやかは掴み、逃がさないようにした。

 

「ちぇ、わかったよ」

 

舌打ちしながら渋々頷く杏子。その顔が少し赤らめているのに気付いた仁美は不気味な笑みを浮かべていた。

 

「じゃあ待ち合わせは……あっ、恭介。連絡ってどうすればいいの?」

「話したい人のことを念じれば、自然と連絡できるよ」

 

さやかの問いに端的に答える恭介。

 

「この世界でもテレパシーは使えるのね。じゃあ、集まりたい時はテレパシーを使いましょう」

「了解!!」

 

元気よくそう答えると、さやかと杏子は恭介と仁美の魔女探しに、マミとなぎさは飲食店がありそうなオフィス街へ向かった。




なぎさはマミのことをなんて呼ぶのだろう。『マミ』であってるのでしょうか。
わかる方がいたら、ぜひ教えていただきたい。

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