まどか☆マギカ in Magic Land   作:ウボハチ

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遅くなってすみません。中々時間が取れず、投稿ができませんでした。
今後もノロノロと投稿することになると思いますがよろしくお願いします。


少女達の猛攻

空き地。

 

現在、マミとなぎさがビーストと対峙している場所である。

敷地内ではここ寸秒の間に数えきれない程の爆発が起こり、その影響で強い突風が地面に吹きつけ、砂埃はフワッと上空に舞い上がった。その激しさは収まることを知らず、敷地内の中心部で爆発が起きたと思えば、今度は端のほうで地面が盛り上がり、さらに敷地を囲む石壁が一瞬にして木っ端微塵になった。まるで神々の怒りを地上に齎したような光景が広がり、この戦いの激しさを物語っていた。

 

そんな戦場から聞こえてくるのは刃が混じり合った際に鳴り響く金属音であった。それも一度ではなく、砂埃が晴れるまで途切れることなく続いた。

 

「ぐっ――貴様等」

 

砂埃が晴れると、ビーストは膝を立てながら尻餅をつき、左手で胸元を庇うように押さえていた。彼の右肩には赤い隼の頭部を模した肩装甲が装着され、垂れ下がった朱色のマントは砂埃がついて薄汚れていた。そんな彼から距離を取って向かい合うマミ、なぎさは息を切らせながらもその場で立ち尽くし、両手でしっかりと武器を握りしめていた。

 

「あなたの攻撃は私達に届かないわ」

 

「ぐぉぉぉぉぉぉ!!」

 

マミの挑発を受けたビーストは雄叫びをあげながら立ち上がり、右手に持っているダイスサーベルを怒り狂ったように一振りした。そして、ダイスサーベルの鍔についたスロットへ、鳥の意匠が見受けられる赤い指輪を嵌めこんだ。

 

『シックス・ファルコ・セイバーストライク!』

 

ビーストの指輪が嵌めこまれたことで鍔についたサイコロが回転し、『6』の目を表示した。同時にダイスサーベルから呪文が流れ、彼の眼前に金色の六角形の魔法陣が出現した。

 

「はあっ!!」

 

彼は怒声を上げながら魔法陣に向けてダイスサーベルを振り下ろし、二人に目掛けて魔法陣の中から発生した六体の隼の幻影を放った。

 

「なぎさちゃん!」

 

「はいなのです!」

 

マミの言葉に反応を見せたなぎさはその場で飛び上がり、右手に握られたラッパを口元にあてて無数のシャボン玉を発射した。そのシャボン玉は縦横無尽に飛び回る隼の幻影を追尾し、六体全てに直撃し、誘爆して消滅した。

 

「ぐっ、また――」

 

爆発によって起きた突風がビーストの横を吹き抜けて辺りの砂を舞い上がらせ、再び敷地内の視界を悪くした。両手で顔を覆い突風を防いでいたビーストはマントで振り払うが、砂埃は晴れる様子がない。

 

「ティロ――フィナーレ!」

 

その時だった。その場に立ち尽くすビーストの前からマミの力強い声が発せられ、合わすように砂埃の中から巨大な砲弾が姿を見せた。

 

「ぐおっ!?」

 

その砲弾は狙いを定めたようにビーストへ飛んでいき、立ち尽くしていたビーストの胸部に直撃した。彼は呻き声を漏らしながらもその砲弾を耐えたが、

 

「まだよ──魔弾の舞踏!!」

 

というマミの言葉の後に続いた無数の銃弾を受け、ビーストは体から火花を散らしながら跪いた。

 

「ぐっ――」

 

仮面の下で歯を食いしばったような声を漏らすビースト。

ようやく砂埃が晴れると、彼の緑の複眼にはマミとなぎさの姿が映った。

 

「これなら――お母さんの仇、討てるのです!」

 

ビーストの姿を見たなぎさは小躍りしそうな程の喜色を顔に示した。それは彼女の好物であるチーズを食す時以上の笑みであった。

 

「なぎさちゃん、油断は禁物よ。あれだけ私達を苦しめた魔法使いがこんな呆気なくやられるはずがないわ」

 

「わかっているのです」

 

マミの注意を受けたなぎさは頷き、再び表情を引き締めた。ビーストは未だに地面に膝をつき、顔を俯けていた。

 

 

 

 

――そんな彼女達の戦いぶりは実に見事なものだった。攻撃を仕掛けてくるビーストに向けて、なぎさが起爆性のあるシャボン玉を放って距離を取り、その隙にマスケット銃を生成したマミがありったけの弾を浴びせる。ダイスサーベルでの近距離戦を得意としているビーストは彼女達のこの戦法に手も足も出ず、結果的に彼をここまで追いつめることができた。

 

「前に戦った時はこれほどの力は──」

 

ビーストはダイスサーベルを杖代わりにしてゆっくり立ち上がり、顔を二人の方へ向けた。立ち上がった後の彼はダイスサーベルを杖代わりにすることなく直立していたが、肩で息しているのだけは窺える。それなりにダメージを受けているようだった。

 

「そうね。あの時の私達は弱かったわ。なぎさちゃんのお母さんを救えなかった無力な自分が嫌で絶望してしまう程に──これだけの魔法を扱えるのだって、鹿目さんから受け取った希望のお陰だと思う。けれど──」

 

マミはそう言って一呼吸置くと、

 

「それ以上にあなたを倒したい──この想いが今の私達の力の源であり、無力で何もできなかった私のせめてもの償い」

 

「だから私とマミは今まで以上のコンビネーションを出せるのです!」

 

そうマミは胸を張って答え、それに続いてなぎさも意気込むように叫んだ。

 

「──フッ、フハハハハハハッ!!」

 

ビーストは二人の話を聞くや否や、休火山が噴火したようにどっと笑いだした。マミとなぎさは彼の突然の笑いにビクッと驚きを見せた。

 

「な、何がおかしいの!」

 

「その話、ドラゴンが聞けばどれほど感銘を受けるか──」

 

「えっ?」

 

ビーストの発言にマミは思わず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

 

「ドラゴンって──銀色の魔法使いのこと?」

 

マミが恐る恐る尋ねてみると、彼は不敵な笑みを漏らしながら軽く頷いて見せた。

 

「そうだ。しかし、我はファントム。奴とは違う。どれだけお前達の話を聞いても、何も感じることはない──」

 

ビーストは一旦話を中断すると、左腰に備わった指輪のホルダーに手を伸ばし、周りが青く縁取られた指輪を手にした。

 

「お前達の力は以前よりも増した。この世界でも上位に立つ魔法使い並にな。これで我も本来の力を発揮してお前達を食えそうだ」

 

「えっ?」

 

「ほ、本来の力?」

 

ビーストの言葉に小首を傾げるマミとなぎさ。彼は先程手にした指輪を左手の中指に嵌めながら話を続けた。

 

「お前達は我等が一カ月程前に起こした事件のことを知っているか?」

 

「──確か、ベテラン魔法使いを絶望させ、その後あなた達を追跡していた警察官を皆殺しにしたっていう──」

 

マミはビーストの問い掛けに眉根を寄せながら答えた。

 

「そうだ。そして我等はあの時、ドレイクからある指輪を受け取った──」

 

そう答えるビーストは先程左手に嵌めた指輪を見せつけた。そこには周りが青く縁取られた指輪が嵌められている。中央には金色の獅子が描かれていた。

 

「ドラゴンが受け取ったのはダイヤモンドのように輝く銀色の指輪、そして我はこの指輪だ──我等はこの指輪を用いて自らの限界を越えた力を手にし、奴等を皆殺しにした!」

 

ビーストの言葉を耳にしたマミ、なぎさは驚愕した表情を浮かべ、そしてすぐに身構えた。

 

「見せてやろう──我の本来の力を!!」

 

ビーストは左腕を真横へ振り上げ、そのまま勢いよくバックル部のリングスロットへ差し込んだ。

 

『ハイパー・ゴー! ハイッ・ハイッ・ハイッ・ハイパー!』

 

ビーストのベルトから呪文が流れ、同時に彼の眼前に金色に輝く六角形の魔法陣が現れた。魔法陣は彼の体に触れることで青い流星の如く輝きだし、その姿を変化させた。

体色は金色の他にコバルトブルーが追加され、複眼は緑から赤へと変わっている。頭部にはコバルトブルーを強調した獅子の鬣(たてがみ)の他に角のような突起物が生え、胸部にはファントム・キマイラを模した装甲が備わっている。両腕についた金色の紐は風で靡いており、右手にはハンマー部に鏡が取り付けられ、金とコバルトブルーで色が統一された銃、ミラージュマグナム、左手にはダイスサーベルが握りしめられていた。

 

「なぎさちゃん!」

 

「わかっているのです!」

 

ビーストの変化を目の当たりにしたマミとなぎさは表情を引き締め、それぞれの武器を構えた。二人の目の前に立つ彼には先程受けたダメージが綺麗になくなっており、意気揚々とした様子で立ち尽くしていた。

 

「さて、もう一度決め台詞を言うか──さあ、ランチタイムだ」

 

そう言い放つビースト──いや、ビーストハイパーはミラージュマグナムを自身の眼前まで掲げた。




勘のいい人はすでにお気付きだと思いますが、ウィザードが『銀色の魔法使い』と呼ばれる所以はあの指輪です。しかも発生源がオリジナルのものとは別です。
ウィザードがソーサラー以上に意味深なキャラになるかも――
というわけで、次の投稿も遅くなると思いますが、よろしくお願いします。
とりあえず二月までには投稿したい。

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