どうも描写が少ないのが気になってしまう。
読んでいる方、大変申し訳ありません。
駄文ですがよろしくお願いします。
「ふん、面白い冗談だな。一度は俺に惨敗している貴様等に一体何ができるというんだ?」
ソーサラーはほむら達を嘲笑いながら尋ねた。
「確かに私達は一度──いえ、最初に対峙した時のことを考えれば二度も敗北しているわ。けど──」
ほむらは一旦話を止め、握りしめた弓を前に突き出した。その弓には薄らではあるが、桃色の光を纏っており、さやか達の武器にも同様のものが見られた。
「今の私達にはまどかから受け取った最後の希望がある。あの時のようにはいかないわ」
そうほむらが言い切ると、黙って話を聞いていたソーサラーは甲高く笑い声を上げた。
「実に面白い! まだまだ私の楽しませてくれそうだな」
「あなたを楽しませるつもりはない。私達には時間もないし、このままではまどかが死んでしまう。だから、その前にあなたを──倒す!!」
ほむらはそう言い放ち、同時に横並びで立っていたさやか達が戦闘態勢に入った。
「いいだろう、相手になってやる。だが──」
ソーサラーはほむら達に背を向けると、
「五対一はフェアではないな──ドラゴン!! キマイラ!!」
右手をすっと上に挙げ、声を張り上げた。
「なっ──うわっ!?」
杏子は驚愕した表情で声を上げ、同時に彼女達がいる部屋が大きく揺れ動きだした。ソーサラーの後方に映る壁からはまるでドリルで岩を削るような金属音が鳴り響き、途端に大破して砂埃が起きた。
「お呼びのようだな」
「グォォォォォォ!!」
砂埃の中からは平然と話す男の声とそれとは別の雄叫びが聞こえた。砂埃が晴れてまず目に映ったのは、壁が破壊されてできた二つの大きな穴。そして、怪人態のドラゴン、キマイラの姿だった。
「なっ、あいつは!?」
「どうしてここに!」
二匹のファントムを目にしたさやか、マミは大きく目を見張った。
「一匹は知らないけれど、もう一匹のファントム──いえ、銀色の魔法使いは金色の魔法使いと手を組んでいたわ」
全員の警戒心が高まる中、ほむらは二人に向けて端的に説明した。
「好きな奴を選んで遊んでやれ──いや、消してもいいぞ」
ソーサラーはローブを靡かせながらほむら達のほうへ振り向き、ドラゴン、キマイラに向けて指図した。
「ふん、言われずとも──」
ドラゴンは話を終える前に翼をはばたかせ、かなりの速度でさやかと杏子へ接近した。
「うわっ!?」「がっ!?」
ドラゴンに首元を掴まれたさやか、杏子は、そのまま彼等が通ってきたとされる穴へ突っ込み、奥のほうに消えていった。
「美樹さやか! 佐倉杏子!」
「美樹さん! 佐倉さん!」
「さやかっ!」
突然のことにほむら、マミ、そして口元のラッパを外したなぎさは声を荒げた。
「──なら我はあの二人か」
キマイラはマミとなぎさを睨みつけながらそう呟いた。そして、ドラゴンと同じように翼をはばたかせ、急接近して二人の胸ぐらを掴み取った。
「きゃあ!?」「うわっ!?」
「巴マミ! 百江なぎさ!」
ほむらが声を上げる中、マミ、なぎさの二人もさやか達と同様に穴の奥へ消えていった。
「これでフェアだな」
その光景を眺めるソーサラーは右手に新たな指輪を嵌め込んでいた。
「あなた──」
「さあ、最後の余興だ! 私を大いに楽しませてくれ!」
「あなたは私が――必ず倒す!」
二人が発した言葉が衝突したのと同時に、ほむらは握っていた弓を盾の中にしまい込み、ソーサラーはパームオーサーを操作して右手に嵌まった指輪を翳した。
『コネクト・ナウ』
「ふんっ!」
ソーサラーは顔の横に出現した小さな金色の魔法陣に手を入れ、彼の専用斧・ディースハルバートを取り出した。ほむらは盾から手を引き抜き、ウィザーソードガン・ガンモードを取り出した。
「はっ!」「はあっ!」
そして、二人の掛け声と共に戦いが始まった。
見滝原の空は依然として青く澄んでいた。但し、そこには太陽を丸ごと隠してしまうほど巨大な金色の線が浮かび上がっており、街へ差される陽光を妨げていた。
そんな見滝原の様子はまさに阿鼻叫喚の地獄であった。地上に住む全魔法使いの体からは紫の亀裂が生じ、魔法少女のソウルジェムは遠くからでも確認できるほど黒ずんでいた。
さらに奥のほうを眺めれば、街の一角から魔女、ファントムが発生し、身動きの取れない魔法使い、魔法少女を次々と襲っていた。
場所は変わってとある空き地。土管以外特に目立ったものも見当たらない殺風景な場所であるが、鼻を塞ぎたくなるほどの刺激臭が漂っており、土管の表面や地面には赤黒い液体が乾いてこびりついていた。
「ふんっ!!」
そんな空き地の上空へ到着したキマイラは、掴んでいるマミとなぎさを空き地に目掛けて投げ飛ばした。
「くっ──」「うっ──」
投げ飛ばされた二人は勢いよく空き地内の地面へ叩きつけられ、呻き声を上げた。
「ここは──」
「うっ、前にあいつと戦ったところのようね」
地面に叩きつけられた二人は顔を上げ、倒れた体をゆっくり起こした。
「あっ──」
なぎさが体を起こした時、彼女の目にはあるものが映った。それは黄色の輝きを放つ指輪で、表面にはチーズが描かれていた。
「お母さん──」
そうなぎさが呟くと、少し離れたところにキマイラが着地し、人間態──仁藤攻介の姿に変わった。
「さあ、ここなら存分に暴れられるぞ」
「あなた──」
キマイラを睨みつけるマミは唇を噛み締め、すぐに立ち上がった。なぎさも目の前の指輪を拾い、彼女の後に続いた。
「金色の魔法使いも許せないけれど、それ以上になぎさちゃんのお母さんの命を奪ったキマイラ──あなただけは絶対に許せないわ!」
「お母さんの仇──絶対に打ち取ってやるのです!」
怒りを爆発させるマミ、なぎさは各々の武器を構えた。そして、なぎさは先程拾った指輪を右手の中で強く握りしめていた。
「無理だな。なんたってお前達は──」
二人の言葉を聞いて高笑いするキマイラは右手に銀色の指輪を嵌め、ベルトのバックル部へ翳した。
『ドライバーオン!!』
ベルトから音声が流れると、彼のバックル部には銀色のドライバーが浮かび上がった。
「我に喰われるのだからな」
そう呟くキマイラは左手の中指にライオンの意匠が見受けられる指輪を嵌め、バックル部の左側面にあるリングスロットへ差し込んだ。
「変身……」
『セット! オープン!』
キマイラはドスの利いた低い声を発してリングスロットをグイッと回した。同時にリベレイションズドアが観音開きに展開され、その中からは金色に輝く六角形の魔法陣が彼の前に浮かび上がった。
『L・I・O・N ライオーン!』
その音声と共に魔法陣はキマイラの体を通り越して、彼を古の魔法使い──ビーストの姿へと変えた。
「くるわよ」
「はいなのです」
あらためて彼の変身を目にしたマミ、なぎさは息を呑み、その額からはジワリと汗が滲み出た。但し、二人の表情に怯えた様子はなく、その眸は真っ直ぐ相手の姿を見つめていた。
「さあ──ランチタイムだ」
マミとなぎさが空き地へ到着した頃、さやかと杏子は二人と同様に地面へ叩きつけられていた。
「いってぇ──」
「杏子、大丈夫──って、ここ──」
さやかは周りを見渡し、唖然とした表情を浮かべた。
現在二人がいるのは廃工場である。といっても、工場はほぼ大破して瓦礫の山となっていた。その瓦礫の上に着地したドラゴンは人間態へ姿を変えた。
「ふん、ここでいいだろう」
ドラゴンは瓦礫の上からさやか達を見下ろしながら言った。彼の姿を目にした杏子は眦を決して立ち上がり、
「てめぇ──覚悟は出来てるんだろうなあ!!」
と怒鳴り散らした。さやかも柳眉を逆立てながら起き上がろうとしたが、そんな彼女の目にあるものが映った。
「恭介、仁美──」
さやかの目の前には粉々に砕けた緑色、琥珀の宝石が落ちていた。彼女はそれを一つ一つ丁寧に拾い上げ、ギュッと胸に抱き寄せた。
「恭介、仁美──」
「さやか──」
悲哀に満ちた表情を浮かべながら二人の遺品を抱きしめるさやか。そんな姿を杏子は悲愴な眼差しで見つめ、同時にぐっと唇を噛み締めた。
「待っててね。終わらせてくるから──」
さやかは抱き寄せていた宝石の破片をそっと地面に置くと、ギリッとドラゴンを睨みつけた。
「あんたはあたしの大切な人を──恭介と仁美を殺したんだ。絶対に許さない!!」
「許されなくて結構だ」
ドラゴンは真顔でそう答え、右手に嵌められた指輪を手形の意匠が見られるバックル部へ翳した。
『ドライバーオン・プリーズ』
ドラゴンのバックル部からは魔法使い専用のドライバーが浮かび上がり、彼は右手をシフトレバーの上に添えた。
「この世界は変わるべきなのだ。愚かな魔法使い、魔法少女は存在せず、ファントム、魔女だけのものにな。お前達はそのための礎となるがいい──」
ドラゴンはそう言い切ると、添えていた右手で操作し、同時に左手に赤い宝石がついた指輪を嵌めた。
『シャバドゥビタッチヘーンシーン!』
「変身」
呪文を唱え続けるベルトのバックル部へ指輪を翳したドラゴンは、眼前に右手を突き出した。そこには炎を放出させた赤い魔法陣が現れ、ドラゴンの体を包んでいく。
『フレイム・プリーズ! ヒー! ヒー! ヒー・ヒー・ヒー!!』
そして、ベルトから流れていた呪文が止まり、ドラゴンは魔法使い──ウィザードの姿へ変わった。
「さやか、来るぞ!!」
「うん!!」
さやかと杏子が身構える中、ウィザードはローブを靡かせながら瓦礫の山の上で赤い指輪が嵌められた右手を前に突き出した。
「さあ──ショータイムだ」
次の投稿は二週間後です。
予告ですが、もしかすると晴人達が出てくるかもしれません。
どんな形かはお楽しみです。