宇宙戦艦YAM@TO白色彗星帝国戦役編   作:Brahma

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磁力線の罠につかまったヤマト。果たしてどのように危機から脱出するのか...


第9話 危機からの脱出、テレザート降下

そのころ機関室では...

「律ちゃん、船外作業疲れたよぉ。」

「亜美、真美、のんきなこと言ってる場合じゃないのよ。ヤマトは敵の磁力線につかまって動けないのよ。いつ攻撃されるかもわからないのよ。」

「メインエンジンでもだめだったよね。」

「そうなのよ。」

「メインエンジンよりパワーがあるっていうと波動砲ちかないね。」

「波動砲をエンジン代わりにどかーんと逆噴射~とか。」

律子の目がおおきくなる。

「亜美、真美、今なんて言ったの。」

「えっと波動砲をエンジンみたいに使えればって...。マンガみたいだけど。」

「それよ!。」律子はただちに第一艦橋へ向かった。

 

春香は、イスカンダルへ行ったときのことを必死に思い浮かべていた。

「はじめてワープしたときって...。もしかして...。」

はじめてワープしたときエネルギーの流入が著しかったため、波動砲の試射をかねて木星浮遊大陸のガミラス基地を攻撃した。そのとき木星の重力から逃れるために...

あのときは重力アンカーを...そうか!

そのとき律子がうれしそうに第一艦橋へ駆け込んでくる。

そして「春香!」と話しかけた。

「律子さん。」春香も満面の笑みを浮かべる。

「それってもしかして春香も気がついた?」

「うん、じゃあせーので^^」

「波動砲!」

「どんぴしゃ、ですね^^。」ふたリは笑顔になってお互いの顔を見合わせる。

「経験に頼るんじゃなくて経験に学ぶってことがわかったようね。」

気がつくと舞が微笑みながらすぐそばに立っている。

「はい。」春香の顔が明るくなる。

「波動砲発射準備!重力アンカー解除。」

「春香。そうと決まったら準備するよ。エネルギー充填70%。波動砲への回路接続!」

「真。ありがとう。お願い。」

真はうなずくと機関室に指示する。

「亜美、真美、重力アンカー解除だ。」

「まこちん。どのレバーかなあ。レバーだけに。」

「こんなときにふざけるんじゃない。重力アンカーのレバーだ。それを発射と同時に思いっきり押し下げる。そうしないと発射の反動で二人ともぺしゃんこになるよ。」

「わかったよ。まこちん」

二人はレバーにしがみついた。

 

そのころ、デスラー艦の内部では、通信室でミルがゲーニッツと話していた。

「はい、デスラーは艦橋で指揮をとっております。デスラー砲で小惑星を撃つとか言っています。?大帝のご命令ですか?わかりました。ゲーニッツ総司令。」

にやりと笑みをうかべたミルは艦橋へ向かう。ガトランティスは、ナスカ、ゴーランドとヤマトによって艦隊を全滅させられている。ここでデスラーに手柄を立てさせたくないのだった。

「エネルギー充填100%!」

「デスラー砲発射80秒前!」

ミルがデスラーに話しかける。

「デスラー総統、ガトランティス本星から帰還せよとの命令です。」

「また、幹部連中のお歴々が私の作戦に水をさそうというのかね。」

「いいえ。この命令は大帝からのです。」

「大帝から??」

デスラーはさすがに一瞬躊躇した。

「総統、どうしますか。」

「続けろ。」

デスラーはタランに改めて指示した。ミルは、身をひるがえして艦橋をでていった。

 

「波動砲、エネルギー充填100%」

「対ショック、対閃光防御!」

「発射10秒前。」

 

デスラー艦でもデスラー砲のエネルギー充填から発射が秒読みに入っていた。

「総統、発射10秒前です。」

デスラーが発射装置に手をかけたとき、ミルが

「デスラー総統、ガトランティス本星より緊急連絡です。」と受話器を差し出す。

デスラーは不愉快そうに受話器をひったくった。

「私だ。何の用だ。」大帝でないことを感じていたデスラーの言葉はぞんざいにならざるを得ない。

「デスラー総統。ミルより帰還命令が出ているとお伝えしたはず。ただちに作戦を中止して帰還してください。」

「サーベラー長官。ご冗談なら後にしていただきたい。私は今忙しいのだ。」

「デスラー、これは大帝のご命令です。」

デスラーはむつとして通信を切った。

「デスラー砲、発射!」

デスラー砲のエネルギーが小惑星に向かったとき、ヤマトからも波動砲が発射された。

 

小惑星が四散した爆煙が薄まってくると、後ろ向きに進むヤマトの姿がおぼろげながら見えてきた。

「総統...。」タランは上官の無念を察して声をかける。

デスラーは、やり場のない怒りで歯軋りし、受話器を艦橋の床に叩きつける。

その受話器がはねかえってミルの額にあたる。

ミルは、痛みに額をこすると、かすり傷からの血が手につき、屈辱感で思わず叫ぶ。

「デスラー....総統。あなたは大帝のご命令にそむかれた。ただちに本星に出頭して、処分を受けなければなりません!」

デスラーは激怒の表情をミルにむけて、彼の胸倉をつかんでにらみつけた。

(このガキが!侫臣が!お前のような君側の奸がガトランティスを滅ぼすのだ。まあいい。こっちはガミラスが再興できればかまわないからな。しかし、せっかくヤマトを倒せたものを...こいつは自分がしていることがどういう意味をもつのかとことん理解できていないのだな。)

「いいだろう。呼ばれるまででもない。タイミングさえ合っていればヤマトは沈められたはずだ。その電話の礼をたっぷり言ってやる。全艦、反転180度!」

デスラーは、胸倉をつかんだミルを床面にたたきつけ、カツカツと荒い足音をたてて艦橋を出て行った。

 

「デスラー艦が引き上げていくわ。」千早がつぶやく。

「やはり、予想したとおりね...。」

舞がつぶやく。

「彗星帝国は太陽系外縁部、宇宙気流の外側にいたミサイル艦隊と両方全滅させられている。ここでよそ者のデスラーが手柄をたてて、発言力が強まるのを避けたかった...。」

舞の声には一抹のさびしさが含まれていた。

 

「前方15宇宙キロに、テレザート星。」

「とうとう来たわね。春香。」千早の表情は普段のクールさと異なり、自然と喜びでやわらかい印象になっている。

「うん、みんな!見て、テレザート星よ。テレザート星!わたしたちは、ついに来たんだよ。テレザート星に。」

「テレザート星をここから観測した分析データの結果が出たわ。」

「どんな星なんですか。律子さん。岩石でできているという意味では地球型といえますが.....。」

「特殊な重力場をもった空洞惑星ね。この周辺は大なり小なり、空洞をもつ小惑星が多い。ただ、テレザート星は規模が大きく球形をしている。」

「テレサがいるんだから人間型の異星人が住んでるんですよね??」

「地表は生存に適していないわ。住んでいるとしたら地下の空洞の中ね。」

 

「テレサさんから通信ですぅ。」

『私はテレサ。私のいる場所は、地底都市のはずれ....鍾乳洞...』

雑音で電波が途切れ途切れになりついに聞こえなくなってしまう。

「ど、どうしてでしょう。敵艦隊がいないのに妨害電波が出ていますぅ。」

「空洞内部に敵がいるってことね。」律子がつぶやく。

「斉藤さん。」春香がうれしそうに斉藤を見つめる。

「出番ですよ、出番!空間騎兵隊出撃準備!」

「いよいよ、俺たちの出番か。」

「腕が鳴るぜ。」

斉藤たちが集まった隊員たちに檄をとばす。

「みんな、よく聞け!いよいよセドナ基地での借りを返すときがきた。ヤマトの連中に空間騎兵隊のど根性を見せてやれ!しっかり頼むぞ!」

「敵基地からミサイル発射。こちらへ向かってきます。2宇宙キロ。」

「ミサイル応射!目標敵ミサイル基地。座標X0038,Y9393,Z7200!」

敵基地が炎上するのを確認すると春香は

「空間騎兵隊、降下!」

と命じる。敵基地は散発的に機銃を発射するが無事に揚陸艇は着陸に成功する。

「降下成功!これより空洞内を探査する。」

斉藤はヤマトへ通信する。

 

「雪歩、現在の状況を地球につたえて。」

「はい。」

「こちら、宇宙戦艦ヤマト通信班萩原雪歩ですぅ。」

「萩原君か。」武田長官の上半身がメインパネルに映し出される。

「はい。こちら無事にテレザート星に到着しましたぁ。テレザート星は巨大な空洞惑星でテレサさんは空洞内のどこかにいらっしゃる模様ですぅ。空間騎兵隊の皆さんが揚陸艇で降下に成功し、探査をはじめましたぁ。」

「わかった。なにかあったらまた伝えてほしい。」

「了解ですぅ。」

 

そのころ、空洞を探査した斉藤たち空間騎兵隊は、地底都市の廃墟に目を見張っていた。

雪歩が今度は斉藤に通信する。

「さ、斉藤さん、ですか?こ、こちらヤマト。は、萩原雪歩ですぅ。」

雪歩は、ふだんあまり話したことのない斉藤に話しかけたため、男性恐怖症でかんでしまう。

「通信班長さんか。かわいいな。」

「そ、そちらの、じょ、状況は、いかがですかぁ?」

「お嬢さん、いまからすごい水曜スペシャルだか木曜スペシャルだか見せてやるぜ。

斉藤始がぁ~洞窟に入るぅ~、カッメラマンとしょーめいさんも、あっとにはい~るぅ。」

斉藤が歌いだして廃墟になった地底都市が映し出されはじめた。

 

そのころ、デスラーは艦橋から窓に宇宙空間を眺めながらガトランティス本星に向かっていた。

「総統。大帝にお会いになれば事情を理解いただけるはずです。」

「....。」

「帰還命令はわたしもあやしいと思っています。何かの手違いかあるいは...。」

タランもミルをはじめとしたガトランティス幹部には怒りを覚えていた。

(総統の判断は正しかった。くだらない党派心でどうするつもりなのだ。理解できん。)

デスラー艦隊がガトランティスへ戻ってくるとさっそくサーベラーは大帝の前に参上する。

「大帝。デスラーが帰還いたしました。」

「ほう?宿願どおり、ヤマトを撃破したか。」

「いいえ。戦闘を放棄して帰ってまいりました。」

サーベラーは言葉を続ける。

「臆病風にでもふかれたのでしょう。」

「あの男が?そんなことはあるまい。何かわしに用があるのだろう。」

「用があるなら戦場からでも通信可能です。デスラーは艦隊を率いて帰ってきたんですよ。

あるいは、テレサの怒りを買って、テレサの不思議な力で攻撃され、恐れて逃げ帰ったのかもしれません。」

「そうだとすれば見下げ果てた男だが....。よし、わしが直接会ってわけを聞こう。」

「大帝のお手を煩わせるまでもありません。彼の戦闘放棄は明白な事実です。大帝のご指示をあおがすに帰還したことは、明らかな軍機違反です。」

「うむ...。」

「彼の処分は、帝国支配庁長官のわたしにお任せください。」

「よかろう。ただし、デスラーの言い分も聞いてやるのだ。あの男もひとかどの武人なのだからな。」

「承知いたしました。」

サーベラーはこうなればもうこっちのものとはやる気持ち必死におさえていた。




デスラーがガトランティス本星に召還された。デスラーは古今東西の名将たちがそうだったように、政治的な陰謀に落とし込まれようとしていた。

斎藤の歌ですが元ネタがあります。嘉門達夫の曲ですw
笑いが確実に取れるのでカラオケが苦手なうp主の愛唱歌ですw

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