宇宙戦艦YAM@TO白色彗星帝国戦役編   作:Brahma

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宇宙気流を突破した後は、バキューム鉱石をふくむ隕石群。そしてそれを待ち構えるゴーランド艦隊。テレザート星目前でヤマトの試練は続く。


第7話 デスラー登場

タランがゴーランドの妨害電波を消したため、テレザート星からヤマトへの通信は回復していた。

『テレザート星...大規模...隕石群......白色彗星の大艦隊....』

 

「前方約2万宇宙キロに大規模な宇宙気流に伴う隕石帯発見!」

「春香、大規模な隕石を多量に含む宇宙気流よ。」

「敵艦隊の位置は?」

「隕石を多量に含む宇宙気流によって把握できません。」

「進もう。このまま、宇宙気流に入ったほうが相手に見つかりにくい。」

 

先日来の太陽系外縁での通信で、司令長官が了承したため、ヤマトははれてテレザート星へ行く任務を認められ、定時連絡を行っていた。

「地球防衛軍司令部ですか?こちら宇宙戦艦ヤマト通信班萩原雪歩ですぅ。」

「ヤマトから定時連絡です。」通信士官が長官と参謀総長に伝える。

「地球防衛軍司令部だ。ヤマト聞こえるか?新たな情報ははいったか。」

「テレザート星まであと2日ですぅ。敵艦隊がまちかまえている可能性があるので、敵からの発見を避けるため、テレザート星前面の隕石を伴う宇宙気流にはいろうとしていますぅ。」

防衛軍司令部では、事務局会議が招集された。

「セドナ基地のような大規模な攻撃はなくなったが、太陽系縁辺部で散発的に敵の攻撃が繰り返されつつある。」

「艦隊配備を行う必要があるな。土方君と相談して編成にとりかかろう。」

「万一のことを考えて星間宇宙航路は。とうぶん運行を中止させます。」

「ただ、宇宙から敵が襲来していること公になるとまずいぞ。」

「はつ、乗務員のストということにしておくつもりです。」

 

「はい、こちら地球連邦科学局中央天文台です。」

「僕だが..。」

「これは防衛軍司令部の武田長官でいらいっしゃいますか。」

「そうだ。例の白色彗星はどうなっている?」

「いま81万光年と思われます。すごいスピードで接近しています。

あと80日前後で地球近傍に到達します。」

「ありがとう。超光速観測技術と超光速通信技術のたまものだな。」

 

「土方君を呼んでほしい。」

「はつ。」

 

「土方中将。」

「はつ。」

「現在の防衛艦隊の陣容で対処は可能か?」

「セドナ基地の戦闘詳報や外周艦隊の損害から推定するにセドナ基地を攻撃したのは敵の前衛艦隊と推察されます。そこから敵主力艦隊の規模を推定し、白色彗星に対処することを勘案するとアンドロメダ級があと5隻は....必要です。」

武田は、土方の答えにうなずき、

「建造のペースを上げるよう指示するか...あと80日に間に合うだろうか...。」

と独語した。

 

そのころヤマトはおびただしい隕石が流れてくる宇宙気流のなかにいた。

「千早ちゃん、速度落ちてない??」

「...。真、エンジンは正常かしら。エネルギーが減少しているみたいだけど。」

「そんなことはないと思うけど...。亜美、真美、エンジンチェックだ。」

「まこちん、がってんしょうち。」

「春香、いまさらだけど、別の航路を考えたほうがいいような気がするけど...」

「....。」

「つっきりましょう。テレザート星は目前ですから。」

 

「まこちん、特段エンジンには異常ないよ。」

「おかしいなあ。」

「秋月技師長、隕石ノ分析ガ完了シマシタ。」

「!!」

「春香!」

春香は律子に呼ばれて振り向く。

「どうかしたんですか?」

「この隕石なんだけど、いわゆるバキューム鉱石の一種で、エネルギーを吸い取るのよ。」

(え?ヤマトは動けなくなっちゃうの??)

「千早ちゃん!」

千早は無言で操縦桿をにぎっている。船体のわずかな挙動やかすかな揺れ、エネルギー量が減っていく感覚を操縦桿と体で掴み取ってどのように操縦するか感覚をとぎすませているからだった。

「敵艦隊発見。ビデオパネル映しますぅ。」

「先日のミサイル艦隊ね。」舞がつぶやく。

「春香、反重力反応機の発射準備。」律子が春香に伝える。

「はい。反重力反応機発射します。」

反重力反応機が発射されて次々に隕石に装着される。

「反重力反応機、岩盤に装着しました。」

「伊織、岩盤回転。」

「にひひっ。岩盤回転。」

伊織がスイッチを押しておびただしい数の隕石が回転する。

ゴーランド艦隊からのミサイルは次々に回転する隕石群にあたって爆発光と爆煙を発する。

「!!亜美、真美、どうした。エンジンの回転が落ちてるぞ。」

真が機関室に伝える。

「まこちん、どうして回転が落ちてるのかわからないよ。」

「機器に異常がないよ。出力調整してもだめだよ。どうちたらいいかわからないよ。」

そのときヤマトの船体がなにかにひっぱられるように傾く。

「!!宇宙気流の潮流がかわったわ。このままだと気流の渦にひきこまれる...」

千早がつぶやいて、必死に操縦桿を握って船体を立て直そうとする。

「アステロイド・リングをつかったから気流の流れを変えてしまったのね..。」

「くつ....ひっぱられる。」

「アステロイド・リング解除。」律子が命じて隕石群は自然の流れにしたがって流れていくがいったん変わった宇宙気流のながれは元へは戻らず、ヤマトの船体は横倒しになったまま気流の渦に引き込まれていく。

 

ゴーランド艦隊は、気流のそばでヤマト出現を待ち構えていた。

ワープするにせよ、気流を通過するにせよ気流の外側にヤマトが出現するのは確実だったからだった。

「エネルギーを吸収する隕石群とはやっかいだな。レーダーが役に立たんが、こちらが見えないようにヤマトからもこちらが見えないということだ。ヤマト出現の機会をしっかりと捉えるのだ。」

「了解。」レーダー手ガ答える。

「あそこを通過する船でまともにエネルギーを維持できるものはありません。ヤマトはふらふらになってわれわれの前にあらわれるでしょう。それがヤマトの最後です。」

ゴーランドと副官はほくそえむように笑いあっていた。

「ヤマト発見!11時の方向、一万五千宇宙キロ!」

「破滅ミサイル発射だ!ヤマトをお陀仏にするのだ。」

ゴーランドは獲物を捕らえる猛獣のように舌なめずりをして、命じる。

「破滅ミサイル発射!」

ゴーランド艦隊ではだれもが自分たちの勝利はゆるぎないものと確信していた。

 

「敵艦隊発見。規模は多数。三百隻前後と思われます。」

そのとき舞は律子のほうをちらりと見て微笑をうかべ

「春香、波動砲発射準備!」

と命じた。

「!!」春香は言葉に詰まる。

「艦長!エネルギーがないじゃない。」伊織が春香の気持ちを代弁するように叫ぶ。

舞と律子はにやりと微笑み

「伊織、説明はあと。春香、発射準備。」

「はい。」春香の返事を聞いて、律子が操作するとエネルギーが回復していく様子がメーターに示される。

「!!エネルギーが回復していく!」真が驚いて叫ぶ。

春香は(さすがは冥王星会戦の英雄と呼ばれただけはあるわ。)と心の中でつぶやかざるをえない。心の中で不安が自信に変わっていくのを感じていた。

「波動砲発射準備、ターゲットスコープオープン。電影クロスゲージ明度20!」

「発射10秒前、対ショック対閃光防御!」

第一艦橋では皆がゴーグルをつける。

「...4,3,2,1,0、発射!」

ヤマト艦首に大きく口を開いた波動砲口からは、エネルギーの奔流があふれだすようにゴーランド艦隊のほうに向かっていった。宇宙空間を昼間のように照らし、破滅ミサイルをのみこむんであっという間に溶解した。

「!!」ゴーランド艦隊の乗組員が驚きと絶望の感情をもったのは一瞬のことだった。

次の瞬間、ゴーランド艦隊を熱と光の奔流がつつみこんで引き裂いた。宇宙空間でなければ激しい轟音がしたあろう。爆発光、爆煙がひろがった。それがおさまると金属の残骸がただようのみであった。

 

「しかし、どうして減少していたエネルギーが回復したんですか?」

「ガミラスとの戦いのとき、異次元空洞でエネルギーを吸収されて苦戦したことがあったわね。」

「はい。」

「こんなこともあろうかと、あれから同じようなことがあった場合、たとえばバキューム鉱石のようなものがあった場合に、反重力反応機を吸収したエネルギーを逆にヤマトに戻す仕様にしておいたのよ。」

この一言はヤマト艦内にうわさ話として伝えられた。後に伝説のように地球に語り伝えられることになる。

「律子さん....ありがとう。」

「経験に頼ることと経験に学ぶことは違うってことよ。春香にはわかるでしょ。」

「はい、艦長。」

 

ゴーランド艦隊の戦いぶりをデスラーは見つめていた。

(数や力任せがヤマトには通用しいことがなぜ理解できないのだ。敵をあなどっていたからこのようになったのだ。)

そしてデスラーは口もとをゆがめる。ミルには理解できない薄ら笑いであった。

「ふふふ...さすがヤマトだ。無傷でわたしの前に現れるか。」

「デスラー総統!」

ミルのたしなめるような口調になるが、デスラーは気に留めず、

「ふはははは...。」とひとしきり大笑いして、通信手に打電を命じる。

 

「か、艦長、春香さん、あ、あのう...」雪歩はおどろきのあまり言葉が続かない。

「どうかしたの...雪歩??」

「そ、それが...あの...」

「ゆっきー、落ち着いて。事実のみを伝えればいいから。」

舞は雪歩に落ち着くように声をかける。

「で、デスラー総統??から入電ですぅ。」

「で、デスラーってあのガミラスの総統の???」

「ゆっきー、読んでみて。」舞は皆が驚いているときに、デスラーの意図を読み取ることに意識が移っている。

「読みます。『ヤマトの諸君、君たちの健闘に対し、心から祝福の言葉を送る。茶番は終わった。次は私が相手だ。大ガミラス帝星総統デスラー』...以上です。」

「信じられないわ。」

千早がつぶやく。

舞は律子に尋ねる。

「白色彗星の兵器や装備の分析はどのくらい進んでる?」

「はい、優れた科学力だということはわかってきました。蘇生医療の技術をもっていても不思議でない水準かもしれません。」

律子は舞が一番聞きたがっていることを含めてさりげなく答える。

「なるほどね。彗星本体をどうたたくかを考えてきたけど、これは戦略全体の修正をせまられそうね。幸い...」

「幸い?」

「春香、ゴーランド艦隊とデスラーを名乗る戦力の動きをみて何か感じなかった?」

「何か連携がうまくいっていないように感じました。みすみす友軍を波動砲の餌食にするなんて...。」

「おそらく負け犬のように思われているんでしょうね。我が帝国の蘇生術がなければ生き返らなかったとかバカなことを言ってるんでしょう。だけど白色彗星の元首はそこまでばかじゃない。この戦いは白色彗星本体とデスラーをいかに倒すかにあるわ。」

 

ガトランティスでは、ひげを蓄えた少し小太りのいかめしい顔をした人物がテレザート宙域の戦況を大帝ズォーダーに平伏しながら報告していた。舞や春香たちがみたら、白色彗星帝国にも芹沢がいると思ったことだろう、遊撃艦隊、つまり宇宙艦隊司令長官ゲーニッツである。「大帝。申し訳ありません。ゴーランド艦隊が全滅いたしました。至急援軍の派遣をお命じになってください。」

ガトランティスには統合作戦本部議長のラーゼラー、遊撃艦隊司令長官のゲーニッツ、その唯一の直属の上官が支配庁長官のサーベラーである。これがガトランティス帝国三長官で、サーベラーの唯一の上官が大元帥たるズォーダー5世である。

大帝の傍らには、支配庁長官のサーベラーがいた。

「ゲーニッツ、何を寝ぼけたことを言っているのです。我が帝国におそれるべきものがあるはずがない。事実であっても、たかが戦艦一隻、戦線の再編で対処しなさい。」

「しかし、ヤマトがもしテレサを救出するようなことがあったら...。」

「ご安心を。テレザート星へ上陸しようとしても、猛将ザバイバル・バットンフェルト率いる突撃格闘機甲師団ヘルサーバーがいます。艦隊戦にたまたま勝ったところで、上陸部隊などろくにいないでしょう。」ラーゼラーがこんどこそとばかり答えた。




ゴーランド艦隊を破ったヤマト。そのヤマトへ驚くべき通信が入電した。あのガミラスの総統デスラーがよみがえったというのだ。デスラーは再び復讐の牙をといでヤマトを待ち構える。

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