宇宙戦艦YAM@TO白色彗星帝国戦役編   作:Brahma

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芹沢参謀総長の「反逆者」ヤマト討伐(?)の最後の切り札はテスト航海中のアンドロメダでした。かっては訓練学校の校長を務め、アンドロメダ艦長で地球防衛軍きっての歴戦の名将である土方艦長の判断は...


第3話 『我遭遇予定空間ニ達スルモヤマトヲ認メズ。』

宇宙空間に達しようとするヤマトを戦闘衛星が狙っていた。

「ヤマト、射程内へあと1分。照準開始。」

「コース、速度とも予想通りです。」

戦闘衛星がヤマトに照準を合わせた。

 

そのとき戦闘衛星でヤマトを攻撃しようとしている防衛軍司令部のパネルに

亜美と真美の顔が映し出される。

「芹沢のおっちゃんのばーか。」

「そんなものヤマトに効かないよ。」

「亜美たちはひとのおやつを取り上げるような自分勝手な軍隊じゃないもん。地球を守るんだもん。」

「いおりんの砲撃は百発百中だからねえ。」

「あっかんべーだ。」

 

芹沢は、

「うぬうう。あのガキどもなんとかだまらせろ。」

数人の士官がさすがに見かねて

「芹沢参謀総長、参謀総長ともあろうお方があんな子どもに向きになってどうするんですか。」

「こっちが恥ずかしくなってきますよ。」

と口々にいい、芹沢は冷静さをいくぶんとりもどす。

 

一方、防衛軍司令部に亜美と真美の画像が流れているのを知って律子と雪歩は蒼くなった。

「あのぅ、ごめんなさい。私の責任ですぅ。」

雪歩は泣きそうになる。舞は

「ゆっきーは気にしなくていいからwあの二人がどうしても一言言ってやりたいから流してくれって言ってたんだから。」

「おもしろそうだから流そうっていってたの艦長じゃん。」

「イケイケファンシーゼリー

【挿絵表示】

につられて決断したでしょうw。」

第一艦橋の面々はあきれて苦笑するしかない。

「わたしたちは、反逆者なのよ。いまさらとりつくろっても仕方ない。

ただほんとに反逆者だったら地球は幸せなんだろうけど...。

とにかく、ゆっきー、そのスコップしまってw。」

舞がいつのまにかスコップをもっている雪歩の腕を押さえていた。

 

 

「右30度、距離7000kmに戦闘衛星確認。主砲発射用意。」

「誤差修正、0.002度」

「にひひっ。主砲発射ーっ。」

しかし、全自動の戦闘衛星は人間の研ぎ澄まされた判断の敵ではない。発見されるや否や伊織が放った正確無比なショックカノンの光条にあっという間に撃ち抜かれ、爆発していった。

 

「ヤマト、戦闘衛星をすべて破壊。」観測官が報告する。

「アンドロメダはどこだ。」芹沢が観測官に問う。

「火星軌道をテスト航行中です。」

「アンドロメダがヤマトを捕捉する確率は?」

「ヤマトとアンドロメダが最短で遭遇する所要時間は、38時間、最長で72時間です。」

「ふふ。どっちにしろたいした時間ではない。少しスクラップになるのが伸びただけだ。」

芹沢は自分に言い聞かせる。

 

「こうやって、こんなかたちで地球を出発することになるなんて...」

「イスカンダルへいくのとはえらい違いね。春香。」

「いまの私たちは、反逆者ってことになってるから。防衛軍司令部はだまったままじゃいないわね。」律子が半分後ろに振り返って話す。

「ヤマトの装備をもう少し、改良したかったなあ。あと、ブラックファルコンは降ろしてきちゃったし。」

「ワープテストも必要だね。」真がつぶやく。

「まあ、みんなで旅すると思えば楽しいんじゃないかしら。」あずさがつぶやく。

「千早、火星軌道まできたら自動操縦にして、例の通信波の来た方向へ進めて。発信源までの距離はわからないけど、方向だけはわかってるから。」

「火星軌道にはテスト航海中のアンドロメダがいるんだって。」

「鉢合わせするわね。」

 

「ヤマトの現在位置はどうだ。コースを変更する気配はないか。」

「まっすぐこっちへ向かってきます。」

「日高舞に天海春香...考えてみればあの二人がコースを変えるってこと自体考えにくいな。」土方はふふっと笑いをかみ殺す。

「よく聞け。本艦は、あと3時間でヤマトと遭遇する。本艦には、司令部よりヤマト迎撃するよう指令があった。各員部署につき任務を全うせよ。」

 

「あと2時間で火星の近くを通過する。千早ちゃん。」

「いよいよアンドロメダと遭遇するわね。」

「前方1万5000宇宙キロ、飛行物体確認。」

「パネルに映して。」

「やっぱりアンドロメダか。」真がつぶやく。

「まっすぐ向かってくるわね。」あずさがつぶやく。

 

「艦長、このままだと衝突します。」

「あら、このわたしと衝突するなんて幸せじゃない。」

舞は他の乗組員に配慮して本音をいわなかったが、ふらちなことを考えていた。

(アンドロメダを撃沈しちゃったらどうなのかしら^^ぞくぞくするわね。)

しかもあきれたことにどうやって撃沈するかも考えていたのである。

そんなこととは知らない雪歩の声は震えている。

「ア、アンドロメダより緊急通信ですぅ。針路変更されたし、だそうです。」

「返信して。要請を拒否する、って。」舞が雪歩に伝える。

「ひうっ。よ、ようせいをきょ、きょひしますぅ。」雪歩は泣きそうな声で返答する。

 

「艦長、ヤマトより返信です。『よ、ようせいをきょ、きょひしますぅ。』だそうです。通信士の声が震えています。」

土方はすべてをさとり直接舞を名指しする。

「日高中将。」

「土方艦長、わたしとあなたは階級がおなじです。針路を譲るよう命令される理由はないわね。」

「君は反逆者として階級は剥奪されているんだ。」

「じゃあ、なぜわたしを階級で呼んだんですか。」

「地球を救ったかっての名将に敬意を表したまでだ。」

「土方艦長なら、『今両虎共に闘へば、其の勢ひ倶に生きず』の意味ご存知ですよね。参謀総長さんは猫以下ですけど。あらいっけな~いw。」

アンドロメダとヤマトは正面からすれ違うとお互いにゆっくり艦首方向を変えて並行戦の体勢にうつる。

「春香、第一、第二砲塔指向右45度、上下角0度。」

「第一、第二砲塔指向右45度、上下角0度。」

「距離、5000メートル。」

舞はぞくぞくしていた。もしかしたらあのアンドロメダを沈めてしまうかもしれないのだ。どうせ階級は剥奪されちゃったし怖いことはない。地球連邦政府をおどすか、気楽な海賊船稼業でもするか、ヤマトには農園もあるし食うには困らないだろう...

(ただ地球はどうなっちゃうのかしら。心配だわ。)

 

「土方艦長、ヤマトが砲塔をこちらへ向けています。撃ちますか?」

(ふふつ...さすがは地球の誇る女傑だな...しかたないやつらだ...)

土方は、考え込んだ。そしてひとつの決断を下した彼の言葉は乗組員をおどろかせた。

「諸君、左舷に見えている艦はヤマトではない。」

「!!」

「形はにているがあれはヤマトではないな。ヤマトとは微妙に形が違っている。いや、そういえばヤマトはガミラス戦でデコイをつかったそうだからデコイをおいていってワープしたんだろう。」

「防衛軍司令部に伝えろ。『我遭遇予定空間ニ達スルモヤマトヲ認メズ。ヤマトハ遭遇ヲ避ケテワープシ太陽系外ヘ脱出シタモヨウ。コレ以上ノ追跡ハ不可能。本艦ハ直チニ地球ヘ帰投スル。』」

「発光信号遅れ。」

「アンドロメダより発光信号ですぅ。『貴艦ノ航海ノ安全ト無事ヲ祈ル。』」

 

「反転180度。針路を地球に取れ。」土方は操舵士に命じる。

「反転180度。針路を地球に取ります。」操舵士は復唱してアンドロメダの船体を反転させる。針路を変えたアンドロメダは高速で地球へもどっていった。

 

「土方さんはわかってくれたようね。」舞は微笑みながらつぶやく。

「しかし、艦長、寿命が縮まりました。」律子がため息をつきながら答える。

「アンドロメダを沈めないですんでよかったわ….。」

「!?」

「どうしたの?律子、春香?」

「....。」二人は返事に窮してだまりこむ。

「まず、アンドロメダの兵装でヤマトより確実に勝るのは拡散波動砲くらい。それから二人ともABSは知ってるわよね。」

「はい…。」

「どこかの公道最速を競う走り屋マンガじゃないけど、研ぎ澄まされた感覚を持つ人間の足のほうがABSよりも優れてるってこと。千早の操縦、春香と伊織の砲撃のほうが自動制御のアンドロメダより優れてる可能性が高い。それで、アンドロメダとヤマトの指揮官の資質が同じか後者がまさっていたらどうかしら。あとはわかるわね。」

春香と律子はこの人はぶれないな...と思う。アイドル時代にみせた天才性の裏には、子ども相手の積み木遊びやかくれんぼさえも手抜きなしという隠れた職人気質がある。訓練学校の同期では戦史と戦略シュミレーション、兵站研究については、トップの成績を残している。それは「指揮官というアイドル」に何が必要なのか本能的に読み取った結果だった。

一見夢想?無双?な面ばかり目立つが、七色星団の戦いにしろ、相手の航空攻撃をあらかじめ見破り、イオン乱流のタイミングを見極めて波動砲でドメル艦隊を打ち破ったり、デスラー砲の発射タイミングを見極めて砲口に魚雷を撃ち込むような作戦など非常に緻密である。まるで「名将という名のアイドル」を演出しているような戦いをしてみせるのだ。

 

「それからね。千早。」舞は千早が乗艦を決心した経緯を話すよう促す。

「舞さんに講義を受けちゃった。指揮官は「こうなってはならない」という心得がある、自分もみんなもそうならないようにするから安心して操舵の任についてって。それから結局namugoプロとイスカンダルでみんなと戦った経験と直感がここへ私をひっぱってきたの。」

 

「さて、千早、メッセージの来た方向はわかってるから、今のうちにワープして太陽系外へでましょう。」律子が話題を変えて任務の話をする。

「エネルギーレベルもあがってるよ。10分後からならいつでもワープできるよ。」

真がエンジンの状況について話す。

「真、テストしなくて大丈夫?」

「どーせテストしなきゃならないんだから早速ワープしよう。」

「レーダーに反応。飛行物体多数。後方より接近。5000宇宙キロ。」

「メインパネルに投影しますぅ。」

「これは地球の艦載機ね。」

「アンドロメダから発進したのかしら。」

「あれ、千早ちゃん、翼をふっているようにみえるけど。」

「そうね。」

「こちら元ブラックファルコン隊長、音無小鳥です。ヤマトへの着艦許可お願いします。」

「小鳥さんがきてくれたのか。」

「着艦口ひらいて。元の隊員もつれてきたの。」

「着艦口開けます。」

 

「舞さん、春香ちゃんもひどいです。わたしたちをおいていくなんて。」

「ごめんね。戦闘が目的じゃないし、可及的速やかに進めなければいかなかったから。」

「月基地でもたいへんなさわぎだったわ。ヤマトが反乱を起こしたって。」

小鳥は愉快そうにほほえむ。

「小鳥さんたちが来てくれたら鬼に金棒ですぅ。」

「雪歩ちゃん、わたしがあまり第一艦橋にいないせいか、なんか大人っぽくなったね。」

「それはそうと、どうして舞さんと春香ちゃんたちは命令違反までして地球をでてきたの??」

律子と春香がなぞのメッセージと白色彗星の話、そして地球を飛び出してきた経緯を話す。

「こんどはわたしたちの番ってことなのよね。」小鳥は納得して二人をみつめてそうつぶやくと、律子と春香は静かにうなずいた。

 

一方、ヤマトが出撃したことは、白色彗星帝国-国号をガトランティスという-軍にもとらえられていた。

「ヤマトが土星軌道を通過しました。」

観測員が太陽系方面軍前衛艦隊司令のナスカに告げる。

「泳がせておけ。総攻撃の準備をせよ。」

「!!司令官。同盟国のデスラー総統から通信です。」

ナスカは舌打ちして

「つなげ。」と通信士に命じた。ナスカ旗艦のスクリーンにデスラーの上半身が映しだされる。

「ナスカ君、何か私に伝えなければいけないことがないかね。」

「デスラー総統....。」

「ナスカ君。わたしは、ズォーダー大帝からヤマトの処理について任されているのだ。それを忘れてもらっては困るな。」

「しかし、あのような艦の一隻や二隻...。」

「ふむ。それで後悔しないですめばよいがな。」

デスラーがスクリーンから姿を消すと

ナスカは(ふん、負け犬が...)と心の中でつぶやき、

「われわれには、地球の前線基地のあるこの星を攻略し、われわれの前線基地を築くという任務がある。ヤマトだかトマトだか知らんがたかが遅れた星の戦艦一隻ごときにかまっていられないのだ。」

ナスカは、スクリーンに移っている赤茶色の球体、準惑星セドナを見ながら部下に言い聞かせるように言葉をはき捨てた。




『今両虎共に闘へば、其の勢ひ倶に生きず。』とは、『史記』廉頗藺相如(れんぱりんしょうじょ)列伝の『今両虎共闘、其勢不倶生』という一節で、戦国時代(403B.C.~221B.C.)の趙に仕えた優れた臣下であった藺相如が部下に語った言葉です。「両方の虎(名将である廉頗と藺相如)がともに戦いあえば、その勢いはすさまじく傷つきあって共倒れしてしまう(※それであの強国秦から趙を誰が守るのかという意味が含まれている。)」といったような意味です。地球防衛軍きっての名将同士である舞と土方艦長が戦ってもし片方なり両方なり傷つけあって死ぬようなことは、地球にとって非常な損失で、まさしく白色彗星などの外敵に付け入る隙を与えるようなものだったので、舞はこのたとえを使いました。

指揮官は「こうあってはならない」という心得については、太平洋戦争時、山本五十六長官が亡くなる少し前の昭和18年春に小沢治三郎提督に武経七書のひとつとされる『六韜』(りくとう)の「論将第十九」の一節を引用した書を送ったという話が知られています。航空主兵主義者の提督たちを千早が尊敬していたことは各種架空戦記で描かれているとおりです。これについては、機会があれば外伝にしようかなと思います。

アイマスキャラの個性があまり出てないのが自分的に不満だったので、双子とか入れてみました(5/22,1:12am)。

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