宇宙戦艦YAM@TO白色彗星帝国戦役編   作:Brahma

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苦戦するヤマトの戦闘班と空間騎兵隊だが、意外なきっかけで敵の弱点が判明する。


第15話 デスラーとの対決

「せんせえ。これは無理だ。後退する。」

「はい。わかりました。」空間騎兵隊の後方のものかげで、あずさは返事をしつつも、薬を塗り、包帯を巻く手を休めない。

そのとき負傷者をかついできたアナライザーがあずさに話しかけた。

「あずさ先生。」

「なあに、アナライザー。」

「敵兵ニ生命反応ガアリマセン。」

「え?」あずさは一瞬驚くが、アナライザーが胸にある生命感知器を指差して

「マッタク反応ガ感知デキマセン。」と伝える。

「ロボット...ってこと??」

「ソウデス。」

「これは春香ちゃんに伝えなきゃ。アナライザー、春香ちゃんにこのことを伝えて。」

「了解。」

「天海班長、秋月技師長、ガミラス兵ハアンドロイドト思ワレマス。」

「そうだったのね。どうりで。」

律子はガミラス兵の整然とした動きを不審に感じていたその回答が得られたことを得心した。白兵戦部隊のピンチを察すると対策を練るために数人の戦闘員をひきつれてデスラー艦の艦尾のほうから宇宙空間を飛んでいた春香もアナライザーの通信を受ける。

「律子さん!」春香は律子がなにか考え付いたか確認するために話しかける。

「春香!デスラー艦のどこかにコントロール機構があるはずだわ。探知するから私の誘導にしたがって。」

「わかりました。お願いします。」

春香と第一戦闘班の別働隊がデスラー艦内に突入する。

タランは突入口から新手が来たことを察知してあわてて操作盤を操作する。

 

一方、律子は第一艦橋でデスラー艦が投影されたパネルで春香の位置を示す光点が動いているのを見ながらコントロール機構のある場所を電波探知機で探っていた。コントロール波が探知されて、新たな光点がともる。

「発見したわ。春香、左側よ。」

律子の指示に従い、左側に進むと壁になっている。

春香は距離をとってコスモ爆弾を投げつけ壁を破壊する。

しかし、そこには敵兵が待ち構えていた。

春香は物陰に隠れて応射するのがやっとだった。

そこへ真と斉藤たちが飛びこんでくる。

「わ・た・し芯の~強い女~どんな壁ものりこえてくぅ~」

斉藤が鼻歌をくちづさむ。

「ねーえほんとに。」隊員が合いの手をいれる。

「あっしもと見ず~つまづいても~

力ずくでころばないわ~、って班長の歌だろ。」

「もう何でそんな歌覚えてるんですか。」

「今、とっきどき弱気になる、自信が持てなくなる、ってとこなんだろ。」

「もう。」

「春香、行こう。コントロール機構はどこなんだい。」真がはなしかけける。

「春香!右方向へ直進して。」

通路をしばらくいくとまた分厚い鉄の壁に突き当たる。

斉藤は敵兵を曲がり角で食い止めている。

春香は鍵穴をブラスターで撃ち、真と戦闘班の数人が渾身の力でこじ開けた。

春香がコスモ手榴弾を投げ込み、コントロール機構は爆音と煙をあげる。

「おお、班長、やったじゃないか。」

先の瞬間まで整然と隊列を組んでいたガミロイド兵は狂ったように銃を撃ちまくったり、銃剣をふりまわし、同士討ちをはじめる。

騎兵隊員はガミロイド兵を打ち倒し、デスラー艦内を進んでいく。

「総統!コントロール機構がやられたようです。やむを得ません。指揮を執って応戦します。」

タランが生身のガミラス兵を率いて応戦しようとするが白兵戦を得意とする空間騎兵と真の敵ではなく、完全に形勢は逆転していた。

「ひるむな。撃て。一人も艦内に入れるな!」

タランが必死に指揮をとるが、空間騎兵や真の指揮するヤマトの戦闘班がガミラス兵を圧倒し始める。春香は、ガミラス兵の隙をついて奥へ奥へとデスラー艦の艦橋方面へ向かって進む。

衝突のショック、機雷の接触、コスモ手榴弾の使用により、デスラー艦の電気回線がいたるところで不調を起こしていた。そのため小規模な爆発が起こる。それが春香の近くでも起こった。

「!!」

轟音とともに瓦礫で下半身が埋まってしまう。

春香は必死に体を起こそうとしていた。

 

一方、戦況が芳しくないとみたタランは艦橋に引き返してデスラーに話しかける。

機雷とヤマト激突の影響はデスラー艦の機関部にも及んでいた。

「総統!機関部に小規模な爆発が連続して起こっています。このままでは危険です。脱出してください。」

「脱出だと!」

「いえ、ご退艦を...戦闘空母に旗艦とし引き続き指揮をとられてはいかがでしょうか。」

デスラーは窓から見える戦闘空母を眺める。

「総統。われわれは勝ったのです。ヤマトはこの旗艦を道連れにして爆発するしかありません。この旗艦から離れたらそれはそのままヤマトの最後を意味します。一方ガミラス艦隊は最悪でも旗艦を失うのみでそのまま無傷で残るのです。このままお残りになられたらやつらと運命をともにすることになってしまいます。」

「いいだろう。タラン。退艦しよう。」

「お聞き入れいただきありがとうございます。では、こちらから...。」

タランがデスラーを脱出路へ案内しようとしてしばらくして人影があることに気がついて、足を止める。

そこには、頭に赤いリボンをふたつつけた少女が立っていた。

デスラーと春香は無言のままにらみ合う。

「デスラー総統。」はぁはぁ...春香は怪我をしているため肩で息をしてしまう。

「か、かってのあなたの戦いには、ガ、ガミラス民族の存亡をかけた立場がありました。で、でも今度の戦いにはどんな意味があるというんですか。」

真がこの様子をみていたが、今は出るべきではないと息をひそめていた。

「ヤマトは強かった。ヒダカマイは確かに偉大な艦長だ。しかし、俺は屈辱をわすれん男だ。アマミ、今度はお前が相手か。立派になったものだ。」

デスラーは相手が一見ただの少女にしかみえなくても、黒い「閣下」軍服をつけたこの少女が、ただの小娘ではなく、歴戦の宇宙戦士であり、将来艦長になるべく背負ったものがあることを感じ取っていた。

「構えろ!アマミ!」

「総統!」

タランが近寄ろうとしたが、デスラーは片手で制して、ホルスターからコスモガンを抜いた。春香も銃をかまえようとするが、視界がゆがんでしまう。

「撃て!アマミ!」

春香は激痛で下がりそうになる腕を持ち上げようとする。

デスラーは、春香の銃口が震えていることに気づき、まゆをひそめる。

春香の「閣下」軍服は、舞にちくわ小惑星での戦闘指揮を命じられたとき以来着けているものだった。黒地で出血はめだたないにもかかわらず肩から血がにじんでいるのがはっきりわかる。

春香はついに激痛に耐えられず、銃をとりおとし、ころぶのではなく、どうっと倒れてしまった。

「春香!」

真が春香をかばうように飛び出して銃をひろいあげるとデスラーに向ける。

「ううん...。」春香は苦痛でうめく。

「春香!大丈夫?」

「??…お前はアマミの恋人か??」

「ちがう!ボクは女だ!」

「これは失礼した。」

「面白い話をしてやろう。お前たちが白色彗星ガトランティスを破壊し、大帝の超巨大戦艦を撃沈した直後、大帝の復讐のために、シリウス・プロキオン方面のバルゼーとゲルンの機動艦隊が太陽系に向かってきていた。」

「!!」

「ところがなぞの敵に襲われ、わたしのところに救援要請がきた。お前たちの艦長のお見通しのとおり、わたしはガトランティスの蘇生技術によってよみがえった。その恩にせめて報いてくれという要請だった。わたしはただちに向かったが彼らは全滅した後だった。」

「そのなぞの敵が地球を狙わないとはかぎらない。お前たちの艦長が見通したとおり、わたしは冷遇され、わなにも落とされた。わたしの味方は大帝ズォーダーのみだった。その大帝も奸臣たちにだまされ、わたしは投獄された。ガトランティス、なぞの敵、彼らはただ侵略と略奪にあけくれるだけだ。」

「わたしはこれまでガミラスのためとはいえ、破壊と暴力にのみ美しさをみいだしてきた。ヤマトへの復讐とガミラスの復興のために手段をえらばないつもりだったが、振り返ってみればガトランティスの都合に振り回されていただけだった。」

「一年数ヶ月前...だったな。わたしとお前たちは互いの星の存亡のために戦った。そしてお前たちは今度も地球のために戦っている。わたしの心ははるかにお前たち地球人に近いと知ったのだ。」

「さっきアマミから「今度の戦いにどんな意味があるか。」と問われた、その直接の答えにはなっていないかもしれないが。」

デスラーはコスモガンをホルスターに納めると

「もう、ヤマトへの恨みは消えた。行くぞ、タラン。」

「はっ!。」

「さらばだ。いつの日かまた会おう。」

デスラーはマントをひるがえし、タランを従えて退艦用通路へ姿を消した。

「班長!機関長!」

真とともに負傷している春香を抱え起こした斉藤たちは、一機の飛行艇が真紅の戦闘空母に向かっているのを見た。戦闘空母は飛行艇を収容して、ゆっくり反転して宇宙の暗闇に遠ざかっていった。他の三段空母や地球側からガミラス艦と総称されたデストリア級巡洋艦、ケルカピア級巡洋艦、クリピテラ級駆逐艦も後を追うように去っていった。

 

春香はあずさに手当てをしてもらいながら第一艦橋にもどってきた。

春香はにっこり笑って千早に話しかける。

「千早ちゃん!地球へ向かって発進!」

「ヤマト、地球へ向かって発進します。」

千早が復唱し、メインエンジンが力強く噴射される。

 

西暦2201年、ヤマトは無事地球へ帰還した。ひとつの戦いは終わったのだ。




白色彗星帝国ガトランティスは、本星が滅び、地球討伐のシリウス・プロキオン方面軍もなぞの敵に襲われて全滅した。執念あるものを蘇生させるという医療技術も失われ、二度と復活することはなかった。かろうじて抵抗を続けていたアンドロメダ星雲のガトランティス勢力も一掃され、大小マゼラン星雲もガミラス残党支配域を除いて、暗黒星団帝国の手に落ちることになる。

ヤマトは勝利したが、やがて再び新たな戦いが始まろうとしていた。

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