その頃小マゼラン雲のガミラス艦隊が白色彗星に向かっていた。タランが逐一状況を小マゼラン雲の艦隊に伝えていたのである。
デスラー機であるイーターⅡを発見したガミラス艦隊はその砲門をいっせいに向けたが、「待て、私はタランだ。デスラー総統も乗っておられる。ただちに発射準備を停止せよ。」
タランからの通信を受け、ガミラス艦隊は、砲撃準備をやめる。
一方、白色彗星から向かってきた戦闘機隊はやがて引き上げていった。かわりにデスラーの旗艦が自動操縦でワープして出現する。
タランが驚愕の表情でデスラーに伝える。
「総統...白色彗星が...ヤマトの攻撃で爆発。大帝の座乗された超巨大戦艦も撃沈されたようです。」
「そうか...。」
その頃、ヤマトは勝利にわきたっていた。白色彗星と超巨大戦艦を倒したのだ。
「長官、ヤマトは、テレザート宙域で、白色彗星の都市帝国を撃破。大帝ズォーダーの座乗艦である超巨大戦艦も撃沈しました。」
「そうか...地球は守られたな。」
「これは、メッセージを送ってくださっていたテレサさんがテレザート星を自爆させ、白色彗星を覆う高速中性子ガスをとりはらい、白色彗星が動揺しているところをいっきに攻撃したから可能でした。テレサさんの尊い犠牲あってのことです。」
「そうか....。」
「長官。」
「何かな?。舞君。」
「実は、白色彗星との一連の戦闘で、テレザート星域でデスラー総統と思われる人物と戦闘を行いました。デスラー総統と思われる人物は、わたしたちに攻撃をしかけてきましたが、突然撤退するなど不可解な行動がありましたが、いくつかの間接的証拠と、テレサさんからも提供されたものも含めた通信傍受記録などから考えて、白色彗星には、親デスラー派と反デスラー派がいたものと考えられます。また、監視衛星が、一基の敵戦闘機と白色彗星から脱出したと思われるテレザートでデスラーが座乗していたものと同形の戦艦の姿を確認しています。奇襲攻撃を得意とするガミラスですから、まだ、地球帰還まで油断できません。」
「そうか...くれぐれも気をつけて無事に帰還してほしい。地球は君たちの帰りを待っている。」
地球では、マスコミが惑星間航路封鎖についての情報統制があったことを明らかにし、白色彗星帝国の侵略とこれまでの経緯、ヤマトの戦闘経過、白色彗星の最後について報道された。それまで停止されていた惑星間航路は再開された。
「千早、地球へ向けてワープよ。」
「了解。」千早が明るく答える。
「それから、春香。デスラーはかならず奇襲をしかけてくる。作戦指揮がんばってね。」
「はい、って...まるなげですか。」
「あなたは、実戦で苦労して掴み取るタイプだからね。大丈夫。冷静になれば切り抜けられる。実は、ちくわ小惑星のピンチもデスラーの突然の召還があるだろうという読みに確信があったからあなたにまかせたんだけどね。」
「はい...。」春香は自信なさそうにつぶやく。
「善澤記者がおっしゃってたわ。春香はいい意味で楽天家だって。その楽天的なところってのは一種の才能なの。ね、千早?、雪歩?」
「そうね。アリーナライブのときの決断。苦しいときにあのような決断を前向きに出せるのは春香の才能ね。」
「春香ちゃん。みんなでやれば怖くないよ。律子さんだっているんだよ。」
「艦長。春香を鍛えるつもりなんですね。」
「そういうこと。「有能な働き者」の律子さんにはがんばってもらうから。よろしく♪」
「指揮権を艦長からひきつぎます。皆さん、これより10分後にヤマトはテレザートから2000光年の宙域にワープします。各自ベルト着用してください。」春香の艦内放送が伝えられる。
「5,4,3,2,1,0、ワープ!」ヤマトはテレザート宙域から姿を消した。
「ヤマト発見!」
「ふふふ...ヤマトめ。いおったか。ふつふつふ...。」
「総統!ヤマトが...。」ヤマトの姿がスクリーンから消えたのを見てタランが叫ぶ。
「ワープしたもようです。」観測員が伝える。
「至急、ヤマトのワープアウト地点を計算するのだ。われわれもその近傍にワープする。
瞬間物質移送機が使えるよう準備しておけ!」
「了解。」
デスラー艦隊もヤマト奇襲に都合のよい宙域へのワープを行った。
「ヤマト発見。2時の方向、1万5千宇宙キロ!」
「ふつふつふ...急降下爆撃隊。ワープ光線のエリア内に集結させろ。」
「急降下爆撃隊。ワープ光線のエリア内に集結しました。」
「ワープ光線照射!」
急降下爆撃機がヤマトのいる宙域にワープしていく。
「!!」
「11時の方向に敵機至近...あれは...」
「ガミラス艦載機です。」
ガミラス急降下爆撃機は次々と爆弾を投下していく
「波動防壁展開!主砲11時に発射!」春香が攻撃を命じる。
「了解。主砲11時方向に発射!あわせて右舷、左舷パルスレーザー砲斉射!」
伊織が復唱し、さらにパルスレーザーの発射を命じる。
波動防壁とサーモバリックモード、パルスレーザー砲の鉄壁の弾幕でガミラス急降下爆撃機が防がれる。
「はっはっは...はっはっは...ヤマトの諸君、久しぶりだね。」
「デスラー総統...。」
「おや、またリボンのお嬢さんか。艦長はどこかね。ガミラスをあんなふうにしたご尊顔を拝したいとおもったのだが。」
「私には天海春香って名前があります。艦長はわたしに指揮を一任しました。あ~ちなみに臆病だの挑発したって艦長は出てきませんよ。」
「ずいぶんこのデスラーを見下げてくれたものだね。...そうか、お嬢さんをわたしと戦わせて鍛えようって魂胆か。ならば、引きずり出してやろう。」
「その波動防壁は20分しかももたないことは知っている。さて波動防壁がきれるのをまつとするか。ふつふつふ。」
「春香、攻撃がやんだわ。時間稼ぎか、デスラー砲をしかけてくるかもしれない。」
「千早ちゃん。いつでも小ワープできるよう準備して。」
「波動防壁、あと7分。」
「デスラー艦にデスラー砲エネルギー充填反応なし。」
「じゃあ、こちらから波動砲発射準備しましょう。」
「全艦隊、展開せよ。波動防壁が切れた瞬間をねらうのだ。」
「左舷後方、デスラー分艦隊!右舷後方にもです。」
「ヤマト、艦首をこちらへ向けています。」
「ほほう、タラン、面白くなってきたぞ。ヤマトは波動砲を使うつもりらしい。全機帰還せよ。瞬間物質移送機用意、磁力機雷、用意。」
「敵機が引き上げていきます。」
「別の攻撃をしかけるつもりね。」
「波動砲、エネルギー充填70%」
「磁力機雷発射!」
ワープ光線によってつぎつぎと磁力機雷が移送される。
「波動砲、エネルギー充填90%、波動砲への回路開きます。」
「!!あれは何?」
千早が突然あらわれた物体に少し驚いたように口をひらく。
「機雷だわ。」
磁力機雷は次々と現れる。
「ばかにしてぇ~!片っ端からぶっ壊してやるんだから!」
「伊織!落ち着いて。今波動砲発射準備中だよ。今撃ったらだめだよ。」
春香が伊織を制止する。
「伊織、もう少しなんだ。ここで失敗できないんだ。だから...。」
真も伊織をなだめようとする。
「エネルギー充填120%」真が発射準備が整ったことを告げる。
「発射60秒前!セーフティロック解除します。」
「待って!春香。」
「え?」
「機雷が波動砲の発射口に...。」
春香は蒼白になった。
「どうした、アマミ。撃て、撃ってみろ!ヤマトご自慢の波動砲の威力をぜひもう一度拝見したいものだ。はつはつは。」
春香は歯をかみ締めた。
「波動防壁、後4分です。」
ヤマトの周囲には機雷が壁を作り、その周りにはデスラーの艦隊が波動防壁がきれるのを待っている。波動防壁がきれたらいっせいに斉射されるだろう。
「ふつふつふ...せっかくの波動砲も宝の持ち腐れとはあわれなものだ。どうだ、タラン。」
「はっ。総統。お見事な作戦です。」
「一番艦から攻撃開始。目標ヤマト。」
「波動防壁、あと2分。」
「小ワープだよ。千早ちゃん!」
千早は一瞬とまどう。
「春香、これだけ機雷に囲まれているのよ。」
「いいかもしれないわ。これだけ至近弾を浴びているのに爆発している機雷がないということは、リモートコントロール機雷の可能性が高い。おそらく接舷しても爆発しないわ。」
春香はうなずく。千早も納得した様子だ。春香は艦内放送で指示を伝える。
「小ワープして、デスラー艦に接舷して白兵戦にもちこみます。戦闘班とそれから、斉藤さん、空間騎兵隊の皆さんは準備し、大至急中央作戦室に集合してください。」
「春香。ボクもいくよ。」
「真、ありがとう。」
春香は中央作戦室に集まった面々に作戦を説明する。
「デスラー艦に強行接舷したら永倉さんたち空間騎兵隊分隊は甲板から攻撃してください。斉藤さんの本隊とわたしと真が指揮する第一戦闘班は衝突下部分から突入します。小鳥さんと山本さんは第二戦闘班を指揮して突入を援護してください。」
「波動防壁消失!」
「左舷第110装甲版被弾!」
「右舷第72装甲版被弾!」
「左舷第93装甲版被弾!」
「右舷第38装甲版被弾!」
「左舷第212装甲版被弾!」
「右舷第217装甲版被弾!」
ヤマトは波動防壁が消失し、各所に被弾がはじまった。
「砲撃やめ。私がとどめをさす。デスラー砲用意。」
「発射30秒前。」
「「10,9,8・・・」」
ヤマトでワープ、デスラー艦でデスラー砲発射の秒読みがおこなわれる。
「デスラー砲発射!」「ワープ!」
デスラー砲の太い光条がうなりを立てる先にいたヤマトの姿が消え、デスラーが息を呑んだ次の瞬間、デスラー艦に激しい振動が起こった。
「!!」
ヤマトとデスラー艦の周囲で機雷が爆発する。
「成功したようね。」
「突入!」
ヤマトとデスラー艦が激突した状態のため、他のガミラス艦は砲撃ができない。
「敵の空間騎兵が乗り移ってきます。」
ガミラス兵がタランとデスラーに戦況を伝える。
「タラン、ガミロイド・ファランクスを起動させろ。」
「了解!」
タランはデスラー艦内のガミロイド・ファランクスの操作パネルを操作し始めた。
「よし、愚民班のみんな!班長に敵の指一本もふれさせるな!」
「おおつ!」と第一戦闘班「愚民班」は気勢をあげる。
デスラー艦に突入しようとするヤマト戦闘班とガミロイド・ファランクスの戦闘が始まる。
通路にはいってしばらくすると銃剣と盾を連ねて通路いっぱいに前進してくるガミロイド・ファランクスにヤマト戦闘班はじりじりと後退を余儀なくされていた。
「ふははは。どうだ。すすんでもハリネズミになるだけだ。どうする、ヤマトの諸君。」
デスラーは高笑いする。
斉藤と真の率いる戦闘班は敵兵のすきを突こうと懸命だが、敵兵の分厚い隊列になかなか進むことができない。
甲板に永倉が率いる空間騎兵分隊を何列にもならんだガミロイド・ファランクスが迎え撃つ。物陰に隠れつつ攻撃するが倒されてもも倒されてもサメの歯のように列をつくってたちはだかる。
そうのうちに空間騎兵のほうに戦死者がじわじわと増えていった。
「きりがないぜ。」
永倉はため息をついて、ぼやく。
「敵を左舷前方通路に追い詰めました。」
タランの報告を受けデスラーは満足げにうなづき、
「よし。第二中隊に側面から攻撃させろ。」
「了解。第二中隊を敵の側面へ移動させます。」
真率いる第一戦闘班と斉藤の空間騎兵第二分隊も追い詰められピンチを迎えていた。
白兵戦でデスラー艦に突入したヤマト戦闘班と空間騎兵隊だが敵兵はあまりにも強力でまたもやピンチを迎える。