宇宙戦艦YAM@TO白色彗星帝国戦役編   作:Brahma

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テレザート星は大爆発を起こし、彗星帝国は大ダメージを受けた。ワープで地球に戻っても間に合わないために舞が下した決断が実行される。


第13話 白色彗星の最後

テレサとズォーダーの会話が途切れてからテレザート星が光に包まれ、テレサの姿が現れてテレザートが爆発した様子はヤマトのスクリーンでも映し出されていた。

「テレザート星ガ爆発シマシタ。」

「....」律子と春香は予告されていたため、驚きはしなかったがやるせない悲しみで無言になっていた。

「じ、自分を犠牲にしてわたしたちを...。」雪歩がしゃくりあげて、その目に涙がうかぶ。

 

「たいした女だぜ。テレサってのは。お高い女とばかりおもっていたが...。」

「隊長。通信班長はふだんは気の弱いかわいい娘ですがいざとなったらわれわれのようにスコップをもって工兵ができる娘ですよ。高校戦車道で優秀な車長だったそうです。」

永倉が雪歩押しをする。

隊員たちも、

「天海班長や、如月航海長、秋月技師長も元アイドルでそれなりに美人だから平和な地球でアイドルの仕事に戻ってもよかったのに、考えてみればこういう危険な戦場に裏切り者の汚名を帯びてまで出てきたのです。芹沢参謀長や防衛会議のやつらやほかのエリート連中とは違うと思いますよ。」

「そうだな。考えてみればこのヤマトには肝っ玉もテレサに負けないお嬢さん方がいっぱいいるんだな。きれいで頭がいいだけのお嬢さんじゃないというわけだ。そしてその頂点にあの見目麗しいおばさんがいると。」

「斉藤さん、なんか間違ってない?」と不意に20代の女性の声がする。

「!!」

「お姉さんの間違いだから。訂正してくれる?」

「通信班長!床掘らないでいいですから!」

斉藤が答える前に思わず永倉が雪歩の心配をして叫び、一同が笑いうやむやになった。

 

彗星帝国は中性子ガスをテレサによって吹き飛ばされ、都市帝国がその姿をむき出しにして軌道を大きく外れ回転している。

舞があらかじめヤマトから打ち上げていた数基の監視衛星は、彗星帝国の底部を克明に撮影していた。

「新米君、敵の弱点はわかった?」律子が部下の新米に尋ねる。

「彗星帝国の都市の下部分、回転ベルトミサイル帯を赤道として南緯88°38′27″の位置に直径10kmほどのクレーターがみっつ重複している付近に艦載機射出口があります。画像送ります。」

彗星帝国の底部の画像に印がついて現在の状況が送られてくる。

「うけとったわ。ありがとう。」

「艦載機射出口発見。」

(空気など読むな、自分が空気をつくるんだ。)武田の声が舞の脳裏に響く。

(そう、絶望的な空気をはらって勝利の空気にする。)

「あそこに波動砲を打ち込むわよ。」舞が春香に指示する。

「はい。目標誤差修正+4、エネルギー充填100%」

「対ショック対閃光防御。」

「エネルギー充填120%、発射準備完了。」

「波動砲、発射。」

光の束が都市帝国の底部の艦載機射出口に命中する。

そして波動砲のエネルギーの奔流は艦載機射出口から、ガトランティスの艦載機群を焼き尽くして、空洞部分を通過し、彗星帝国の動力炉を貫いた。誘爆が繰り返され、彗星帝国は断末魔にとらえられる。

ズォーダーは「ヤマトのねずみめ!」と生まれて初めて絶叫した。それはもはや宇宙を支配する帝王のそれではなく、盗賊の頭領が別の盗賊に上前をはねられ、自分が陥れられたときに叫ぶ絶叫に過ぎなかった。

 

彗星帝国の内部では、サーベラーがデスラーの牢をたずねていた。

「しばらくね。デスラー。」

「サーベラー長官。この激しい振動や誘爆音は何かね。」

「お前は、ヤマトと通じて見逃して帰ってきた。だからこのようになった。だからこれからおまえの即決裁判を行います。出なさい。」

牢から出たデスラーはすばやく衛兵の銃を奪い、サーベラーの頭に突きつける。

「何をするのです。デスラー。」

デスラーは薄く笑って

「サーベラー、そろそろおいとますることにするよ。大ガミラスの総統にはこの部屋は狭すぎるのでね。」

「総統!」

「タランか。」

「さあ、私がご案内します。」

タランが敬愛する上官と人質の女性高官を乗せると反重力カーが走り出す。

ガトランティスの中では戦闘機や警備隊の反重力カーが巡回しているものの、誘爆がひどく、混乱していた。

「ごくろうだったね。サーベラー。」

デスラーとタランは戦闘機に乗り移ると同時にサーベラーをつきとばして解放した。

「撃って!あの二人を撃墜するのよ。」

「追え!全機発進!デスラーを撃墜せよ!」ゲーニッツが叫ぶ。

「放っておけ。」大帝があらわれて口を開く。

「なぜです。この大変なときにデスラーはわがガトランティスから脱出したのです。これこそヤマトと通じていたから見逃して帰ってきた証拠ではありませんか。こんな恥辱はありません。」

「恥を知らなければならないのはお前だ。サーベラー。」

「デスラーはやっぱり立派な武人だった。戦場から逃げ帰るような卑怯者に死を賭してまで脱出を試みたり、それを守ろうとする部下や決死の出撃をしてくる部下がいるはずがない。」

「お前たちはわしをだましたようだな。サーベラー、お前の独断がこのガトランティスをここまで追い詰めた。お前の甘い見込みがこの事態を招いたのだ。せめて処刑はしないでおいてやる。この偉大なるガトランティス本星と運命をともにしろ。」

「大帝、ご指示を!」ゲーニッツとラーゼラーが指示を仰ごうと大帝に声をかける。

「ゲーニッツ、ラーゼラーお前たちも同罪だ。サーベラーと共謀していたことに気がつかないと思っていたのか。」

二人は返す言葉もなくたちつくす。

「ええい、おまえたちのような無能な部下はいらん。これからはわし一人で戦うことにする。」

ズォーダーが、ラーゼラー、ゲーニッツをタラップから払い落とす。

「まって、私をおいていかないで。」と叫んでしがみつこうとするサーベラーを振り払って、ズォーダーは扉を閉めた。

 

都市帝国の摩天楼のようにそびえる都市が炎上し、下半分の岩石惑星部分にひびが入っていく。そして、都市帝国の内部から恐竜が自ら卵を割るようにして出現してきたのは、ズォーダーが乗り込んだ超巨大戦艦であった。

それは全長12.2kmに達する威容を誇っていた。艦首に照明か艦砲のどちらかと思われる目玉のようなものが二列合計10基並び不気味に光っていて、全体として黒光りしており、51サンチ砲と思われる砲塔が数十基はついている。さらに艦底部には、波動砲に匹敵すると思われる巨大な砲門が筒のようについていた。

 

「わっはっは、わっはつは....。ヤマトよよく戦った。ほめてやろう。褒美に面白いものをみせてやる。」

超巨大戦艦は主砲をテレザート星の近くにあった小惑星へ向けた。発射と同時に波動砲のような激しい閃光がはしり小惑星は一撃で吹き飛んで、おびただしい細かな岩塊に変わった。

「どうだわかっただろう。宇宙の絶対者は、ただひとり、このわしなのだ。命あるものは血の一滴までこのわしのものなのだ。宇宙のすべては我が意志のままにある(最近アンドロメダ大星雲が暗黒星団帝国に攻撃されて不安だが;ここは空威張りだ;)、わしが宇宙の法だ!宇宙の秩序なのだ!よってお前たちの地球もこのわしのものなのだ。」

 

しかし、舞と律子は、満足し、自信にあふれていた。むしろ、地球とヤマトの実力をこの邪悪な白色彗星に見せ付けるときだと確信していた。むろん、自分が宇宙の絶対者と自認するズォーダーは、高笑いをする。これまで侵略し、踏み潰し、絶望感を味あわせてきた。ガトランティスの大帝は宇宙の法であり、秩序である。征服された惑星リストにいよいよ地球も加わるのだ。そうなると確信してまったく疑っていなかった。

 

「違う、絶対違う。宇宙は命なの。万物はその恵みを受けて、すべて平等にあって、ともに、いっしょに栄える、それこそが宇宙の法であり、宇宙の愛。わたしはそう思ってます。あなたは、宇宙の自由と平和を根底から破壊する。地球は、あなたには負けない。」

春香は叫ぶ。

「小娘が。貴様たちは頼みとする波動砲をもう撃った。エネルギーを充填するまで時間がかかろう。その間どうするというのだ。この戦艦の主砲はそんなまどろっこしい充填時間などなくとも連射できるのだ。小娘、ヤマトとともに死ね。死ね!」

ズォーダーは主砲ヤマトに向けて撃った。波動砲なみの光条は宇宙を昼間のように照らし、ヤマトへ向かっていく。

そのとき律子がにやりと微笑んで指を鳴らしヤマトが銀色の光に包まれる。

ヤマトに命中した超巨大戦艦の主砲は反射され、そのまま超巨大戦艦に命中する。命中箇所は爆発を起こす。

「何をやっているのだ。」

「わかりません。主砲が跳ね返されたように思われたのですが。」オペレーターが答える。

「そんなことはない。このガトランティスこそ、ズォーダーこそ宇宙の法!宇宙の秩序、宇宙の絶対者なのだ。宇宙の絶対者にガトランティスに敗北はない。最大出力でもう一度撃て。」

ズォーダーは、砲手を突き飛ばした。

「うぬ、わしがやる。」

ズォーダー自らが主砲塔をヤマトに向け、10秒もしないうちに再び主砲が撃たれる。

 

その少し前に舞は辛らつな指示を千早に下していた。

「船体をすこし、500mほど天底部に移動して、船体を2度ほど起こして。こうすれば敵の主砲の三度目はないわ。」

このおそるべき指示とヤマトの反撃は100万光年にまで天の川銀河にプラネットオーガ(星喰い鬼)がいるととどろくことになり、次の敵暗黒星団帝国にも伝わることとなる。

 

最大出力で発射された超巨大戦艦の主砲はそのまま空間磁力メッキによって反射され主砲の付け根に命中し、超巨大戦艦は爆発を起こした。しかもそれは超巨大戦艦と主砲をつなぐ動力源に少なからず影響をあたえた。

「大帝。主砲が...」オペレーターが叫ぶ。

超巨大戦艦の主砲が厨房で床に落ちるちくわのようにはじけとんだ。

「大帝、操舵不能です。」

 

超巨大戦艦が自らはなった主砲を跳ね返され、動揺して思うように操舵ができなくなっているときにヤマトは、ゆっくり移動し、誘爆の続く超巨大戦艦の艦底部に波動砲の砲門をむける。

エネルギー充填を終えて「対ショック対閃光防御」のアナウンスが流れたところだった。

「ターゲットスコープオープン、電影クロスゲージ明度20。目標超巨大戦艦艦底部。」

30秒後、「波動砲発射!」と春香が叫ぶと、ヤマト艦首からほとばしった太い光条は超巨大戦艦を貫いた。

超巨大戦艦は、もだえるようにしていわしの頭のような艦首と艦橋部とがへし折れ爆発光と煙をはいた。誘爆が繰り返され、引き裂かれていった。それは、上空から見ると巨大な見えない犬に引きちぎられる「いわしの骨」が爆発光を放ってばらばらになっていくように見えた。

「わかった?盗賊ズォーダー。わたしの敵になったものの生殺与奪は血の一滴まで私の意志のままにあるのよ。」と舞は通話がわざと相手に聞こえるように通信機に向かって話す。

艦内では「ぎゃあああああああ。」というズォーダーと彼の部下たちの叫びが超巨大戦艦の艦橋にあふれ、高熱によって彼らの体も気化して行った。その数秒後、超巨大戦艦は爆発光と振動を宇宙空間に発して飛び散った。

 




波動砲が使用できない間に、密かに開発が行なわれていたガミラスの反射衛星砲を応用した究極の防御兵器が使用される。ついにヤマトはおそるべき彗星帝国を倒し、超巨大戦艦を撃沈したのだ。
しかし、ヤマトの戦いはまだ終わっていなかったことをヤマトクルーは思い知る。
そう蘇生したデスラー総統がわなを張って待ち構えていたのだ。

14話作成に伴い、一部本文削除(6/12)

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