ブラック・ブレット―楽園の守護者―   作:ひかげ探偵

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遅くなってすいません_(^^;)ゞ


第五話 帰還

諸君 私は美少女が好きだ

 

 

諸君 なかでも私は小学生くらいの美少女が大好きだ

 

 

 

 

 

 

黒髪美少女が好きだ

 

 

銀髪美少女が好きだ

 

 

金髪美少女が好きだ

 

 

赤髪美少女が好きだ

 

 

青髪美少女が好きだ

 

 

緑髪美少女が好きだ

 

 

紫髪美少女が好きだ

 

 

茶髪美少女が好きだ

 

 

白髪美少女が好きだ

 

 

長髪美少女が好きだ

 

 

短髪美少女が好きだ

 

 

 

 

学校で 街中で

 

 

都会で 田舎で

 

 

電車で 公園で

 

 

砂浜で 河川で 

 

 

海中で 山奥で

 

 

雑誌で 画面で

 

 

 

この世界に存在するありとあらゆる美少女が大好きだ

 

 

 

 

 

 

家に帰ったときにお兄さまとか妹系美少女が言ってくれるのが大好きだ

 

 

お風呂に入っている時にお背中お流ししますとか言われると心がおどる

 

 

 

ツンデレ系美少女がデレる時が大好きだ

 

 

恥ずかしそうに好きとか言われたら胸がすくような気持ちになる

 

 

 

高飛車系美少女が自分にだけ隙を見せるのが大好きだ

 

 

貴方になら構いませんわ、とか言われるまでにデレられる状態なった時には感動すら覚える

 

 

 

毒舌系美少女が周りには毒を吐きながらも自分にだけデレデレするのはもうたまらない

 

 

毒を吐かれて傷ついた表情をした時に必死に言い訳をしようとする様を見るのはもう最高だ

 

 

 

クール系美少女が周りには冷たい視線を浴びせながらも自分と話すときには顔を赤らめ口ごもる時など絶頂すら覚える

 

 

 

 

まな板、もしくはふくらみかけのおっぱいが好きだ

 

 

時間がたつほどに青い果実が熟していく様を見るのはとてもとても悲しいものだ

 

 

 

自分よりも小さい背の美少女の頭を撫でるのが好きだ

 

 

自分よりも背の高い奴らの手が私の頭部をべたべたと這い回るのは屈辱の極みだ

 

 

 

 

 

 

 

諸君 私は美少女を小学生くらいの美少女を望んでいる

 

 

諸君 私と望みを共にして楽園を目指さんとする戦友諸君

 

 

君達は一体何を望んでいる?

 

 

 

 

 

更なる楽園を望むか?

 

 

一切の容赦なくこちらの心臓を爆発させるような物凄い理想郷を望むか?

 

 

自分の妄想を具現化したかのような三千世界に唯一の桃源郷を望むか?

 

 

 

 

 

 

 

 

『ロリ! ロリ! ロリ!』

 

 

 

 

よろしい ならばペロリシャス!

 

 

 

 

 

 

 

 

我々は1歩間違えたら臭い飯を食うことになる挑戦者だ

 

 

だがこの厳しい現実の中で永劫かと紛うほどの間堪え続けてきた我々にただの楽園ではもはや足りない!!

 

 

 

 

 

唯一無二の理想郷を!!

 

 

空前絶後の桃源郷を!!

 

 

 

 

 

我らは姿を晒せない 法に勝てぬただの敗残兵に過ぎない

 

 

だが諸君は真は無限の力をその身に宿す猛者達だと私は信仰している

 

 

ならば我らは諸君と私で最強の犯罪者予備軍となるだろう

 

 

我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中はそのまま放置しておこう

 

 

しかしかつては同じ夢を持った同士ならその眼を開けさせ思い出させよう

 

 

今も滾る我々の真の願いを 我々の熱き想いを!!

 

 

目前には既に夢の地へと向かう架け橋が待ち構えている

 

 

さあ いざ行かん

 

 

目指すは聖地 誰一人として遅れることは許さぬぞ!!!

 

 

 

 

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』

 

 

 

 

 

 

俺の眼前にただ前を向き佇む志を共にする戦士達。

 

一人ではただの有象無象――

 

しかしそれが十いれば団結が生まれ――

 

百いれば戦友となり――

 

千いれば夢さえも掴める――

 

 

されどここに立つは万の男達……。

……もう恐いもんなんて何もねぇだろ。

 

 

さーてと、心の準備はいいか、てめぇら?

 

 

犯罪者予備軍将軍「何言ってんすか……俺達はもう待った、待ち続けた。それを焦らすなんて真似酷ですぜ」

 

犯罪者予備軍参謀「そうです、もういいでしょう。我らに安息を、夢を掴ませてください……」

 

 

へっ!……そうだな……お前らには愚問だったか。

 

俺は眼前の漢達全員に届くように声を張り上げた。

 

全軍ッ!!!進―――――ッ!!??

 

唐突に俺達の恐怖を呼び起こすあの音が鳴り響いた。

 

 

犯罪者予備軍下っ端「てぇへんだ、てぇへんだぁッ!!ボス、奴らが……奴らが来ちまいやしたッ!!!」

 

 

告げる男の声を聞きながら視界を埋め尽くす純白と漆黒を纏う俺達にとっての悪魔の使い、まさしくパトカー。

今まさに俺達の万を超える大群となってこちらに押し寄せようとしていた。

 

クソッ!!

どこから情報が漏れたんだ!?

いや、落ち着け、まずは対処が先だ……全軍―――お前ら?

 

スッ――俺の前に参謀の手が差し出される。

 

 

犯罪者予備軍参謀「何をしているのですか……貴方の役目は先に進むことでしょう」

 

犯罪者予備軍将軍「ですよっ。ここは俺達に任せて大将は先に下見しといてくださいな」

 

 

お……お前ら……!?

 

 

犯罪者予備軍戦闘員一同「そうっすよ!!俺達も後から向かいますんで」「一番乗りは任せましたぜ!!」「こんな犬っころ共俺らで余裕っす!」「別に、あれを全滅させても構わんのだろう」

 

 

くっ……すまねぇ、聖地でまた会おう!!

 

俺は酷く歪んだ顔を隠すようにあいつらに背を向け架け橋を駆けた。

 

 

犯罪者予備軍参謀・将軍「「では、いきますよ(いきやしょうか)友のためにッ!!!」」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ』

 

 

 

 

 

 

 

架け橋を渡り終えた俺は荒い息を吐き出しながら膝をつき両腕を地面へと叩きつけた。

 

ッ――――!!!

 

思い浮かぶのは架け橋に俺を押し進め自分達は今なお戦い続ける最高の友。

 

こんなの―――ッ!!こんなのってッ!!

 

眼元から滴が流れ落ち床へと落ちる。

 

なんて、なんて―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――なんて馬鹿な野郎どもだぁッ!!!!!!

 

腹の痛さを誤魔化すように地面を叩いていたがそれを止めて懐から携帯電話を出しその履歴を確認する。

そこには『110』と表示されていた。

 

 

つまり、何て言うんでしょうか……。

 

俺、大勝利……みたいな?

 

ワハハハハハハハハ!!やっべ笑いが止まらねぇ!!

 

面白すぎて眼から流れてきた涙を拭って立ちあがり、前を見据える。

そこにあるのは真っ白で豪奢な大きい扉。

 

なるほど、ここが聖地への扉……ヘヘッ、ようやくご対面か。

これでロリハーレムは俺のモンだぜ――そう思い舌舐めずりしながら門に手を添えた。

 

が、不意に足が引っ張られ顔を床にぶつける。

 

――ってぇ!? 何だよ!

 

顔を押さえながら後ろを振り向くとそこには血塗れの参謀と将軍が。

 

 

ゾンビ将軍「き゛いたぜぇ? ぜんぶよぉ~……」

ゾンビ参謀「ガ、にガ、しませン……」

 

 

お、お前ら、ポリスメンとバトってたんじゃ――!?

 

 

ゾンビ将軍「とっく゛に負けやした゛ぁ~……」

ゾンビ参謀「コっちでス、みンな、イますヨヲ……」

 

 

橋の両側、傾斜がほぼ直角の崖のような場所から次々と手が現れる。

それが将軍と参謀の足を掴み崖へと引き寄せると必然的に将軍と参謀が脚を掴まれている俺の身体もズルズルと引き摺られていく。

必死に崖の淵にしがみついたが、その時一瞬、崖下の光景を見てしまった。

 

 

 

―――地獄

 

 

そう評するのが最も相応しいだろう。

 

「うほっ、イイ男」「ヤらないか?」「良かったのか?ホイホイついてきて……俺は、ノンケだって構わないで食っちまう人間なんだぜ……?」

綺麗に並びながらいさじボイスでマッスルポーズをしながらムーンウォークを決める男たち。

 

ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!た、助けてくれぇ!!!

 

恐怖のあまり手の力が強まるが、同時に俺の脚を掴む力も強まった。

 

や、やめ――許してッ!!謝る、謝るからぁ!!

 

 

ゾンビ将軍・参謀「地獄で悔いろ……」

 

 

や、やめ―――――あっ、あっ、アッ――――――――――――――――!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒い息を吐きながら勢いよく身を起こす。

 

「マスター、大丈夫ですか?」

 

目の前ではギンたんが心配そうな顔をしてこちらを見つめている。

俺は思わずそれを抱きしめた。

 

「ま、ますたーッ!?」

 

何やら驚いた声をギンたんがあげているが、どうか、どうか今だけはこの暴挙を許してほしい。

今なお眼を閉じれば俺の耳元で囁き続けるいさじボイス……背筋を悪寒が走り身体が震える。

 

「マスター……大丈夫です、私はどこにも行きません、傍にいます」

 

ギンたんはどこか母性すら感じさせる声音で俺にそう囁き俺の身体を抱きしめ返してきた。

ガチムチではない、やぁらかいおにゃのこの身体に感動すら覚える。

 

スーハースーハー……いいにおい。

 

おかげで俺は落ち着きを取り戻すことができた。

もう一度大きく息を吸うとギンたんから離れた。

 

「……ありがとう」

 

あ、これは抱きしめてくれた事に対してのお礼ね、においに関してでは無いので、そこ重要。

そう言った瞬間、ギンたんはボンッという擬音でもつきそうな風に真っ赤になりしどろもどろになりながらも答えた。

 

「いえ、あの、むしろ嬉しかった、じゃなくてっ!あの、その、私の胸でよければいつでも、というか……!」

 

 

……うむ、かわええ。

何ていうか、心を清流が流れ清めていくかのような清廉さがあるな。

いつの間にか俺の耳元で囁き続けていたいさじボイスは消えていた。

未だに顔を赤らめて焦っているギンたん、その様子が俺の琴線を鷲掴みにしたのでとりあえず頭を撫でておく。

それにビクリとするも逃げることはせず撫でやすいよう頭を差し出してくれる。

 

そうやって心を癒している間に俺は昨日の経緯を思い出していた。

 

 

 

 

 

昨夜、小比奈たん達を見逃した俺達を最初に待ち受けていたのは社長陣達からの怒声だった。

「捕まえられたのではないか!!」「なぜ逃がした!!」「まさか貴様らはあいつの協力者か!?」

 

俺はそれを協力者ならそもそもここに来ねぇよ、などと考えながら聞き流していたがアイツにとっては耐えられなかったようで。

 

「んな訳ねぇだろがぁッ!!!!黙れや、ぶっ殺すぞ!!!!!!」

 

将監の怒声が室内に響き渡り、騒いでいた者たちは顔を青くして黙った。

静かになった室内に凛とした声が響く。

 

「鉄災斗さん、あなたは私達の敵ですか? 味方ですか?」

 

モニターの聖天子様が俺を見据えていた。

うん、少なくともあんたの味方では無いな……そう、何故なら俺は幼き美少女達の味方ですから!!

言ったら指名手配されそうな事を考えていると隣のギンたんが口を開いた。

 

「成程……さっきの男が礼儀を知らないのも道理です。上役でにある聖天子サマがこの有様なのですから」

 

聖天子様への暴言に室内にいる者達から殺意を込められた視線を向けられるがそれを何でもないかのようにギンたんは受け流す。

そしてモニターを睨みつけるように眼を細める。

 

「東京エリアに出現するガストレアは、そのほとんどがマスターと私達によって排除されている。あなたはこの地を守るために最も身を粉にしている者を前にして労いではなく裏切りを疑うのですか」

 

ギンたんが……ギンたんが俺のために怒ってくれてる!?

う――――れ――――し――――っ!!!!

 

「それについては……感謝しています。しかし私もこの東京エリアの代表として、聞かないわけにはいきません」

 

ギンたんの眼を見ながらそう訴える。

しばらく見つめあったあとギンたんは眼を伏せ、ため息を吐く。

 

「マスターは常に私と行動を共にしています。あのような男と会ったことは一度もありません」

 

「……分かりました」

 

聖天子様の対応にまた室内がざわめきだす。

「聖天子様!?」「証拠が、証拠がありませんッ!!」

 

「いいのです。彼らは確かにこの東京エリアの守りの要。それを信じるという彼女の主張は確かに正しいのです」

 

そして俺の方を向いたのでお互いに向き合う形になる。

 

うむ……惜しい、実に惜しい……あと3年、いや5年前に会っていたならば!!

 

「鉄災斗さん……東京エリアの守護者であるあなたを私たちは信じてもいいのでしょうか?」

 

うーん、俺は別に東京エリアを守ってるわけじゃないんですが(笑)

それに向こうには小比奈たんがいるしなぁ……。

 

「……無理」

 

室内の奴らがまた騒ぎだしそうな雰囲気を発する。

待て待て、早まるな貴様ら!

 

「……守る……違う」

 

隣に立つギンたんに視線を向ける。

 

「……俺が守るのは」

 

「マスター……」

 

ギンたんが頬を赤らめて俺に視線を向ける。

 

ふっ……きまったぜ。

これでギンたんの中での俺の株はうなぎ登りだな。

言いたいことはもう言いきった俺は影胤の出ていった窓へと向かう。

ギンたんも我にかえって俺の隣につく。

 

「あの!!」

 

聖天子様が俺を呼び止めた。

おいっ、今のはフェードアウトして終わりだろッ!!

 

「……なに」

 

「あなたは…………いえ、あなたと私の守りたいものが重なることを願っています」

 

「…………」

 

 

 

 

……無理じゃね?

聖天子様がロリコンになるのは些か問題がありすぎるし……。

俺がロリコンをやめるのは未来永劫あり得ないし……。

 

無理だろ、それと思った俺は特に何も言えず一瞥して窓から飛び降りた。

その後、未踏破領域探索からいきなり呼び出され徹夜していた俺は遂に限界を迎え近くの公園で眠りについた。

ギンたんの膝枕でなぁっ!!

……まあ、それで先程の悪夢を経て今に至るっと。

 

「……帰る」

 

撫でていた手をギンたんの頭からどけ呟く。

 

ふにゃ~となっていたギンたんの顔が真剣な、それこそまるで決戦を控えた戦士のような顔に変わる。

 

「帰るのですか……ホームに」

 

「……ああ」

 

ギンたんのいうホーム、それはその名の通り俺達の帰るべき場所であり拠点。

しかし、そこにいるのは俺とギンたんだけではない。

……勘のいい方なら既にお気づきかもしれない。

ヒントはそう……マンホール。

 

 

 

そうだよぉっ!!

アニメ2話ででてきたあの場所だよ!!!

 

ガストレア大戦と呼ばれる人類敗北の後、俺はとにかく東京エリア中のマンホールをノックし続けた。

 

100を越えた辺りで視線が気にならなくなった――

 

300を越えた辺りで数えることをやめた――

 

そして、遂に聞こえた舌足らずな声……。

 

「どなたでしょーか。わたしたちになにかよーですので。のでので」

 

そこから何ヵ月にも渡る俺の必死の交渉が始まった――

 

 

 

 

 

 

 

――何てことはなく驚くほどすぐ一緒に暮らすことを認められた。

 

 

そして分かるだろうか……マンホールにて暮らしているのは呪われた少女達、そう()()()、しかも美少女……。

 

 

……戦士達よ、楽園はここにあったぞ(泣)

 

 

しかし何故かギンたんは楽園(ホーム)へ帰る時、ちょっと様子がおかしくなるんだよなぁ。

まぁ、考えても分からんものは分からんね、そう割りきった俺はウキウキした気持ちで此処からそう遠くないマンホールへと向かった。

 

「マスター……嬉しそうですね」

 

ギンたん特有の交感能力で俺の気持ちを察知したのかそう俺に話しかけてくる。

 

「……嬉しくない?」

 

「いえ、私にとっても得難い場所です。……ですけど、その」

 

「…………?」

 

珍しく口ごもるギンたんの様子に違和感を感じながらも歩き続けると目的地についた。

そこにあったもの、すなわち円形の赤銅色の扉。

前世では気にすらしなかったそれがいまの俺にとってはとてもかけがえのない大切なものに見える。

 

蓋を開いたその先に広がる俺の理想郷(アヴァロン)、守るべき桃源郷《ロリコニア》、そして俺は4度のノックの後、その扉を開けた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白髪のおっさんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……うほっ、いいオヤジ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………絶望

 

 

今、俺の胸中を占めているたった一つの感情。

 

想像してごらんよ。

仕事、あるいはバイト、それでめちゃくちゃ疲れた後、長い帰り道を残った気力を振り絞りようやく家についた。

扉を開けて待ち構えている可愛い可愛いロリ美少女を想像しワクワクしながら扉をあける。

 

そこにいるのは―――白髪のおっさん。

 

 

いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

 

無理無理無理無理、許容不能。

今日も街の平和を守る俺に対してあまりに残酷すぎる仕打ち。

 

これは……これはないだろ……。

 

 

 

深い絶望、それに立ち向かえる強い精神を持つ者を人は英雄と呼ぶ。

でも、でもさ……今だけは休んで、いいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■銀丹■

 

疲れで公園のベンチに座るとすぐに眠ってしまったマスター、私の膝の上であどけない寝顔を見せるこの少年が漆黒に英雄などと呼ばれるなどと誰が思うだろうか。

線が細い体つきにサラサラの黒髪、もう少し髪が長ければ女性にすら見えるだろう。

 

誰よりも優しく頑張ってくれる人―――それをあの国家元首ッ!!

 

今、思い出しても殺意が滲み出る。

あの女……マスターに何て失礼なことを。

 

「……んっ」

 

マスターの声に慌てて我にかえる私。

しかし、マスターの表情の表情は次第に歪んでいく。

額には大粒の汗を浮かべ眼からは涙が流れる。

 

「許し――謝――から」

 

その声と様子からして尋常ではないと思った私はマスターに顔を近づ声をかける。

 

「マスター!?」

 

勢いよく顔をあげ、私と眼を合わせる。

 

「マスター、大丈夫ですか?」

 

そう声をあげた瞬間に私は強い力で引っ張られた。

マスターに抱き寄せられた、そう理解すると顔が熱を持ち焦りだす。

 

しかし、マスターの身体が小刻みに震えているのが分かり私は冷静さを取り戻した。

先程の断片的に聞こえた声と私の交感能力『シンクロ』によりマスターの心情が伝わってくる。

 

 

――後悔

 

――恐怖

 

 

その2つが大きくマスターの心を占領していた。

そして理解する、この人は救えなかった過去の命を思い涙しているのだと。

マスターは呪われた少女達が理由なく虐げられている、そう思って彼女たちを救うことに特に力を入れている。

そのおかげで本来死ぬはずだった彼女達がどれだけ命を繋いだか……しかし、それでも救えない命もある。

それは決して少ない数ではなく、マスターはそのことを忘れない。

 

……あまりに優しく、だからこそひどく傷つきやすい。

 

「マスター……大丈夫です、私はどこにも行きません、傍にいます」

 

だからこそ、私はあの日誓ったんだ。

貴方を支える、離れない、多くを守る貴方は私が守るのだと。

 

 

 

しばらくすると、マスターは離れていきじっと私を見つめる、それで必然的に互いの顔を真正面から見つめる形になる。

優しげで綺麗な青い瞳、見ていれば吸い込まれそう。

 

「……ありがとう」

 

その一言で私は自分がしていたことを自覚させられた。

 

な、なんて恥ずかしいことを!?

 

慌てて答えようとするも焦って自分でも何を言っているのか分からなくなる。

突如、マスターの手が頭に添えられた。

 

思考が乱れ上手く能力が発動できず何を思ってマスターがこのような行動に出たのか分からない。

だがマスターの為ならと、されるがままにナデナデされる。

 

……幸せすぎます。

 

私が落ち着いたのを確認して手がひかれるのを名残惜しい気持ちで見送る。

しかし、そんな幸せな余韻は次のマスターの一言で吹き飛ばされた。

 

「……そろそろ帰る」

 

そろそろ()()、行くではなく()()

 

それが意味するのはすなわちホームへの帰還。

嫌な訳ではない、むしろ同類ばかりのあの場所は私にとっても居心地がよく存在自体が奇跡のような場所だ。

 

 

 

 

 

――――あの二人がいなければ、だが

 

ホームに住んでいる少女達は基本、マスターを実の兄のように慕っている。

しかしそこには例外が存在する。

 

 

――マリアと青葉

 

あの雌猫二匹は明らかにマスターを異性として認識している。

……つまりだ、マスターがホームへと帰った瞬間、アイツらの過剰スキンシップが始まるのだ。

お仕事を終えてお疲れだというのに……アイツらはッ!!!

しかも、お優しいマスターはそれにもしっかりと対応してしまうし。

 

私が無理をされないようにしっかりと見ていないと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■聖天子■

 

鉄災斗、国際イニシエーター監督機構(IISO)に所属せず独自に活動を続けるプロモーターとイニシエーター。

私の補佐である天童菊之丞から聞いた話によればその実力は世界でも最上位、序列1位すら上回る、耳にする噂はとても現実とは思えないことばかり。

それを私に言ったのが天童菊之丞でなければ冗談として一蹴するような絵空事。

 

そして私の前に件の鉄さんが現れた時、信じられないという気持ちが更に増した。

現在の序列上位者、そのほとんどがイニシエーターという事実からも目の前の私とさして身長の変わらない呪われた少女達でもないこのただの少年がとても噂のようなとてつもない事を成し遂げられる人物とは思えなかった。

鼓舞の意味もあって彼らの所業は肯定したが実際には私も未だ室内の人たちと同じ心境だった。

 

しかし誰も気づけなかった蛭子影胤の存在、そして彼にすら勝てないと言わせたその事実。

それらは確実にあのお二人の実力を示していた。

 

しかし、蛭子影胤とそのイニシエーターを逃がしたことで疑惑の目が向けられた。

東京エリアの代表である私に全く動じる様子を見せず、それどころかイニシエーターの少女は私に批判すらしてきた。

それも私を驚かせたが、何より私の心に響いたのは鉄さんの言葉。

 

「……守るのは大切なもの」

 

そして彼が見るのはイニシエーターの少女。

 

呪われた少女が鉄さんにとっての大切なもの……?

それは一体どういう――。

 

話は終わったとばかりにさっさと出ていこうとする彼の背中に声をかけていた。

彼は振り返り私を見つめる。

しかし、呼びとめたからと言ってどうするというのか、呪われた少女達をどう思っているのか、東京エリアを守ってくれるのか。

聞きたいことはたくさんあった。

 

でも、そんなことを聞いて私はどうするというのだろうか。

私が、私が本当に聞きたいのはどうすれば日本は……この世界は――。

 

「あなたは…………いえ、あなたと私の守りたいものが重なることを願っています」

 

いや、違う。

 

彼は私の方を一度振り返り何も言わず去っていった。

 

彼と話をしてみたい。

何を考えているか知りたい。

 

その気持ちは確かにある。

でも、今は―――。

 

「みなさん、聞いてください。今、この東京エリアには重大な危機が迫っています」

 

私はこの東京エリアの代表としてその役目を果たさないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お色気シーンはまた今度!!

早く将監のストーリーを乗せたいな(*^^*)


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