五反田家の長女   作:七夜士郎

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長らくお待たせして、すいません。

では、どうぞ!


第6話 子を馬鹿にされて黙っていられる親なんていない

 

SIDE:天

 

 

 

 

 

-篠ノ之家

 

 

 

 

「……というわけで完成したISを発表しに行くよ~!!」

 

 

 束が声高らかに宣言する。

 

 

「ふむ……」

 

 

 政府に発表するとの事らしいが……

 

 果たしてそううまくいくものなのか……

 

 

「なーに暗い顔してるのてっちゃん! 大丈夫だって! 万事うまくいくさ! なんくるないさー!」

 

「なんで沖縄語だ……」

 

 

 どこか不安感があったが、束のいつも通りの姿を見ると馬鹿らしく思えてきた。

 

 

「まあいい。で、早速行くのか?」

 

「うん!」

 

「ちょっと待て」

 

 

 後ろから千冬が声を掛けてきた。

 

 

「道順は調べてあるのか?」

 

「どうなんだ束?」

 

「あ……」

 

「あ、ってお前……」

 

 

 どうにも肝心なところで抜けている友人である……

 

 

 

 

 

SIDE:束

 

 

 

 

 

 

 よ、よしっ!今度こそ調べたから大丈夫なはず!

 

 

「まったく、肝心なところでお前は……」

 

「まあ、落ち着け千冬」

 

 

 さっきから私に説教をしていたちーちゃん。

 

 そんなに口うるさいと嫁の貰い手が……

 

 

「何を思った束?」

 

「い、いや何も……」

 

 

 相変わらず察知レベルが化け物染みてるよ、ちーちゃん。

 

 

「じゃあ、出発おしんこー!」

 

「はいはい」

 

「……」

 

 

 ノリが悪いよ二人とも……

 

 

 

 

 

-政府庁舎

 

 

 

「じゃあ、私達はここでまってるぞ?」

 

「ああ、度肝を抜かせて来い」

 

 

 二人とも笑顔で送り出してくれる。

 

 だけど……

 

 

「どうした、束? 不安か?」

 

「うん、少し……」

 

 

 てっちゃんに聞かれて、そう答える。

 

 

「大丈夫だ、束。自信を持て。お前が作ったものに不安を覚える必要などない」

 

「天の言うとおりだ。私達の友人はこの程度で挫けるような人物だったか?」

 

 

 二人はそう言って激励してくる。

 

 

「うん……うん。そうだね! 私らしくないよ! あ、でも……」

 

 

 私はてっちゃんに抱きつく。

 

 

「少し……少しだけこうさせて……」

 

「ああ、好きにしろ」

 

「……今回だけ許してやる」

 

 

 てっちゃんは、微笑を浮かべて私に好きにさせ、ちーちゃんは少し不機嫌そうにそっぽを向いた。

 

 

「……うん! 充電完了! 不安なんて吹っ飛んだよ!」

 

「ふっ……それでこそ束だ」

 

「さっさと行け」

 

 

 うん。元気百倍だ!

 

 

「じゃあ行って来るね!」

 

「頑張れ、束」

 

「……早く帰って来ないと天を連れて帰るからな」

 

 

 それは急がないと!

 

 

「ところで、天。二人きりだな……」

 

「……? ああ、そうだな」

 

「そこらの草むらでしっぽりと……」

 

 

 うん。本当に急がないと。

 

 

 

 

 

SIDE:天

 

 

 

 

 

 送り出してからしばらく時間が経ち……

 

 

「……」

 

「ん? 束が出てきたみたいだぞ」

 

「そうみたいだな」

 

 

 しかし、様子が変だ。暗い足取りで歩いてくる。

 

 

「どうした、束?」

 

「……てっちゃ~ん!!」

 

 

 聞いた瞬間涙を流しながら束が抱きついてきた。

 

 

「ひっく……ぐす……」

 

「束……話してくれ何があったかを……」

 

 

 私は束の頭を撫でながら聞く。

 

 

「実は……」

 

 

 束からの話は私を静かに怒らせるのには十分だった。

 

 

「なるほど。馬鹿にされたか……」

 

 

 要約するとそういうことだ。

 

 確かにたかが小娘が造った物だろう。

 

 しかし、それでも実物を見る前に一蹴りとは……

 

 

「私が直談判しに言ってやろう……」

 

「そうだ。私も言って来てやろう」

 

「いいよ……どうせまた、馬鹿にされるのがオチだし……」

 

 

 目に見えて落ち込んでいる束。

 

 それを見て、静かに抱き寄せ撫でる。

 

 

「また、方法を考えよう。わかってもらえるような方法を……」

 

 

 私にはそういう言葉を掛けることしか出来なかった……

 

 

「うん……」

 

「……」

 

 

 千冬は静かに束と私を抱きしめる。

 

 

「このままでは終わらせない」

 

 

 静かに束がつぶやいた言葉を私は聞き逃していた……

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

 

 

 あんなことがあった次の日だ……

 

 束の慰めの意味も込めて一緒に出かけるか。

 

 

「緊急ニュースです! 日本に向けてミサイルが発射されました! 繰り返します 日本に向けてミサイルが発射されました!」

 

 

 そんなニュースが流れて、思わず目をテレビに向ける。

 

 

「続報です! ミサイル到達点付近に、謎の飛行物体が飛来した模様! ミサイルとの関連は不明!」

 

 

 ニュースに流れている映像を見て、思わず頭を抑える。

 

 

「あのバカ……!」

 

 

 帰ってきたら説教だなこりゃ。

 

 

 

 

 謎の飛行物体、通称白騎士がミサイルを次々と破壊し、戦闘機をも翻弄した事件。

 

 これが、通称「白騎士事件」である。

 

 

 

 

 

 そして……

 

 

 

 

 

「このバカが!」

 

 

 現在、私はこの目の前にいる世間を騒がせた犯人である、束を説教していた。

 

 

「ご、ごめんねてっちゃん。でも……!」

 

「でももへったくれもあるか! これは間違いなく犯罪だぞ!」

 

「だ、大丈夫! 絶対にバレないし、なにより誰もケガ人は……」

 

「それは結果論だ! 千冬も何をやってる!」

 

「すまない……」

 

「でも……! でも……!」

 

「頼む……私は大切な親友を失いたくないんだ……」

 

 

 そう言って私は二人を抱きしめる。

 

 

「てっちゃん……泣いてるの?」

 

「当たり前だ! ……無事でよかった……」

 

「ごめんね、てっちゃん……! てっちゃん……!」

 

「すまない、天……!」

 

 

 そうして私達はしばらく抱きしめあった……

 

 

 これから世界は大きく変わろうとしている。

 

 そんな事をまだ私達は知らないのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……というよりなぜ、私も一枚かませなかった」

 

「あ、そっち?」

 

「いや、絶対お前止めるだろう」




今回、一番難産でした。


どんな風にして、白騎士事件を起こすかが難しかったです。


結局、原作とほぼ一緒になりました。

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