『鈴の日常』
SIDE:三人称
-鈴の部屋
「おはようございます、お姉さま。……あっ、こんな日の高いうちから……」
しょっぱなから、飛ばしているのは鈴である。
ちなみに、天の盗撮写真を眺めながら妄想している。
ストレートに言うと、気持ち悪い。
「……さてと、学校に行こうっと」
妄想の余韻に浸りつつ、身支度をする鈴であった。
-教室
「……」
「おい、鈴。なに外見ながらニヤニヤしてるんだよ」
教室でニヤニヤしている鈴に話しかける弾。勇者である。
「今、グラウンドの美少女たちの姿を目に焼き付けてるんだから邪魔しないで!」
「自重しろ、変態」
グラウンドでは別のクラスが体育中であった。
「変態じゃないわ。愛という名の狩人よ」
「意味わからんわ」
もはやこのクラスでは恒例となった漫才である。ある意味息ぴったりだ。
弾本人は嫌がるであろう。
「あっ、そうだ! 今日あんたの家に遊びに行かせなさい」
「何を唐突に……」
「何って……美少女を眺めてたら思ったのよ。お姉さまにブルマ履かせたいって」
「ふ ざ け る な そんなもん履かせようとしたら困惑するか、キレて殴られるぞ」
「いいじゃない、困惑してる姿もかわいいと思うし、殴られるのもご褒美だわ」
「なんだこのハイスペック変態」
今日も、鈴は平常運転であった……
『幼馴染と言えば……』
-天の部屋
「……」
現在、天は部屋で寝ていた。まだ起床時間ではないからである。
そんなところに……
「起こしに来てやったぞ! べ、別に起こしてあげたいと思ってあげたわけじゃないんだからねっ!」
なにやら間違った知識を詰め込んだらしい、千冬が突入してきた。
「幼馴染と言えば、ツンデレ+起床イベント……と、この前テレビでやってた」
と、呟きながら、天のベッドに近づく。
「朝だ! 起きろ! 起きないとキスしちゃうゾ?」
盛大にキャラではないことをしながら、天を起こそうとする千冬。
しかし、その際にあることに気付く。
「む? ベッドが妙に盛り上がってるな……? ……もしや」
千冬はある結論にたどり着きベッドを引っぺがす。
「スーハースーハー! むっはあ! てっちゃんお疲れのせいかこんなことしても気づかない!」
「貴様……」
「いたたたたた!」
引っぺがした先には束が天に抱き着き臭いを嗅いでいた。
天は何やら疲れているせいか時々眉を顰めるが、起きる気配はない。
そんな、束を見て速攻アイアンクローをかました千冬は悪くない。
「私だって、最初は普通に起こしに来たんだよ。でも、寝ているてっちゃん見てたらついムラムラっと」
「気持ちはわかるが、許さん」
「そ、そうだ! ちーちゃんも嗅げば?」
「なに……?」
アイアンクローを再び掛けようとした手をピクッと震わせ止める。
「ほらほら……」
「……」
束の手招きに誘われるようにフラフラと歩いてゆく千冬。
千冬の手が天に届きそうになった瞬間……
「何をやってるか、バカ者ども!」
寝起きで不機嫌度MAXの天が束と千冬両方にアイアンクローを掛けていた。
「愛が痛いよ、てっちゃん!」
「痛い痛い! 私はまだやっていない!」
「やろうとしてただろうが」
アイアンクローを解除し、べしゃっと床に放り投げる天。
「そもそも、幼馴染なんだから、てっちゃんが私たちを起こしに来てよ!」
「なんだその理論は」
「てっちゃんとエロゲーみたいな幼馴染イベントしたい!」
「私も!」
「死ね」
今日も日本は平和です。
『ファンクラブ』
-ある一室
「ではこれより天様ファンクラブ第100回の会合を始めます」
「もう、そんなになるのね……」
学校内部の薄暗い一室で様々な女生徒が集まり、怪しい会合を開いていた。
「ではこちらの写真をご覧ください」
「これは……!」
「ブラボー! おお、ブラボー!」
議長を務めていると思われている女生徒から提示されたのは、天の寝顔の写真であった。
「こんな素晴らしい写真をどうやって……?」
「我々ファンクラブの活動を知った、束様よりの差し入れよ。こちらの撮り貯めたアルバムと交換でね……」
「さすがに幼馴染は格が違った!」
「すごいなーあこがれちゃうなー」
やんややんやと盛り上がるファンクラブ一同。
「他に報告はあるか?」
「はいっ!」
「おお、天様が所属するパルクール部にマネージャーとして潜り込んだ君か!」
「いやに説明的ですね……まあ、それは置いといて相変わらず天様のパルクール姿はかっこよかったです!」
「ふむ……それはいつもどおりではないか?」
「いえ、今回は天様がパルクールを終えた後にタオルを差し出したのですが……」
「もしや……」
「回収しました」
「よくやった!」
「パーフェクトだ、マネージャー」
「GJ」
この会合が開催されている時、天は謎の悪寒を感じたそうな……
本編はもう少しかかりそうです……