落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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第1拳「もう、やめてくれ。カナ……!」

 

 叫びながら、気で強化した脚力任せに飛び出した。背後に神崎を庇うようにして。純粋な瞬発力ならば身体小さい神崎の方が上で、それにも関わらず、わざわざ前に出たのは理由がある。

 

 ぱんぱんぱん!

 

 『不可視の銃弾(インヴィジビレ)』。

 俺ですら見切れることのできない。妙技。それを知らない神崎が受けたのならなす術もなく敗北していただろう。だから、俺が前に出た。

 

「せいっ!」

 

 技を見切れないなら----弾丸そのものを弾くまで。両腕を強化して弾丸を弾く。しかし、結構な神経を使うからあまり速度がでない。

 だから、

 

「行け」

 

「言われなくても行くわよ」

 

 神崎が俺の背中を蹴って高く跳んでいた。空中で神崎は一度小太刀を手から離して、二丁拳銃を抜く。

 そのまま、連射する。

 落ちながらも、それは乱れることはない。

 全てカナの不可視の銃弾によって打ち落とされる。が、それはつまりカナの意識が逸れたということ。その隙を付いて、ダッシュ。顔と地面がぶつかりそうになるほど、体を沈める。その姿勢でカナへと突っ込んだ。両の拳を突き合わせて、思い切り腰をひねる。

 

 それを見たカナが俺へと意識を移しかけるが、

 

「やっ!」

 

 空中で小太刀を投げつける。

 

「………っ」

 

 それにカナは対応せざるをなえない。そして、その隙を付いてカナの懐へと潜り込み、腰を捻りながらも両の拳を脇腹へと撃ちだし、インパクトの瞬間にさらに腕を使って捻る!

 それを受けて、

 

「くっ……!」

 

 回転しながらぶっ飛ぶ!

 

「やった!」

 

 着地しながら、神崎が叫ぶが、

 

「違う!」

 

 今のは簡単に言えば、鎧通しに対する鎧壊し。鎧の上から衝撃を通すのではなく、鎧を破壊しようとする技。二つの拳をねじ込むように打ち込んだ場所を問答無用で破壊する。その特徴は二つ。衝撃貫通と一点集中。一カ所を選択して破壊するのではなく、一点を集中して撃ち抜く技。扉の鍵の構造だけを破壊するのではなく、扉の鍵が取り付けられている箇所のみをくり抜く技、とでも理解できるだろうか。

 

 一点のみを衝撃が貫いて、通るのだ。

 だからこそ――今みたい飛ぶのはおかしい。

 ありえない。

 ありえないのに、カナが飛んだといことは――、

 

「衝撃全部受け流しやがった……!」

 

 そう、叫んだ俺に応えるようにカナは空中で姿勢を整えて着地する。

 

「んなっ……!」

 

 神崎がめん玉ひんむいて、俺も思わず唇を噛む。カナは脇腹に手を当てて、

 

「全部ってわけじゃないわよ? 痛かったわ」

 

 苦笑しつつも、

 

「ええ、痛かったわね――片腹が」

 

 どや顔すんな。 

 

「でも、もっとよ。アリア、蒼一。もっとあなたたちを見せてちょうだい」

 

 カナがぞっとするような笑みを浮かべ、俺も神崎も身構えて――、

 

「もう、やめてくれ。カナ……!」

 

 キンジがカナへと銃口を向けていた。

 

 

 


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