落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定
「おーおー、絶景絶景」
「いやー、大漁だなー。平賀文に、峰理子に、
「べ、別に俺のじゃあねぇよ」
「ていうか、お前らうちの嫁みたら殺すぞ? 脳内保存とかしてみろハードディスク《脳》ごとぶっ壊してやるから」
「こえぇよ!」
声でけぇよ。バレたらどうする。
はめられた。まさか、いきなりその女子たちが着替えだすとは。さらにはほんどが知り合いだったからかなり気まずい。ちなみにその中のレキがいたからキンジと武藤を締め落とそうかと思ったのは秘密だ。
「おいキンジ、なに顔ふせてんだ。もったいねーな、隙間からちゃんと見ろよ」
「だからノゾキに来たんじゃないって言ってるだろ」
「バカだなぁ。これはノゾキじゃねぇんだよ。健全に真っ当に清く正しく美少女を観察してるんだ」
「不健全でセコくて汚く間違ってるよ」
と、ぶるるっとキンジの携帯が鳴った。峰からだろうか、嫌そうな顔してメールを確認したら、
「…………」
さらに嫌そうな顔をした。と、さらにもう一通メールが来て、
「ど、どけ! 武藤っ!」
血相変えて、武藤を押しのけた。なに書いてあったんだよ。チッコい隙間から保健室を覗けばそこは桃源郷………って程ではなかったりする。アヤポンは色気も欠片もないバックプリントだし、風魔ちゃんはギャグにしか見えない褌。需要がないこともないだろうけど、イロモノと言わざるを得ない。
そして。我が嫁はというと。
「……………」
普通にこっちを見ていた。まぁ、気づいているだろうなぁ。アレの気配察知は半端ない。俺以上だ。だからこそ、先日部屋に侵入してきた峰に気づけなかったのは不可解だった。おそらくそれがあいつの
「……っ!」
キンジが必死の形相でメールを打つ。
ハニーゴールド。
そのハニーゴールド色は峰の下着の色。どうやら下着の色を当てろとか言われたらしい。理子は返信を見てこちらにウインクし、キンジは安堵の息を吐いた瞬間に、
「――」
「は?」
いきなり、『
だけど、
「……おいおい」
まだ靴下脱いだだけだぜ?そりゃあ確かにニーソックスを脱ぐという行為には言い知れぬ妖しさがあるが、それだけだ。それだけで、こいつは『
ダメだ、コイツ真正ロリコンだ。ロリコニアだよ。御免な、白雪、くーちゃん、峰、風魔ちゃん、そしてまだ見ぬヒロインズ。コイツはロリじゃないとダメみたいだ。
なんか、神崎と峰が貧乳がどうこう言ってるがキンジに教えてやれ。興奮するから。
キンジは視姦に満足したのか賢者モード。なにやら考え事をしているが、どうせ貧乳についてでも考察してんだろ。
がらっ、と扉が開いた。入ってきたのは、
「な、に……!?」
「どうした?」
中に入ってきたのは講師の小夜鳴だった。小夜鳴に対し、武藤がイラついて言葉を零す。
「アイツよ、善人面して……女子に手ぇだすとか、そういうウワサあんだぜ? 小夜鳴が間借りした研究室から、フラフラになって出てきた女生徒がきるんだとかよ」
「な、にぃ………!」
そんな、ヤツが、レキの下着姿を見ているだと? キンジと目を鋭くさせる。
「って、お前ら落ち着け落ちつけ! あくまでウワサだからな!?」
知るかぁ、ボケェ……! 俺以外の男がレキの下着姿見てる許せないんだし。なんか、服着ればいいとか言ってるけどワザとらしいんだよ。大体お前十歳以上年下の女子に手出すとか、お前はどこぞの吸血鬼もどきか!今度闇討ちしてやらぁ!
滅尽滅相だぁ……!
「な、なんか、あのロッカー禍々しくない……?」
「き、気のせいじゃいかなー?」
なんか、神崎が気づいて峰がフォローしていた。他の女子たちは着替え始めていた。集団勘違いはさすがに恥ずかしかったらしい。
……が。
レキだけは動かなかった。じっーと。
窓の外を見る。
見て。
観て。
視て。
眺めて。
見つめて。
見とって、
「――」
その目がズレ、俺と目が合った瞬間に俺がロッカーの扉を蹴破っていた。同時にキンジと武藤の首根っこ掴んで飛び出す。
「なっ……!?」
「ちょっ!」
飛び出してぶん投げた。武藤は適当に滑らせ、キンジは、
「うおっ!」
「ひ、ひやぁぁ!?」
神崎に突っ込ませた。 俺はレキの前に庇うように立ちふさがる。他の女子が悲鳴を上げる前に、がっしゃあああん! という、爆音が響くと同時な窓ガラスが割れる。
「──っ!」
さっきまで、俺たちが潜んでいたロッカーが冗談みたいにひしゃげる。
そして、そのひしゃげたロッカーに乗った
ソイツは狼だった。
ただの狼ではなくて、100キロはあろう巨体。白銀の体毛に気品すら感じさせる肉付き。
●
ソイツを前にし確かに俺は驚いた。絶句した。だが、それで動けなくなるわけではない。その程度で動けないようなら『拳士最強』なんてやっていないのだから。たからこそ、俺は誰よりも早く、銀狼よりも早く動いた。かなり強め地面を踏みしめ、同時思い切り声を吐き出す!
「――
即ち震脚プラス声帯砲!
『支蒼滅裂』程ではないがそこそこの威力が出た。俺とレキ以外が振動ど爆音に顔を歪める。地震が起きたかと思うほど保健室が揺れ、ガラスが粉砕されて薬品類やらが倒れて零れ落ちるが構ってられない。
何せ今ここにはこの武偵高においては例外的に戦闘力を持たない小夜鳴がいるのだ。他の奴らならともかく非常勤講師の小夜鳴がいるのだから、ここでは一分一秒でも戦闘は避けたい。
悲鳴を上げて仰け反る銀狼。仰け反って――踵を返して、保健室を飛び出した。
「判断が、速い………!」
アイツ、かなり賢い。この狭い空間による不利を悟ってすぐに飛び出したのだ。むしろ、突っ込んで来た方が楽だった。カウンターぶち込めばよかったのだから。
「くそっ! ――武藤、バイクの鍵貸せ!」
『
「私も行きます」
「おう……って、三人乗ったら流石に事故るぞ!」
「お前は走れ!」
酷いな、おい。まぁ、その方が速いんだからいいけどよ。