落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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第9拳「――それでもへらへら笑うのが」

 ――峰・理子・リュパン・四世の人生は奪われるということだった。

 才能を、人生を、家族を、尊厳を、自由を。彼女は何もかもを奪われて生きてきた。

 大怪盗アルセーヌ・リュパンの能力を何一つ受け継ぐことはできなかった。両親は気づいたらなくなっていた。それによりリュパン家は完全に没落した。それからルーマニアでブラドに文字通り拾われた。そして総てを奪われた。

 救いなどどこにもない。

 ルーマニアではブラトの豪邸の中でみすぼらしいオリの中で雌犬とされ、腐った肉と泥水を啜っり、四世(・・)と呼ばれて生きてきた。人間扱いされず――否、人間だったからこその扱いで、家畜として幼少期を過ごした。

 ブラトとヒルダ。

 その親子は幼いころを理子を虐め虐げ続けてきた張本人ならぬ張本鬼。人ならざる鬼だからこそ、彼は彼女は理子をただのペットとしか見なせず、ただの遺伝子として――何一つ先祖の優秀さ(プラス)を持たない出来損ない(マイナス)の遺伝子として見てきた。血という命の代価を次の世代生む繋ぎとしか見てこなかったのだ。

 ブラドは彼女は虐め、ヒルダは彼女を遊んできた。それは彼女からすれば思い出したくもない、忘れ去りたい過去だ。

 そして時は流れ、理子はイ・ウーに逃がされて(・・・・・)ブラトやヒルダを打倒するために力を、そして奪われた母のロザリオを取り返すために力を学んだ。既にそのころから過負荷(マイナス)と化していたが本来ならば異常ないし特別寄りだった彼女は過負荷(マイナス)としては例外的に器用だったから自分以外のスキルを部分的に身に着けるのにはそう苦労することはなかったのだ。

 そして神崎・H・アリア、遠山キンジ、那須蒼一との戦い。それを経て彼らに加えレキと共にロザリオを奪取し、けれどし損ない――彼らと共にブラトを打倒した。彼女を縛る過去という鎖は半分だけとはいえ確かに砕かれた。

 それでももう半分は未だに理子の魂を軋ませている。

 かつて絶望と恥辱と屈辱に塗れ、理子の全てを奪ってきたあの日々は残っているのだ。

 奪われて、奪われて、奪われ続けてきた人生だった。

 できることなら全部なかったことにしたいけれど。  

 

 だからこそ――彼女は自分自身で手に入れたものを手放さない。

 

 無価値で、無意味で、無責任な最低(マイナス)であるという自覚はあるけれど。

 虚しくても勝つことはできないし、これまでの努力は無駄になって報われなかったけれど。

 それでも理子が手に入れた友情は――なかったことにはしたくない。

 この先の人生がどうなろうと峰理子は友達を裏切るような前だけは絶対にしないと――己に誓ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「ペットの飼い方のコツって解るかしら?」

 

 ヒルダは謳うように言う。ソレまでの戦闘によって建造中の屋上は滅茶苦茶だった。所々に斬撃痕や焼け焦げた箇所が目立ち、瓦礫が散乱している。屋上の淵には転がり、身動きの取れないアリアとワトソン。ワトソンは未だに意識は戻らず、アリアも受けたダメージのせいで身に受けた麻痺を無効化できずにいた。

 

「勿論個人差はあるでしょうねぇ。家族のように扱ったり、友達として扱ったり、家畜のように扱ったり、物のように扱ったり。飼う方によって千差万別でしょう。でもね、飼うコツは同じだと私は思うのよ。――つまり、上下関係を明確にすることだと」

 

 ねぇ、と。ヒルダは理子に語り掛ける。

 

「――」

 

 ヒルダの足元で満身創痍で倒れ伏す理子へと。

 死にかけ、というわけではない。全身至る所に火傷や裂傷があり、血塗れではあるがそれでも命に別状はないレベル。それでも彼女が放った雷撃は尋常ではない激痛を伴って理子を蝕んでいる。ハニーゴールドの髪は所々焼け焦げ縮れて異臭を放ち、帯電作用もあるはずの改造されたゴスロリ制服も焦げ跡が目立つ。

 それでも死ぬことはない。

 そういう風に、かつてと同じ風に、理子はヒルダに痛めつけられていた。

 

「愚かねぇ理子。忘れたわけではないでしょう? 私たちの取引を。バスカービルから離反するというならば私は貴女を友人として迎え入れると。その言葉に嘘はなかったのよ? これまでは貴女をペットとして扱ってきたけれど、夜の眷属として同胞に向か入れようと」

 

 心から残念だと言わんばかりにヒルダは嘆息する。

 バスカービルの裏切りの代わりに理子と対等に接する。それが彼女たちが交わしていた契約だった。理子を四世ではなく理子として見て、扱うという、それまでの経緯を考えれば在りえないことだ。

 それでもそれをヒルダは受け入れた。

 いや、元々契約を持ち掛けたのはヒルダであり、条件付けを先に許したのもヒルダ。理子からすれば信じられない待遇だった。

 

「お父様はペットはペット、家畜は家畜、家族は家族と区別するお方だったけれど私はペットでも家畜でも愛着が持てた。だから貴女のことは気に入っていたの。夜の住人として、敵の首級を上げたのなら、友にし、或は魔女の位でも上げようかと思っていたのに。……もし、今この数分間のことを全て私に謝罪するというのならば、考え直してあげてもいいのよ? その証拠に、貴女に付けた首輪(・・)だって残っている」

 

 ヒルダが指したのは理子の片耳で揺れるイヤリング。コウモリの意匠があしらわれたそれは、神崎かなえの裁判の後にヒルダに付けられたもので、当然ながらただのイヤリングではない。

 無理に引きちぎろうとするか、耳ごと削ぎ落とそうとするか、あるいはヒルダの意思一つでそれから毒蛇の腺液が体内に流し込まれる。そうすれば十分程度に確実に死に至るというものだ。

 けれどそれはまだ理子に使われていなかった。

 

「解るでしょう? 上辺だけの同情でも、遊びでもない。それほどまでに私は貴女を評価していてよ? さぁ理子。私にここまで言わせたの。言うべきことは解っているでしょう?」

 

 そして理子は。

 崩れ落ち、満身創痍の彼女は尋常ではない吸血鬼の魔性に精神を犯されながらも。それでも口端を歪めて笑っていた。

 

「嫌だねぶわぁーか」

 

「……」

 

 その答えにヒルダは無言で指を鳴らした。直後に雷撃が理子を襲う。

 

「……!」

 

 声にならない絶叫。それは理子が幼いころに、遊び半分で喰らっていた電撃とはわけが違う。ヒルダの言葉通りに殺意はないし全力には程遠いだろう。けれど確かに彼女は本気だったのだ。

 その雷撃も気概も。

 

「……っ、あ、ぐ」

 

「無様ね理子。そんな様で、貴女は何をしたかったの? 友達を護る? できると思った? 貴女が私に勝てるとでもそんな無駄な希望を抱いていたの? くすくす、くすくすくすくす……愚かねぇ、貴女が勝つことなんてできるわけないのに」

 

「……はっ。そんなこと、私が一番解ってるさ」

 

 零れた言葉はどこまでも弱弱しかった。吹けば吹き飛ぶどころか、風に吹かれればそのまま灰になって散ってしまいそうだと思わせるほどに彼女の声はか細い。それでも確かに彼女はヒルダへと言葉を放っていた。

 

「出来損ないなんて、今更言われるまでもないし、言うまでもない。私はそういう風に生まれて、育って、今の私がいる。あぁ、きっとお前は本気で、損得勘定でなら私はお前の言葉を受け入れるべきなんだろうな」

 

「あら、物分かりがいいわね。……なら、なんでそうしないのかしら」

 

「くふっ」

 

 ヒルダの疑問に理子はあざけるように返した。

 

「――お前には解らない理由だよ」

 

「――私にも我慢の限界があるということは、貴女も解っていないようだけど?」

 

 その言葉すらも、彼女は笑い飛ばした。どうでもいいと、下らないと。そんなことなんて何一つ自分がヒルダに屈する理由にはなりはしないと。理子は自分を見下す吸血鬼を笑う。

 それをヒルダは気に入らない。

 気持ち悪い。

 自分の知っているかつての理子ではなかった。それはヒルダが求める理子ではなかった。彼女が欲しいのは、自分に怯え、無駄だと解っていながら足掻く弱者だったのに。それなのにこの女はこの状況で何故笑っていられるというのか。

 

「……気持ち悪いわ、そのへらへらした笑いを止めなさい」

 

 そして雷撃を放つ。手を振り上げ、指を鳴らそうとする。痛めつけるための雷撃ではない。意識を奪い、連れ去り捕虜として一から調教しなおそうという意思を込めた雷撃が生じ、

 

アンタ(・・・)の下に(・・・)私はいる(・・・・)

 

 誰もいない(・・・・・・)ヒルダの足元(・・・・・・)に降り(・・・)注いだ(・・・)

 

「なに!?」

 

「驚くなよ、吸血鬼の名が泣くぜ?」

 

 振り返って先に彼女はいた。満身創痍なのも、今にも崩れ落ちそうなのも変わらない。けれど口端を歪めたまま、真っ直ぐにヒルダを見据えている。

 ぺろり(・・・)と突き出した舌には――『弄』の文字が。

 それはヒルダは知らないものだった。驚愕を滲ませるヒルダに笑みを浮かべ、視線を動かす。

 

「おい、アリア。体は動けなくても、口くらいは動くだろう?」

 

「……なによ」

 

 声を出すのも億劫、というわけではなく。先ほどまで倒れていたアリアは山積みになっていた瓦礫に背中を預けて体を休めていた。無理をすれば動けないこともないし、隙を見つけて強襲をしようと思っていたけれど――理子の目を見てやめた。

 

「ほら、あっただろう? バスカービルを結成した時、冗談半分でつけたチームルール。あれってなんだったけ」

 

「……あぁ、あれね。まったくしょうもないことばっかり覚えてるわねぇ」

 

「性分だよ」

 

 くふっ、と笑う理子に。

 ふふっ、とアリアも笑って。

 

「――自分らしくあれ」

 

 言った。

 ただ、それだけだ。

 バスカービルの所属する者たちの唯一のルール。いや、ルールというよりは心がけ。誰が言うまでもなく、理子の言う通り誰かが口を漏らしたことで明確に決まっていたわけではない。けれど、誰もが胸に秘めていることだろう。

 

「あと、やばくなったら介入するわよ。友達の意思は尊重するけど、死にそうな友達を見捨てるなんてことは私はしないわ」

 

「最高だ、大好きだぜアリア」

 

「えぇあたしもよ」

 

 そう、そして――

 

「思い通りにならなくても、負けても、勝てなくても、馬鹿でも、踏まれても、蹴られても、悲しくても、苦しくても、貧しくても、痛くても、辛くても、弱くても、正しくなくても、卑しくても!」

 

 腕を広げて、髪を舞い踊らせて、舞台の上の女優のように。吸血鬼の前で、大好きな友達に見られながら、彼女は笑っている。

 

「――それでもへらへら笑うのが峰理子(わたし)だ!」

 

 胸から零れるのは母から受け継いだ十字架。手に握るのは二挺拳銃。揺らめく髪が掴むのは二振りの刃。そして舌には弄の文字。口端にはこれ以上なく歪んでいる。

 そして――耳のイヤリングを引きちぎる。

 

「来いよ一人ぼっち。私は悪くないし、お前の友達でもない」

 

 

 

 

 

 

「――ならここで死になさい」

 

 スパーク。

 理子の啖呵と共に、ヒルダを中心に火花が散った。既に理子は自分でイヤリングを引きちぎり、あと十分の命ではあるが関係ない。自分のことを侮辱した下等生物を、己の手で殺さなければ気が済まない。生み出したのは雷の球体。それが五つ。ヒルダの指運一つで、文字通り雷の速度で放電し理子を殺し切る。

 ヒルダの指が跳ねて、

 

【そう、雷を私は避けきれない】

 

 理子は雷撃五条を回避した。

 

「――」

 今度は驚かない。雷撃を避けたまま、自分目がけて駆け抜ける理子へ視線を向けながら、さらなる雷撃。今度は『宣戦会議』で蒼一に放ったような放射状の電撃。これならばどういう風に動いたとしても避けられない。

 

【なるほどそれも避けられんないぜ】

 

 言葉とは裏腹に避けた。避けたというよりも、雷撃自体が理子を避けたような動きを見せたのだ。

 在りえない。

 ヒルダの放つ雷撃は物理法則に準ずるものではない、概念的な雷だ。勿論自然の落雷や人口発電で強化もできるがヒルダの支配下に置かれた時点で物理法則から乖離することになる。少なくとも先端科学兵装の類でどうにかできる特性ではない。

 それにも関わらず避けられた。

 

「小細工してるようねぇ?」

 

「しないわけがないだろ」

 

 理子がたどり着いた。閃くのは超能力によって操作される髪が握る二振りのナイフだ。駆けながら叩き込んだ斬撃をヒルダは自分の周囲に雷を帯電させることで防御を成す。それでも理子は止まらない。

 

【私はナイフをお前に放つ! 銃ではない!】

 

 そしていつの間にか理子はナイフではなく銃を手にし、引き金を引いていた。

 

「ぐっ……!?」

 

 それは銀製の弾丸だ。それも、吸血鬼のような魔への隠蔽補正も含めた退魔武装だ。当たれば、高位の魔族であるヒルダとしてもダメージは免れない。

 

「この、私に、銀を……! よくも……!」

 

「くふくふっ! イラついてる場合か? 喰らわした。だからついで私にもくれよ――『怪盗覧目(ドロップウィンク)』」

 

「――!?」

 

 ヒルダの動きがとたんに緩慢になった。理子の過負荷(マイナス)怪盗覧目(ドロップウィンク)』。それは他人の感覚を奪うスキルだ。相手によれば視認しただけでも発動できるが、けれど相手がヒルダのような高位の人外ではまず有効打を与えなければ効果がない。与えたとしても効果は実に薄い。

 固有感覚を奪っても、ヒルダからすれば少し歩きにくいという程度でしかないだろう。

 だからさらに理子は己の異常にて結果を変える。ほんの僅かの結果をより大きく。小さなマイナスに大きなプラスを掛けてやれば――生まれるのはもっと大きいマイナスなのだから。

 

「――『一盗千金(ドリームプロセス)』」

 

「!? り、こ……!」

 

「お前を斃すために! お前に勝つために! 私が、見っともなく、みすぼらしく、情けなく、恰好悪く、作り上げてきた力だ!」

 

 名付けて『りこりんシステム』。

 少ない結果を大きな結果に変える異常(アブノーマル)一盗千金(ドリームプロセス)』。

 髪を自在に操り、可能ならば二桁もの武装を装備できるであろう超能力(ステルス)『十人十髪《ヘアーバリエーション》』。

 相手の五感ならず固有感覚や六感すらも奪う過負荷『怪盗覧目(ドロップウィンク)』。

 そして自分の発言をただの弄言にして現実を弄ぶ言葉(スタイル)『弄言遣い』。

 超能力と異常と過負荷と言葉の同時使用。前を向きながら後ろを見て左右の字を読むような行為。少なくとも今現在コレができるのは理子をおいて他にはいない。

 本来なら異常であり、なのにただの普通であり、過負荷として育ち、特別の仮面を被り、それでも自分を縛る鎖を砕こうと戦い続けてきた理子だからこそ生み出したシステムなのだ。

 

「これで私は、お前を――!」

 

 叫びと共に理子は全てのスキルを同時に発動し、ヒルダへと駆け抜け――

 

「――うるさいわよ」

 

 視界がスパークし、胸を三叉槍が貫いた。

 

 

 

 

 

 

「――え?」

 

 それは一瞬の出来事だった。 

 理子が攻撃しようとした瞬間だった。ヒルダの身体が帯電した。けれどそれは周囲には影響を及ぼさない雷であり、実際理子への影響はなかった。あったのはなにかを焼き焦がしたような音。そして直後にヒルダの手の中で雷撃が収束形成された三叉槍が出現したのだ。

 それがそのまま理子の胸を貫いた。

 

「……え、あ、ぇ?」

 

「理子ッ――!?」

 

 駆け出そうとしたアリアの肩にも雷の矢が突き刺さり、動きを止められる。そして理子は重傷だった。心臓に直接突き刺さっているわけではなかったが、どう見ても致命傷。胸と口から零れる血は少なくはない。

 

「新しい概念を自分で生み出して調子に乗っていたのかしらぁ?」

 

「……っ、ぁぐ……!」

 

「異常過負荷超能力言葉を組み合わせたのは確かに素晴らしいわ、でもね、それを振るうのは所詮貴女なのよ四世(・・)。出来損ないの落ちこぼれの――貴女なのよ」

 

「――ぁ」

 

「くすくすくすくす、そして残念だったわねぇ。貴女は私の友達ではないのでしょう? だったらただの家畜よ。ただの塵よ。取るに足らない畜生よ。だからもう貴女と話すことはない。何も為せないままで、無意味に死んじゃえば?」

 

 そして突き刺さった槍が光を生み出した。スパークする直前発光。一瞬後には雷光が理子の身体を蹂躙し、絶命させるだろう。もうどうしようもない。理子自身にはなにもできないし、アリアもワトソンも不可能。

 

 ――結局また負ける。

 

 いいや、負けることはいつも通りだけど。それでもやっぱり理子は泣きたくなった。絶死の直前、超停滞した視界の端で、アリアが必死の形相で自分に手を伸ばしているのが見えた。

 最初は因縁があるだけの敵で、一度戦ってライバルで、しばらくなんとなく仲間になっていて――最近友達になった緋色の少女。いいや、よく考えれば自分の関係はそんなのばっかだ。奪われてばかりの人生だったけれど、裏切ってばかりだったのもまた理子の人生だった。

 無理だった。無茶だった。無駄だった。

 何をやっても弱かったし、何をやっても駄目だった。本当に駄目で、本当に弱かった。

 ならば死ぬのも、

 

「――しょうがないのか」

 

「そんなわけないだろ」

 

 そして飛来したのは緋色の一刀だった。

 理子の背後、夜の天空から闇を切り裂くような閃光。それは目にもとまらぬ速度でヒルダの胸の中央へと突き刺さり、彼女の周囲の雷を全て割砕音と共に消滅させた。

 そしてその刀の銘を理子は知っていた。

 大好きな友達の――その中でも特別な少年が持つ刀。

 緋刀・錵。

 

「お前は確かに、本当に駄目で弱い奴なのかもしれない。それでも――お前は悪くない」

 

 胸の槍が消え去り、崩れ落ちそうになる理子を支えたのは理子も知っている少年だった。

 花がない枝があしらわれた真紅の着流しを纏い、右腕を袖から引き抜いている。否、一体どこで何をしてきたのか、右の袖は所々の生地は破けていたり、無くなっている。理子やアリアにも負けないくらいに全身傷を持ち、額からは少なくない血を流していた。

 けれど燃え上がるような緋色の髪と瞳、そして右腕の桜吹雪のような刺青は爛々と輝いている。

 

「お前が死んだら、大好きな友達が死んだらアリアも、蒼一も、レキも、白雪も、遙歌も、皆が皆悲しくて泣いちゃうぜ。勿論――俺もな」

 

 そして彼は。

 

「お前が死ななきゃいけない不条理なんて、俺がぶっ壊してやるよ」

 

 遠山キンジは彼にしては珍しくへらへらと――口端を歪めて笑った。

 

 

 




新技ひっさげて無双と見せかけてやられちゃう当たり過負荷(
というわけで世界一かっこいいであろう登場シーンのミックス(
主人公誰だっけ……?

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