落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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レ(ry

銀髪画像は何処に。


第4拳「貴方がその聖剣がふさわしいのかどうか」

 

 耳には無機質な木槌の音が残響していた。

 

「――」

 

 沈黙が車の中を満たしている。後部座席には俺とレキ、遙歌。助手席に理子出運転手が連城さんだ。窓の外を見れば少し後ろに『緋影』に跨るキンジと、その背中にしがみ付いているアリア。二人ともフルフェイスのヘルメットを被っているので顔は見えないが、到底笑顔はないだろう。

 仕上げ日の翌週、今日はアリアの母親、神崎かなえさんの高裁の日だった。

 イ・ウーによって課せられた冤罪の懲役1235年。ソレは言うまでもなく事実上の終身刑であり、アリアが武偵として活動するのも、イ・ウーを捉えようとしていたのも、キンジを無理矢理パートナーに付けようとしていたのも全ては母を救うためだった。

 それこそが――神崎・H・アリアの戦う理由だった。

 そのために峰・理子・リュパン・四世を、ジャンヌ・ダルクを、ブラドを捕え、パトラや遙歌にも司法取引という形で母の為に全力を尽くしてきた。キンジはもちろん俺たちもそれに少なからず協力してきたつもりだ。アリアの戦妹である間宮ちゃんもイ・ウーの構成員を一人逮捕して減刑に力を貸してくれていた。

 なによりかなえさんに罪をかぶせたイ・ウーは他ならぬ俺たちの手で崩壊したのだ。そのせいでFEWがあり、シャーロックもアリアをイ・ウーに迎え入れれば冤罪を晴らすと言っていた。あの人外言うのだから間違いなく冤罪であり、数度面会した会話したがいかにも優しそうな母親といい感じだった。

 だから今回の裁判では俺たちは勝利を確信していた。

 ジャンヌやパトラはFEWのせいで来れないとはいえ証言はそろっているし、遙歌や理子は実際にいる。また他の元イ・ウーの構成員のことも彼女たちからかなえさんの罪ではないということがはっきりしているのだ。負ける理由がない。

 

 なのに――負けた。

 

 神崎かなえの判決は懲役五〇六年。半分にまで減刑されたとはいえ事実上の終身刑なのは変わらない。明らかに不自然だ。傍聴していたが検事の言うことは滅茶苦茶で支離滅裂で話の筋が通っておらず証拠もまるでなかった。

 それなのに終身刑は覆らなかった。

 当然納得はいかない。

 アリアは涙を流しながら叫び――止められた。今車を運転する連城さんにだ。かなえさんの弁護士である彼女が止めなければアリアは裁判官や検事を殴り飛ばしていただろう。おそらくは連城さんも殴りたいと思っただろう。

 けれどそんなことをすれば最高裁に悪影響となる。

 最高の裁判であり――最後の裁判。

 そこで負ければ神崎かなえは終身刑だ。死ぬまで外に出ることができない。

 

『――こうなることは解っていたわ』

 

 裁判が終わる時の彼女の言葉も耳に残っていた。

 

「……母親、か」

 

 俺の母親はどんな人だったのだろうか。一つ下の遙歌を生んですぐに父親諸共死んだらしいので記憶は全くない。実家の爺や婆どもも全然説明してくれず、駆け落ちしたろくでなしということしか知らないし知ろうとも思わなかった。生みの親だろうとも関係性が皆無なので感情が発生しようがない。

 キンジからも母親の話は碌に聞いたことがないし、レキもそう。だからアリアの母の出所の話は喜ばしいことだったのだけれど。

 

「……」

 

 俺たちにできることはない。

 こういう時、殴るしか能がない自分が悲しい。

 

「駄目だねどうも」

 

 交差点で止まっている俺たちの車で背後にいるキンジたち。顔色は見えないのは変わらない。

 見えないけど想像はできる。

 そう思うとヘルメットがあってよかったなと思う。今のアリアにはキンジは必要だろうし、キンジも今はアリアがいなければ危ない(・・・)だろう。

 と、後方のキンジたちが前を指さした。 

 

「……?」

 

 前を向けば、連城さんが掛けていたサングラスを外して道の先をいぶかしげに見ている。

 その先、何があるかと考えれば当然道路と信号だ。当然、それだろう。

 だが――本来点灯しているはずの信号が総て消灯していた。

 赤も青も黄もない。完全に無灯火。歩行者用の信号も消えている。当然、歩行者の皆さんも混乱している。

 

「これは」

 

 明らかに普通ではなく、

 

「蒼一さん、なにか来ます」

 

 ――来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――御機嫌よう」

 

 まず最初に雷撃が地面から発生した。車の中にいたから電気が全て車体の表面を通り抜けた。ここだけではなく前の護送車も、おそらくは背後のキンジたちにもだ。けれど構っていられる状況ではなかった。例え車内に電撃は及ばなかったとはいえ車というものは一種の爆弾と変わらない。引火すれば俺は少なくとも連城さんやレキはただでは済まない。

 だから判断は迅速だった。

 

「――『糸々泪々(ストリングリング)』」

 

 風切り音。視界の中に走る閃光。僅かなタイミングに送れて、

 

「!!」

 

 俺は横のレキを抱えて、遙歌は糸で理子と連城さんを絡め取り飛び出した。バラバラになった車を置き去りにして地面を削りながら距離を取る。だが脱出を最優先にしたせいで細切れになった車は一瞬後に爆発する。そして爆発すれば事件だ。

 

「遙歌!」

 

「解ってます、よッ。一、二、三人――『点々身(ポイントインポート)』!」

 

 指をはじいた瞬間――護送車に乗っていたはずのかなえさんや運転手二人が遙歌の背後に出現した。場所が解っていれば人物物体問わずに座標移動できるスキル。遺されたのは電撃によって爆発寸前の護送車。

 そして『点々身(ポイントインポート)』の発動の瞬間に既に爆発していた連城車。

 当然そのままにしない。

 

「全く遙歌ちゃん大活躍ですね――『進撃城壁(アタックウォール)』」

 

 遙歌が地面を蹴りつけた。そしてその直後に、

 

 コンクリートが壁となって隆起し爆炎を周囲から遮断した。

 

 任意の所に壁を作るスキル『進撃城壁(アタックウォール)』。夏休みにてまゆっちには紙同然に切り裂かれたそれでも車の爆発を遮るだけの強度がある。これで雷撃による車爆散は免れた。

 だが、

 

「――Fii Bucuros。見事な反応だったわ。流石名高き『絶滅少女《ジェノサイドガール》』、といったところかしら」

 

 中空にて浮かぶゴシックロリータ姿のヒルダ。日傘をクルクルと回しながら何もないはずの空間に立っている。驚くべくもない。雷撃という時点で予想はついていた。『宣戦会議』からこれまで襲撃がなかったのが不思議なくらいだ。

 

「といか『絶滅少女《ジェノサイドガール》』ってなに。そんな風に呼ばれてんの?」

 

「い、いやですね兄さん。私が名乗っているわけじゃないですよっ。勝手に呼ばれているだけで!」

 

「ちなみに他にも、『殲滅領域(クライシスエリア)』『人間水爆(ビックバン)』『天災皇女(カラミティ)』『最終崩壊嚇怒(ラストカストロフィ)』なんて呼ばれているわねぇ。まぁどれもこれも風情がなくて私は好きじゃないのだけれど」

 

「物騒だなおい……」

 

「だから勝手に呼ばれているだけですっ!」

 

 いやまぁそれはそれでいいんだけど。後でもっとかっこいいのをレキに付けてもらえばいいのだ。そういうの得意だし。

 問題は、

 

「何の用だ。一戦やらかそうっていうのか」

 

「別にそうでもないわ。私も戦う気はなけれど玉藻の結界の外にのこのこ出てきているもの。だからこんな天気の悪いのに出てきたのよぉ? それにさっき面白いことやってたんでしょう? 私の罪を被っている光栄な人間が死ぬまで囚われの身っていうお笑いな結果に――」

 

 あざけるようなヒルダの言葉の最中に背後から飛び出す影があった。

 

「ヒルダァァ――ッッ!」

 

 アリアだ。 

 髪を、瞳を、小太刀二刀を。最早全身すらを緋色に染めながら彼女は突貫する。小太刀は緋色の光が通常の刀と変わらぬ形状を形成している。一直線、爆心する。

 

「くすくす――」

 

「っああああああ!!」

 

 激情と共に疾走するアリアをヒルダは笑みと共に受け入れる。防御も回避も迎撃もすることはない。余裕といえばあまりにも余裕がありすぎる。

 つまり何かがある。

 止めるのは最早間に合わなかった。

 

「――!」

 

出番よ(・・・)サー(・・)

 

 

 

 

 

 

 突撃するアリア。待ち受けるヒルダ。

 俺も遙歌もレキも理子も反応する暇もなかった。

 真上だった。

 

「――」

 

 現れたのは白の騎士。『宣戦会議』にも来ていた純白の騎士礼服に舞踏会のような仮面で片目を画した青年。その時とは違うのは両腕の袖からショートソードを伸ばしている。果たしてどこから落下してきたのかその速度は自由落下の比ではない。それにアリアは気づいていない。その燃える緋色は吸血姫しか見れおらず上の騎士には反応しない。急降下する双刃は確実にアリアを狙っている。

 気づいたのは刃がアリアの首筋に突き立てられる直前。彼女は反応できず、

 

「――おおおおッッ!」

 

「――フ」

 

 飛び出したキンジがアリアと騎士の間に割り込んだ。

 

「ぐ、ッ……!」

 

「キンジ、アリア!」

 

 吹き飛んだのはキンジとアリアだった。縺れながら二人はこちらに転がり、騎士は軽やかに大地に降り立った。かなり高レベルの身体操作によってセットされた青髪や騎士礼服に乱れは一切ない。

 

「……お前ら大丈夫か」

 

「……えぇ」

 

「なんとか、な。雷の麻痺から復活するのに時間が掛かったけど……あいつは」

 

 言いたいことは解る。ヒルダは騎士の背後で浮遊したまま動く気配はない。こっちは白雪を除いたバスカービルのフル面子とはいえ相手の力は未知数。まともに戦って一方的に負けるとは思わないが受ける被害が解らない。

 

「――」

 

「……あれは強いなぁ」

 

 仮面のない静かな瞳には強者の風格がある。おそらく武威に関しては俺や張遼クラスだろう。

 騎士が口を開いた。誰もが身構えその男の言葉を聞く。

 

「――はじめました」

 

 聞いた。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 ……ん?

 今この男は良い声でなんと言った。始めまして、ではなかった。そんなようなことだったがなんか違った。

 なまじシリアスだったから俺たち全員反応ができず固まってしまい、その違和感は彼にも伝わっていた。

 

「……? はて、初対面の相手と会う時ははじめました、ではなかったのか」

 

「あー……、サー? そういう時は始めまして、よ。ましたじゃなくて、まして」

 

「おお。なるほど。ありがとうございましたドラキュリーナ」

 

 そして再び向きなおり、

 

「はじめまして。英国が騎士『最後の円卓(ナイトオブゼロ)』、ランスロットとお呼びください」

 

 やり直した。

 内容はともかく――サー・ランスロット。

 円卓の騎士、騎士王アーサー・ペンドラゴンの右腕。湖の騎士。完璧の騎士。そう讃えられながらしかし王に背いた裏切りの騎士。その末裔が今俺たちの前に降り立っていた。

 

「騎士様が不意打ちとやっていいのかよ」

 

「確かにそれは私としても不本意ですが、FEWでは不意打ちも認められていますしドラキュリーナには殻金七星の借りがあります。故に一度ですが不意撃たせてもらいました」

 

「せこいこと言わずにそのまま眷属に加入してくれてもいいのよぉ?」

 

「さて。それは――()次第でしょう」

 

 向けられた視線は真っ直ぐにキンジへと向いていた。

 

「……またかよ。今度はなんなんだ」

 

 呻くキンジのコンディションはいいものではない。先ほど受けたパトラの雷撃による麻痺が全て消えたわけではないだろう。それでも戦意は失っていない。アリアを殺されかけてこいつが引くわけがないのだ。

 

「解りませんか」

 

「――ちっ」

 

「え、お前心当たりあるの?」

 

「キンジ……?」

 

「まさかオホモダチ枠ですか……」

 

「いや、あの刀のことじゃないですかね……?」

 

  刀。つまりはキンジの緋刀・錵。緋色の日本刀。シャーロックからキンジが譲り受けた一刀で、俺は確かにその光景に立ち会わせていた。その時は今のような日本刀ではなくスクラマ・サカスという反りの浅い古刀だった。確かあの人と一緒に英国で暴れた時に女王様から貰ったとか言っていた。

 それで、確かあれの銘がラグナロクだった。いやそうではなくて――

 

「――エクスカリバー」

 

「そう、我が国の至宝。かつて騎士王が振るった現存する聖遺物。『ただ知っているだけの人外』に一度渡り彼が死んだとはいえ、貴方に所有権はない」

 

 だから、

 

「決闘を申込みましょう――遠山キンジ、貴方がその聖剣がふさわしいのかどうか、この身を以て確かめさせてもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「その人間に拒否権はないのだから私の用を済ませてもらうわよぉ? ねぇ――理子」

 

「――あ」

 

 ランスロットの宣誓布告。それに誰もが気を取られていた瞬間だった。音も気配もなくヒルダは移動していた。

 影。

 それを用いた転移。ランスロットの覇気に集中させられていた俺たちの隙を付くように。姑息な真似をと思うが――当然だろう。彼女は闇の眷属で。物語に登場するような吸血鬼の化物。日向ではなく日蔭、光ではなく闇に潜む者なのだから。

 現れたのは理子の背後。

 接敵してから一度も動きを見せなかった彼女。狙撃主故に気配を消していたレキとは違って彼女は本当に何もしていなかった。

 通常の彼女(ノーマル)ならば面白おかしく引っ掻き回そうとしただろう。

 非常の彼女(マイナス)ばらば敵味方含めて何もかも台無しにしようとしただろう。

 

「っ、ぁ……ヒル、ダ……」

 

 なのに――今の彼女はただ震えて背後から緩き抱きしめる吸血鬼の名前を呼ぶことしかできなかった。

 かつて一度だけ見た峰・理子・リュパン・四世の本質、それは普通(ノーマル)でも過負荷(マイナス)でもない。鎖でからめとられたように動けなくなった。

 鎖――つまりは過去。

 吸血鬼ブラトに縛られた理子の幼少期。考えれば不思議でもなんでもなく寧ろ当然のこととして、その娘であるヒルダともまた因縁があって然るべきなのだ。

 遅すぎる気づきだったからこそ、即座に俺たちに誰もが動いた。

 

「――!」

 

 先ほどまで決闘の原因にもなっていたエクスカリバー――緋刀をキンジは躊躇いなく投擲した。それに並行するように俺が瞬発。遙歌が異常によって生み出した銀製の杭。レキとアリアが打ち放ったの瑠璃と緋色の弾丸。

 下手をすれば理子毎巻き込まれかねない包囲網。けれど吸血姫は笑みを崩さない。

 

「うふふ……。お友達に恵まれたようねぇ」

 

 ヒルダの指先に握られていたのは不気味なコウモリ羽の意匠のイヤリング。それが理子に耳に付けられた。理子は拒絶できず、

 

「友情の証よぉ」

 

 俺たちの攻撃が届くよりも先にヒルダは転移する。

 

「チィ!」

 

 並行していた緋刀をキンジへと蹴り飛ばし、杭が軌道を変えて光弾とぶつかり消滅し合う。

 

「っ……!」

 

 崩れ落ちそうになったが、なんとか彼女は立っていた。けれど足は震えていた到底無事ではない。

 

「……これは拙いな」

 

 呟きは理子を庇うように後退したキンジ。彼女を背に隠すキンジの顔は険しいし、俺だっていいとは言えない。俺たちだけならばともかく市街地でかなえさんもいるのだ。守りながらだと苦戦は間違いない。

 

「……キンジ。理子やかなえさんを連れて退け。俺と遙歌が殿やる」

 

「……いいのか」

 

「いいもなにもそれしかないだろ」

 

 戦える状態じゃない理子やかなえさんを護るのは当然のこと。アリアもヒルダと関わらせたら『宣戦会議』の二の舞いになりかねない。レキもこの距離では本領を発揮できない。いくら近距離戦闘ができると言っても狙撃が彼女の本懐なのだから。そして護るのが多くなるのだから指揮者は必要だ。

 だからここで皆が安全圏にまで退避するまでヒルダとランスロットの足止め、それから自分たちで帰還しなければならない誰かがいるのだ。

 つまり俺と

 

「頼むぜ妹ちゃん」

 

「しょうがないですねぇ」

 

「……解った」

 

 苦笑しながらも頷いた遙歌にキンジは決断した。戦役なのだから無理をする必要はないのだ。

 

「……蒼一さん」

 

「大丈夫だって。すぐ帰るから待ってろ」

 

「……あまり遅いと部屋の本棚の裏のフィギア類破壊しますからね」

 

「なんで知ってんの!?」

 

 数か月間隠し続けていた俺の密かな趣味が! というかいつのネタ回収してんだ!

 

「ふむ、なるほど。それが噂のジャパニーズドール……」

 

「あれは確かに私も認めざるを得ないわね……」

 

 敵の方がなんか感慨深げに頷いていた。

 やべぇ恥ずかしい。こういうのは受け入れられたほうが恥ずかしい。

 

「……全く。締まらないなぁ」

 

 まぁ緊迫感が解れたと考えればいい。それにこういうアホな感じのほうが似合っている。

 

「作戦は決まったかしらぁ。サー、付き合ってもらうわよぉ」

 

「いいでしょう。この場のみですが貴女の剣となり迫る危機を払いのけて見せます」

 

「うふふ。吸血姫も騎士も、この私の前には無意味ということ教えて差し上げましょう。不本意な二つ名ばかりですが――全て偽りないということを」

 

「こういう時は決死の覚悟と相場が決まってるんだろうが、俺はそういうの嫌いでね。隙があったら即撤退させてもらう。ホラ、言うだろ? 家に帰るまでが遠足だって」

 

「Good。いい啖呵だ。拳士最強と絶滅少女(ジェノサイドガール)。その名は伊達ではないらしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――!!」

 

 最早何度目の驚愕か。そろそろ先に台詞だけ発して登場するのは心臓に悪いから止めてくれと思いつつ現れたそいつを認識する。

 ヒルダの能力によって曇りの上に一時的に暗くなっていた交差点の奥からソレは現れた。ゆっくりとした足取りであり右手には洋剣、左手には拳銃の一剣一銃(ガン・エッジ)

 

「……っち」

 

 それを目にしたヒルダが露骨に眉を潜めて舌打ちしていた。

 灰色のブレザー、海外の武偵高らしき制服。肩のあたりで切りそろえられた黒髪。中世的な顔立ちだが服装から見て男だろう。びっくりするくらいに整った顔立ちだった。

 

「……誰?」

 

 呟いたのはアリアだ。

 その声が届いたのか、少年は彼女のほうを真っ直ぐ見つめて微笑み、

 

君の婚約者だよ(・・・・・・・)アリア(・・・)

 

「――は?」

 

「――え?」

 

 ものすごいことをそいつは告げてキンジとアリアが間抜けた声を出した。しかしそいつは二人には構わずにヒルダとランスロットに顔を引き締めて向き直った。

 

「貴族として名乗りを上げさせてもらう」

 

 名乗る。

 

「ワトソン――エル・ワトソン。J・H・ワトソンの曾孫だ」

 

 銀色に輝く刀剣をヒルダたちに突き付け、

 

「婚約者と義理の母を護るために立ち塞がろう。吸血姫(ドラキュリーナ)、サー・ランスロット。引かないというならばここで君たちを斃させてもらうが、どうする?」

 

 その時に俺の脳裏に過ったのは新たな勢力とか敵か味方かどっちだとかではなく。

 

 ――修羅場の予感だった。




いろいろ詰め込め過ぎた気がするが気にしない。
というか原作で何故ワトソンはICBM乗って現れたのか。中二病か(
狙いすぎだろう(

始めのほうの懲役は遙歌の分プラスしてついでにヒルダの分も引いてるので500年ちょっと。原作でヒルダの分の懲役合ったようななかったような微妙なんで適当に80年分くらい。


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