ご指摘にあったことを参考に書いてみました。
この話ではあまり出てきていませんが、天童流戦闘術の技名などの確認に時間がかかり、技名を考えなければなぁと考えているうちに投稿予定日を過ぎていました。申し訳ありません。
春先の暖かい日差しが降り注ぐ中、静謐な空気の漂う道場に連続した踏み込みの音が聞こえる。
「天童流戦闘術一の型三番『
技の名が叫ばれるとともに空気を裂くかのような突きが放たれる。
そしてその突きの勢いを殺さず、次々と型を決めていく。その流れによどみはなく、幾重にもわたる反復の成果が表れていた。
「天童流戦闘術二の型一六番『隠禅・黒天風』っ!!」
流れるような技の繰り出しは、最後に回し蹴りをもって終わりを迎えた。
「ふー、一先ず今日やるべき型の練習は終わったな。しかし、体作りが終わって技を習い始めてからそろそろ二年が経つなぁ。最初の頃はヘロヘロのパンチしか出せなかったのに今ではだいぶましになってきたかな」
道場の中央に立つ蓮太郎は残心を解き、大きく息を吐きながら動議の胸元を開いて熱を逃がしていた。
体からは激しい運動をした証のように大量の汗と蒸気が噴き出し、顎先や胸元を伝って床に落ちていく。そんな中、蓮太郎は先ほどまでの自分の型がどうであったかを思い出し、習いはじめとの違いに笑みを浮かべていた。
「これならそろそろ師範にも一撃入れられるかもしれないな。…………いや無理か。はぁ~、あの爺さんは本当に100歳超えてんのかよ!!?」
自身が師範である菊之丞に一撃を入れている様子を思い浮かべようとするが体よく往なされてしまう想像しかできず、あの爺さんはやはり化け物かとこめかみを抑えうなっていた。
「と、あんまり汗まみれでいると風邪をひくな。春先とはいえまだまだ肌寒いからな、しっかりと体調を管理しないと心配される」
そういってタオルや水筒の置いてある所に行き、水分補給をしていく。
それから蓮太郎は道場に併設されているシャワー室に入り、汗を洗い流していった。
シャワーを浴び、身なりを整えると蓮太郎は道場を出て屋敷の方へと歩みを進めていった。
そこにお手伝いの女性が急ぎ足でこちらに向かってくるのが目に入り、蓮太郎は立ち止った。
「蓮太郎様!ちょうどよいところでした。菊之丞様がお呼びです」
女性は蓮太郎の前まで来ると菊之丞から呼ばれていることを伝えてきた。
ちなみに、蓮太郎は“様”付けで呼ばれることに違和感しか覚えないため外していいと伝えているのだが、一向にはずれる気配がなく最近ではあきらめている。
「分かりました。どちらに行けばいいのか言っていましたか?」
「はい、お部屋の方に来てほしいとのことです。何やら大切なお話があるご様子でしたが……」
蓮太郎の問いに答えながら、女性は何か気になることがあるのか浮かない顔をしながらも「失礼します」と言って自分の仕事に戻っていった。
蓮太郎は菊之丞が自分に何用かと考えながら部屋へと足を進めていった。
「失礼します。蓮太郎です、お呼びとの事で参りました」
部屋の扉をたたき、一拍開けて中に入ると向かい合っているソファーの一つに菊之丞が座っていた。
「よく来たな蓮太郎、こちらに来て座りなさい」
菊之丞は蓮太郎に席を勧めると、お手伝いを呼んでお茶の準備をさせた。
お茶の用意ができるしばらくの間、二人には会話はなく、少々張りつめていながらもどこか温かい空気が流れていた。
「ふむ、蓮太郎。あまり緊張しなくてよい。そうだな、せっかくお茶も入っておるのだし、先に菓子でも食べてから話を始めるか。お前も先ほどまで道場で鍛錬をしておったようだしな」
お手伝いが退出すると、菊之丞は張りつめた空気を解すかのように蓮太郎にお茶を勧めてきた。
その様子は原作で描かれていたような厳格老人はおらず、どちらかといえば好々爺の雰囲気が強く感じられるほどであった。
それから、少々の雑談を挟んだお茶が始まり、湯呑みが空になりそうなところで菊之丞が話を始めだした。
「蓮太郎、お主がこの家に出入りするようになり早三年が経つ。貴春の提案があったからと言って天童流を学ぶ覚悟があるなど分からなかったが、お主はこの三年間をしっかりと鍛錬に当てているのは確認しておった。それにその年でありながら株を行っていたことも、東京大学に出入りして、若き天才と言われる室戸菫と何やらやっておることもな……。一時は本当に9,10歳の子供かと疑ったほどであった」
菊之丞はこれまでの事を思い出すようにしながら蓮太郎の行ってきたことを言ってきた。
聞いている側の蓮太郎はすわ自分のしていることや未来の情報についてばれていたのではないかと緊張し始めていたが、そんな様子を気にかけず、菊之丞の話は続いていた。
「しかし、助喜与師範からは特にお前について何か言われるということもなく、木更と遊ぶ姿は本当の兄弟以上に兄弟のように見えたほどであった。最近ではお兄ちゃんと呼ぶのは蓮太郎のみであることに一番年の近い
そういって笑うと菊之丞は改めて蓮太郎に向き直り本題に入ってきた。
「そうしたお主の様子を見てきてわしはあることを決めた。蓮太郎、わしの弟子にならんか?」
真剣なまなざしで聞いてくる菊之丞に対して蓮太郎は何の弟子なのか当たりを付けながらも問い返した。
「……弟子というのは菊之丞様が作っておられる仏師のでしょうか?」
「そうだ。儂も仏を彫るようになって大分経つ。そろそろ弟子を持ち技を伝えていくことべきではないかと考えてな。それに、これは内密ではあるが、近ごろわしを人間国宝に推薦する動きがあってな。なってから弟子を探すとなると少々面倒なことになりかねん。そこで主を弟子にしてはどうかと思ったわけだ」
自信を選んだ理由を言ってくる菊之丞に対して蓮太郎は自分がどうしたいかを考えていた。ただでさえ、天童流戦闘術の鍛錬や菫との研究、A.Tの開発などやることが多い身である。さらに新しい事を始めるとすべてが中途半端になるのではないかという心配が頭をもたげた。
一方で、この世界に転生してきた際に弥勒菩薩にお世話になったこともあり、その感謝を示す意味でも仏を彫ることはそれにつながるのではないかという思いも抱いていた。
そのためすぐには答えることができず、菊之丞に後日返事を伝えると答え、部屋を出ていった。
_________
蓮太郎と初めて会ったのは木更が生まれたときの誕生日であろうか。
パーティーに来ていた貴春と舞風優に連れられてきた蓮太郎は、7歳ということもあり子供と言っていい年であるはずであった。しかし、その年頃の子供にいられるような落ち着きのなさや大勢の大人に囲まれる不安というものがほとんど感じられなかった。
当時、天童流師範である助喜与翁が新しい弟子をとるかどうか迷っておられた。その話を貴春にすると、うちの蓮太郎は道場に入門させてみてはいかがでしょうと言ってきた。
どうやら最近は他の子供と遊ぶ傍らで体を鍛えることをしていたようで、それならばと考えていたらしい。その提案があったこともあり、蓮太郎にたずねてみると物おじせずこちらを見ながらお願いしますと言ってきた。
思えばこの子らからこの少年に何かを感じていたのかもしれん。天童家という旧家であることもあり、若い者は基本的にわしの目を見てものを申すということができない者が多かった。そんな中でまっすぐにこちらを見つめてくる蓮太郎は新鮮なものであった。
それから蓮太郎は道場で助喜与ともあったようだが、道場への出入りも認められ、本格的な弟子として育てられるようになった。この時、助喜与師範からやつには多いな目的があると聞いたが、その詳細については話しては頂けなかった。しかし、それだけのことを言わせる蓮太郎に儂はさらに興味が沸いたのを覚えている。
それからもその年に似合わないことや人脈を作り、いろいろと行っていることを報告に聞くのはなかなかに面白いものであった。
実の孫たちはその生まれがあったためか、どこか傲慢であり、そして自分には力があると己惚れるところがあり、そのせいか我欲が強くなってしまった。そうしたこともあってか年の離れた木更にもあまり接しようとしなかった。そして互いにけん制しあう兄弟であるせいか、少々殺伐とした雰囲気があることもしょうがないと言えるのだろう。
そんなこともあってか、木更は兄たちにはあまりなつかず、一緒にいることが多かった蓮太郎を兄のように慕ったのは当然のことと言えるだろう。
そうした状況の天童家に出入りをしながら、天童家に取り入ろうといった浴なども全く見せないまま蓮太郎は当初から変わることがなく成長した。この様子を見てわしは今回の弟子入りを蓮太郎に聞いてみた。
蓮太郎は少々考え込んでいたが、後日改めて返事をしに来るとのことであった。
仏を彫ることは己をなくして彫っていく必要がある。他の孫では欲に凝り固まってしまっていることもあり、弟子に取るには適していない。できれば彼に弟子入りしてもらいたいものだ。
今回の話は菊之丞側の視点が多くなりました。何気なくいろいろなことをしていた蓮太郎を別の視点でとらえてみるとこんな感じになるのではないかと思いながら書いてみました。
お願いがあります。
この作中で出してもらいたい兵器や拳銃がありましたら活動報告書の方に返信をお願いしたく思います。
できる限り調べて登場させたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
感想をお待ちしております。
7/22 修正