ブラック・ブレット 救いを求める者   作:桐ケ谷なつめ

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お読みいただきありがとうございます。

今後ともエタらないよう頑張りますのでよろしくお願いします。


第5話 10歳 日常

 助喜代師範に子供たち保護を目的とした施設の建設を打ち明けた日から、俺は施設の建設計画の作成に意識を集中させていった。

 ガストレア戦争直後の東京エリアでは何が不足しているのか、それをいかに供給するのかについて考えをまとめなおすことから始め、稼働時に求められる要求を大きく4つにまとめることができた。

 1つ目が食料・資材

 2つ目がエネルギー

 3つ目がA・Tを開発・研究できる施設

 4つ目がガストレア因子の抑制・制御

 これら4つの条件を満たすことができる施設の建設が必要になるわけだが、俺はここで頭を抱えることになった。

 1つ目の食料、資材に関しては大戦前に天童家を通じて建設予定地の近隣に倉庫を作るなりして備蓄すればいいと考えられる。しかし、食料の一部は野菜や動物などの生鮮食品が含まれるため、長期の保存には向いていないものが多い。特に、肉や魚類は家畜や養殖を行わなくてはならないため、容易に準備できるものではない。一方で、野菜に関しては農地を確保し、太陽光と空調、水さえ確保できれば地下でも栽培が可能である。特に水耕栽培での収穫を見込める野菜もいくつかあるので併用して設置することで効率的に栽培を行える。

 2つめのエネルギーに関してはA・T技術を応用することで解決を図れる。地上建物や敷地内に太陽光パネルを設置する、あるいは各階層に水を流す際に上層階から下層階への高低差を利用した水力発電施設や地熱を使用しての発電を建設の段階で盛り込んでおくことでそれほど問題はなくなるだろう。

 3つ目の研究施設は建設しておけばA・Tに限らず、対ガストレア兵器の開発や装備の整備にも用いることができるので作業用機械と共に機材作成用の機械も導入することで随時アップデートが行えるようになるはずだ。

 4つ目に関しては重要な課題になる。子供たちの体を精密に検査できる機材はもちろん、研究開発が行える施設が求められるので3つ目と絡めて設置するのがいいと思われる。また、医療施設としても並行して稼働させることで効率化を図れる。

 しかし、これらの条件を満たす施設を作ろうと思うとなかなかに難しい。

 なぜなら、これらを人が管理しようと思うととてつもない労力がかかるとともに費用もばかにならないためだ。

 

 

 

 とまぁ、頭を悩ませていたわけだが、菫に相談したところ

「そんなものオートメーション化してしまえばいいだろう」

と頭を傾がれてしまった。不覚である…………。

 となると、これらの設備を一括で管理できる中央管制設備が必要となる。

 そこで菫に相談したところ

「ちょうど研究所で制御A・Iの開発をしなくてはならないから、蓮君が開発リーダーになって作ってしまえばいい」

と言い出し、最近はその開発に追われている。

 この時、研究所のほかの研究者といろいろあったりしたのだがそれは時間があったらお話しするとしよう。

 

 

 

 こんな感じでいろいろ頭を悩ませていたが、A・Iの作成を決めてからはそのA・Iに施設管理や研究補助を行わせられるだけのスペックを持つスパコンを作ることにも話が進んだ。そのため、施設内の間取りはどのようなものがいいのかの具体案ができたため設計図はつい先日完成し、助喜代師範への報告も済ませることができた。

 冬も半ばに入り、少々肌寒く思いながらも日差しを気持ちよく思いながら、今は肩の荷が一つおろすことができたと天道の屋敷の縁側で一人休んでいるところであった。

 

 

 

 _________

 

 

 

「あー、無事に施設の設計案が認められて良かった」

 

「師範は技術的に可能なのかって聞いてきたけど、菫と一緒に作った資料があったおかげで思ったより簡単に納得してもらえたな……。しかし、これからはさっさとA・Iの開発をして今のうちから学習経験を積ませないといけないよな……」

 

 今後のことについて考えているとガストレア戦争まであとどれだけの時間が残っているのかがふと気になった。

 

「俺が今10歳で、転生するとき原作の蓮太郎より7歳年上にしてもらった訳だからなぁ。確か蓮太郎が7歳の時に両親が死んでいるわけだから、遅くても14歳の時にはガストレア戦争が起こっていると考えた方がいいわけか……。つまりあと4年を切っているわけだな」

 

 悲惨な未来が確実に迫っていることを実感してしまい体が強張ってしまったので、腕を上げながら背筋を伸ばし、体をほぐしていると俺のことを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「おにーちゃん!!」

 

 木更が走ってくるのが見えた。

 先日誕生日を迎えたため4歳になった木更は以前にもまして俺の所に来るようになった。

 以前、四人いる兄と一緒に遊ばないのか聞いてみると、あまり遊んでもらえないと少し寂しそうにしていた。まぁ、一番年の近い凞敏(てるとし)でさえ一回り以上年が離れていることを考えるとしょうがないのかもしれない。

 また、幼稚園にも通っておらず、外で遊ぶことも稀なためか同年代の友達がいないことも大きな原因の一つかもしれない。

 

 と考えているうちに木更が座っている俺の膝に飛び乗ってきた。

 

「飛び込んでくると危ないよ、木更」

 

「えへへ~、せっかくお兄ちゃんが座っているのを見つけたんだもん!!」

 

 艶々とひかる頭を撫でながら注意すると、悪びれなく笑顔で言ってきた。

 これまでも膝の上でよく本を読んだり、昼寝をさせていたことがあったためか座っているとよくせがんでくることがあった。まぁ喜ぶ顔や寝顔がかわいかったのでそのまま遊んだりしていたのは俺自身だが……。

 

「お兄ちゃん、何してるの?」

 

「うん?やらなきゃいけなかったことが終わったから休憩がてら日向ごっこをしていたんだよ」

 

「そっか、じゃあ一緒にあそぼ?」

 

「いいけど何して遊ぶんだい?」

 

 遊びに誘ってくるので何をして遊ぶのつもりなのか聞くと、木更は首を傾げながら考えている。

 

「うーん」

 

「お人形あそび!!」

 

「お人形遊びか……。じゃあ木更の部屋に行こうか」

 

 お人形がある木更の部屋に行こうと言うと木更は膝を降りて手をつなぐよう促してきた。

 調子のいい韻を口ずさみながら先導する木更を苦笑しながら追いかける。

 

 

 

 

 白を基調とした部屋に入ると、木更は人形のあるところに走って取りに行った。

 

「お兄ちゃんはお父さん役ね、私はお母さん役」

 

「分かったよ、じゃあ遊ぼうか」

 

 

 

 それから人形遊びをしたり、絵本を読んだりしているうちに木更は疲れたのか頭があっちへこっちへゆらゆらしている。

 その様子を可愛く思いながら、木更の頭をゆっくりと膝の上に寝かせてあげた。するとそのまま気持ちよさそうに眠ってしまった。

 

 部屋の中とはいえ寒いので俺は毛布を掛けてあげたあと、ゆっくりとしたリズムで頭を撫でていた。

 

 

「まだまだ甘えたがりだなぁ。この子が本当に原作のような修羅になるとはとても考えられないよな……」

 

 これからの事を考えたとき木更が復讐に囚われないよう支えなければと決意を新たにした。

 




 義妹 木更が蓮太郎をどのように呼ぶのか。
 「お兄ちゃんで」でこの話を進めましたが、「お兄様」や「お兄」と呼ばせるのもどうかとも考えました。
 まぁ、もしかしたら要望や話の展開によっては変わることがありますのでその時を楽しみにしてください(笑)

読んでいただきありがとうございました。
感想をお待ちしております。

 7/22 修正

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