ブラック・ブレット 救いを求める者   作:桐ケ谷なつめ

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エア・ギア要素が出るまで時間がかかります。
申し訳ありません。


大戦前
第1話 転生後……7年経過


 私がこの世界に転生してすでに7年が経過した。

 この7年間は特にこれといったことはなく、日々周りの子供と一緒に遊んだり、その遊びの合間あいまで軽い筋トレを行う程度であった。

 弥勒菩薩にお願いした通りの体になっているのであれば、鍛えていけばどんどん強くなることもできると思われるが、まだ小さな子供が道場などに通っているわけでもないのに体を鍛えるのは周りから奇異の目で見られるのではないかと考えたのでそこまで行っていない。

 それよりもそろそろ木更が誕生するのではないかと心持浮かれながら日々を過ごしていた。

 そんなある朝、小学校に行く前にテレビを見ていると、「13歳で東大の入試問題を合格した」というニュースが流れていた。

 両親が共に「すごいわね」と感心している中、私はその中学生の名前を聞いて飲もうとしていた牛乳を吹き出してしまい母親に心配された。

 

 

 

_________

 

 

 なぜ私が驚いたのか。

 それはその中学生が「室戸 菫」であったからだ。

 彼女は原作において「四賢人」と呼ばれる世界トップの頭脳を誇る研究者であり、AGV試験薬や蓮太郎の最大の部位であった超バラニウムの義肢、義眼を開発した人であるからだ。

 また彼女は『新人類創造計画』の最高責任者であった。つまり彼女との交友が今後にどのような影響を与えるのかはうかがい知れないレベルであるということだ。

 

 しかし、今の私が彼女に接触するというのは難しい。

 原作のように被験者であったわけでもないため連絡の手段もないわけだ。

 

 ……まぁそれについてはおいおい方法を考えていくとしようと思う。

 

 それよりも最近の悩みが学校があまりにも退屈すぎてしまうということか。

 まあその時間は蓮太郎と同じように昆虫の生態を学ぶ時間や弥勒菩薩様から頂いた知識の活用方法の模索に充てるとしよう。

 

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 ある日、突然両親から東京に行くぞと言われ東京の大きな屋敷に連れてこられた。

 

 ここはどこだと考えていると両親が「天童の家だ」と言ってきた。

 

「蓮太郎、今日は天童の家に新しく娘さんが生まれたお祝いの席なんだよ」

 

「そうよ、それで私たちはそのパーティーに招待されたからここに来たってわけ。後で、その娘さんの顔を一緒に見に行きましょうね?」

 

 「はーい」と両親に答えながら私は全く別のことを考えていた。

 

「(ここが天童の家だとすると、生まれた娘ってのは木更の事か。弥勒菩薩様の言ったとおりになったな)」

 

 両親とともに食事をとりながら歩いていると覇気に溢れた老人が目についた。

 

「(あの顔は、本の挿絵で見た通りだよな。ということはあの老人が天童菊之丞、天童家の当主であり、後々の聖天子の懐刀か)」

 

 などと考えていると、菊之丞がこちらに向かって歩いてきた。

 

「本日はご招待いただきありがとうございます天童様。また、無事お孫さんがお生まれになったこと喜ばしく思います」

 

「うむ、よく来てくれた。今日は孫の誕生日ということもありそこまで堅苦しくする必要はない」

 

 と父と菊之丞の挨拶があり、そのまま二人は会話を続けていたのだが、ふとことらを見ると私の事が気になったのか話しかけてきた。

 

「ところで、その子供は二人の息子かね?」

 

「ええ、蓮太郎といいます。蓮太郎、挨拶なさい」

 

「里見蓮太郎です。初めまして、天童様」

 

「うむ、しっかりとあいさつのできるいい子ではないか。わしは天童菊之丞、天童家の当主をしておる」

 

 と言って菊之丞は私に手を差し出してきた。そして握手をすると、一瞬眉をひそめた後父との会話に戻っていった。

 私は特にすることもなくただぼーっと立っていると父に名前を呼ばれた。

 

「蓮太郎、天童様からご提案があるそうなんだが」

 

「何でしょう?」

 

「実はな、わしの孫はこれまで男ばかりでの女孫は初めてなのだ。それに、末の孫と言ってもその一つ上の兄とは年が一回り以上離れておってな。兄妹、仲良くなれるかが心配でな。そこで年がまだ近い君が間に入ってくれるとうまくいく気がするのだ」

 

「お話は分かりましたが、私がわざわざ東京まで出てくる用事がないのですが……」

 

「それに関しては、いい案があっての。先ほどお主と握手を交わしたとき、手に鍛えたあとが感じられた。おぬし。何かをやっているのではないか?あるいは何かを始めようとしているのではないか?」

 

 菊之丞のその指摘に何も言うことができず黙り込んでしまう。

 それを見た菊之丞は一息置くと改めて提案をしてきた。

 

「それで案というのは天童流の道場に通わないかということだ。助喜与師範の所に通うのを口実にすれば、孫に会いに来ることも不思議ではないだろう」

 

私にとっても思いがけない提案に少々高揚しながら、父に聞いてみた。

 

「お父さん、天童様の提案をお受けしたいと思うのですがどうでしょうか?」

 

「ふむ、天童流を学べるというのはとても名誉なことだ。だからお前がやりたいと思うなら通うことに反対はしないぞ」

 

 と許可を出してくれた。私はそれを聞いたうえで改めて菊之丞のお礼を言うと、菊之丞と父が後で細かな話をするということを告げて離れていった。

 しばらくして私たちは天童家を退出した。

 

 

 

 _________

 

 

 

 しばらくして天童家から助喜与師範の道場に来るようお伝えられた。

 天童流の道場は数えるほどの数しかなく、今回は東京の本宅にある道場に来るよう伝えられた。たぶん道場に行くついでに木更に挨拶させようとしているのだろう。

 一応、あの後も継続して筋トレを行っていたがこれで認められるかは正直わからない。原作の蓮太郎は天童流戦闘術の教えを受けていたが、何年修業したかはわからないが初段でしかなかった。そして、木更や和光の戦闘の描写を考えると卓越した身体能力が必要だと考えられる。弥勒菩薩様から頂いた力がどれほど有効かは分からないが、なるべく高い段位になれるよう頑張るとしよう。

 

 

 

 天童の本宅につくとすぐに道場に連れていかれた。

 道場の中では天童助喜与師範と思われる老人が一人いるだけであった。老人は私が目の前に座るまで身じろぎせず、目を閉じたままでいた。一見するととてもか細い老人であるのだが、その体から感じられる圧迫感は先日の菊之丞以上に強く感じられた。

 

「初めまして。私は里見蓮太郎といいます」

 

「お主の事は菊之丞から聞いておる。しかし、天童流はあまり外に教えるような武術ではないのでな。教わる資格があるか試させてもらう」

 

 そういうと助喜与師範から感じられた威圧感がさらに強まり、細いはずの体が一回り以上大きくなったように感じられた。私は危うく気絶しそうになるほどであった。

 一瞬がとても長く感じられ、次の瞬間には体にかかっていた重圧が消え去り、私の体から思い出したかのように汗が流れだし、私はただただ息を整えることしかできなかった。

 

「ふむ、耐えるか……。教わる資格は十分とみるべきかな」

 

「今一つ、おぬしは何のために天童流を学ぼうと思った。菊之丞もこの場にはおらん、そのような義理立てに関わらずおぬしの本心を答えよ」

 

 助喜与師範は私の事を見つめながら本音を言えと言ってくる。

 その眼は嘘は見逃さんと言っているようで、私は原作の事については触れず、力を持たねばならない理由を正直に目的を話すことにした。

 

「私には目的があります。子供が理不尽に振り回されず、笑って過ごせる場所を作り出すことです。しかし、世の中にはどうにもならないことや危険な中を潜り抜けなければならないこともあると思うのです。そうしたときに頼れる力を一つでも身に着けておきたいと考え、この度の天童流指南をお受けしたいと思ったのです」

 

 助喜与師範は私の話を聞きながら考え込むように沈黙を保っていた。

 

 

 

 

「いいだろう、ぬしが天童流を習うことを認めよう」

 

 と言って助喜与師範は今後の事を簡単に話、退出するよう言った。

 この時、助喜与師範の事は『師範』と呼ぶよう言われた。

 道場を退出した後、私は先日顔を見ることができなかった木更の所に連れていかれ、そこで木更の顔を見ることができた。その顔はとても無垢であり、まだ憎しみにとらわれることなくとてもとても可愛いものであった。

 部屋には木更の父親と母親がおり、「木更と仲良くしてあげてね」と声をかけられた。

 これ以降、私は平日に2日、土日は泊りがけで天童流の稽古に打ち込んでいくようになる。そして、木更のお守なども行っていくようになる。

 

 

 

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助喜与side

 

 

 菊之丞に頼まれていた坊主が来るのは今日であったか…。

 なんでも木更の兄代わりに道場に来させたいと言っておったが、中途半端に学ぼうと考えているのであれば拒否することもやぶさかではないが…。

 菊之丞曰く、初めて私と対面した時にこちらをまっすぐに見返してきたとのことだったか。子供を一人見極めてくれとぬかしおるからにわざわざ来たが、それほどの子供であるのかのう…。まぁそれは着てのお楽しみとしておくか。

 

 

 

 

 

 あの子供は何者じゃ?

 菊之丞の言っていたことを踏まえて、道場の中で待っておるときに常人なら気絶するような威圧を放っていたというのに、まったく怯えることなくわしの前に座りよった。

 しかもその後に放った威圧に対してさえ多少息を乱す程度とは。

 その時は「資格あり」などと申したが、精神の強さに関してあの子供はすでに天童流に入門しているもの半数より上であろう。

 加えて、あやつの申しておった理由も不可解じゃ。

 まだ7つと他の子供と交って遊ぶような子供が、「子供が笑って過ごせる場所を作る」じゃと。そのような考えがいかようにして生まれようか…。

 菊之丞の言っていたことは正しいかもしれん、あの子供は何かを秘めている。それが天童にとって良いものであるか、悪いものであるかは分からんが、あの子供の目は澄み切っておった。その目を曇らせないようにすることがわしの使命なのかもしれん…。

 

 

 ひとまず菊之丞には、あやつに問題はないと伝えておくとしよう。

 そして、あやつ本人には道場に通い始め、少ししたことに改めて何者であるのかを問いただすとしよう。

 




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