今、三対一の戦いが始まろうとしていた。
「――『禁手』、『双覇の聖魔剣』。聖と魔を有する剣の力、その身で受け止めるといい」
「私達三人で一人と戦う……リンチね……」
確かにこれはリンチである、イカレ神父はこの三人にボコられる以外の道は無いだろう。
「ぺトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
ゼノヴィアは言霊を発し始め、空間が歪み始める。そしてゼノヴィアは歪みの中心に手を入れ一本の聖剣を引き出す。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。――――デュランダル!」
「デュランダルだと!」
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!」
バルパーとコカビエルは流石に予想外だったのか驚きを隠しきれていなかった。
「残念。私はもともと聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたにすぎない」
ゼノヴィアがデュランダルを構える、今のゼノヴィアはエクスカリバーとデュランダルの二刀流だ。
「バカな!私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達していないぞ!?……まさか和那という奴の仕業か!」
「和那は関係ない、それにヴァチカンでも人工的なデュランダル使いは創れていない」
「では、なぜだ!」
「イリナたち現存する人工聖剣使いと違って私は数少ない天然ものだ」
ゼノヴィアの言葉にバルパーは絶句する、まさか天然ものの聖剣使いが目の前に現れるとは思わなかったようだ。
「デュランダルは想像を遥かに超える暴君でね。触れたものは何でもかんでも斬り刻む。和那に鍛えられるまで私の言うこともろくに聞かなかったんでな」
「そんなのアリですかぁぁぁ!?ここにきてのチョー展開!クソッタレのクソビッチが!そんな設定いらねぇんだよォォォォ!」
イカレ神父は『天閃の聖剣』の能力を使い神速で優奈に襲いかかる。だが、イカレ神父の殺気はわかりやすく、全ての斬撃を優奈に防がれる。
「なんでさ!なんで当たらねぇぇぇぇぇぇッッ!無敵の聖剣さまなんだろぉぉ!昔から最強伝説を語り継がれてきたじゃないのかよぉぉぉぉ!」
「確かにエクスカリバーは最強だと思うよ。でも、そのエクスカリバーは最強じゃない!」
「このエクスカリバーが最強じゃないだとぉぉぉぉ!なら!なら、こいつも追加だ!防いで見せろよぉぉぉぉ!!」
聖剣の先端消える。これは『透明の聖剣』の力だ。刀身を透明にさせる能力。さっき言った通りイカレ神父の殺気はわかりやすい、今度はイリナにいとも簡単に防がれる。
「それに私達は和那君に鍛えられたの、貴方の斬撃なんか止まって見えるわよ!」
「ふざけんじゃねえぞぉぉぉ!人間が聖剣さまを超えるわきゃねえんだよぉぉぉぉぉ!!」
イカレ神父の斬撃は優奈とイリナに防がれ頭に血が上りゼノヴィアの事を忘れていた。
「私を忘れてもらっては困るぞ」
「アァン」
イカレ神父は声のした方に視線を向ける、そこにデュランダルで斬りかかろうとしているゼノヴィアがいた。
イカレ神父は反射的にゼノヴィアの一撃を防ぐが……
ガギィィィィン!
たった一撃でエクスカリバーが防いだ箇所から先が砕け散った。
「マジかよマジかよマジですか!伝説のエクスカリバーちゃんが木っ端微塵の四散霧散かよっ!酷い!これは酷すぎる!かぁーっ!折れたものを再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか?人間の浅はかさ、教会の愚かさ、いろんなものを垣間見て俺さまは成長していきたい!」
イカレ神父が成長すれば少しはマシになるのだろうか?
「イリナ、行くよ!」
「分かってるわ」
優奈とイリナは叫んでいるイカレ神父に『聖魔剣』と『擬態の聖剣』の二本を降り下ろす。
イカレ神父は砕けなかった部分で防ごうとするが。
バギィィィン。
儚い金属音が鳴り響き、『聖剣エクスカリバー』は核を残して砕け散った。そして優奈とイリナは聖剣を砕いた勢いのまま優奈は右肩口から左横腹まで、イリナは左肩口から右横腹までフリードを斬った。
「せ、『聖魔剣』だと……?あり得ない……。反発しあうふたつの要素がまじり合うなんてことはあるはずがないのだ……」
バルパーは『聖魔剣』を見て表情を強張らせている。おそらくこのままいけば『聖書の神』の不在に気づいてしまうだろう。
「……そうか!わかったぞ!聖と魔、それらをつかさどる存在のバランスが大きく崩れているとするならば説明はつく!つまり、魔王だけでなく、神も――」
『オラァッ!』
ズンッ!
バルパーは誰かの叫び声の後に空から降ってきた肉塊に潰された。
「「「……………………………………え?」」」
優奈、イリナ、ゼノヴィアの三人は何が起きたのか理解が出来なかった。
そして、少し離れた場所から声が聞こえた。
『あれ?バルパーの気配が消えた?もしかして潰した?』
今の肉塊は和那が飛ばした物だった、なぜこうなったかは少し遡る。
三人がイカレ神父と戦っているとき和那は残り三十匹程のケルベロスを『バインド』を使い一ヶ所に集めていた。
「そんじゃ、殴るとしますか」
和那は一ヶ所に集めたケルベロスに近づいて行く、そして……
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
ケルベロスに光速でラッシュをしていく、それによりケルベロスはドンドン潰れていく。だが和那は潰れていくとケルベロスの向きを変え潰れていない箇所にまたラッシュしていく。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
これを繰り返していきケルベロスは球体の肉塊になっていったのだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
最後の一撃でケルベロスだった物を殴り飛ばした。そして、殴り飛ばされた肉塊はバルパーの方へ飛んでいき、バルパーを潰したのだ。
バルパーのこの死はある意味不慮の死では無かろうか、この死に方は和那達は予想していなかっただろう。
これがバルパーの死の全貌である!!
………………………ある意味しょうもないε=( ̄。 ̄ )
俺がバルパーを間違って潰してしまったようだ。…………気まずいな…………
い、今はこの空気をなんとかしよう。
「あとはお前だけだぜ、どうする?」
俺はコカビエルに喋りかける事にした。
「ハハハ!確かにお前達は強い、魔王の妹だと意気がっている小娘の数百倍な。だが、まだ俺の方が強い――――限界まで赤龍帝の力を上げて譲渡してもらへ」
「必要ないさ、お前の相手は俺がするんだ」
倍加の力は必要ない、むしろ倍加したらこの結界が壊れる。
「慢心も程々にしないと早死にするぞ」
少なくともこの世界に俺よりも強い奴は存在しないから問題ない。
「しかし、仕えるべき主を亡くしてまで、おまえたち神の信者と悪魔はよく戦う」
「!――――!――――!――――!――――!」
「どういうことだよ!」
まさか、コカビエルのやつ、あれを言うきか!
「フハハ、フハハハハハハハハハハハハ!そうだったな!そうだった!おまえたち下々まであれの真相は
語られていなかったな!なら、ついでだ。教えてやるよ。「よせ!喋んじゃねぇ!」貴様は知っているのか、だが、他のやつらは知らないだろうから喋ってやる。先の三つどもえ戦争で四大魔王だけじゃなく、神も死んだのさ」
クソッ、ケルベロスを倒してからすぐにコカビエルを潰せばよかった。
「知らなくて当然だ。神が死んだなどと、誰に言える?人間は神がいなくては心の均衡と定めた法も機能しない不完全な者の集まりだぞ?我ら堕天使、悪魔さえも下々にそれらを教えるわけにはいかなかった。どこから神が死んだと漏れるかわかったものじゃないからな。三大勢力でもこの真相を知ってるのはトップと一部の者たちだけだ。先ほどバルパーは気づき、貴様は知ってたようだがな。ミカエルたちとも交流があるようだし知っていても不思議ではないか」
「……ウソだ。……ウソだ」
「……和那君、……本当なの?……主は死んでいるの?」
「……主がいないのですか?主は……死んでいる?では、私たちに与えられる愛は……」
「そうだ。神の守護、愛がなくて当然なんだよ。神はすでにいないのだからな。ミカエルはよくやっている。神の代わりをして天使と人間をまとめているのだからな。まあ、神が使用していた『システム』が機能していれば、神への祈りも祝福も悪霊祓いもある程度動作はする。――ただ、神がいる頃に比べ、切られる信徒の数が格段に増えたがね。そこの『聖魔剣』の小娘が『聖魔剣』を創りだせたのも神と魔王のバランスが崩れているからだ。本来なら、聖と魔は混じり合わない。聖と魔のパワーバランスを司る神と魔王がいなくなれば、様々なところで特異な現象も起きる」
アーシア達の精神が危ない!俺はアーシア、イリナ、ゼノヴィアの三人を一ヶ所に集め、抱き締めた。
「……ごめん、神が亡くなってることを知ってたてのに……ごめん」
「……和那さん……」
「……和那君……」
「……和那……」
「俺は戦争を始める、これを機に!おまえたちの首を土産に!俺だけでもあのときの続きをしてやる!我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せ付けてやる!」
この場で喋るつもりは無かったけど今のアーシア達を見てると我慢出来ねぇ。
俺は抱き締めた状態から翼を出して翼も使ってさらに抱き締める。
「……金色の翼……」
「……これって、いったい……」
「……和那は天使だったのか?……」
「……俺の正体は「貴様何者だ!貴様から感じる力は間違いなく神のもの、それも死んだ神とは比べ物にならない程の力!」……」
なんで喋るのを邪魔すんだよ。
「神の愛が欲しいなら俺が愛してやる、この世界を創った俺が三人を愛する」
「「「……この世界を創った……」」」
「少し待ってろ、あいつを潰してくる」
俺はコカビエルの方に向き直る。
「この世界を創っただと……あり得ん、この世界を創ったとされる神はおとぎ話のはずだ!」
「ああ、俺はどの勢力や教会でもおとぎ話さ。だが、俺はこうしてこの世界に存在する!俺がこの世界を創った『原初の神フィアナ』だ!」
「「「この世界を創った神さま……」」」
「和那くんがこの世界を創った……僕はとんでもない人に鍛えられたんだ」
「!――――!――――!――――!」
「コカビエル!俺はテメェを潰す!」
俺を怒らせたやつは誰だろうが潰す!
「落ちろ、コカビエル!」
和那は一瞬のうちにコカビエルの頭上に移動し、コカビエルを蹴り落とした。
「グガァァァァアア!」
ドゴォォォォォォォォンッッ!
コカビエルが落ちた場所はクレーターが出来ており、土煙でコカビエルの姿は見ることが出来ないほどだった。
「戻ってこいよ、コカビエル、今の一撃じゃ死なないはずだ」
「クフフ、クハハハハ!いいぞこの世界を創ったとされる神、まさかそんなやつと戦えるとは思いもよらなかった!」
コカビエルは頭から血を出しながら喜んでいた、戦闘狂め。
「この世界を創った貴様を俺が倒せば俺がこの世界で最強だ!」
コカビエルは喋りながら光の槍を持ち、和那に向かっていく。
「テメェが最強か……残念だがテメェは最強には馴れねえ、テメェは最強の器じゃねぇしテメェはここで俺が潰す!」
和那は今度は一瞬でコカビエルの背後に回り込み、コカビエルの翼を根本から全て掴む。
「何をする気だ!まさか!」
「そのまさかさ!」
「よせ!やめろおぉぉぉ!」
和那はコカビエルの翼を掴んだ状態でコカビエルの背中を蹴る。
ブチイィィィィィィィッッ!!
「ガアァァァァァァァ!」
全ての翼を失ったコカビエルは地面に落ちていく。和那は落ちていくコカビエルに『ツインバスターライフル』を空間から出し、コカビエルに銃口を向けた。
キイィィィィィィィィィ
銃口に魔力、神力の二つの力を集束していく。神力も集束させているため前回よりも明るいオレンジ色になっている。
「テメェは消え失せろ!」
和那は『ツインバスターライフル』のトリガーを引く。
ギュオォォォォォォォォォォォォォッッ!!
「グガァァァァアア!!」
和那の砲撃が終わり地面には巨大なクレーターが出来ていた。コカビエルが蹴り落とされた時に出来たクレーターは深さは十メートル程だったが、今の砲撃で出来たクレーターはどれだけの深さがあるかわからない程に深かった。
「…………クレーター、残したままじゃヤバいよな」
俺はクレーターが出来た場所の時間をクレーターが出来る前まで戻した。
……アーシア達を連れて帰るか。俺の正体も詳しく説明しないといけないし。そして、俺の『神使』になるかどうかも聞かないとな……
ピシ!ピシピシ!
ん?ソーナ達の張った結界(和那が力を使う為に内側からさらに強化した結界)が破られる!
パリイィィィィィィィィィィンン
「和那ーーーーーーーーー♪」
「ヴァーリ!」
結界を破ってやって来たのはヴァーリだった。しかも『禁手』状態でだ。そして今のヴァーリのスピードは音速以上光速以下だろう、そしてヴァーリはそのスピードのまま俺に抱き着いてきた。
だが、不意打ち気味で尚且つそんなスピードで来られるとどうなるか……
「グフオォォォォォ」
ドゴォォォォォォォォン
当然俺はヴァーリと一緒に地面に落ちた。
「あー、久し振りだ和那の匂い、久し振りに感じる和那の温もり、和那!このままベットに直行しよう!」
……あ、ヤバい、今のヴァーリの目は黒歌と白音の二人が発情期に入った時と同じ目をしてる。俺にはしなければいけない事があるのに。
…………話を上手く逸らさないと!
「なんでヴァーリはここにいるんだ?」
「クンクン…クンカクンカ…え?アザゼルにコカビエルを回収してきてくれって頼まれたからだけど?」
……今、喋る前になんか変なことしてなかったか?……気にしたらダメだな。それにコカビエルの回収か、肉体は一切残ってないな。
「まあ、『和那なら消し飛ばすだろうからコカビエルの羽を回収してきてくれ』って言われたけど」
うん、消し飛ばした。
「それでね、コカビエルの羽を回収したら数日間、和那の傍にいてもいいって!だから和那、数日間朝から晩まで一緒にいよ!」
……ああ、ヴァーリのこのテンション、さっきまでの重苦しい空気が吹き飛んだな。
「サンキュウな、ヴァーリ」
「え?なにが?」
「なんでもねえよ」
俺はヴァーリと一緒にアーシア達がいる場所に向かって行き、駒王学園に来たメンバーにヴァーリが加わって家に帰った。
ついでにコカビエルの羽は家に帰ってからアザゼルが寝るのに使ってるベットの上に送っといた。
……………なんか忘れてる気がする。
「!――――!――――!――――!」
ま、いいか、忘れるって事は大したことないってことだしな。
思い浮かんだボツネタ
俺が正体を喋った時に背中に衝撃が走った。衝撃っつても全然痛く無いんだけどな。問題は俺がアーシア達を抱き締めてる時に攻撃しやがったんだよ!アーシア達に当たったらどうしてくれんだよ!
「あ?誰だ今俺を攻撃したやつは」
「部長!何してるんですか!相手は和那ですよ!」
「黙りなさい!私の領土に天敵である神がいるのよ!消し飛ばすのが当たり前でしょ!」
クズが殺りやがったのか、しかしなんで喋れんだ?『言葉の力』を創ってからそんなに建ってないから途中で効力が切れたのか?
「クズがなにしやがる」
「私がクズですって!」
「クズにクズって言って何が悪い。『俺とコカビエルとクズ以外は動くな』そして『クズの両手潰れろ』」
グチャアァァァァァ
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
まずはクズの両手を潰す、クズは痛みでのたうち回る。
「次はそうだな『両足潰れて裂けろ』」
グチャアァァァァァ
ブチブチブチブチブチブチブチ
「がっ!っっっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
クズの両足を潰し両足を裂かせる、のたうち回ってたのから痙攣しはじめた。
そして俺は神力を両手に籠め光の槍を作る、太さは握り拳一つ分くらいだ。そしてそれをクズの腹に一本。
ズンッ!
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
神力で創ったんだ、天使や堕天使が作る光の槍とは威力も貫かれた時の痛みも桁違いだ。
そして二本目は胸に刺した、胸と言っても心臓には刺していない、心臓からはずらしてある。
「ぎいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「俺がコカビエルを潰した後にまだ生きてたら傷を治してやるよ」
俺はクズをほっといてコカビエルに向かって行った。
俺がコカビエルを潰し、戻ってくるとクズの体の周りは血で真っ赤に染まっていた。顔は涙やら唾やら鼻水やらで酷く汚れている。表情は絶望仕切った顔をしてるし。髪は神力の影響かそれとも血が無くなったからかはたまた死の恐怖からか真っ白になっている。股の方に視線を送ると血とは違う液体が出ていた。おそらく痛みや恐怖のあまり漏らしたんだろう。
そして結論はクズは死んでいた。俺はクズの死体はそのままにしてこの一部始終を見ていた者達の記憶を消した。
ボツネタ終了。
このボツネタ、書いてる時に真っ先に思い浮かんだ話なんですよね。それでこの内容でいくと後からの話が駄目になるなと思い止めました。