どうやら俺は死神から魔法使いにジョブチェンジ()したらしい 作:サメ
グリンゴッツ、と呼ばれたその銀行は自分よりもだいぶサイズの小さい鬼、ゴブリンがあちこちを彷徨く場所だった。
「お、おい!ここって本当に銀行なのか?」
「なーに言っとるんだ!さっきも言っただろう!ここは世界で2番目、ホグワーツの次に安全な場所だ!」
世界で2番目かよ。んでもって1番はホグワーツなのかよ。
(やっぱぶっ飛んでるなー魔法界。)
あっちの世界も大概可笑しかったがこっちもこっちで可笑しいぜ…。
「ラグナ!はよ行くぞ!」
「へーい。」
のっしのっしと歩き出したハグリットの後に続いてトロッコに乗る。
ガッタガタだけど大丈夫かこれ?
(というか何故トロッコ…)
ゴブリンを先頭に三人が狭いトロッコに乗り込むと、ガタン!と独りでに動き出した。
「うわっ?!」
急激に加速したトロッコは物凄い勢いで線路を進んでいく。
(こんなもんカグツチにも無かったぞ…!! )
バサバサと風に靡く長ったらしい髪を押さえつけて周りを見る。左右には無数の大きな扉が所狭しと並んでいて、時々ゴブリンと客らしき魔法使いの姿も見える。
「着きました。ラグナ・ポッター様の金庫はこちらです。」
急ブレーキで止まったトロッコからゴブリンが降りる。その後に続けば目の前には周りとそう変わらない大きな扉。
「ここは鍵と私達の手でしか開きません。」
そう言って鍵を刺した後、ゴブリンはスウッと真ん中に指を滑らせた。
すると扉の仕掛けがガチャガチャと動き出し、入口を開けた。
「さぁ、開きました。」
開いた扉に恐る恐る入ると、そこには金、金、金。
そう、金貨の山が築かれていた。
「な、え?は??」
「それはお前さんの両親がお前さんに残したものだ。つまり全部ラグナ、お前さんの物だ。」
「え、えええ?!」
そっと金貨の山に手を出すと、金貨に混じって銅貨、銀貨、宝石の装飾品なんかも混じっていた。
(と、とりあえず必要分だけとっとこ…)
ゴブリンに差し出された財布代わりの袋に金貨を突っ込んだ。
(こんだけあればいいだろ…)
適当に中身を数えれば軽く50枚は超えていそうだ。
「そんだけでええか?」
「大丈夫!!ぜんっぜん大丈夫だから!!!!」
こんだけ持ってると逆に恐怖の沙汰だ。
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「あー、ちーっと野暮用があるから待ってろ。」
トロッコに乗ったハグリットはゴブリンに一本の鍵を渡すと行き先を耳打ちした。
ゴブリンは頷いてトロッコを入口とは逆方向に走らせる。
相変わらず五月蝿いトロッコに揺られて奥の方までやってきた。
「じゃ、お前さんはここで待ってろ。」
ハグリットは開いた扉に入り、何やら小さい小包を一つだけ持ってすぐに戻ってきた。
「ハグリット、なんだそれ。」
「校長からの頼まれもんだ。お前さんにゃ関係ないよ。」
「ふーん。あっそ。」
今度こそゴブリンは入口に向かってトロッコを走らせた。
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「あーーー地上だ!!」
地下からの脱出をした目に太陽が眩しいぜ!
「んじゃ、その金でローブと教材、杖を買わんとな。」
「そんなにあんの?」
「杖は後の方がええだろ。まずはローブからだ。時間がかかるからな。」
ハグリットは服屋らしき所に向かって歩き始めた。慌てて続けば、服屋にはすぐに辿りついた。
「マダム・マルキンの服屋だ。まずはホグワーツの制服を作らにゃどうも出来んからな。」
軽いベルの音と共にドアが開く。中には如何にも魔法使い、といった感じの服が掛けられている。
「マダム!服の仕立てを頼む!」
ハグリットが奥に呼びかければ、急いだ様子で女性の魔法使いが出てきた。
私を見た途端にメジャーやら針やらを浮かせて寸法を始めてギョッとしたが固まっているうちに全部終わったらしい。
「じゃあ、ちょっとだけそこで待ってて。」
測り終わるや否や椅子に放置された。隣にはブロンドの男子。
「やぁ、君もホグワーツかい?」
「ひゃ!」
びびったあああああ!
めっちゃびびったあああああ!
急に話しかけてくんな、!びびるだろ!!
変な声出たし!!
「え、あ、うん。」
「(ひゃ!って…)僕の名前はドラコ。ドラコ・マルフォイ。君は?」
「あ、えっと…ラグナ・ポッター、です…」
「ポッター…?君がラグナ・ポッター?生き残った女の子?」
「あーなんかそんな感じで呼ばれてるらしい、うん。」
「驚いた…あの生き残った女の子がこんなに可愛いなんてね。」
ナチュラルに口説かれた気がしなくもないけどそのへんはヨーロッパ男ってことで。カグラかよこいつ。
「…マルフォイもホグワーツ?」
「ドラコで構わないさ。そう、ホグワーツだよ。父は隣で教科書を買っているはずだし、母は杖を見にに行ってる。」
「そうなのか…杖ねぇ。」
「まだ買ってないのかい?」
「金おろして直でここ来たから。まずは服って。」
「ああ、そういう事か。」
「ドラコ!杖を買うぞ!」
「わかったよ!…じゃあね、ラグナ。」
「お、おう…」
あっという間にドラコは出て行った。
何だったんだあいつ。
「ポッターさん、三時間後に来てください。」
「あ、はい。」
再び魔法使いが出てきて紙を渡した。引換券らしい。
「じゃあこの時間に教科書と杖買うぞ。こっちだ。」
ハグリットの後ろをついていくと、大きな本屋の前でストップした。
「リストにある本を買うぞ。えーと、まずは…?」
ハグリットに本の場所わかんのか?
人の事言えねぇけど。
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あれから三時間後。教科書やら鍋やらの必需品を買い揃えて服を受け取った。
荷物を(ハグリットが)抱えて入ったのは箱が並ぶ店。
「オリバンダー。」
(オリバンダー?)
ハグリットは杖を磨く爺さん、オリバンダーに話しかけた。
「おおハグリット、久しぶりだね。」
「あぁ。久しぶりだな。早速だが杖を頼む。」
「なんと、これはこれは…生き残った女の子…」
私を見たオリバンダーは機敏な動きで長方形の箱を幾つか抱えてきた。
「まずはこれ。サクラの木、ドラゴンの琴線、よくしなる、27センチ…」
ここから地獄の杖選びタイムが始まった。
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ドォン!!!!
「…これもダメっぽいぜー…」
「………………やはりアレを出す他ないか。」
店に入って数十分。
10本目の杖も爆発を起こした。杖怖い。
「…これなら恐らく大丈夫だ。26cm、柊の木、不死鳥の尾羽、
良質でしなやか…」
差し出された杖を握ると、それまでとは全く違う暖かい感覚。
杖の先に柔らかい光が灯り、杖が荒らした店内を元通りに片付けていく。
「そうか、やはりこれか…あまり出したくはなかったが。杖は選ぶのだな。」
なにやらブツブツ言っているオリバンダーに金貨と銀貨を支払って店を出た。
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(しっかし、いろんな店があるな。)
食料品店は勿論本屋、薬草屋、服屋なんかがぎゅうぎゅうに並んでいる。
(なんか面白そうなの……お?)
ふと見つけたのはペットショップ。
その店頭に並べられていた1羽の真っ白いフクロウが私の目に飛び込んできた。
「どうしたラグナ。…お、フクロウか。フクロウをペットにすると便利だぞ。手紙やら小包を運んでくれるからな。」
ハグリットはフクロウを見ると、その籠を掴んで店に入って行った。
私がポカン、としているとその籠を私に差し出してきた。
「俺からのプレゼントだ、ラグナ。名前も決めてやれ。」
「うえ?!」
確かにフクロウに惹かれたのは認めるがハグリットよ、即決過ぎやしないか。
しかし受け取らないのも気が引けるので籠をそっと受け取った。案外大人しいフクロウで、その白い顔でじっとこちらを見る。
「これからよろしくな…ヘドウィグ。」
ヘドウィグ。パッと浮かんだその名前をお気に召したようで、機嫌よさげにホゥ、と鳴いた。
亀ってよりかハシビロコウ更新だなって思った午前1時。
思い出した頃にダラダラ書きます。(土下座)