本気制限決闘島   作:阿音

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0話の注意書きを必ず読んでからお読みください。
読まずに気分などを害されても自己責任でお願いします。
あと、今回前書きが長いので興味が無い方はスルースクロールしてください。

凄まじく遅くなってしまって申し訳無い。
理由は……また事故りました、はい、車の左折に巻き込まれてスクーターで直撃しました。
幸い怪我は擦り傷や打撲程度で済みましたが、スクーターさんがぶっ壊れました。
なので移動時間が4倍8倍以上に増え、元々時間が少なかったのに更に減って……
知り合いからは厄年じゃないか、幸薄そうな顔などと言われて散々……
注意していても、やっぱり事故って起こるんですね……まだ体中が痛いです。
あと風邪にもなりました、現在進行形で今ですが頭が痛いわ関節が痛いわで……
以上で言い訳終了、あと今回も妙に長くなってしまいましたね……前話の5割増しです。

さて、前回登場した咲良結美についてですが。
感想では賛否がそれなりに分かれて……否がやや多めでしょうか?
主に彼女の発言や性格が原因でしょうが、登場自体に否定の人もそれなり
否定意見はやや多かったですが、彼女に対しての反応は大体予想通りです。

感想を読み、どうしようか悩んだ事がいくつか。
1つはこの作品が本気禁止制限決闘のリメイク扱いについて。
もう1つは本気禁止制限決闘を読んでいない人をどうすれば良いのか。
最後は咲良結美の今後の扱いという3点です。

1つ目に関しては割とすぐに決めました。
リメイク扱いですが、完全に別作品として扱おうと思います。
平行世界、パラレルワールドの扱いでリメイクではなく、全く別の堅守瑞貴とします。
リメイク前を読んだ方なら理解できると思いますが
旧作でGXだけではなく5D`sも書いていました、その時に別世界の瑞貴が出てきましたが、そんな感じです。
まぁつまりしようと思えば旧作GX、旧作5D`s、新作GX
この3人の瑞貴が同時に会話するというカオスも……まぁ現在その予定は有りませんけど。
結論を簡単に纏めると、旧作も関係する別作品として見てくださいという事でしょうか?
ややややこしいですが、ご了承ください。

2つ目の旧作を読んでいない方々への対応ですが
こちらに関しては彼女、咲良結美に解決していただくつもりです。
旧作で起こった事について、原作アニメとの違いと旧作の事件を説明していただこうと思います。
なお、旧作がアニメで放送していたという設定に変えては?
という意見もいただきましたが、その場合チューナーがシンクロモンスターの扱いに困ります。
GX時代にもシンクロモンスターを出したので、その繋がりなどをどう表現説明するべきか……
主に世界に1枚しか無いスターダスト・ドラゴンが登場している点など
その点が大きな問題だったので、これは難しいと思い諦めました。
提案してくださった方には、折角意見を戴いたのに諦めてしまって申し訳ありません。

最後の咲良結美の今後の扱いに関してですが。
彼女は前述の通り、旧作の内容の違いを説明していただきます。
作者自身もどう扱うか若干悩んでいた点が有ったのでこれで扱いを決められました。
皆さんの感想、意見のおかげです、ありがとうございます。

長くなってしまって申し訳ありません。
あ、それと今回はモンスターの容姿や戦闘描写をそれなりにしました。
これは……続けていくべき? それとも別の事に力を入れるべき?
もしくは容姿戦闘描写を続け、決闘(デュエル)内容やそれ以外にも頑張るべき?
……最後ですよね、頑張ろうと思います。


3話【女子寮の事件】

私は遊戯王には元々興味が無かった。

二次小説が好きで、次は何を読もうかと探していた時

偶然、本当に偶然あの小説を見つけた。

 

ルールはよく分からなかった、でも圧倒的な様子に何か反則をしているのだと思った。

気になってルールを調べた、特に反則はしていなかった事に気付いた。

それは凄い事だと、純粋に驚いた時も有る……だけど、それだけ

序盤は気にする程でもなかった、だけど段々と酷い行動ばかりする事が気になってきた

もうダメだと、途中から見ていられなくなってしまった。

 

だけど、遊戯王という作品は好みになった。

アニメも観たし、カードも沢山集めるぐらいには好きになった。

大会には……人前に出るのが恥ずかしくて、出たかったけど出られなかった。

 

様々な事を考えている内に、あの酷い行動をする人に勝つにはどうすれば良いのか考えた

嫌っているリセットカード、全体破壊、1ターンキル……いくらでも手段は浮かぶ。

でも……それで勝っても意味が有るのか疑問が出てくる

納得させられる勝ち方をしなければ、多分意味が無いのだろう、そう思った。

 

あの世界で、ルールで、自分の持つカードで……

そして決めた、使うデッキは【超魔神イド】を中心としたデッキ。

どんなデッキが相手でも、このデッキならまともに戦えると思う

高い攻撃力が相手でも、破壊してしまえば怖くないから。

実際はどうなのか、対人戦は殆ど経験が無いから分からないけど。

 

デッキが完成し、寝ると……知らない場所で目が覚めた。

どういう事なのか訳が解らない、だけど部屋を色々と見て気付いた

机の上に置いてあった決闘盤(デュエルディスク)……遊戯王の世界に来たのだと。

 

体は私のまま、だけど僅かに若くなっていた……元の年齢と僅か数歳違いだろうか?

自分のデッキを確認してみる、すると昨夜作ったデッキだった。

だけど同時に、全く知らないカードが落ちていた……アニメや漫画だけのオリジナルカード

他にも私が元々持っていないカード、元々持っていたカードも含めて沢山のカードが有った。

私のデッキの為だけに用意されたとしか思えないカード達、私はすぐにデッキを編集し始めた。

 

シンクロモンスターカード、エクシーズモンスターカード、チューナーモンスターカード

時代を確認してみたけど、どれもこれらのカードは存在していなかった。

私だけが使えるカード、嬉しい誤算だけど、使っても騒ぎにしかならない気がするから使えない

仕方無く、私はサイドデッキ用として、未来のカードをあまり使わない事に決めた。

 

この世界を調べている時、カードオークションを発見した。

有るはずの無い、この時代に無いカードがとても高額で取引されている

これを見た瞬間、誰か私以外に同じような状態になった人が存在している事に気付いた。

会えるのなら会って、お互いに状況を確認したいけど……なんとなく嫌な予感がしたから止めた。

 

デュエル・アカデミア……私はそこまで知識は無いけど、入ってみたいと思った。

アニメでも知っている場所だし、この体の持ち主も入ろうと受験していたみたいだし

いつ元の体に戻るか分からないし、私が代わりに頑張ってみよう……そう決めた。

 

筆記試験は……あまり良くない、31番

実技試験だけど、どんなデッキを使えばいいのか悩む。

一応、手加減したデッキを使えばいいのかしら?

 

【超魔神イド】のデッキは確定だけど、デッキを全体的に加減しておく

これぐらいしないとこの世界では強すぎるから、まだまともなデッキに……

 

『受験番号2番、堅守瑞貴さん

4番の決闘場(デュエルフィールド)に移動してください』

 

……え?

 

聞き覚えの有る名前に釣られ、決闘場(デュエルフィールド)を見る。

姿は初めて見るけど、名前からしてほぼ確定……後は持っているカード。

 

使われたカードはジャイアントウィルス、ガード・ブロック

メカウサー、転生の予言、リターン・ソウル、ナチュル・ビーンズ、ヴィシャス・クロー

くず鉄のかかし、ガード・ヘッジ、火の粉……堅守瑞貴以外に有り得ない。

 

私が過去読んだ二次小説内に入り込んだ?

詳しく読んでないから記憶違いかもしれないけど、対戦内容が違う気がする。

だけど、彼は確実に堅守瑞貴……きっとみんなに酷い事をする!

使うデッキはあまり覚えていないけど、彼のした酷い行動はよく覚えている。

 

彼がここに居るのなら、ここは確実に遊戯王GXの世界。

またあんな酷い事をするのかと思うと……放置なんてできない!

アニメのキャラ達にあんな事させない為にも、絶対に追い出さないと!

 

………………

…………

……

 

学園に向かう時に乗った大型ヘリ

その途中、堅守瑞貴は目を閉じて黙ったまま……何をしてるのかしら?

 

堅守瑞貴に話しかける男子……アニメキャラの三沢大地

だけど堅守瑞貴は彼の言葉を切り捨て、馬鹿にする。

次に話しかけたのは遊戯王GXの主人公である遊城十代

凄く適当にあしらう姿に、どうしても納得できない。

 

アニメキャラと会って感動とか、そういうのは無いのかしら?

実技試験の時、古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)を倒した十代の姿に凄く感激した

今も話しかけたかったけど、あまり機嫌が良く無さそうだし諦めた。

 

入学式、真面目に校長の話を聞いていたんだけど、それ以上に気になってしまう堅守瑞貴の存在

ずっと睨んでいたんだけど、何故か森に入り出す。

暫く歩き、広い場所に出て動きを止める堅守瑞貴……何をしているのかしら?

少し待つけど動きが無い……もしかして、気付かれた?

 

諦めて出て行くと、やはり気付いていたような発言をされた。

気を取り直し、私は堅守瑞貴にこの学園から出て行くように言う

でも予想はしていたというか当然だけど、出て行く気は無いみたい。

 

そして決闘(デュエル)をしたんだけど……負けた。

脅迫をされ、名前を言わされ、別の世界から来たと当てられるのは……仕方無いわ。

でも私の事までは分からない、自分が二次小説のキャラクターだなんて想像もできないはず

私はこの記憶を利用して、絶対にアニメキャラ達を守ってみせる!

 

――――――――――――――――――――

 

咲良結美に喧嘩を売られた数日後。

極々平凡に学生生活を送っていた……の、だが

とある日の夜、メールメッセージが送られてきた。

誰からかと思ったが知らないアドレス……何事?

 

『堅守瑞貴、女子寮まで来なさい

来なければお前の秘密を晒す』

 

……はて、俺の秘密ってなんだ?

晒されて困るような秘密なんてカードを売りまくっている事ぐらい?

多少面倒事になるかもしれんが、別にそこまで困るかと問われればやや微妙だ。

 

それ以外での俺の秘密……別世界から来た事?

だとしても、咲良以外に俺の事を知っている奴なんて……なるほど。

このメールを送ってきたのが咲良結美か

俺に興味を持ち、女子寮に呼び出すという行動を起こすような奴は咲良以外居ない。

 

まぁ、万が一……万が一咲良以外の場合

俺の気が済むまで嫌がらせをして泣かせるぐらいで済ませてやろう。

咲良の場合は当然、俺に面倒な事をさせたという事で叩き潰す。

 

しかし、あまり行く気にはなれんな……女子寮だろ?

男子である俺が入って、変な騒ぎになったら気分が悪いし

濡れ衣をかぶせられても困る……そんな事をした奴は潰すがな。

 

……ん? 女子寮に濡れ衣?

何か引っかかるな……原作アニメに何かこんな感じの事が無かったっけ?

何か有った気がするんだが、なんだったかな?

アニメで起こった事なんてあまり覚えていないし、思い出せん。

 

思い出せないのは気分が悪いし、行ってみるかな。

行かないと何をされるか分からないし、俺も気分が悪いから丁度良い。

咲良は追い出す程度で済ませているんだ、大した事はできないだろう。

 

俺みたいに潰すとか、邪魔だから排除するなどという所までの気持ちは無い

程度の低い志だ……その程度だから先日は俺に負けたんじゃないだろうか?

ま、志だけで勝てるのなら誰も苦労はしないか……この世界では例外になりそうで若干怖いがな。

なんだかんだで結局アニメ世界、気持ちや意思の強さで実力が変わっても不思議じゃないか。

 

凄まじく面倒な気持ちを持ちながら、レッド寮を出る。

すると、丁度同じように寮の部屋から出てきた遊城が……嫌な予感しかしない。

 

「あ、お前は確か……」

 

「…………」

 

「ちょっと待ってくれよ!」

 

無視してそのまま歩いて行くが、呼び止められる。

深い不快な溜め息を吐き、不機嫌なように若干睨みながら遊城の顔を見る。

俺の不機嫌そうな顔を見て少し怯んだものの、勢いを殆ど劣らせずに叫ぶ。

 

「なぁ、翔がどうなったか知ってるか?」

 

「…………」

 

意味が分からん。

そもそも翔って確か……そう、遊城とよく一緒に居た水色の髪の背の低い奴じゃなかったか?

何故俺がそいつを知っていると思うのか……というか、突然何故俺に訊いた。

 

「無視すんなよ!」

 

「はぁ……俺は用事が有るんだよ」

 

「女子寮に行くのか?」

 

何故お前が知っている……こいつも呼び出された?

俺と遊城、関連性が薄い俺達を呼ぶ理由は何だ?

遊城の言う、翔が関係有るとしても、俺を呼ぶ理由にはならない。

 

「行くんだよな?

なら一緒に行こうぜ、どうなってるのか分からないんだ」

 

「…………」

 

面倒だ、面倒だが……付き合ってやるか。

再び深い溜め息を吐き、女子寮に向かって歩きだす。

 

「ちょ、待ってくれよ!」

 

慌てて俺を追う遊城だが、気にせずに歩き続ける。

道中、何度か話しかけられたが無視しておいた

相手にして妙に懐かれたら嫌だし、元々好かない性格だからな。

暫くしたらさすがに諦めたのか、遊城も黙ったが。

 

………………

…………

……

 

ボートに乗って女子寮の裏まで移動する。

ただ、俺はオールを漕ぐのが面倒だったので遊城に押し付けた。

文句は言われたが、翔という奴が心配じゃないのかと言うと真剣な顔になってボートを漕ぎ出した。

なんというか、単純な奴だと思う。

 

女子寮の裏に着くと、4人の女生徒と1人の男子生徒が待っていた。

男子生徒は十中八九、遊城の言う翔……アニメの登場キャラの記憶は有るが、印象は薄い。

女生徒は咲良結美、金髪、赤茶髪、黒髪の4人……この咲良以外の3人、どこかで見た事有るような?

 

「アニキィ~……」

 

「翔、これはどういう事なんだよ?」

 

そして翔……そういえばこいつの名字なんだっけ?

とにかくこいつは何故かロープで手首を縛られて捕まっている。

はて、ロープなんてそこら辺に有るような物だろうか?

もしかしてあの4人の内の誰かの趣味か? 俺はSMプレイ見る趣味は無いぞ。

 

「それが話せば長いような、長くないような……」

 

「こいつがね、女子寮のお風呂を覗いたのよ」

 

「なんだって?」

 

赤茶髪の一言で俺の行動は決定した。

直接目の前で言ったら何を言われるか分からないし、後ろを向いておくかな。

 

「覗いてないって!」

 

「それが学校にばれたら、きっと退学ですわ」

 

えっと、鮎川教員の電話番号はなんだったかな?

いや、この時間だし寝てるかもしれないな……クロノス教員なら起きてるか?

それとも学園長にするべきか……でもあの学園長、なんだか緩そうだしなぁ

無いとは思うが、万が一無罪にでもなったら連絡する意味が無いし。

 

「ねぇ十代、私と決闘(デュエル)しない?

もし私に勝ったら、風呂場覗きの件は大目に見てあげるわ」

 

「だから覗いてないって言ってるのに!」

 

「なんだかよく分からないけど、まぁいいや!

その決闘(デュエル)、受けて立つぜ!」

 

お、その発言は戴いておこう。

例え無実だとしても、同室の奴がある意味翔の行動を肯定したんだ。

何せ、この決闘(デュエル)を受けるという事はあいつが風呂場を覗いたと認め、解放すると言ったんだ。

本当に翔が覗いていないと信じるならば、翔は覗く奴じゃないと断言し、決闘(デュエル)を受けてはいけない。

まぁ、別に遊城ではなくとも、この場で決闘(デュエル)を受けなければ本当に通報されていたかもしれないし

間違った行動かと問われればやや微妙か……それはさて置き、クロノス教員に電話電話っと……

 

「ん?

ちょっと堅守瑞貴、何をしようとしているの?」

 

咲良の言葉を無視し、クロノス教員に電話を掛ける。

俺の行動に気付いた咲良は慌てて俺に向かって来る。

 

「ちょっと待ちなさい堅守瑞貴!」

 

掴み掛かってくる咲良を回避し、電話を続けるが……出ないな。

外出中か? こんな時間に……それとも既に寝ているのか?

 

「その電話を止めなさい!」

 

咲良から逃げ続け、仕方無く鮎川教員に電話してみる。

なんだかあの人は寝ているような気がするんだよなぁ……健康生活とかしてるイメージが少し浮かぶ。

 

「~~~~~!

止めなさいって、言ってるでしょ!」

 

「おぉ?」

 

「あ……」

 

咲良に押され、バランスを崩し……俺は湖に落ちた。

やはりまだ寒くなっていない季節とはいえ、水は水、やはり冷たい。

更に服を着ているので水を吸い、重くなっていく。

まぁ、泳げるから溺れたりはしないのだが……溺れておくかな?

 

1度だけ顔を上げた瞬間に大きく息を吸い、沈んでいく。

さて、潜水したまま移動するかなっと……

俺は水中を移動し、離れた場所まで向かう。

どの辺りがいいか……あいつらに見つからないように、とりあえず離れておくか。

 

――――――――――――――――――――

 

「あ……」

 

堅守瑞貴が電話を止めないので、つい押してしまって……水に落としてしまった。

すぐに上がってくると思ったけど、1回だけ水面に出てそのまま上がってこない……

もしかして、泳げないとか?

 

「上がって来ませんわね」

 

「上がって来ないわね」

 

「上がって来ないな」

 

「上がって来ない……わね」

 

「上がって来ないッスね」

 

みんなの視線が私に刺さる。

ど、どうしよう? 堅守瑞貴に居なくなって欲しいとは思っていたけど、死んでほしいだなんて思っていない。

もしかして私、殺人? 殺害者? 犯罪? 人殺し……え? え? あれ? うそ?

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

暫く沈黙が場を支配する。

 

「ど、どどどどどうし、どう、どうすれ、どう、どれすれらす!?」

 

「おおお落ち着きなさいよ結美!

謎の言語過ぎて意味が分からないわよ!」

 

「そ、そうですわ結美さん!

落ち着いて、まずは深呼吸をしましょう!」

 

「う、うん!

すー……はー……すー……はー……」

 

うん、落ち着いた。

 

「qあwせdrftgyふじこlp!?!?」

 

「全然落ち着けてない!?」

 

「寧ろパニックになってますわ!」

 

「ど、どうすればいいのかしら?」

 

「いや、俺に訊かれても……」

 

「僕もどうすればいいのかわかんないッスー!」

 

「(この辺りで上がってっと……息も続かないしな

それにしても騒がしいな……ん?

なんだ、咲良が錯乱してるのか、誰か飛び込んだりしてくれないかなぁっと

ま、例え飛び込んでも俺は離れた場所に居るから見つかるはずが無いんだが)」

 

「(あばばばばばばばばばばばば……私の偽ラブレタァーで、生徒の1人ィが!

急いで探して助け無いィーと、もし知られたら首どころじゃ済まないノーね!

という訳でぶくぶくぶくぶくぶくぶく……)」

 

どうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすればぁー!?

というか貴方確か20代でしょ! 泳げるぐらいしなさいよ!

運動は嫌いでもできるんじゃなかったの!? なんでそれで泳げないのよぉ!

このままじゃ私人殺しの犯罪者にー! そんなの絶対に嫌ぁー!

 

「そうだ! 潜って探せばいいんじゃないか!」

 

十代はレッド制服と黒いシャツを脱ぎ、水に飛び込む。

だけど私はそんな事に気付かずに錯乱しているだけだった。

自分の保身しか考えず、堅守瑞貴の安全なんて全く考えてもいなかった。

もしかしたら、所詮は二次小説のキャラクターだと考え、軽く考えていたのかもしれない。

どちらにせよ、その事すら私は気付けもしなかったのだけど……

 

――――――――――――――――――――

 

さてと……これぐらい離れれば大丈夫かな?

結構離れたな……暗いから水中に顔だけしか出していない俺には気付かないだろう。

俺は大体50mほど離れた位置に顔だけを出して浮かんでいる。

 

俺はそこまで目は良くないんだが、人影ぐらいは分かる。

数は……4つ? いや、5つかな?

赤茶髪と黒髪に挟まれた翔の存在がよく見えないからちょっと分からん。

どちらにせよ、数が足りないから誰かが移動、または飛び込んだか?

 

誰でもいいか、俺を巻き込んだんだし、苦労してもらおう。

飛び込んだ奴には運が悪かったと思って諦めてもらう

咲良が飛び込んでいると高望みはしないが……高確率で遊城かな?

あいつの性格上、真っ先に飛び込んでいそうだ。

 

おっと、鮎川教員に電話をしておくかな

翔の覗きを報告して、キッチリ何か罰を受けてもらわないといけない。

まったく、風呂なんて覗いて何が楽しいんだか……俺には理解できんな。

 

電話電話っと……待てよ?

覗いた女生徒が連絡するならともかく、俺が電話しては不自然じゃないか?

何故知っていると問われたら、女子寮に呼び出されて教えられたと言う事となる

だとすれば何故呼ばれたと、お前も覗いたのではないのか? とか言われる可能性も無きに有らず。

困ったものだ、これは先ほど話に出ていた遊城と金髪の決闘(デュエル)で遊城が負けてくれるのを期待するか。

 

さて、そろそろお遊びは終わるかな。

息を大きく吸い込み、水中に潜り、元の場所付近に向かう。

若干酸欠で危ないかと思ったが、遊城が水中に潜っているのを見つけた。

少しだけ離れ、見つからないように注意をしながら静かに水上に上がり、大きく息を吸う。

そして再び水中に潜り、遊城の近くまで泳いで目を閉じて静かに待つ。

 

すぐに遊城は俺に気付き、持ち上げて水面まで移動

少し酸素が厳しかったがなんとか間に合った……自業自得だが、もう少し早く助けてほしかった。

 

「ゲホッ! ゲホッ! ゴホッ!」

 

「大丈夫か?」

 

「だいじょっゴホッ! じょうぶと思うのっゲホッ!

思うのなら眼科にでっゲホッ! でも行ってこっゲホッ!」

 

少し水を飲んでしまったか? 咳が本当に止まらん。

軽く周りを見てみると、心配そうにしている女生徒3人組

まだ慌てている翔、安心してホッとしている咲良……待てお前。

お前は何を考えている? もし本当に溺れていれば下手すれば人殺しになっていたかもしれないんだぞ?

 

まさかお前……俺よりも自分の心配をしていたのではないだろうな?

俺も同じ事を思うだろうが、せめて表に出さない程度にはしろ

同じ事を考える俺でも、最低限でも心配そうな顔ぐらいはするぞ。

俺以外に気付いている奴は居ないだろうから大丈夫だろうが。

 

「それだけ悪態ができるのなら大丈夫そうね」

 

「はふぅ……安心したら気が抜けました、立てませんわ」

 

「私も少し……ほらももえ、しっかりしなさい!」

 

黒髪の名前はももえね……一応、覚えておくか。

あまり望みたくはないのだが、会う機会はまだ有る気がする。

無意味な関係は作りたくないものだ……

 

「はぁ、はぁ、はぁ……

逆恨みの自覚は有る、だがこうなった原因を怨んでも……仕方無いよな?」

 

「それってどういう意味だ?」

 

自業自得の自覚も有るし、逆恨みの自覚も有る。

だがしかし、あいつが覗きなんてしなければこうはならなかった。

俺が来ると決めなければ良かった、俺の責任も当然有る。

興味も無かったが、あいつは俺の中では嫌いな奴と仮定しておく

後々の翔の行動により、今後の対応を決めていこう。

 

「ふぅ……さて、俺も来た目的を果たそうかな」

 

「そういえば私は貴方を呼んでないわね

十代だけしか……どうして来たの?」

 

「女子寮に来なければお前の秘密をばらしてやる

そんな脅迫メールが届いてな……誰が送ったのかは大体予想は付いているが

でだ金髪、お前も知らないんだな?」

 

「金髪って……私の名前は天上院明日香よ!」

 

「自己紹介もしていないのだから仕方無いだろうが

初対面の相手も多い気がするし、自己紹介でもするか?

俺は咲良以外誰も名前を知らん」

 

名乗られていないだけで知っている名前も数名居るがな。

間違っている可能性も有るし、自己紹介をしてくれると助かるのは事実。

 

「……そうね

改めて、私の名前は天上院明日香、オベリスクブルーの1年生よ」

 

「俺は遊城十代!

オシリスレッドだ!」

 

「僕は丸藤翔……オシリスレッドだよ」

 

「私は枕田ジュンコよ」

 

「私は浜口ももえですわ」

 

「…………咲良結美よ」

 

「堅守瑞貴だ」

 

「(クロノス・デ・メディチなノーね

お呼びでない? あらそうぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく……)」

 

よし、覚えた……が、呼ぶ機会が少ないと助かる。

やっぱりメインキャラ達だろこいつら……巻き込まれそうで嫌だ。

来なければ良かったかな? だとすると困る事も有ったし、難しい所だ。

 

さて、いい加減にこの状況を動かすか。

なんだかんだで俺の沈没で動きが止まっているみたいだし

俺が進めなければ暫く動きそうにない。

 

「ところで、丸藤の奴は通報していいよな?」

 

「へ? 僕?」

 

「覗きだろ? 犯罪だよな?

性犯罪、男だから覗きをしたい気持ちが有るのは仕方無いだろう

だがそれを理性で抑えられないのはやはりどうかと思う

ならばさっさと刑務所に入ってもらって、理性的行動というモノを覚えて貰いたい」

 

俺の言葉に全員が唖然となる……何故だ?

 

「だ、だから僕は覗いてないって!」

 

「証人が居る以上、男性のその主張が通る事は無い

女性が覗いたと判断し、現行犯で捕まったのならば弁解の余地は無い

性犯罪の時点で9割以上の確率で有罪になるだろう

そしてお前が覗いていないという証人も居ないしアリバイも無い

あぁ、そもそも現行犯にアリバイも何も無いな……さて、警察を呼ぶか」

 

「待って、待ってってばぁ!」

 

「待ちなさい堅守君!」

 

「……被害者である天上院が何故止める?

さっさと警察に通報してやるのが世の為人の為女性の為学園の為俺の為

学園に残しておいても何一つメリットも無いのに止める理由は無いはずだ」

 

「(なんだか私の想像以上ゥーに、凄まじい事になってるノーね

あれ? これ私のせい? いやいや、騙された丸藤翔が悪いノーね!

でも私が狙ったのはドロップアウトボーイであって、彼じゃないノーね

このままだと丸藤翔が逮捕さレーて、騒ぎになるかもしれなイーの!

それは拙いノーね! カイザーの弟が覗きで捕まったとなったら大騒ぎ所ォーか

下手すれば彼の人生まで滅茶苦茶にしてしまうかもしれなイーの!

どどどどうすればいいノーね! 私が出て行く事もできなイーし! 困ったノーね!)」

 

さすがに酷すぎる……かもしれない俺の言葉に絶句される。

これぐらいは普通だと思うんだがな。

アニメ世界だからって適当に済ませて良い問題じゃないはずだ。

 

「えっと……メリットなら有るわ

私は十代と決闘(デュエル)したいの」

 

「関係が理解できん」

 

「だから、私に勝ったら翔君を解放するという条件で決闘(デュエル)を……」

 

「別にそんな条件なんて付けなくても

遊城ならどこででもいつでも、決闘(デュエル)しようと言えばするだろ

態々こんな無駄な事を起こさなくてもできるだろ?

それとも、こんな夜中のこんな場所、そして人質を解放するという条件が無ければならない理由でも?」

 

「そ、そんな事は……」

 

まったく、アニメ内では決闘(デュエル)する理由付けというかなんというか

どうせ何かしら文句が無ければ盛り上がらないとでも思ったんだろう。

だがしかし、今の俺からすればアニメ世界でも現実だ。

ならばアニメ内での意味不明な所まで弄っておこう。

こうやって相手を言葉だけで攻めるのって、凄く楽しいしな。

 

やっぱり学生って立場はいいなぁ……社会人ではできない事が沢山できる。

社会人になったらこんな態度をすれば批難されるのは俺の方の可能性も有るし

同い年だからといっても立場というものが邪魔をする、学生は自由で本当に楽だ。

 

「堅守瑞貴、言い過ぎよ

あ……天上院さんだって良い機会だと思っただけのはずよ

別にそんな難癖を付ける必要は無いんじゃない?」

 

「性犯罪者を無罪で解放する事が良い機会?

決闘(デュエル)だけでなんでも解決するのならば警察は必要無いな

被害者が無罪でも構わないと言うのならば話は別だが……

条件付きで無罪とする時点で許しているとは言えるかはやや微妙だ」

 

「それは……」

 

「うーん……」

 

枕田と浜口は消極的とはいえ、許すつもりは無いようだ。

この場合、条件付きとはいえ無罪にしようとしている天上院の方が珍しい。

咲良は……アニメと同じ展開にでもしたいのだろうか?

俺が流れを変えているから戻そうとしていると思って良いだろう。

どうせ、俺が来る可能性が高いと予想して天上院達と一緒に居たんだろうしな。

 

「なら無罪放免じゃなければいいの?」

 

「そうは言っていないが……」

 

「ならしょ……丸藤君、天上院さんとじゅ……遊城君がこの後決闘(デュエル)するとして

遊城君が負けたら学園に突き出される

天上院さんが負けたら1週間の間、私達の使いっ走りってのはどう?

丸藤君が冤罪と言うのなら納得できないかもしれないけど、殆ど無罪になるのだからいいでしょ?」

 

安いなおい、お前らの裸の価値は1週間の使いっ走り程度なのか?

俺がその内容で期間を決めるのなら短くても1ヶ月は奴隷にさせるぞ。

最長では半年ぐらいか……俺としてはそれぐらいが妥当だと思うがな。

 

「うぅぅ……断ると問答無用で警察に突き出される気がするッス」

 

賢明な判断だな、もし断っていたら俺は問答無用で警察を呼んでいたぞ?

俺としては妥協したくないが、被害者がそれで許すのならば良いだろうし

やや優しい処置な気もするが、美人の付き人になれるのなら幸運なんじゃないか?

多分、世間一般からの考えとしては……おそらくだがな、俺は絶対にお断りだが。

 

「なんだか変な方向に話が向かったけど

十代、私との決闘(デュエル)は受けてくれるわね?」

 

「最初に言ったぜ、その決闘(デュエル)は受けて立つってな!」

 

うむ、話を無駄無意味不必要に拗らせるのはしても見ても楽しいものだ。

でも横槍を入れるのも楽しいんだよなぁ……それはもう、真剣にしている奴に対してするのが。

しかし今回は変に手を出しても意味が有るとは思えないから止めておくか。

 

「(原作通りに……なった?

大丈夫のはず、十代と明日香が決闘(デュエル)するのが原作だもの

堅守瑞貴と明日香の決闘《デュエル》なんて、本来は無い流れ……これで良い

凄く話が拗れたけど、実際に翔に覗かれたのは事実だし……

うぅぅぅ……恥ずかしいよぉ)」

 

俺はもう帰ってもいいよな?

既に話の決着は着いてるし、後は遊城と天上院が決闘(デュエル)をするだけだし。

それにもう何が起こったのか理解したから気にする事はもう無いからな。

 

しかし帰るにしてもボートは2隻のみ

こんな場所で決闘(デュエル)に誘うんだし、まさかここでするとは思えない。

ならば湖の上でするか、ボートで移動するかのどちらかだろう。

どちらにせよ、面倒だからボートを漕ぐような事はしないが。

 

案の定、ボートに乗って湖の上で決闘(デュエル)をする事に決まったらしい。

丸藤にボートを漕がせ、俺はのんびりと決闘(デュエル)が終わるまで待つ。

内容は見てもいなければ話も聞いていない、別に問題が有ったかと問われれば無かった。

 

そして、なんだかんだで気付けば決闘(デュエル)は終わっていた。

どうやら半分寝ていたらしい、興味が無かったから仕方無いのだが……

 

「約束通り、翔は連れて帰るぜ」

 

「どうぞ、約束は守るわ

今日の事は黙っていてあげる」

 

「ふぁ……茶番、終わったか?」

 

欠伸からの一言、だが言った内容はあまり良くない。

自覚はしているが、茶番以外にこの決闘(デュエル)を評する自信が無い。

他の言葉が有るのならば教えてほしいものだ。

 

「茶番ですって?」

 

あ、天上院が怒ってる?

というか女生徒全員が俺を睨んでいるが……嫌われたかな?

別に嫌われようとも問題は薄いから別に構わないのだが。

 

「明日香さんの決闘(デュエル)を茶番だなんて!」

 

「そうですわ!

なんて失礼な殿方なんでしょう!」

 

「(やっぱりそう簡単に原作通りには進められないのかな……

堅守瑞貴を止めないと、十代達まで明日香達に嫌われたらどうするの!)」

 

「俺も明日香も全力で戦ったんだ

それを茶番なんて言うなよ!」

 

「そうッスよ!」

 

「原因である丸藤だけには言われたく無いがな

どう考えてもお前は謝る立場だろうが、巻き込まれた俺にも遊城にも

そしてお前が覗いたのが本当か嘘かどうかは別にしても

実際に迷惑を掛けたのは事実なんだからあの4人にもだ

俺はまだ謝られてもいないし、遊城に礼の1つでも言ったのか? あいつらに謝ったのか?

まったく……何もしていない言っていないでよく偉そうに言うな」

 

俺の言葉に怯む丸藤、そしてそういえばという顔をする遊城と女生徒の5人。

お前、まさか本当に何も言っていなかったのか?

もし本当に覗いていなくて、悪くなかったとしても

実際に紛らわしい事をして迷惑を掛けたのは事実なんだ。

その点に関しては謝るのは当然だろう、そして遊城が兄貴分だろうがなんだろうが礼を言うのも当たり前だ。

 

「ま、俺の事は気にすんな翔!

明日香と決闘(デュエル)できたんだ、俺が礼を言いたいぐらいだぜ!」

 

「はぁ……そういう問題じゃないだろうが遊城

お前はそれで良いかもしれないが、向こうは納得できるはずが無いだろう

どうせ自分は悪くないとしか主張しなかったんだろう?

主張する前に迷惑を掛けて申し訳無いとぐらい言えなかったのかと、そう言っているんだよ」

 

「だ、だけど……」

 

「黙れ丸藤、最初から最後まで悪いのはお前だろうが

何をトチ狂って女子寮まで来たのか知らんが、男子禁制の女子寮に来た時点でお前が悪い

ま、それを言うなら俺も遊城も悪いのだが……女子寮の敷地には入っていないからセーフなのかな?

やや微妙な所だが、そこはお互いの認識の問題か……俺としては裏門に入っていないから大丈夫だと思うが」

 

「え? えぇと……多分問題無いと思うわ

確かに女子寮の敷地内には入っていないし、目的は翔君を取り返しに来た事だし

実際に敷地内に入って騒ぎを起こした翔君はともかく、貴方と十代は何も言われないはずよ」

 

「……だ、そうだ」

 

「あうぅぅぅぅぅぅ……」

 

丸藤が混乱しているが、自業自得として諦めてもらう。

こいつがこんな事を起こさなかったら俺も咲良に呼び出されずに済んだんだからな。

おかげさまでビショ濡れだよ……明日に風邪をひかないか少々心配だ。

 

「ちょっとアンタ!」

 

「……何か用かな? 枕田」

 

「そいつの事はそれで良いかもしれないけど

アンタが言った、明日香さんの決闘(デュエル)を茶番って言ったのは許せないわ!」

 

せっかく話題を逸らしたのに、また戻しやがって……面倒な奴だ。

実際に茶番としか思えなかったんだから仕方無いだろうが。

つい出てしまった本音だ、気にするなよ。

 

「で?」

 

「でって……アンタねぇ!」

 

「待ってジュンコ

ねぇ堅守君、何故私と十代の決闘(デュエル)を茶番だと言ったの?」

 

「どうせ本気で丸藤を突き出すつもりも無かったくせに……

遊城と決闘(デュエル)をしたかっただけでこんな下らない呼び出しをしたんだ

それを茶番と言わず、何と言うのか教えてほしいぐらいだ」

 

「えっと……作戦?」

 

「世の中の幾多の作戦を考える人達に謝れ天上院

これは作戦じゃなくて茶番って言うんだよ

はぁ……思いつきだけで行動するからこうなるんだろうが」

 

自分の行動で周りにどんな影響が出るか一応は考えろよ。

俺だって考えているんだぞ? 考えた上で問題が無いと判断しているがな。

ただ文句を言って弄っているだけだし、嫌われるぐらいしか影響は出ない。

 

「いい加減にしなさい、堅守瑞貴

貴方と話すと無駄に長くなりそうだから黙って

みんなにも悪影響しか及ばさないわ」

 

「またお前はそういう言い方を……例え事実だろうが、言い方というモノを考えるべきだ

俺には別に通用するような言い方ではないが、他にはある程度包んだ言い方をした方が良いぞ?」

 

「貴方以外にこんな言い方はしないわ

どうせ皮肉にしかならないし、通用しないのも理解してるもの」

 

理解しているから困るんだけどなぁ……相手にするのが面倒だ。

俺から何かを言ってもこいつに通用するかはイマイチ分からないし

変に言い過ぎるとまた煩くされそうだし、少し相手にして無視するのが最善か?

 

「……あの、咲良さん?」

 

「も……浜口さん? どうかしたの?」

 

「いえ、随分あの方と親しいと思って……

なんだか知り合いのようでしたし」

 

「私が? 堅守瑞貴と?」

 

俺が? 咲良結美と?

……ほう? これはおもしろそうなネタだ。

これは引っ掻き回してやるべきだそうすべきだ。

 

「な、無いに決まって「浜口は鋭いな」なぁ!?」

 

「あら、本当でしたの?」

 

「そんなh「実は俺と咲良の関係だがな」何を言うつもり!?」

 

「ストーカーされる側とする側だ

ちなみに俺がされる側で咲良がする側」

 

沈黙が辺りを包み込む、当然っちゃ当然だな。

 

「す、すとーかー?」

 

「ストーカーって……」

 

「ち、違う! これは堅守瑞貴が勝手に言っているだけで!」

 

「さっき咲良が言っていただろう? 俺の事を理解しているって

ちなみに俺が咲良の名前や顔を知ったのは入学式直後だ

会ってから数日で、しかも今回俺が咲良と会うのが2回目なのにあんな発言だぞ?

ストーカー以外に思い浮かばないな」

 

「ち、ちがっ!」

 

「咲良さん、さすがにそれは……」

 

「うん……ちょっとね」

 

「ひ、引かないで枕田さん! 浜口さん!

そんなのじゃないの! 私と堅守瑞貴の関係はそんなのじゃなくて!」

 

「それに、名乗ってもいないのに俺の名前も知っていたし

入学式が終わった直後に俺の後ろと付けて来たし

俺の行動パターン、会話パターンも知っているみたいだったし

何回でも会いに来るとまで言われたしなぁ……立派なストーカーじゃね?」

 

「「「…………」」」

 

「無言で離れないで天上院さん枕田さん浜口さん!」

 

「うわぁ……」「本当にそんな人居るんスね」

 

「遊城君もそんな顔しないで!

丸藤君も! そんな言い方酷い!」

 

丸藤の場合は本当に存在する、目の前の現行犯の覗きだもんな。

そいつに言われるのはさすがの咲良も嫌だったらしい。

まぁ咲良でなくとも誰でも嫌だろうがな。

 

「どうしてくれるの!

貴方のせいで私に対する印象が滅茶苦茶じゃない!」

 

「嘘は言っていないぞ、嘘は何1つ」

 

「言い方に問題が有るの!

なんでそんな本当にストーカーっぽいイメージになるような言い方をするのよ!

若干印象が悪くなる言い方もしてるし、やり方が卑怯よ!」

 

「その言い方だと自分で俺の言葉を認めているようなものだがな

それに、俺が今回ここに来たのだってお前に呼び出されたからだぞ?

しかも呼び出し文句が、お前の秘密を知っている……だしなぁ」

 

「そんな事言って無いわよ!」

 

「呼び出した事、秘密を知っている事は否定しないんだな

会って間もない人間の秘密を知っているとか、ストーカー以外無いな」

 

「ストーカーって言わないで!」

 

こいつ、楽し過ぎるだろ。

半分冗談のつもりでストーカーと言ったんだが

実際にした事言った事を並べてみると本当にストーカーという……

自分の行動を自覚したら、ストーカーというのも否定できない結美も間抜けだな。

そこは何を言われても否定しなければならないだろうに、だから引かれるんだよ。

 

「えっと……ストーカーはダメよ?」

 

「天上院さん!?」

 

「ストーカーって相手の服とか盗んだりするのかしら?」

 

「枕田さん!?」

 

「んー……通報します?」

 

「止めて浜口さん! 違うの! 違うんだから!」

 

「よくわかんないけど、何が楽しいんだ?」

 

「純粋な疑問を持たないで遊城君!

私はストーカーとかじゃないの!」

 

「ストーカーは犯罪ッスよ?」

 

「丸藤君が言わないで!」「お前が言うなよ丸藤」

 

「酷いッス! 僕のは冤罪ッス!」

 

ダメだこいつ、早くなんとかしないと……とは思ったが面倒だから放置でいいや。

相変わらず自分が起こした事に対しての自覚が無さ過ぎる。

しかも咲良がストーカーと知って若干顔が緩んでいるという始末……

まさか、犯罪仲間を見つけたと安堵を持ったんじゃないだろうな?

 

「うぅぅぅ……堅守瑞貴! 決闘(デュエル)よ!

私の八つ当たりを受けなさい!」

 

「断る」「断らないで!」

 

先読みされ、同時発言だと?

さすが咲良、俺を理解していると言うだけの事は有る。

 

「さすが咲良だな

俺を理解していると言うだけの事は有る……

まさか俺の発言を予想し、同時に返事をするとはな」

 

「あ……」

 

周りの視線が咲良に集中するし、真っ赤な顔になっていく咲良。

恥ずかしかったのか、それとも怒っているのか……どっちでもいいか。

 

「まったく……仕方無いから決闘(デュエル)は受けてやる

だからストーカーは止めるんだぞ?

まだ若いんだから、犯罪とかをすれば将来大変だぞ?」

 

「ストーカーじゃないって言ってるでしょ!」

 

デッキをセットする咲良だが……周りの事、気付いているか?

一応言っておくか。

 

「咲良、今回は2人じゃないんだぞ?

あんなカードを使ったりしないだろうな?

そのデッキ、ちゃんとそういうカードは入っていないデッキだろうな?」

 

「え……………………あ」

 

入っていたのか、テンパっているとはいえ、もう少し冷静になれないのか?

なれなくしているのは俺だけどな。

 

「ちょっと待ちなさい!

このデッキが堅守瑞貴用裏で、このデッキが試験用で、このデッキがプライベート用で……あれ?

違う、このデッキは……あ、これね! 堅守瑞貴用表デッキ!」

 

お前、俺用にデッキを何種類作って持ってきてるんだ?

この前のが裏デッキだと仮定して、今から使うのが表デッキか?

裏は未来のシンクロやエクシーズ、チューナーが入った【超魔神イド】だと仮定して。

こいつの表デッキはどんなデッキだろうか?

 

「(彼専用デッキって……立派なストーカーじゃない)」

 

「(ストーカーって男だけだと思ったけど、女子にも居るものなのね)」

 

「(ストーカーは本当に存在するんですわね……テレビの中だけかと思っていましたわ)」

 

「(大量のデッキ、どんなデッキか気になるぜ!

それにしても、あんなカードとかそういうカードってどんなカードなんだ?)」

 

「(僕は悪くないのに……)」

 

俺のデッキは何にしようかなっと……あれだけ超魔神イド大量に使っていたんだ。

俺の予想では表デッキという奴も超魔神イドを利用したデッキだと思う。

普通のデッキとは思えないし、可能性としては……ならあのデッキを使うかな?

いや、普通の【超魔神イド】を使ってくるとは思えないし……どうするかな?

 

「貴方なんて私の【超再生】で倒してあげるんだから!」

 

なるほど、蘇生カードか自己再生モンスターを多用したデッキかな?

自分からデッキ内容を教えるとは不用心な……もしかしてルールを知っているだけで初心者に近い?

対人戦の経験が少ないか、単なる間抜けか、アホのどれかだろうな。

俺の予想としては、おそらく対人戦が少ないと予想する。

初心者なら自慢げにデッキを言うだろうし、間抜けかアホの可能性は対人戦の経験不足と考えられるからな。

 

自己再生モンスターを多用したデッキだと仮定して。

そのモンスターを有効に使うカードを考えると……あのデッキかな?

だとすると使うデッキは何にするか悩むが、ここはあのデッキにでもするか。

 

「いくわよ!」

 

「来なくてもいいぞ」

 

決闘(デュエル)!」

 

「…………はぁ、決闘(デュエル)

 

凄く嫌そうな態度を取ってみると、それだけで咲良の顔が怒りで歪む。

しかし、軽く深呼吸をしてなんとか落ち着く。

つまらん奴だ、また何か弄ってみるか?

 

「先攻は……今回は譲るわ」

 

「ほぅ? では遠慮無く貰おう、ドロー」

 

「え?」

 

何を驚いた顔をしている、まさかまた怒らせる為に先攻を譲るとでも思ったか?

それも有りかとは思ったが、今回はかなり特殊なデッキだから先攻は貰いたかったのでな。

悪いが、怒らせる弄るよりも、勝つ為に先攻は戴かせてもらった。

 

「モンスターをセットし、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

ま、したい事なんてこれぐらいしか無いけどな。

あの蘇生を多用するデッキを相手にするにはこのデッキが好相性だし

負けるとは思わないが、予想外のデッキだったら少々困るな。

 

「私のターン、ドロー!

私の可愛い人形を見せてあげるわ」

 

「「「(可愛い人形?)」」」

 

可愛い人形に反応する天上院達女子3名だが、俺は完全に無視して該当モンスターを考える。

人形型のモンスターで蘇生効果モンスターといえば……

なるほど、という事はあのデッキの方向性と傾向は大体予想できた。

 

「怨念のキラードールを召喚!」

 

「「「(怖っ! 全然可愛くない!)」」」

 

案の定、予想通り怨念のキラードールだった。

大きな斧を持つ人型の人形……何度見てもホラー映画とかに出てきそうな人形だな。

ホラー映画だと、何故かこういう人形が可愛いだとか言われる事が有るし

可愛いというのもあながち間違いではないか。

 

「とりあえず、怨念のキラードールで守備モンスターに攻撃!」

 

キラードールの持つ、自身の身の丈程も有る斧を守備モンスターに叩きつけようと振りかぶる。

狙われたモンスターは青服の僧、聖なる守り手。

手に持つ棒でキラードールを迎撃するも、殴られた体を無視してキラードールが聖なる守り手を破壊する。

 

「今のモンスターは……」

 

「聖なる守り手のリバース効果が発動する

場に存在する表側表示モンスター1体を持ち主のデッキトップ……つまり一番上に戻す

自分の場に戦士族モンスターが居る場合、更にもう1体のモンスターを手札に戻せるが

場に戦士族モンスターが居なければ、手札に戻せるモンスターの数も足りない

聖なる守り手のリバース効果により、怨念のキラードールをお前のデッキトップに戻す」

 

「くっ……ドローロック!

永続魔法、カードトレーダーを2枚発動!

私はこれでターンエンド!」

 

ドローロックを突破したか……しかし、カードトレーダー?

永続魔法に、カードトレーダーに、怨念のキラードール……あぁなるほど。

となるとやや面倒な事になるが、まぁいいだろう。

 

「俺のターン、ドロー

伝説の柔術家を守備表示で召喚」

 

何故か緑の肌をした髭が凄い空手服を着た男性……しかし、こいつは何故岩石族なんだ?

とにかく、こいつの効果は面倒だぞ?

頑張って倒すんだな、楽に倒せるとは思うが。

 

「このままターンエンドだ」

 

「私のターン、ドロー!(手札のボルト・ヘッジホッグは……チューナーが場に居ない!)

このスタンバイフィズ時、カードトレーダーの効果を発動!

1ターンに1度、手札を1枚デッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする!(ヌビアガード……まだ要らない!)

2枚のカードトレーダーの効果を発動し、手札をデッキに戻してドロー!」

 

まったく、メインじゃないとはいえドローロックのギミックを組んでるこのデッキの趣旨を壊すなよ。

いくらでもドローロックはできるが、まぁいいだろう。

 

「怨念のキラードールを召喚!

更に永続魔法、ウィルスメールを発動!」

 

げ……そのカードも入れていたか。

まぁそのデッキなら不思議でもないが……

 

「ウィルスメールの効果を発動!

自分の場のLV4以下のモンスターを1体選択し、そのモンスターはこのターンに直接攻撃(ダイレクトアタック)できる!

ただし、バトルフェイズ終了時に墓地に送られる

私が選択するモンスターは怨念のキラードール!」

 

「そんな事をしたら場がガラ空きになってしまいますわよ?」

 

「ガラ空きになんてしない

自分の場に永続魔法が3枚以上存在している時

このモンスターは特殊召喚できる……バッド・エンド・クイーン・ドラゴンを特殊召喚!」

 

あー……やっぱり出てきたな、バッド・エンド・クイーン・ドラゴン。

しかし、黄色の翼に黄土色の肌、なかなか良い趣味の色合いだ。

一般受けはしないだろうが、俺としてはそれなりに好きだぞ?

 

「バトルフェイズ!

とりあえず、ウィルスメールの効果を受けた怨念のキラードールで直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

斧を叩きつけてくるキラードール。

所詮はソリッドビジョン、何も影響は……っ? 若干、何かしら違和感?

あぁ、そういえばこれ、体感システムを実装してるんだったな。

ある程度の衝撃は実際に受けるのか……アニメ上でアレだけダメージを受けたりするのも当然か。

 

今までまともにダメージを受けた事は無かったからな……この前の咲良戦ぐらいか?

あの時は若干の苛立ちとやや上がったテンションで気付かなかったな。

冷静になって受けてみると実感できる……あの社長の頭脳指数はどれぐらいなんだ?

この世界の技術力を応用すればどれだけの事ができるか、想像できる気もするがしたくないな。

 

話が反れたが問題は怨念のキラードールの攻撃で受けた1600のダメージ。

残りライフは2400、ライフ4000世界だと相当に痛いダメージだ。

少々油断したか……あのカードを放置したら負けるぞ、俺。

 

「バッド・エンド・クイーン・ドラゴンで伝説の柔術家に攻撃!」

 

腕を振りかぶり、叩きつけてくるバッド・エンド・クイーン・ドラゴン。

伝説の柔術家は強烈に叩きつけられ、潰される。

しかしその腕を掴んで……咲良に向かってバッド・エンド・クイーン・ドラゴンを投げた?

投げた直後、伝説の柔術家は破壊され、バッド・エンド・クイーン・ドラゴンは消えていった。

 

「守備表示で存在する伝説の柔術家と戦闘を行ったモンスターはバトルステップ終了時

持ち主のデッキトップに戻る……バッド・エンド・クイーン・ドラゴンはデッキに戻ってもらう」

 

「……バトルフェイズ終了、怨念のキラードールはウィルスメールの効果で墓地へ送られる」

 

伝説の柔術家はバッド・エンド・クイーン・ドラゴンで倒せるのに

態々ウィルスメールの効果を使った理由、考えられる可能性は基本的に2つ。

1つは怨念のキラードールを戦闘破壊されない為、または再びデッキに戻されない為。

もう1つは守る為のカードを持っている時、攻撃されても問題は無いと判断したんだろう。

 

「私はこのままターンエンド」

 

「自分の場にモンスターが居ないのに伏せカードも出さないの?」

 

「出さない、無駄だもの」

 

枕田の疑問も即切り捨てる。

手札から捨てる系のカードか、またはただ何も無いだけか……どちらでもいいか。

 

「俺のターン、ドロー

モンスターをセットし、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「堅守瑞貴、貴方は攻める気が無いの?」

 

「無い」

 

今はな。

ま、今の言葉で咲良は苛立ったみたいだけどな。

 

「…………私のターン、ドロー!(手札の暗黒の扉は……今は要らない!)

カードトレーダーの効果で手札交換!(悪夢の拷問部屋はまだ!)手札交換!

更に前のターンに永続魔法の効果により場から墓地に送られた場合

怨念のキラードールは次のターンのスタンバイフェイズ……つまり今、特殊召喚される!

更に手札からバッド・エンド・クイーン・ドラゴンを特殊召喚!

魔法カード、強欲な壺を発動し、このカードの効果でデッキからカードを2枚ドロー!

そしてもう1体、怨念のキラードールを召喚!」

 

もう1体を召喚したか、嫌な予感しかしないがまぁ問題無い。

怨念のキラードールを出されても対処する手段は有る。

 

「ウィルスメールの効果発動!

今召喚した怨念のキラードールを対象に選択し、このターンは直接攻撃(ダイレクトアタック)ができる!

バトルフェイズ! ウィルスメールの効果を受けた怨念のキラードールで直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「罠カード、和睦の使者を発動

このターン、俺のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージを受けない」

 

このデッキはあまり防御対策をしていないデッキだからなぁ……

和睦の使者1枚でも使うと凄まじく痛い。

できればもっと対策をしたかったんだが、デッキスペースの都合上で断念。

 

「和睦の使者……バトルフェイズを終了し、怨念のキラードールはウィルスメールの効果で墓地へ

カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

さて、できれば3体とも場に残っていてくれた方が助かったんだがな。

まぁそこは仕方無い、ここは2体で我慢するか。

 

「俺のターン、ドロー

セットモンスターを反転召喚、ヴェルズ・アザトホースだ」

 

「「きゃぁああああああああああああああああああ!!!」」

 

「う……気持ち悪い」

 

「おーでけぇ」

 

「うわぁ……気持ち悪いッス」

 

「わ、ワーム……」

 

反応はそれぞれ、枕田と浜口は大声での悲鳴。

天上院は吐き気を、遊城は何故か感心、丸藤はドン引き、咲良は先日のが若干トラウマになっているらしい。

10体以上もの気味の悪いと言われるワームの集合体だし、こう騒がれるのも不思議ではないか。

 

「ヴェルズ・アザトホースのリバース効果発動

場に存在する特殊召喚されたモンスター1体を、デッキに戻す

この効果により、怨念のキラードールをデッキに戻してもらう」

 

ワームの集合体の体で怨念のキラードールにのし掛かり、離れた時には怨念のキラードールは消えていた。

パッと見た感じ、食ったようにしか見えないが、攻撃でもないのにあんな行動じゃな……

しかし、どうやってヴェルズ・アザトホースはデッキに戻したんだ? やっぱり食ったのだろうか。

 

「ヴェルズ・アザトホースを生贄に、風帝ライザーを召喚

そして生贄召喚に成功した風帝ライザーの効果が発動する

場に存在するカードを1枚、デッキトップへ戻す

この効果により、バッド・エンド・クイーン・ドラゴンをデッキトップに戻す」

 

「また……何度も何度も!」

 

「モンスターが墓地へ送られず、デッキに戻っては蘇生はできないだろう

更に魔法カード、無欲な壺を発動

自分、または相手の墓地のカードを2枚選択し、持ち主のデッキに戻す

このカードは発動後、ゲームから除外されるが……」

 

「あ……くっ!」

 

ん? 今のは効果を知ってでの反応じゃないな。

そして伏せカードに目を向け、更に失敗したかのような顔。

つまり、あの伏せカードは無欲な壺をどうにかできたカードだったという事だ。

カウンター系のカードなら今発動できる、ならばあのカードは別の目的のカードとなる。

ふむ……蘇生、自己再生効果、そして無欲な壺の効果で失敗……除外か?

なるほど、あの伏せカードは除外を封じるカード、王宮の鉄壁だと俺は予想する。

 

永続罠、王宮の鉄壁はこのカードが場に存在している限り、お互いにカードを除外する事はできない。

まぁ、無欲な壺はそれでも問題無く発動できるんだけどな。

確かにチェーン発動した場合、このカードは除外されずに墓地へ送られるが

墓地へ送るよりも除外した方が良いだろう、魔法カードを除外から回収する手段は殆ど無い。

ならば伏せカードをしられる事は損でしか無い、そういう意味では賢明かな?

 

ともあれ、咲良の様子を見る限りはそれを知っているとは思えない。

多分、発動できないと思っているのではないだろうか?

王宮の鉄壁はややこしいカードだし、処理の面倒なカードだから仕方無いか。

 

続けて考えると、除外関係で自己再生効果モンスターは……有名所ではボルト・ヘッジホッグかな?

他にも除外される事により、自己再生効果を止められる事を防ぐ為のカードとも言えるか。

 

「無欲な壺の効果により、咲良の墓地の怨念のキラードール

そして俺の墓地からヴェルズ・アザトホースをデッキに戻す

無欲な壺はゲームから除外される、ついでに1ターンに1度しか発動できない

まぁ、例え発動できても戻す必要が無いから発動しないがな」

 

ヴェルズ・アザトホースをデッキに戻したのは嫌がらせの為。

また出てきた時の嫌そうな顔を見る為だけにこのモンスターを選択した。

実際には伝説の柔術家の方が良いのだろうとは思うがな。

 

更に風帝ライザーの効果でデッキトップからバッド・エンド・クイーン・ドラゴンが消えた。

無欲な壺の効果でデッキにカードが戻ったからシャッフルされる。

故にデッキトップのカードは変わった事により、すぐにバッド・エンド・クイーン・ドラゴンは出てこないだろう。

また出るとすればデッキトップに来た、またはカードトレーダーの効果でドローした時か……別に怖くはないが。

 

「これでそちらの場には永続魔法が3枚と、伏せカードだけか……

風帝ライザーで咲良に直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

「う……くぅぅ!」

 

攻撃力2400のダメージ、咲良の残りライフは1600か。

またデッキに戻せば勝てるが、どうなるかな?

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー!(太陽の祭壇……蘇生モンスターが居ない!)

墓地から怨念のキラードールがデッキに戻ったから場に特殊召喚されない

カードトレーダーの効果により手札をデッキに戻して、ドロー!(エクトプラズマー、射出モンスターが戻らない!)

もう1度カードトレーダーの効果で手札をデッキに戻してドロー!

私はこのまま、ターンエンド!」

 

ふむ……困ったな、これではデッキバウンスカードが使えない。

仕方無い、素直に殴るしか無いか。

 

「俺のターン、ドロー

X-セイバー ウルズを召喚」

 

二刀流の獣戦士族モンスターであるX-セイバー ウルズの攻撃力は1600のモンスター。

さぁ、1体の攻撃を防いでももう1体の攻撃で終わるぞ?

手札のカードがクリボーの場合は防げない、さぁ頑張れ。

 

「ウルズで直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

「手札のバトルフェーダーの効果を発動!

相手の直接攻撃(ダイレクトアタック)宣言時、このモンスターを特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!

ただし、場から離れた時にこのモンスターはゲームから除外される!」

 

現れたのは悪魔の鐘……なんというか、振り子時計という感じだ。

バトルフェーダーか、確かに王宮の鉄壁が有るならそれも有りか。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー!(王家の眠る谷-ネクロバレー……使わない)

カードトレーダーの効果で手札をデッキに戻し、ドロー!(A・ジェネクス・バードマン……特殊召喚できない!)

2枚目のカードトレーダーの効果でもう1回……デッキに戻してドロー! 魔法カード、天使の施しを発動!

デッキからカードを3枚ドローし、2枚を捨てる!」

 

何回手札交換するつもりだ?

事故率はそこそこかもしれんが、まぁ今回は俺が大量にバウンスしてるしな。

凄まじい事故を起こしていても当然と言えば当然の状況か。

 

「龍脈に棲む者を召喚!

このモンスターの攻撃力は自分の場に存在する永続魔法の数×300ポイントアップする!

私の場に永続魔法は3枚、よって攻撃力は900ポイントアップし、攻撃力2400!」

 

攻撃力2400、ウィルスメールの効果で直接攻撃(ダイレクトアタック)をされたら負けるな。

実際にするかは分からないが……まぁされても問題は無いから別に構わんが。

 

「龍脈に棲む者に対して、ウィルスメールの効果を発動!

龍脈に棲む者のLVは3、よってウィルスメールの効果を受けられる!

このターン、龍脈に棲む者は直接攻撃(ダイレクトアタック)ができるようになった!

バトルフェイズ! 龍脈に棲む者で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「罠カード、風霊術-「雅」を発動

自分の場に存在する風属性モンスター1体を生贄に捧げ

相手の場に存在しているカードを1枚選択し、持ち主のデッキボトム……つまり一番下に戻す

風帝ライザーを生贄に、龍脈に棲む者をデッキボトムに戻す」

 

「ま……たっ!」

 

おーおー、怒ってる怒ってる。

さすがにこれだけ何度もデッキに戻されると苛立つかな?

これぞ嫌がらせデッキ、【デッキバウンス】は鬱陶しいだろう?

 

「ターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー

有翼賢者ファルコスを召喚」

 

白いマントを羽織り、鳥の姿をした人型の賢者……なのだが、どういう生物なのだろうか?

まぁどんな生物だろうが構わん、要はこいつもデッキバウンスモンスターという事だ。

この世界では裏側守備表示での召喚は殆どしない故、ミスティック・ソードマンLV6はほぼ機能しない。

裏側守備表示モンスターを効果で破壊し、効果で破壊したモンスターを墓地を経由せずにデッキトップに戻す効果だからな。

 

対して有翼賢者ファルコスは戦闘破壊した攻撃表示モンスターを墓地へ送った後

そのモンスターをデッキトップに戻す効果と、条件はやや厳しいが攻撃力1700なので問題無く扱える。

単純なアタッカーとして、元の世界では微妙だがこの世界では問題無く高めの攻撃力だ。

さぁ咲良、手札は0枚、守備モンスターは1体、この状況をどうする?

 

「ウルズでバトルフェーダーに攻撃」

 

「くっ……永続罠、王宮の鉄壁を発動!

お互いのプレイヤーはカードをゲームから除外できない!」

 

予想的中、王宮の鉄壁だったな。

既に予想した内容のカードだ、何も怖い事は無い。

 

「バトルフェーダーは自身の効果で特殊召喚された場合、除外される!

でもこのカードの効果により、バトルフェーダーは除外されず、墓地へ送られる!」

 

「だがそれだけだ

有翼賢者ファルコスで直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

「墓地に存在する異次元エスパー・スター・ロビンの効果発動!

相手の直接攻撃(ダイレクトアタック)宣言時、このカードが墓地に存在している場合、守備表示で自分の場に特殊召喚できる!

ただし、この効果で特殊召喚されたこのモンスターは場から離れた時に除外される

でも、王宮の鉄壁の効果によりこのモンスターは除外される事は無く墓地へ送られるわ!」

 

黒い仮面に黒いマント、パッと見悪役っぽいヒーローの小柄な少年が現れ……って、そいつまで入ってるのかよ。

これは拙い、また面倒な事になってしまう超ウザいコンボが出た。

咲良め、俺がしようとしていたコンボを先にしやがったな!

そのカードで嫌がらせしてやろうと思ってたのに先にしやがって……

まぁ別にいいんだけど、このコンボはお蔵入りだな。

 

このコンボの問題は凄まじく多い、主に俺の問題だ。

エクトプラズマー、超次元エスパー・スター・ロビン、王宮の鉄壁

この3枚が揃うだけで毎ターン1500ものダメージを与え、直接攻撃(ダイレクトアタック)を受けないコンボが完成する。

 

エクトプラズマーはお互いのプレイヤーはエンドフェイズ時に自分の場のモンスターを1体選択する。

そのモンスターを生贄に捧げ、生贄にしたモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

王宮の鉄壁で自己再生効果のデメリットである除外を封じ、直接攻撃(ダイレクトアタック)をされたら蘇生させ

更に生き残ればエクトプラズマーの弾にして撃ち出して大ダメージを与える……嫌すぎるコンボだ。

 

更に低LVモンスターはウィルスメールの効果で直接攻撃(ダイレクトアタック)をする。

怨念のキラードールが主な効果対象だろう、他の自己再生効果モンスターでも良い。

ボルト・ヘッジホッグならチューナーさえ場に居ればエクトプラズマーの弾にもウィルスメールの効果でも可能。

攻撃表示で残しても殆どデメリットの無い凶悪な壁モンスター兼射出弾モンスター兼直接攻撃(ダイレクトアタック)要員になる。

先ほどしたように、龍脈に棲む者も攻撃力が上がりやすいデッキだからエンドカードには良いかもしれん。

 

速攻には強くないが、時間が経てばかなり鬱陶しいデッキだろう。

更にシンクロ・エクシーズモンスターが有れば更に厄介な事になるのは間違い無いな。

問題が有るとすれば……

 

「罠カード発動、強制退出装置

お互いのプレイヤーは自分の場のモンスターを1体選択し、デッキに戻す」

 

「な……なぁ!?」

 

「俺が選択するモンスターはX-セイバー ウルズだ」

 

「私は……超次元エスパー・スター・ロビン」

 

墓地や場のモンスターがデッキに戻った時だな。

これだけであのデッキは無力と化す、そうでなければ勝つのはかなり面倒だろう。

除外したくとも、王宮の鉄壁の効果でD.D.クロウなどの除外系カードは通用しない

よって超次元エスパー・スター・ロビンを除去する手段がバウンスぐらいしか無い。

 

後は貫通効果を持つ攻撃力1501以上のモンスターで殴り続けてライフを削るぐらいか?

直接攻撃(ダイレクトアタック)効果を持つエレキとかも有りかもしれないが

返しのターンに攻撃力3000の超次元エスパー・スター・ロビンの攻撃を受けるからやや厳しい。

本当にバウンスか貫通ダメージ以外に対処手段は無いんじゃないか?

または墓地や除外されているモンスターの効果の発動を無効にするソウルドレインぐらい……かな?

王宮の鉄壁はマクロコスモスなどの常時除外効果よりも優先され、除外を封じるからから除外は無理だし。

 

「では選択したモンスターをデッキに戻し、シャッフル

さて、有翼賢者ファルコスの攻撃を続行しようか

有翼賢者ファルコスで直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

「う、うぅぅぅぅぅぅ……うぅううううう!」

 

ファルコスは飛び上がり、咲良に突撃しての攻撃……お前賢者辞めろ。

それはさて置き、凄まじく悔しそうな顔をする咲良……イイ顔だ。

嫌がらせとしては上々、ダメージを受けたのは不覚だったが、まぁ良いだろう。

前回の決闘(デュエル)と今回のデッキを考え、こいつのデッキ傾向はほぼ確定だな。

 

咲良のデッキは自己再生モンスターを中心としている。

何度破壊されても、墓地へ送られても、コストになっても

とにかく自身の効果で何度でも場に戻り、いつまでも戦う不屈の心……とでも言おうか?

こいつ、元の世界では【インティ&クイラ】とか、【超魔神イド】とか、【黄泉帝】とか使ってたんじゃないか?

他には【アマリリスバーン】、【ネフロード】、【ワイト】、【極神】、【バブーン】とかかな?

今回のデッキはかなり風変わりだし、名付けるとすれば……【永続蘇生ドール】とか? ややイマイチな名前だ。

 

「はい、俺の勝ち、何か文句は?」

 

「……よくも、堂々とアンチデッキなんて使えるわね

というか、なんで初対戦デッキでピンポイントにアンチデッキなんて使える?」

 

「アンチデッキ!?」

 

「アンチデッキって……」

 

「そんなデッキ使ったんですの?」

 

「勝って当然じゃないか!」

 

天上院達3人が批難するような顔を……そして言葉にしてくれた丸藤。

はて、俺は批難されるような事をしただろうか?

高がアンチデッキだろ? 1ターンキルよりはずっとマシだと思うんだが?

 

「はて? 初対戦デッキを相手に、どんなデッキ内容かも分からないのにアンチデッキなんて使えるか?

前回戦ったデッキと違うと知って、どうやってアンチデッキを組むんだ?

俺が偶々、相性が悪いデッキを使っただけでアンチデッキと言うとは……

やれやれ、もう少し考えて発言してほしいものだ

アンチデッキを使う場合、相手のデッキ情報を知らなければならない上

更に相手の性格、癖、行動パターンなども知らなければまともに作れん

俺にどうやってそれらを知れと? 憶測だけで決めつけるのは感心しないな

ついでに言うなら勝って当然? 相性を覆せられないのは実力の問題だ

またはデッキの構築から相性の悪い相手を想定していない場合とかかな?

どちらにせよ、今回の勝敗はデッキの相性と咲良の実力不足だ」

 

嘘は言っていないし、正論と言えば正論。

元々既に組まれていた嫌がらせデッキだから準備していたはずも無いし

咲良のデッキ自体、ヒントは有ったとはいえ知っていたと言えるはずも無い。

 

【超魔神イド】だとしても相性が良いようにしたとはいえ

あのデッキは違うと知っている時点で、既にアンチデッキとして機能せん。

性格も完全に把握できる時間も無く、癖も知らないし、行動パターンも不明。

どう考えてもアンチデッキを作れるはずが無い。

 

そして勝って当然というのもおかしい。

例えアンチデッキを使ったとしても負ける時は負ける。

というか、アニメ上でもアンチデッキを使われているシーンは何度か有る。

しかし主人公達は勝ち続けている、つまり相性を覆る実力が有るという事だ。

咲良が負けたのは原作主人公補正が有ったとはいえ、彼ら程の実力が無かった……

ま、つまりそういう事だ、運も多少関係したとしてもな。

 

「言っている事は正論だけど、堅守瑞貴が言うと屁理屈にしか聞こえない

でも負けたのは事実だし納得するしかない……く、悔しい!」

 

負けたら負け犬の遠吠えだしな、しかし俺の言葉は屁理屈だよ、実際にな。

言葉の文だったり、口車で納得させようとしているのも否定できん。

そもそも、実際にアンチデッキを選択したのも間違っていないしな。

それ以前に、俺はアンチデッキを使った事は否定していないぞ?

できると思うかと問うているだけで、できないとは言っていないからな。

 

「……ところで、貴方達2人のカードなんだけど

殆ど知らないカードばかり、どこで手に入れたの?」

 

「欲しければ売ってやるぞ?

やや高いが、損はしない程度には使えるカードだ

使い方を誤らなければという前提条件が有るが、まぁ当然だな」

 

「(なんというか、咲良さんとの会話で分かっていた事だけど

堅守君、凄く嫌味っぽい性格ね……ちょっと苦手かも)」

 

「アンタねぇ、明日香さんに向かってその言い方は無いんじゃない?

明日香さんはオベリスクブルー女子の中でもトップの実力なのよ!

それをオシリスレッドのアンタがそんな言い方……」

 

ふぅ……予想はしていたし知っていたが、相変わらず階級制度が煩い学園だ。

この色分け階級制度、どうにかして壊せないだろうか?

……手間暇と消費時間、それと見返りを考えると決まりだな。

面倒、疲れる、何故俺が学園全体を変える必要が有るか?

鬱陶しい奴らは黙らせればいいだけ、そいつら以外は無視でいいか。

 

「ふぅ……興味無いね」

 

「なんですって?」

 

「興味無いんだよ、ブルートップだろうがレッドだろうが

例え相手がこの学園最強の実力者だろうが、最底辺実力者だろうと

俺が言う事は変わらん、カードが欲しければ売ってやる

そう、例えば……遊城にはこんなカードとかな」

 

「おぉ! 俺の知らないE・HEROだ!」

 

ポケットから1枚のカード、取り出したのはE・HERO キャプテン・ゴールド。

E・HEROと思った瞬間、遊城の食い付き具合は凄かった。

お前、本当にヒーローが好きなんだな……M・HEROを見せたらそれはそれで喜びそうだ。

 

「やらんぞ、欲しければ買え」

 

「えぇー……」

 

「ケチッスねぇ……1枚ぐらいいいじゃないッスか」

 

こいつ、このカードの価値を知らんのか?

仕方無い、オークションで売れた値段を教えてやるか。

 

「先日、このカードをオークションで売った

3枚売り、1枚の最高額は……18万、3枚の合計金額は47万だ」

 

「じゅっ!?」

 

「18万!?」

 

俺の言葉に驚くレッドコンビ&ブルー女子トリオ+咲良。

って待て、咲良まで驚いているのか?

元の世界のカード価値観とこの世界の価値観を混ぜてないか?

俺は元の世界のカードの価値観は殆ど無視して考えてるぞ。

 

「さ、さすがにそんな大金は……」

 

「安くしても12万かね、1枚で(元の世界だと300でも高いけど)

大金なのは事実だが、それでも効果が強いカードだ

これより安くしてはオークションで買った人とは不公平だからな

欲しければ頑張れ、持っていないのなら諦めろ」

 

「さすがにその値段は……」

 

「なら諦めるか、そのオークションで買った奴が売りに出すのを待つとか?

ま、またオークションで売りに出したりするからその時にでも確認してみな

教える気は無いからちょくちょく自分で確認する事だ」

 

頭を唸らせ、遊城はどうしようかと悩んでいるようだ。

金は足りない、だがカードは欲しい、となるとどうすればいいのか。

それで悩んでいるんだろうが、抜け道を言ってやれば勝手に楽しくなりそうだ。

 

「……なんというか、色々と凄いわね、彼」

 

「言わないで天上院さん……分かっているから」

 

「さすがストーカーね」

 

「ですわね」

 

「ストーカーって言わないで!」

 

女子組は相変わらずストーカーネタで咲良を弄っているようだ。

自業自得だと諦めてくれ、言い方が悪かったとはいえ、否定しなかったのはお前だし

他の学生に知られないように頑張って口止めをするんだな。

 

「遊城」

 

「んー……ん? なんだ?」

 

「咲良に決闘(デュエル)で引き分けたらさっきのカードをやるぞ」

 

「私!?」

 

「本当か!?

……ん? 引き分け? 勝ったらじゃなくて?」

 

「別に勝つのは難しくないだろ、もうデッキは見てるんだし

負けたらというのも態と負けたら終わりだし……つまらん

だから引き分け、引き分けをしたらE・HERO キャプテン・ゴールドをプレゼントしよう」

 

「(引き分け用のカードなんて……この時代じゃ自爆スイッチとか破壊輪ぐらいじゃ?)」

 

再び悩み出す遊城、どうすればいいのか考えているようだ。

引き分けなんてそう簡単にできる事じゃないし、精々頑張ってもらおう。

 

「咲良」

 

「な、なに?」

 

「お前が引き分け用カードを使うのは禁止だぞ? 当然

お前が使ったなら当然、遊城にはカードは渡さん」

 

「それ以前に私を巻き込むな……

(私が持っていたら十代にあげたけど、持ってないし

未来のカードは持ってても、この時代の持ち主が居るカテゴリモンスターとかは無かった

E・HERO、D-HERO、アームド・ドラゴン、アルカナフォース、帝、ロイド、古代の機械(アンティーク・ギア)

他にもヴォルカニック、雲魔物(クラウディアン)、おジャマ、サイバー等々

アニメキャラが使う系統のカードは持ってない……彼らとデッキが重ならないように?)」

 

勝手に自分が巻き込まれるのが気に入らないようだが、そんな事は無視する。

今回の件は俺が巻き込まれたんだ、楽しめたのだがそれはそれ、仕返しはする。

なんだかんだで湖に落ちたのもこいつが押したせいだし……丸藤が最大の原因だが。

まぁアレだ、原作キャラと仲良くなれる……かもしれないんだ、感謝しなくてもいいぞ。

 

「うーん……カードは欲しいけど、その為に決闘(デュエル)したくないな

やっぱ決闘(デュエル)するなら楽しまないと!」

 

「だとしても、咲良とは決闘(デュエル)するんだろ?

良い切欠ができたとでも思えばいいだろう、別にただ決闘(デュエル)するだけでも同じなんだ

オマケの特典ができたとでも思えばいいだろ」

 

「そういう事、よし結美!

俺と決闘(デュエル)だ!」

 

「却下だ、俺はそろそろ帰りたい

咲良が煩いからさっきは決闘(デュエル)を受けてやったが

俺の服は濡れてるんだぞ? 風邪をひいたらどうしてくれる」

 

「う……き、気合でなんとか!」

 

「なるか、人を何だと思ってるんだお前は」

 

これだから熱血系馬鹿は……お前、今まで風邪になった事有るのか?

絶対に無いだろ、例え有っても気合だとか言って無視してただろ。

もし違うと言うのだったら永遠に黙ってろ、煩いから。

 

「咲良さん、彼……実はおもしろい人?」

 

「おもしろくない、巻き込まれた私はおもしろくない……」

 

「先にアイツを巻き込んだのってアンタじゃない」

 

「きっと一緒に居たかったんですわ、ストーカーですもの」

 

「……もうストーカーでいいから

そのネタを引っ張るのはもう止めて」

 

苦労してるな咲良、相変わらず自業自得だが。

俺も自業自得と言えばそうだが、今回の一番の被害者は俺じゃないのか?

無関係なのに呼び出され、水に落とされ、八つ当たりで決闘(デュエル)をさせられ……

俺は呼び出した咲良を怨むべきか、最大の原因である丸藤を怨むべきか、どっちだろうか?

 

駄々を捏ねる遊城を黙らせ、レッド寮に帰るように言う。

渋々とだが諦め、名残惜しそうに咲良を見て一言。

 

「じゃ、今度会ったら決闘(デュエル)しようぜ結美!

明日香も強かったぜ、また決闘(デュエル)しような!」

 

「さっさと行け

もうこんな下らない事で呼び出すなよ咲良」

 

「貴方次第よ」

 

お互いに憎まれ口を言い合い、空気が悪くなる前に遊城がボートを漕ぎ出す。

少し睨み合ったが、俺はすぐに咲良を無視して力を抜く。

なんというか、疲れた……楽しめたけど馬鹿馬鹿しい内容だった。

もうこんな下らない理由で呼び出されたくない。

 

どちらにせよ種は蒔いた、食い付いてくれたらそれで良し。

もし失敗だとしても、いくらでも利用できる。

時偶相手をしてやれば勝手に動いてくれるだろう。

精々俺の隠れ場所として機能してくれよ?

俺からすればお前の利用価値はそれだけなんだ、頑張らないと使い捨てる。

俺に向かってアレだけの敵対発言をしたんだ、使い潰してやるよ……咲良結美。




「今日の最強カードは怨念のキラードールよ!
攻撃力1600、守備力1700、闇属性の悪魔族モンスター!
永続魔法の効果によって墓地に送られた場合
自分のターンのスタンバイフェイズ時に墓地から特殊召喚される!
コストで墓地へ送られても復活できないから注意しないとダメよ?
あと、蘇生は強制効果だから場のモンスターの数にも注意しないとね」
「……何度見ても可愛くないわね、この人形」

Q.結美はいつから遊戯王を始めたの?
A.大体のルール、カードを覚えるのにどれぐらい掛かるか……
アニメも観て、大会にも出たいと思える実力を考えるも、半初心者の点からあまり長くないようです。

Q.瑞貴を納得させられる勝ち方って?
A.1ターンキル、リセットカードなどを使用せず、ファンデッキやテーマデッキで勝つ事です。
もちろん1ターンキルなどでも納得しますが、され慣れきっているので悔しさなどはありません。
ファンデッキなどで勝てれば瑞貴は完全に納得の負けとなります。
具体的には、アニメキャラが使うようなデッキですね、ロマン全開や一部モンスター専用デッキなど
あとはコンボ前提、ネタなど、そのようなデッキで負けるのならば瑞貴は完全に納得します。
というか寧ろ喜びます、テーマやコンボやロックなどを好む彼なので良い勝負ができたと。
嫌がらせデッキを使うくせに? それはそれ、これはこれ、好みの問題ですので。

Q.結美が持つカードってどれぐらい有るの?
A.原作やアニメに登場し、登場キャラが使う主なカードは持っていません。
漫画版は持っていますが、アニメ版登場カードが有りません。(一部例外有り)
最後の方に結美が言っていますが、アニメ登場のシリーズ、カテゴリモンスターを主に持っていません。
持っていない理由ですが……瑞貴が自由に動く為、結美が原作キャラのデッキをブーストしない為です。
なお、持っている各カード枚数は少ない、とだけ言っておきます
瑞貴のように売りさばくほどのカード枚数は有りません。

Q.結美は瑞貴の行動をどれぐらい覚えているの?
A.主に原作キャラに対しての酷い行動に関してです。
あとは瑞貴の簡単設定、性格程度で後は原作キャラの変化も少しですね。
それ以上覚えていられると瑞貴の行動が全て制限されるのでこんな所です。

Q.――――――――――――――――――――これって何?
A.視点変更をする時の目安みたいな感じに使用しようかと思います。
これが出た時、視点が変更されたと思ってくだされば……誰の視点かは分かるようにします。(多分)

Q.結美の言う瑞貴の秘密って何?
A.高所恐怖症、辛い食べ物などが苦手という子供舌……とか?
実は彼女自身、殆ど何も考えずに行動しています。
考えない理由ですか? それは秘密です。(=理由が有る)

Q.瑞貴が妙に冷めてる?
A.ある意味常識的な行動をしていると言ってもいいですけどね……多分。
この場合、本来瑞貴の行動が正解なのですが、この世界では微妙な所かもしれませんね。

Q.qあwせdrftgyふじこlp
A.祝(?)初使用。

Q.クロノスは何をしてるの?
A.十代の行動を覗いていましたが、予想外で若干慌ててます。

Q.結美は瑞貴の心配をしないの?
A.彼女に自覚はありませんが、書いている通り瑞貴の存在を軽く考えています。
彼女からすればアニメキャラもですが、所詮は創作キャラクターです。
二次創作である瑞貴のキャラがアニメキャラよりも軽く見えてしまうのは当然と言えるでしょう。

Q.つまり結美って非情な性格って事?
A.そうは言いませんが、そう見えると思います。
とはいえ、アニメキャラを助けたいと思っている事も事実
そんな彼女の心はどこに向かっているのか……お楽しみという事でまだ秘密です。

Q.瑞貴の行動が……
A.当然の行動と言えば当然の行動なんですけどね……違和感を感じるのは何故でしょう?
きっと決闘(デュエル)脳の世界だからです、瑞貴は悪く無い……世界が悪かった!
という事にしておきましょう、犯罪はいけません。

Q.クロノスの思考が……
A.初期の彼ならな感じだと思います。
生徒想いになるのはまだまだこれから……クロノスってイイキャラですよね?

Q.結美はみんなを名前で呼ばないの?
A.まだそんなに親しくないのです。
裏話ですが、今回結美と明日香達が一緒に居た理由ですが
同じ時間に風呂に入っていたという、ただそれだけでまだ友達所か知り合いとも言えませんでした。
実は半分ぐらい偶然巻き込まれただけだったり……

Q.結美って……
A.実は恥ずかしがり屋です。
本当は翔と顔を合わせるのも嫌なぐらい恥ずかしがっていたりします。
瑞貴が居たので我慢、半分無視していましたけど……結美は頑張った!

Q.結局、翔って謝ったの?
A.どこを読んでも謝っていませんね、うやむやで流れてしまいました。
それが後々……なんて事になったりするかは不明。

Q.結美のストーカー扱いに関して
A.そう思われても仕方無い。

Q.可愛い人形?
A.スルー

Q.結美のデッキって具体的には?
A.瑞貴の予想通り、自己再生を中心としたデッキです。
ちなみに今回のデッキはリアルで組めます。
あまり強いとは言えませんが、楽しいので試してみては?

Q.瑞貴の今回のデッキについて
A.本人の言う通り、デッキバウンスデッキ……読みにくいですね、【デッキバウンス】デッキです。
とにかく場のカードをデッキに戻すカードを多用した実はかなり鬱陶しいデッキです。
風属性モンスターがそれなりに多いので風霊術はそこまで事故カードではない……かも?
結美のアンチデッキと言っていますが、実は墓地依存や特殊召喚モンスターの天敵ですね。
十代のアンチデッキとなるので彼からすればかなりの天敵だったりするデッキです。

Q.今回は戦闘描写や容姿描写が多くない?
A.ADSというフリーソフトをDLしてきました。
好きにデッキを組めたり、カードイラストも出てくるので参考にしています。
今までですか? 実はカードイラストも知らずに使っているカードも多かったり……
ちなみに結美のデッキはADSで実際に組んでみましたが、まぁまぁの強さですね
事故率がやや高めなのはコンボデッキの宿命ですが……
要望が有れば活動報告の方にデッキ内容を乗せます。
瑞貴のデッキは……組んでませんのでご自分で考えてください。

Q.体感システムって……
A.オリジナル設定ではなく、本当に存在する設定です。
社長のIQを計ってみたいですね……凄そうなので見てみたいような、見たくないような……

Q.瑞貴の読みが凄い!
A.瑞貴は頭が良いのです、体は貧弱ですが……
この頭を嫌がらせとかに使わず、社会に貢献できれば……残念な性格ですね。

Q.瑞貴のその辺りの設定について
A.性格や行動が悪いので勘違いしそうですが
彼自身の頭は良く、カードが大量なので実力を発揮できます。
頭が良くても、カードプールが狭ければどうしようもありません、そういう事です。
カード枚数種類チート、頭脳チートなんですかね? 頭脳はある意味元世界では普通ですが。

Q.A・ジェネクス・バードマンは特殊召喚できるよね?
A.自身の効果で特殊召喚したバトル・フェーダーは手札に戻せないと勘違いしていました。
できるようです、結美の勘違い、知識不足だったという事にしておいてください。

Q.結美の元の世界のデッキについて
A.ほぼ【超魔神イド】一択です。
しかし彼女が遊戯王をもっと早く始め、カードを持っていればそれらのデッキを使ったかもしれません。

Q.E・HERO キャプテン・ゴールドの値段凄い!
A.誰が買ったんでしょうね?

Q.十代に出した条件が地味に酷い!
A.嫌がらせですからね。
そして露骨に十代VS結美のフラグを立てる作者は卑怯。

Q.結美が持っていないカード
A.ご都合主義故にスルー推薦。

Q.瑞貴の結美への扱い方が酷い
A.そういう奴ですので……彼の人の見方自体がきっと間違っているのでしょう。
そこはやはり大人と子供の違いですね、年齢の差は大きいのです。



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