ログ・ホライズン ~落ちた浮遊城アインクラッド~   作:マスカルウィン

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パルムの深き場所を探索中のシロエ達です。
次にはススキノある程度まですすめたらいいなぁ……




第七話

 シロエ達一行は、グリフォンとワイヴァーンを使い、一気にティアストーン山地にある、パルムの深き場所に向かっていた。

 その道中、キリト達はこの世界の食事を食べ、なんともいえない顔になった。

 

「……なんだこの味」

「――私の食べ物だけじゃないのね」

「あはは……」

 

 シロエの乾いた声で、キリトはこれが現在のこの世界の食事と瞬時に判断してしまった。

 にしもて、おふをふやけさせた様な味は……

 

「本当にこのまず飯だけはなんとかなれねーもんかな……何を食べても同じ味! 何を飲んでも同じ味! ありえねーだろ!」

「味覚エンジンが壊れている感じではない――、そういえばアインクラッドがおかしくなった時もお茶が同じ味になっていたような……」

「そういえばそうだったわね、アインクラッドがおかしくなる前までは、味はしてたから、機械の故障とか、私たちがおかしくなったわけじゃないと思う」

「そっちのゲームには、料理システムもあるんですね、ちなみにどんな感じなんですか?」

 

 シロエの質問にキリトとシノンは固まる。

 

「いやぁ、俺はアスナに作ってもらう専門だったから……」

「私はそもそも料理するようなゲームに居なかったし――」

「キリトはそのアスナさんに、依存しすぎではないだろうか?」

「いや、ほらね? 俺は食べる専門というか胃袋を掴まれたというか……」

「なるほど――攻略されてしまったのか」

「キリトが攻略され祭りってわけか!」

 

 そういう風な会話をしつつ、味のしない煎餅のような、ホットドックを食べていると、

 一歩離れた所で話を聞いていたのか、アカツキがちょこちょことシロエに近づいて行った。

 

「主君はやはり、料理が美味しい人の方がいいのか?」

 

 ピクリとシノンの耳とキリトの体が動いた気がした。

 直継は聞こえたのか、聞こえてないのかわからないが、笑っている。

 

「そりゃ、こういう料理だと味気ないし――アカツキさんは毎日こういう料理だと嫌でしょう?」

「――そうだな、やはり美味しい料理の方がいいな」

 

 シノンがあからさまに、残念な顔をしており、キリトも少し残念そうな顔をしていた。

 

「なんだ――、味のする料理の話じゃないのか……」

「そっち! いや、そういえばキリトだったわね」

 

 シノンが驚いた声をキリトにぶつけて、キリトは持っていた食べ物を落としそうになる。

 キリトは頭にはてなマークを浮かべていたが、シノンは呆れた顔で見つめた後、アカツキの元に行った。

 

「なんなんだ一体」

「あれだな、キリトはもう少し女心をわかったほうがいいかもしれないな!」

「……?」

 

「アカツキさん!」

「なんだ?」

「その――、シロエさんは鈍感じゃないですけど……こう回り道をして攻めるのは」

「いや、私は単純に主君が料理上手と料理上手じゃない人がどっちの方が好みか聞いただけだ、ちょっと気になっただけで、他意はないぞ? そもそも私は<<暗殺者>>だからな、サブ職業を変えるつもりはないし、料理は作れないだろう」

「――? アカツキさんってその、シロエさんを狙ってるんじゃないんですか?」

「そのつもりはないぞ、ただ単純に主君のことが気になっただけだ」

 

 シノンは心の中で、それは恋心なのでは? と思ったが口には出さなかった。

 アカツキさんって私より、年下なのかな? 女の子は見た目ではわからないけど……

 

「そうだシノン、私のことはアカツキで」

「了解、アカツキ」

「こちらこそ」

 

 なんというか、言葉足らずなんだよね、アカツキって。

 シノンがアカツキに抱いた感情は、そんな感じであった。

 

「それじゃ、そろそろパルムの深き場所に入ろうと思う、皆準備して」

 

 各々野営していた場所から、荷物をまとめ洞窟の前に立つ。

 キリトはその洞窟を見上げながら、ALOと比べての改めて情報量の差に驚いていた。

 人は五感により辺りの情報を集める。

 すなわち、目で見て、耳で聞いて、肌で触れて、味を確かめ、匂いを確かめる。

 ALOでは、その五感をネット空間にダイブさせ、擬似的に触ってるような感じを脳に認識させてた。

 現実世界の俺は一歩も動いてないが、仮想世界の俺は、飛び跳ねて敵と戦っていると言った感じだ。

 しかし、いくら優れた機械といっても、五感全てを再現するのは難しいものがある。

 仮想空間に慣れ始めてからは、その違和感が完全に消えるのだが、現実世界のものと比べると感触がなんとなく違うと言った感じは良くある。

 一番わかりやすい例がお風呂だろう。

 SAOではお風呂が存在したが、ナーヴギアでも水の表現は限界があるらしく、肌等に違和感を感じた。

 無論数回も入っているうちにその違和感は、無くなったのだが――。

 つまるところ、VRMMOでは絶対的に再現できない物が多数存在するはずなのだが――。

 この世界では、それが少ない気がする、地面を踏んだ感触、木々の匂い、細部にいたって違和感を感じることが出来ない。

 逆にメニュー画面や、HPバーが見えるのが違和感に感じるぐらいの情報量だ。

 

「キリト? どうしたの、行こうキリトの知り合いも待ってるんだろ?」

「あ、あぁそうだなシロエ、行こうか」

 

 とりあえずその思考はおいて置こう、クラインを救出して、クリスハイトにも一度相談してみなければ――。

 洞窟を進んでいると、独特の目線を感じ、剣を構える。

 

「敵か――?」

「<鼠人間>だ。 こちらから仕掛けなければ攻撃してこないよ、僕達はレベル90相手はレベル40ぐらいだからね」

「バッドステータス、疫病をばら撒く面倒なモンスターだぜ、キリト、シノン二人共渡した対病毒ポーションは飲んでるか?」

「あぁ、飲んでるよ」

「同じく」

「とはいえ――、完全に防ぐわけじゃないし、出来れば戦闘は避けたいよね」

 

 シロエはそういうと、進行方向とは別のルートを歩き始めた、シロエ達の説明によると、バッドステータス疫病は、HPの回復を妨げ、持続的にダメージを与ええるらしい、気分も悪くなるだろうし出来るだけ俺自身避けたい。

 周辺警戒をしながら地図を持っているシロエについていくと、進む方向に小さな子部屋が見えてきた。

 子部屋の中に入ると、天井に大量の赤眼の<鼠人間>がおり、その下に通路が広がっている。

 

「強行突破するか?」

「――いや、やめておこう疫病は怖いし、さっきも言ったけど出来れば戦闘は避けたい」

「倒せないか?」

 

 キリトが剣を構えながら言うと、シロエは小さく首を振った。

 

「倒せないことはないけど、バッドステータスを被りたくないし、僕達のパーティーには何より回復職が居ないから……」

「あぁ、そういえばそうか」

「とりあえず、一度戻ってもう一回違うルートで行こう、この先に少し休憩できるポイントがあるはずだから、一度そこで休憩して行こうか」

「わかった」

 

 その場所に着いたのか、直継は何も言わずに焚き火の準備をし、傍に腰を下ろした。

 シロエはその明かりを頼りに地図を見ているようだ。

 

「僕はマリ姐についでに提示連絡してくるよ、アカツキは――」

「偵察してくる」

「お願いします、出来ればこのフロアと、その先に通路があるか確認して欲しいんだけど」

「心得た」

 

 そういうとアカツキは、音も無く消えた。

 キリトとシノンはどうしていいかわからず、顔を見合わせていると。

 

「お二人さんこっちで、軽食取ろうぜ食べる時に食べとかないと――まず飯だけどな……」

「あはははは……」

 

 力なく笑いながら、用意されたピザを食べる――、ふやけたお煎餅の味がした。

 3食これは……中々辛いものがある。

 そしてこの食事は食べれないものではないというのが、また悔しいところだ。

 

「料理人が調理してもこの味だったしなぁ……」

「料理人?」

「あぁサブ職業の一つだな、これを持っていると料理が出来るようになる、けど料理人が調理しても同じ味だったんだよなぁ……」

 

 もそもそと直継いわくマズ飯を頬張る。

 こういう味の食事を食べていると、アスナが作ってくれた食事が恋しくなる。

 

「ただいま戻ったぞ主君、この先のフロアは――」

「おかえりアカツキ、ありがとう……うん基本的な構造は変わってないみたいだね」

「直継サブ職業って?」

「ん、あぁそうかキリト達は知らないのかえーっとな……」

「僕の場合は筆写師、こういう地図とかを作成する事ができるのが主な特徴かな?」

「俺の場合は辺境巡視だな! 簡単に言うと今このゾーンに誰が居るのかって言うのを見ることができる」

「私の場合は追跡者だな、隠密行動に必要なスキルを会得することができる」

「へー、職業は12で、サブ職業は沢山あるんだな」

「そうだね、サブ職業は無限にあるといわれてるから――、そういえばキリトとシノンのサブ職業って何になってるの?」

「そういえば――、前にステータス画面で見たことがあるような……あった「スプリガン」だ」

「私は、「ケットシー」だね」

 

 その言葉を聞いて直継は頭を捻る。

 シロエも同じように考え込んでいた。

 

「聞いたことあるか? シロ」

「いやないね、キリト達は聞いたことある名称なのか?」

「あぁうん、スプリガンとケットシーっていうのは俺達のゲームの種族だな」

「ALOでは火妖精族(サラマンダー)、水妖精族(ウンディーネ)、風妖精族(シルフ)、土妖精族(ノーム)、闇妖精族(インプ)、影妖精族(スプリガン)、猫妖精族(ケットシー)、工匠妖精族(レプラコーン)、音楽妖精族(プーカ)、9つの種族に分かれているうちの二つだね」

「ここでの、ハーフアルヴとかと一緒の扱い? いやそれならサブ職業にはならないか」

 

 キリトがシロエの言葉にはてなマークを浮かべていると、シロエが慌てて、続けてといってきた。

 

「俺の場合はスプリガンだな、ここでのメニューを見る限り、ダンジョン探索とかそういうのに強い魔法だけ使えるみたいだ、例えば……オース・ナウザン・ノート・ライサ・アウラ!」

 

 キリトの周りに英語の文字が舞った後、光が各々の体に吸い込まれていった。

 が見た目はどうにも変わった様子は無い。

 

「それで?」

「焚き火を消して暗闇を見てみたらわかるよ」

 

 その言葉に直継は焚き火を消す。

 

「おぉ! 暗視時でも見えるようになるのか!」

「俺達の世界でスプリガンが得意な魔法だけは、ここでも使えるようになるのが俺達の種族のサブ職業らしい、俺達のゲームではどの職業もやろうと思えばどんな魔法も唱えられたからな――」

「という事は、戦士職でも魔法が唱えられるのか」

「いや、それは違うぞシロエ、さっきも見たと思うが詠唱するには意味を理解して、きちんと発音しないと魔法は発動しない、戦いながら前衛で魔法を唱えるのは不可能かな? それに詠唱する時は手か杖を魔法を唱える方向に突き出して詠唱しないと多分発動しないと思う」

「中々面倒な制約がありそうだね。 キリトの言い方を考えると、魔法の詠唱は暗記式?」

「YES」

「うわぁ……僕には無理そうだね」

 

 シロエは苦笑いを言いながら、再度焚き火を開始させた。

 

「シノンの魔法は? えっとケットシーだっけ」

「私は魔法を全然覚えてないからわからないけど――」

 

 小さくスペルを詠唱し、弓を構えて何かを狙い、矢を打つ。

 タンという小さな音が響いた後、シノンは矢から伸びた糸を引っ張った。

 

「っと、これが私の使える魔法」

 

 少し重そうに引っ張ってきたのは、少し大きめの宝箱であった。

 

「何引き寄せてるんだよシノン!」 

「え? えーっとあれか、お正月にコタツに入りながらボタンを押せるって奴か!」

「どちらかというと、矢を無駄に消費させないような魔法だと思うけど……?」

 

 シロエがキリトに同意を認めるように言うと、キリトは小さく頷いた。

 

「本来近くのものを引き寄せる用途が本来の扱い方だからな、こういう使い方は間違ってるが――、せっかく手に入れた宝物だ開けようぜ!」

 

 いそいそとキリトが宝箱を開けるのを、他のメンバーが後ろから見つめる。

 キリトが宝箱を開けると……

 

 『対病毒ポーション』が数個宝箱に入っていた。

 

「お約束といえば、お約束か」

「だね、使えないこともないしありがたく保存しておこうね?」

「なんというか理不尽だな」

 

 そんな会話をした後、荷物をまとめてダンジョンを進む準備をする。

 

「そういえば筆写師といっても、地図書くのが急に上手くなるわけじゃないだろ? 何かリアルでやっていたのか?」

 

 キリトがチラリとシロエが持っている地図をさっき見たが、見事な完成度だった。

 

「あぁうん、大学でCADを使ってたから――、あCADってわかる?」

「確か、パソコンでやる製図のことだったか? 俺は触ったことないが」

「主君は大学生なのか、では私と年齢は同じなんだな」

 

 ピタッと歩み続けていた足が、アカツキ以外止まる。

 

「え、アカツキって大学生だったの!?」

「冗談だろ!? どう考えてもおこちゃま、グフッ」

 

 壁に叩きつけられた直継の姿を見て、キリトは言葉を飲み込んだ。

 

「――主君、主君も私のことを子供だと思っていたのか?」

「いやまぁ、別に子供っていうか――、困るなぁ」

「背が低いのを羨ましい人も居るから、アカツキ気にしすぎとは思うけど、私はアカツキぐらいの背丈の人嫌いじゃないよ?」

 

 シノンがそうサポートしてくれ、シロエはため息を出した。

 ナイスサポートシノン! けどシロエこの借りは多分シノンに使われ始める第一歩だぞ!

 とキリトは言いたかったが、シノンに何を言われるかわかったものではないので保留にしておいた。

 

「長かったけど、ようやく外だ」

 

 大きなトラブルも無く、ようやくダンジョンの外に通じる穴を見つけ、外に出る。

 

「すげぇ」

「うん」

 

 キリトとシノンはそんな感想しか、声に出すことはできなかった。

 地平線から昇り始める太陽を見つめながら、小さく感想を漏らす。

 

「風が冷たいっ」

「やっと抜けたな、難所越え祭りだぜ!」

 

 シロエ達がそんな感想をあげてるときに、キリトはこの世界について認識を改めた。

 この世界は――、VRMMOに近い異世界の認識の方が今後過ごしていくのに、いいのかも知れない。

 いや、違うなアンダーグラウンドはもう一つの世界という認識があった。

 茅場が言っていた言葉ある。

『キリト君、私はこうも思うのだよ、あの鉄の城はもしかしたらどこか別の世界にあるかもしれないと』

 その時に俺は、そうだといいなと答えた。

 そんな世界は無いとわかっていても、そんな世界があれば嬉しいなという言葉だったのかもしれない。

 しかし――、この世界にはVRMMOではなく、もしかしたら本当にアインクラッドがあるのかもしれない、そう少し考えてしまった。

 

「僕達が、この異世界でこの風景を見た――、最初の<<冒険者>>だ」

 

 異世界、シロエが言ったこの言葉が、ストンと自分の胸に落ちる気がした。

 あのアインクラッドはもしかしたら、この世界に昔から存在して物で、何らかの原因で茅場が再現したかもしれないと。

 そんな事はありえないのに、そんな風に考えてしまう自分が居た。

 真実はわからない、何故この世界に俺たちが来てしまったのかも。

 

「そうだな、こんな景色は<エルダー・テイル>の時だって見た事がねぇ」

「私たちの始めての戦利品」

「今度は……」

「キリト?」

「次はアインクラッドに居る皆で来よう、俺が始めてこの世界が異世界を思った景色を皆に見せてたい」

「いつか、実現できるといいねキリト」

 

 何秒、何分その光景を見つけたかわからないが、シロエがまず鞄から笛を取り出し、高らかに笛を鳴らした。

 それにあわせて、直継とキリトも笛をならし、各々召喚したモンスターたちに飛び乗る。

 

「目指すはススキノ! 待っていろよクライン!」

 

 シロエ達は、一同ススキノを目指す。

 

 

 

 

 その頃

 

「レイネシアよ、前に聞こえた声の話だが――、どうにも大きな城が海の上に落下したようなのだ、民から空飛ぶ城が落ちてきたという話を聞いてな」

「城が……ですか? 最近の冒険者のこともそうですが、問題が多発しておりますね……」

「そうだな――。 いやだがそれだけではないぞ、どうにもその城には<<冒険者>>は居ないらしいのだ」

 

 レイネシアは少し首をかしげる、そんなところから落ちて無事なのは<<冒険者>>しか記憶に無い。

 

「その噂の城に居る人々は、背中に羽を持つ、妖精族という種族らしい」

「すると、可愛い外見の方ばかりなのでしょうか?」

「いや、そうではないらしい、<<冒険者>>と同じぐらいの力を持ち、冒険者と同じように死しても復活することができるらしいのだ」

 

 そこまで話を聞いて、レイネシアは疑問が沸いてきた。

 

「おじい様、どうしてそこまで知っておられるのです?」

「どうにもその城からやってきたという人物に接触できてな、こっちに来てくれるか「キリト」殿」

 

 そう声をかけると、扉を開き、一人の黒ずくめの少年がこちらに向かって歩いてきた。

 

「お初にお眼にかかりますレイネシア姫、始めまして「キリト」と申します。 そして改めてセルジアット公爵には、私のような者のいう事を聞いていただき、ありがとうございます」

 

 物語は、少しずつ動き出す。 




あ、一応補足です。
最後の登場人物はSAOWEB版の登場人物です。
設定とか面白そうなのでそのまま引っ張ってきました。

シリアスが行方不明なので誰か捕まえてくれると嬉しいです。

では亀更新なのはお察し。


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