仮面の英雄、つまりは私?   作:虚灯

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かなりご都合主義が出てきました。


重畳、戦争、アドバンテージ。

「私のチートは、まず身体能力と五感、それに魔力と気の上昇。

 最大で、って頼んどいたから、それなりにはなってると思うんだけど。

 ついでに『鈍らないように』とも願ったから、幼女生活で劣化してるってことも無いと思うよ」

「ふむふむ」

 

真剣な顔で頷く光希。な、なんかやり辛いぞこれ?!

 

「えー、ごほん。

 二つ目は、パタポン3ってゲームの能力。……って、知ってる?」

「えっと、一応名前ぐらいなら……パタ、パタ、パタ、ポン♪ ってやつだよね?」

 

言いながら、光希はちょっと不安そうな顔になった。

まあ、確かにどんなのだか見当もつかないだろうしね……

 

「そうそう、それ。1と2は、パタポン軍を太鼓の音で導いてくゲームなんだけどさ。

 3からは違って、RPGの要素とかもある感じだったんだけど……まあ、とにかく。

 簡単に言ってしまえば、ゲームのキャラと同等に武器を扱えるように、って感じ」

「具体的には?」

 

え゛。

 

「ええっと、ねえ。

 槍系、弓系、盾系、大きく分けて三つの系統がありまして。

 んで、それぞれの系統に、7つずつのクラスがありまして?

 各クラス、違った能力とかで特色があるから、それで……

 ……なんなんだろ。私、多分変身するイメージだったんじゃないかな?」

「なるほど、変身ね」

 

神妙に頷かれて、こっちはとても居たたまれない気分になる。

だ、だってさ。変身だぜ? 年頃の娘が!

……あ、今は小学生か。その年だと別にそういうのに憧れても、なんらおかしくは……

いやいや、でも、さ。パタポンが悪いって訳でもないんだけど……

……うう、能力の確認もしてこなかったツケが、こんなところで!

 

「三つ目! それで使う武器とか装備全部!

 +いくつで武器のランクとか違ったから、それも全部って頼んだはず」

「え? それ、いったいどこにしまってあるの?」

 

誤魔化すように叫んだら、光希はもっともな質問を投げかけてきた。

 

「ああ、それはね。四つ目! ドラクエシリーズの各種装備・アイテム全部!

 ……を頼むときに、『倉庫みたいなのも』って頼んだから、一緒になってるんじゃないかな?」

「なるほどね。それって、所謂亜空間みたいなやつ?」

「……少なくとも、私はそのつもりだったけど」

 

なんだろう、今さら自分の願い事がまるで役にたたないもののような気がしてきた。

だってさ。光希の聞いてたら、すごい考えられてて……

行き当たりばったりとその場のノリで考えた私のが、なんだか恥ずかしい気がする。

 

「んで、五つ目。ドラクエシリーズの特技・呪文全部。

 とまあ、こういうラインナップな訳ですよ」

 

半ばやけっぱちになりながら、そう締めくくった。

……これは、なんというか。とてつもなく不安になってきた。

最初からこの調子で、これから先、大丈夫なんだろうか?

 

「じゃあ、質問。ドラクエの装備って言ってたけど、武器とかだよね。

 『パタポンの武器を使いこなす』って条件に当てはまらないけど、どうするつもり?」

「うっ!? えっと、槍系クラスでならドラクエの槍も使えそう、とかで……」

「んー……」

 

光希は、難しい顔をして黙り込んだままだ。

な、なんかマズったか?! さすがに楽観的過ぎたかもしれない。

内心で冷や汗をかきながら、じっと反応を待つ。とても心臓に悪い。

 

「え、えっと。もう一つだけ聞きたいことがあるんだけど」

 

そろり、とためらいがちにそう切り出されて、思わず姿勢をただした。

 

「な、なに?!」

「いや、そう大したことじゃないんだけどさ……」

 

と、言いながら、なかなか話しだそうとしない。

何がそんなに言いづらい。はっきり言えよ!

と、内心やきもきしていると……

 

「あの、さあ。願い事って、5つまでだったよね?」

「うん。そう聞いたね」

「なんか、どう考えても5つに収まりそうにない分量なんだけど……?」

 

……は?

 

「んなことないさ、ちゃんと5つになってたし」

「いや、普通は2つか3つ願い使うでしょ、ってのもいくつかあったよ」

 

マジ? え、それって具体的には?

 

「そうだね、僕が神さまだったら……

 1,五感と身体能力上昇

 2,魔力・気の増加

 3,パタポンってゲームの能力

 4,パタポンってゲームのアイテム

 5,色々な武器を扱う技術

 6,ドラクエシリーズのアイテム

 7,ドラクエシリーズの特技・呪文

 8,亜空間的倉庫

 ……とまあ、このぐらいには分割するけど」

「……うそぉ」

 

え、なんで? そんなに分ける?

 

「聞いた話なんだけどさ。他の転生者だと、これぐらい別カウントにされて普通らしかったよ。

 場合によっては、魔力と気も別にされたってさ」

「えーっ?! なんでさ! なんでそんなにケチなの?!」

「ケチ……って、僕に言われても。実際そうらしいよ?

 考えた能力が全部は叶えてもらえなかったー、とか文句言ってる人も多いし」

 

えー、うそぉ。マジでか。

これは、なんなんだろ。喜べばいいのかな?

それとも、私の前に現れた神が、いい加減だったと嘆くべきか……

……いや! きっと喜ぶべきだ! ちょっとしたアドバンテージになるし!

 

「そういえば、この辺りの能力、まだ使ったことないって言ってたよね?

 使い方分かる? 才能系は、使い方も何もないと思うけど」

 

私が考え込んでいると、光希はさらりと話題を変えてきた。

というか、そっか。元はそんな話をしてたね。

 

「それなら大丈夫だよ。怖くてまだ付けてないけど……」

「付ける?」

 

私がそう言うと、光希はちょこんと首をかしげた。

えーっと、確かどっかのポッケに入れてたはず。私は、服のあちこちを探す。

変な物(ブツ)だけど無くしたりしたら怖いし、肌身離さず持ち歩いてはいるんだよね。

 

「っと、あったあった」

 

ようやっと見つけたのは、黒い二重丸の上に剣と杖が交差するような、女の子がつけるには……

……というか、単に意匠として考えてもどうかと思うようなヘアピン。

あの神、センスなかったのか。これを見るたび、毎回思う。

 

「1歳の誕生日の時に来たんだけどさ。

 『これで全て これが全て 後は頑張れ By神』って付箋付きで、枕元に置いてあったんだよ」

 

内容は意味不明だけど、これに能力のことは全部集約されてるんじゃないかなー、と。

光希は、またなんとも微妙な苦笑いを浮かべた。

 

「……色々ツッコミどころはあるけど、とりあえず付けてみたら?」

 

そう言われて、私はじっと手の中の小さなピンを見つめる。

確かに、この5年間肌身離さず持ってた物だから、愛着はある。

だけど、これがあのヒカリアメーバが寄越したものであることは事実だ。

後から考えると、私の注文も相当足りないところがあったし、なんか怖いような……

 

「……ええい! 女は度胸だ!」

 

一発気合を入れてから、私は前髪にそれを付け……

……付け……

 

「……光希ぃ……」

「あー、はいはい。しょうがないなぁ」

 

思わず子どもスイッチが入り、泣きべそをかく私をなだめながら、そっと前髪を留めてくれた。

……本気で先が思いやられる。主に私の。

 

「……どう?」

「ちょっと待って……」

 

じっとこちらを伺う光希に、私はとりあえず意識を集中してみる。

すると、ポンっという擬音がつくような感じで、視界に重なるようにウィンドウが現れた。

 

「おっ?」

「何か出た?」

 

光希は一旦放置して、私はヴァーチャル・リアリティチックなそれを観察する。

項目は上から順に、

 

 【はじめに】

 【神戦(かむいくさ)とは】

 【チート概要】

 【ステータス確認】

 【装備設定】

 【スキル一覧】

 【プリセット設定】

 【情勢】

 

……なんかスゴい詳細な説明キタ?!

なんでさ?! 頼んでないでしょうよそんなこと!

しかも、明らかに今後有用そうなオマケまである。至れり尽くせりとはこの事か。

 

「え、なに? どうしたの?」

「いや、なんかスゴい詳細なメニューが……」

 

上の空で答えながら、とりあえず【はじめに】を選択する。

ちょっと意識しただけで、パッと画面が切り替わる。

 

『  はじめに

  いい加減いい加減とうるさいので、ヘルプを用意してみた。

  これほどアフターサービスが充実しているのは、参加者の中でもあなただけ。

  望みの超過も見逃したから、感謝してキリキリ働いてほしい。

 

  そうは言っても、こちらからの欲求はただ一つ。

  神戦(かむいくさ)でのポイントを、できるだけ多く集めること。

  詳しくはメニューを参照するといい。

 

  あなたの活躍に、私の昇進がかかっている。

  健闘を祈る。

                あなたの神こと、無常の番人ヘルミリウスウェール  』

 

…………。

 

意味が分からない。特に最後の。あの神の本名かね?

というか、よく考えてみれば神さま側の利益を聞いてなかったか。

何をすればいいかも知らないし、あいつどんだけいい加減だったんだか……

と、いう私の認識の裏をかこうと、このようにマメなヘルプを寄越したわけですね。

どこまでも天邪鬼……いや、それはちょっと違うか。

ここまで徹底してると、逆に感心するっての。

 

「メニュー? 能力の使い方とか載ってるってこと?」

 

と、光希がこらえきれなかったように聞いてきた。

 

「うん、それっぽい。というか、神さま連中の目的とかも書いてくれてるっぽい」

「あ、神戦についてとか?」

「……なんですと?」

 

知ってたんかよ。目を見開く私に、光希はこともなげに説明する。

 

「数千年に一度、神さまの昇進・降格をかけて執り行う勝負のことだよ。

 神さま同士が戦うと大変なことになっちゃうから、代理人を立てて戦ってもらったのが始まり。

 今回だと、位の動かない神さまに審査員を頼んで、僕らの行動を点数化するんだってさ」

 

慌ててメニューを切り替えると、確かに言われたのと同じ内容が、より詳しく書いてあった。

神戦は辞退もできるけど、今回から不参加者は強制ランクダウンになった、とか。どうでもいい。

私に関係あるところだと、得点を集めれば、審査員からボーナスがもらえたりする、ってとこ?

どんな行動がどんな点数になるかは秘密だけど、場合によっては減点されることもあるらしい。

そして、唯一開示された減点対象の行動は……

 

「雇い主と敵対する神の代理人と手を組んだら、大幅減点だと……」

 

逆に敵の代理人に被害を与えられれば、得点だと書いてある。

そんなんどうやって調べるんだよ、って思ったら、一番下に一覧表が載ってた。

しかも、ご丁寧にも対応する代理人の名前も併記されている。

私はざっと目を通して、光希の名前が書いてないことを確かめた。よかったよかった。

 

「え? そんなルールあったんだ」

 

その光希の言葉を聞いて、その情報は他の参加者には明かされていないことがわかる。

これは……

 

「……ものすごいアドバンテージになるんじゃない?」

 

私は、にやりと笑みを浮かべた。


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