仮面の英雄、つまりは私?   作:虚灯

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更新遅れました。
これからも、だいたいこんな間隔になってしまうと思います。
思いつきと行き当たりばったりで書いていくので、話の辻褄などは期待しないでください。

内容は前回からかなり飛んでいます。原作開始まではもう少しかかるかも。


夢のような日常から、めんどくさい舞台裏へ。

時は飛びまして、小学校入学。

だいぶ原作メンバーが多い。さすがにこの年になれば判別がつく。

まだクラスはバラバラだけど、原作で仲の良い人は既に結構仲良しだし。

……ただ問題は。

 

「おい、聞いているのか!」

 

こいつだよなぁ……

私は、目の前でふんぞり返っている金髪紅眼の男子を、げんなりした目で見つめた。

お察しの通り、新手の転生者です。

 

「あーはいはい。聞いてますよ。で? なんの話でしたっけ?」

「……雑種の分際で、我の話を流すか……!」

 

そして、このセリフで誰をオマージュしているかもまるわかり、と。

ギルガメッシュ、だっけ。よくは知らないけど、随分と傍若無人なやつらしいね。

なんだか背後の空間がゆらゆら揺れているけど、そこから何かが飛び出す気配はない。

その辺りが、あくまでそれっぽく振舞っているだけで本人じゃないことを裏付ける。

……まあ、当たり前か。

 

「落ち着けよエセ慢心王。雑種も何も、あんたもただの偽物だろうに?

 そもそもあんた、普段はそんな口調じゃないじゃん。

 同じ転生者の前だからって、わざわざキャラ作らんでも……」

 

そう、そもそもこいつ、普段は結構な優等生だ。

優男風な風貌で、いつも穏やかに笑ってる感じの。かなり秀才。

わかるよ? そっちが素なら、そんな我儘に普段から振る舞うなんて難しいわな。

気持ちはわかる。大方、憧れすぎてちょっとこじらせちゃったんだろう。

 

「……はあ。どうやら噂通りの人みたいだね」

 

しばらくジトッと見つめていると、憂鬱そうな溜息と共に口調が元に戻った。

高圧的なところなど何もない、穏やかで親しみやすい雰囲気だ。

色味は鮮やかなれど、そこに宿る光は柔らかく、知的で大人びている。

私はそれを見て、内心でかなりホッとした。

あのまま金ピカキャラを続けられてたら、マジで宝具が飛んできかねなかったし……

破れかぶれになったやつほど危ないけど、こいつはそこまで浅慮じゃなかったらしい。

 

と、そこまで考えて、私はやっと頭に入ってきたセリフに首をかしげた。

 

「噂?」

「知らないの? 他の転生者たちの間では、君って結構有名だよ。

 なんの能力を持っているのかもさっぱりわからない。

 どのキャラ狙いなのか、目的も何も検討がつかない。

 ぱっと見普通の子供にしか見えないのに、なぜか原作キャラと親しげだ、ってね」

 

(そ、そんな話に……)

 

私は、思わず頭を抱えた。

なんの能力かわからない? 使ったことないから当然だ。

どのキャラ狙い? そんなの興味ない。原作介入も同様に。

普通の子供にしか見えないって、そりゃ今の私はただの子供だし。

そもそも自分たちの奇怪な行動を棚に上げて、人の友好関係をとやかく言わないでほしい。

 

「何か能力使って洗脳してるんじゃないか、って話まで出てるんだよ?」

「はあ?! んな馬鹿な! そもそもそんな能力持ってないし!」

「だよねぇ……」

 

予想外の話に思わず叫ぶと、呆れたようにため息をつかれた。

え、嘘。そんな話になってたの? 他のやつと交流無いし、全然知らなかったんだけど。

というか、洗脳だって? 私は普通に遊んだり遊んだり遊んだりしただけだ!

それを、そんな……文句なら変にキャラ作った自分に言え!

 

「まあまあ、気持ちはわかるけど……」

 

と、秀才な慢心王、略して秀才王にポンポンと肩を叩かれた。生暖かい目つきで。

 

「なにさあんたは……!」

 

そもそもそっちが先に喧嘩売ってきたんだろうが!

と激昂しそうになった時、肩を掴んでいる手の力が強くなった。

 

「……わかる、んだよ」

 

いきなり声のトーンをガクッと落とした秀才王に、私は思わずその目を見る。

火のように紅い瞳に映る、氷のように冷たい光。

……え、なにどうした?

 

「僕もね。ギルガメッシュがかっこいいからって、深く考えもせずこの容姿にしたけど。

 だけど、人の思い込みって、恐ろしいものなんだよね……?」

 

そう言いながら、肩をつかむ手に込められた力が、だんだん強くなる。

って、ちょ、痛い痛い痛い?!

 

「あ、ごめん……」

 

バシバシとその手を叩くと、秀才王ははっとした顔で手を放した。

いったぁ……私が身体能力チートをもらってなかったら、肩の骨砕けてたよ?

 

「あんたって奴は……」

 

ジトッとした目で見つめてやると、バツが悪そうに目、というか顔を逸らされる。

……うん。そういう表情してると、将来有望そうなただのガキだな。

 

「まあ、あんたが不用意な選択をしたせいで、余計な被害を被っているのは分かったから。

 というかそれは自業自得。私にはなんら関係ございません。自分で何とかしろって話だ。

 ……で、だ。あんたはそもそも、私になんの用があったわけ?」

 

そう、それが問題だ。

何か最初に色々エラソーに言ってたけど、全部聞き流してたし。

正直な話、私にはこいつの目的が皆目見当もつかない。

 

「あー……それは、もういいよ」

「は?」

 

ところがこの似非王ときたら、そんな事を言いやがった。

What? 何? なに一人で完結しちゃってるわけ?

 

「ただ、他の転生者とかに敬遠されて、その影響で他のクラスメイトにも遠巻きにされてて。

 それなのにやけにセカンドライフを満喫してそうな人がいたから、そのー……

 ……キャラ作り兼ねて、八つ当たりでもしようかと」

 

最初は本当に何でもないように、なんだか他人ごとのように言っていたのが、

途中で自分の言っていることに気づいたのか、段々声がちっちゃくなっていって、最後の一言は消え入りそうだった。

……うん。

 

「殴っていいか?」

「ごめんなさいっ!」

 

凄みながら握り拳を持ち上げたら、ばね仕掛けのようにピョコタンと頭を下げられた。

賢そうな顔して、こいつも実はただのバカだったわけか。まあ、わざわざ慢心王の容姿を選んでる辺りで察してたが。

ホンットに、もう。

 

「転生者ってのは、何でこうガキっぽいのが多いかね?」

 

なんて、人のこと言えた話じゃないけど。

今までバカどもに巻き込まれてのあれこれを思い返して、盛大なため息をついていると。

 

「……なんか、学校いるときとずいぶん雰囲気が違うね?」

 

なんて、おずおずと尋ねられた。

学校いるとき? ああ、遊んでる時の話か。

 

「そりゃまあ、小学生してる時と転生者してる時の区別ぐらいつけるさ」

 

むしろ、出来てないあの辺とかその辺とかのが信じがたい。誰だかは言わないけど。

区別つけてるというよりは、スイッチが切り替わっちゃうってののが近いかも知れないけど……

 

「それ、もはや多重人格かただの裏表ある人だよ。

 そんなことしてるから、あんな噂も立つんだよ……」

 

何故か、心底呆れた口調でそんなことを言われた。

……あんたにはあんまり言われたくないな。

 

「もう用は済んだね? じゃあ私はこれで……」

「あ、待って!」

 

さっさとその場を立ち去ろうとしたら、ガシッと腕を掴まれた。

私は小学1年生。こいつは実は小学3年生。体格差はかなりあるわけで、私はつんのめりかける。

 

「……何さ?」

 

小1女子に出来る全力で、ギロリ、と相手を睨みつける。

さすがにこれ以上は怒るよ? 何がって話だけど。

 

「ねえ、その調子だと転生者の派閥とかも知らないよね」

「は? 派閥? なんぞそれ」

 

私が眉根を寄せると、秀才王は「やっぱり……」と頷いた。なんかムカつく。

まあ、名前でだいたい予想はつくとけどさ……

 

「派閥って言うのは、原作介入に関する姿勢が同じ転生者が集まったグループのこと。

 原作で不憫な人を救済するところとか、可愛いキャラとハーレムを目指すところとか。

 女性だと『ネギきゅんLOVE!』ってショタ趣味の派閥もあるし、エヴァンジェリンにくっついて従者を気取る『闇の福音親衛隊』ってのもあるし、

 大きいところだと『アンチ・マギステル・マギ』だとか、あとは……」

「ちょ、ちょっと待て?!」

 

スラスラと上げられる名前に、私は慌ててストップをかける。

待て、ちょっと多い、というか多すぎ?!

 

「転生者って10人ぐらいじゃなかったの?」

「え? ……ああ、それは君と同時に転生した人がそれぐらいってだけで、他にももっといるよ。

 参加者多数で、相当小分けにして放出するハメになった……って、僕が会った神さまが言ってた」

 

聞いてない! なんぞそれ!

え、なに? そんなに転生者(イレギュラー)がいるんなら、もう既に原作なんて影も形もないんじゃ……

 

「それは安心して。あっちこっちで牽制しあってて、原作介入自体はあんまりうまく言ってないみたいだから」

「そ、そっか……」

 

それは、果たして安心できるポイントなんだろうか?

むしろ色々不安要素が増えたような気が……

 

「い、いや! そもそも原作とか私には関係ないし!

 今まで通り、普通の子供らしく生活するだけで十分だよ、うん!」

「原作組と同年代に生まれちゃったんだから、それはさすがに無理じゃないかな?」

 

いやに冷静に言われて、私は言葉につまる。

彼は続けた。

 

「人の思い込みを解くのは大変だ。精神年齢が低い転生者相手なら尚更だよ。

 あの人達は自分の目的を達成するためなら、他の転生者(敵)は排除する……

 ……とまでは行かなくても、嫌がらせぐらいはするんじゃないかな?

 今はまだいいけど、これから原作が近づくと無所属じゃ大変だと思うよ」

「……で、何が言いたいわけ?」

 

苦し紛れに睨みつけたら、彼は意外にも真剣な目でこう言った。

 

「僕と、組まないか?」


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