オリ主が一人転生しただけの簡単な二次創作です   作:騎士貴紫綺子規

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 今回の話は原作アンチではなく二次創作アンチです。
 ご注意ください。

 前話の後書きに「後日」とは書いたが「次話」と書いてないところが作者のいやらしさを感じさせますね。

 ここらへんから独自解釈が酷いです。




第六箱 「――いいよ」

 

異常識的に考える人(コモンディヴィエイター)……? どういう異常性(アブノーマル)なんだ?」

「それはだな……」

 

  ――ガラッ

 

 格好よく説明しようとしたら誰か入ってきた。誰だよ、物好きな十三組生(アブノーマル)は。

 

 扉の方を見ると、腰まである長髪に二本のアホ毛、痩せ形長身のどこかで見たような男子生徒がいた。

 

「おや? これはこれは。律儀にも教室に来る十三組生(ジュウサン)が僕以外にもいたとはね」

「……黒神、真黒(まぐろ)

「おや。僕のことを知っているのかい?」

 

 

 

 めだかボックスの主人公、黒神めだかの実兄にして、魔法使いとまで言われたマネージメントの天才。少年漫画やライトノベルに必要不可欠な要素の一つ、「シスターコンプレックス」を患っており、病的に、いや盲目的に妹二人のことを愛している、黒神真黒がそこにいた。マンガで登場した時はほとんどラフな私服姿ばかりだったので、箱庭学園の白い制服を着ているというのは何となく違和感がある。

 

「……ああ。いろんな意味で『知っている』よ。黒神グループの参謀サン?」

「はは、恥ずかしいね。まあでも一応自己紹介はしておこうか。黒神真黒だ。以後よろしくね」

「須木奈佐木和だ。よろしく」

 

 和は自己紹介をする――が、自分のすぐそばにいる空洞には目もくれず、声を掛けようとする素振りすら見せない。空洞も同じような態度をとっている。

 

「……おい、お前はしないのか?」

 

 自分のすぐ隣に座っているというのに先程から傍観を決め込んでいた空洞に向かって話しかける。しかし黒神も空洞も、二人とも何を言っているんだという目で和を見る。

 

「おいおい須木奈佐木くん。誰に向かって話しかけているんだい? この教室には僕と君以外誰もいないじゃないか」

「和、お前、覚えてるのか?」

「……ああ、知られざる英雄(ミスターアンノウン)か」

 

 空洞が和に話し掛けたことにより黒神も彼を認識できるようになったようで、目を見開いている。ほとんどのスキルを自身のスキルで打ち消すことができる和にとって、知られざる英雄(ミスターアンノウン)程度何の影響もない。しかし黒神や空洞にとっては驚きなのだろう。知られざる英雄(ミスターアンノウン)常時発動している(パッシブな)のだから。

 

「……これは驚いたね。君みたいな一目でわかる人物を見逃していたなんて……。失礼。黒神真黒だ」

「あ、ああ。日之影空洞だ。よろしく」

 

 驚きの顔であいさつし握手を求める黒神に対し、戸惑った表情でそれでもなお手を握る空洞。しかし知られざる英雄(ミスターアンノウン)は先述の通りパッシブであるため、少しでも意識を他にずらすと、すぐに彼の存在を記憶できなくなってしまう。だから――。

 

「……なあ。放課後さ、友情を深めあうためにカラオケでも行かねえ?」

「おや、いいね。おもしろそうだ」

「そうだな。物好き三人が集まったんだ。挨拶と自己紹介だけっていうのもアレだしな」

 

 

 そんなこんなで急遽決まったカラオケ。敢えてその描写は省くが、これだけは言っておこう。

 

 

 やはり和は、咲の双子なだけはある、と。

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

 それから一週間。一年十三組の教室には、八時前には和が入り、十分後に空洞が、そしてその五分後に真黒が入る、という光景が見られていた。と言ってもそれぞれしていることは異なっている。

 

 和は廊下側から二番目一番後ろの席で常にパソコンをいじっているし、空洞は教室のど真ん中の席で黙々と授業を受けている。真黒はいる時といない時があり、学校に来ない時もあるくらいだ。

 

 時たま三人で一緒に帰るときもあるという、十三組生(ジュウサン)にも関わらず、ほとんど通常(ノーマル)と変わらない毎日を送っていた。

 

 

 

 しかしそんなある日、空洞が呼び出されたかと思うと、教室に帰ってくるなり和に言った。

 

「和。お前、生徒会に入らないか?」

 

 ……え、マジっすか?

 

 

 

 

椋枝(むくえだ)先生に頼まれたんだ。『生徒会長に立候補してみないか』って」

 

 ……まああの先生はそういうこと頼みそうだよね。二人とも相性は合いそうだし。

 

 

 

 椋枝 (しきい)。めだかボックス小説版上巻で名前と台詞のみで登場。下巻にてその容貌を曝し、物事を引っ掻き回す不知火半袖と、選挙管理委員委員長大刀洗(たちあらい) 斬子(きるこ)にさとされて黒神めだかを応援。「未来へのブーケトス」編にて再登場した、日之影空洞が生徒会長を務めた際の生徒会顧問であり十三組担任教諭である。

 

 実は現在の一年十三組の担任が椋枝閾であり、それゆえ和と空洞の二人は毎日顔を合わせている。だからこそ、椋枝は生徒会長に空洞を推しているのだろう。物語の上では、たった二人で生徒会を動かしていたのだから。

 

 

 そう、物語では。

 

 

 この世界には和ガイル。高確率で原作には登場しなかっただろうが、いなかったとも言い切れないオリ主。それが須木奈佐木和である。「自分がいる時点ですでに『物語』は外れているのだから好き勝手していいよね」とよく言うが、和は登場しなかったからこそ恐れている。自分の記憶が当てにならなくなった時点で、この世界における死亡フラグとは、常に隣りあわせなのだから。神ことアガミネは言っていた。「あの世界の役割はすでに終わっている」と。つまり、これはある種の演劇なのだ。

 

 

 「めだかボックス」という一つの演劇(原作)に、自分という転生者(イレギュラー)を混ぜたにすぎない、簡単な物語(二次創作)

 

 

 別にここがマンガの世界だとは、和は露ほども思ってはいない。しかしそれでも、和は時々考えてしまう。

 

 

 別に俺がいなくても世界は周るんじゃね?

 

 

 

 安心院なじみのシミュレーテッドリアリティと似ているだろう。しかし和の場合は少し違う。

 

 

 安心院なじみは自身がいるこの世界がマンガの世界だと信じていた。

 

 須木奈佐木和は自身がいるこの世界がマンガだった世界だと知っている。

 

 

 両者の違いは小さいように見えて実はとても大きい。安心院なじみは、自分の感性を黒神めだかに「シミュレーテッドリアリティ」だと断定された。つまり、自信の持てなかった突拍子もない想像に、他者から強制的にそう思わされることで救われることができたのだ。

 

 しかし和はどうだろうか。

 

 彼はもうすでにこの世界が漫画の世界だと知ってしまっている。西尾維新原作、暁月あきら漫画、週刊少年ジャンプに連載されていた「めだかボックス」の世界だと知ってしまっているのだ。

 

 つまり、いくら神からこの世界の役目は終わっていると言われても。黒神めだかに「シミュレーテッドリアリティ」と診断されても。

 

 和は永遠の傍観者を貫くことしかできない。

 

 自分がいてもいなくても、、黒神めだかは雲仙冥利にも都城(みやこのじょう) 王土(おうど)にも球磨川禊にも安心院なじみにも。所謂「ラスボスキャラ」には勝つだろう。なぜなら彼女は主人公なのだから。

 

 たとえ自分が原作に関わっても関わらなくても物語は進むし世界は周る。雲仙冥利は自分の正義を貫き、都城王土は理不尽を強い、球磨川禊は誰の思い通りにもならず、安心院なじみは物語を引っ掻き回すだろう。

 

 

 では、自分は何をすべきか?

 

 

 演劇(物語)に必要なのは舞台と役者だ。そうして和が出した結論が。

 

 

  『物語の中に登場する永遠の傍観者』

 

 

 いてもいなくても同じ役どころである。物語にほとんど関わらず、それでいて物語を傍から眺めるのに必要不可欠な傍観者(ナレーター)。和は自分をそう役づけた。

 

 

 

 だからこそこの申し出には戸惑った。和としては、役員を引き受けてそれでいて仕事放棄だなんてしたくはない。しかし引き受けたら確実に原作が変わる。「原作知識」というのは一種の未来予知にもなるものだし、和としては自分が入ることで黒神めだかや安心院なじみに余計な詮索をされたくなかった――が。

 

 

  『どうせ自分がいるだけで原作とは異なる世界だ。だから好き勝手に生きよう。』

 

 

 

 

「――いいよ」

「いいのか?」

「空洞から聞いてきたんじゃん。あ、でもあまり面倒くさくない役どころにしてね」

「おいおい……」

 

 

 ――そうして、第九十六代生徒会が発足した。

 

 

 





 九十五→九十六 に直しました。原作読んでたら勘違いに気付きました。

 第九十八代が黒神めだかでそのまえが日之影空洞ですね。でも三年生は立候補できないらしいから空洞が三年生になった直後はまだ九十七代目。それは二年生から続いているから一年時には九十六代目。申し訳ありませんでした。

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