魔眼の少女   作:火影みみみ

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第15話

 

 四月二十六日の昼頃、天気はおそらく晴れ。

 今日も朝からツナに優しく訓練をして、今は学校にいます。

 ツナは「鬼、悪魔!」と喚いていましたが、私が受けたものにくらべればかなり優しい方ですよ。 命の危険もありませんし。

 私が神速を覚えた時なんて脳のリミッターを外すために何度死にかけたか、思い出すだけで泣けてきます。

 

「はぁ…………」

 

 それにしても今日も退屈ですね。

 はやてのいない学校なんて通う意味も皆無ですし、ほかの友達を作ろうにもそんな勇気と気力なんてありません。

 あ、もちろんなのはさんは除外です。あの二人が居るので本人には申し訳ないですが学校ではあまり近づきたくありません。

 

 という訳で私は今暇なんですよね、本当にやることがないので。

 A'sまではまだ遠いですが、ツナの装備でも考えるとしましょう。

 えっと、彼は原作通りのツナ装備にするとして、問題はイクスグローブですよね。匣兵器の方は目処が立ちましたが、炎を灯せる素材って全く見当もつきません。なんでしょう死ぬ気の炎を灯せる素材って…………、生命繊維や波紋をよく通す素材を使えばいいのですか? 果てしなく面倒ですね。

 そもそも――――――――――――

 

 

 

 

 

~放課後~

 

 

 

 

 

 授業終了のチャイムが、私の意識を呼び戻す。

 

 は!? 気がついたらもう放課後ですか。ついつい考え事に夢中になっていたようです。

 時折先生に当てられ、適当に答えた記憶がおぼろげにありますが、……いけませんね、もうちょっと他に気を配るべきです。

 

 そんなことを思いつつ私は教科書を片付け、カバンを背負って廊下に出る。

 

 やっぱり学校は憂鬱ですね、消えてなくなればいいので「あ…………」、ん?

 

 誰かの声が聞こえたので、私はそちらに意識を向ける。

 廊下の先に二人、私を見つめる気配があります。

 一人はなのはさんですが、もう一人は誰でしょう?

 

「こんにちわ」

 

 とりあえず挨拶。

 ニッコリと笑顔で敵意がないことをアピールしましょう。

 

「こんにちわ、なの……」

 

「ああ、こんにちわ」

 

 

 ? 男の方は普通ですが、なのはさんの声に元気がありませ………………、まさか!?

 

「なのはさん、元気がないようですが何かあったのですか?」

 

 八割方原因はわかっていますが、それでも一応聞いてみます。

 

「え、どうして…………」

 

 なのはさんが不思議そうに聞いてきます。

 目が見えない相手がそこまで分かるのが不思議なようですね。

 

「声が沈んでいましたので」

 

「はは、わかっちゃうんだ…………」

 

 彼女は元気なく笑う。

 

「ええ、音には敏感ですので……、そう言えば隣にいる方はどなたですか?」

 

「……俺は木場士郎だ、あんたは?」

 

 木場士郎…………、おそらく褐色の方でしょうね。

 

「私は八坂七海と言います、……失礼ですが何かあったのですか?」

 

「えっと、ちょっと友達と喧嘩しちゃったの…………」

 

 そう話すなのはさん。

 やはりバニングスさんとの喧嘩でしたか、となるとあのジュエルシードも今夜となのですね。

 それにしても彼女の元気がありません、よほどショックだったのでしょう。

 元気づけたいところですが、あまりやりすぎると隣の彼に気づかれかねません。

 

「それは、……早く仲直りできるといいですね」

 

「うん、私も、そう思うの…………」

 

 とりあえず、私が言えるのはこれくらいでしょうか。

 

「では、私は弟の世話をしなければいけませんので、これで失礼しますね」

 

「あ、またね…………」

 

 そう言って彼女たちの横を通り過ぎる。

 

 

 嘘ではありませんよ。

 今日もツナの訓練しなければいけませんし。

 あ、でも今日はあれがあるのでしたね。

 でしたら彼も連れて行くとしましょう、いい勉強になりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夜の七時五分 どこかのビルの屋上~

 

 

「と言うわけで、やってきました夜の街! なのです」

 

「何がやってきました、だ! なんでいきなり連れてきてんだよ!?」

 

 何やらツナがすごくうるさいです。

 やはりロープで縛ったのがいきませんでしたか。

 

「とりあえず、今回の私たちの目的は『観察」なのです、もうすぐ戦いが起きるのでそれを見て、戦いがどういうものなのかを学びなさい、あ、リボーンさんはツナのリンカーコアの封印お願いしますね」

 

『了解したぞ』

 

 ふわふわ浮かぶリボーンさん。

 ここがビルの屋上でなければきっと大騒ぎでしょうね。

 

「でも、万が一見つかったらどうするんだよ? 姉ちゃんが戦うのか?」

 

「いいえ、状況によっては私も乱入するのであなたは守れません、自分でなんとかしてください、…………封印はその時に解いてもらいますから」

 

「丸投げかよ!!」

 

 まあ、死ぬ気の炎の扱いを中心に鍛えたので魔法の方はあまり意味がないですけどね。

 

『いいじゃねえか、今のツナなら一人なら負けねぇぞ』

 

「複数できたら?」

 

『死ぬ気で逃げろ』

 

 リボーンにそう言われ、両手両足を地面につけるツナ。

 まあ、それはリボーンさん含めた戦闘力ですから一人では絶対負けますね。

 

「……そう言えば姉ちゃんはデバイスはどうしたんだ?」

 

 ……ああ、そう言えば話していませんでしたね。

 

「私はデバイスなんて物持ってはいませんよ」

 

『「な!?」』

 

 え? なんでリボーンさんまで驚いているのですか!?

 …………ま、まさか、

 

「もしかして、デバイスはみんな貰っているのですか?」

 

『……ああ、転生者全員に与えられるはずだぞ、それがねぇとここがどこの世界なのかわからねぇからな』

 

「おお…………」

 

 私はとんだ遠回りをしていたのですね。

 私がここがどこか気がつくのにどれだけ時間をかけたことか…………、本当に泣きたくなります。

 

 しゃがみ、私は地面にのの字を書く作業に入ります。

 なんで、私だけ…………、私だけ…………、あの金属バット………………。

 

「そんなことより姉ちゃん、デバイスなしでどうやって戦うんだ?」

 

 もう顔も思い出せない神さまのことを思っていると、背後からそうツナが尋ねてくる。

 ああ、答えるのも面倒ですね……。

 

「一応そのままでもなんとかなりますが、変身する際にこれを使います」

 

 服の中からジュエルシードを取り出して、彼らに見せます。

 

「な!? ジュエルシードかよ! それまともに使えるやつ初めて見たぞ!」

 

『………………』

 

 まあ、最初は私も使えるとは思っていませんでしたし、当然の反応でしょうね。

 

「私のステータスが高校生レベルに上がるので結構便利ですよ、私以外が使うと暴走しますが」

 

「なんてチート…………」

 

 弟よ、これでもまだ私の一%未満なのですよ。

 私の特典を知ったら、どんなリアクションをするか楽しみですね。

 

『わかりきってたことだろ、お前の姉は現最強の転生者だ、それくらいありえねぇことじゃねえぞ』

 

 そう言ってツナを慰めている?リボーンさん。

 しかし、落ち込むツナとリボーンさんが急に話すのをやめた。 

 

「あ」『来るぞ』

 

 え? と私が思っていると辺りに変な音が響くのを感じました。

 ああ、テスタロッサさんたちが魔力を撃ち込んだのですね。

 私は何も感じませんでしたが、ツナ達にはきっとその前兆である魔力の波動を感じたのでしょうね。

 やはり、そういう類を感じるにはリンカーコアが不可欠なのでしょうか。

 

 そんなことを考えていると、世界が切り替わるような妙な感覚に襲われました。

 周囲の喧騒が消え、まるで私とツナたちしかこの世界にいないような、とても不思議な感覚です。

 

「なるほど、これが結界ですか」

 

 不可視のサードアイに複写眼をセットして、この術式をコピーしておきます。

 フェレットの術式は優秀ですからね、持っておいて損はないです。

 

「あ、なのはだ」

 

『「!?」』

 

 そうツナが呟いたのを聞いて、私とリボーンさんは同時にツナの頭を強引に下げ、私たちもうつ伏せになって辺りを警戒します。

 

 …………ふぅ、どうやら見つかってはいないようですね。彼女はそのまま通り過ぎていきました。

 ……あ。

 

「ツナ、大丈夫ですか?」

 

 ちょっと力を込めすぎたのか、さっきゴッって音がしましたが。

 

「な、なな何とか」

 

 …………………………うん、大丈夫ですね!

 

「では、はい望遠鏡」

 

 私はツナに望遠鏡を渡します。

 流石にツナの視力じゃどこまで見えるのか心配ですからね。

 さあ、ちゃんと原作通りになってくださいよ。

 

 そう思い、私はサードアイを戦場へと向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 

「ところで姉ちゃんの分は?」

 

「私は一キロ先まで見えます」

 

「…………チートすぎるOrz」




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