魔眼の少女   作:火影みみみ

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第14.5話

 

「……………………うにゃ~」

 

 四月の連休初日。

 私は特にやることもなく、ベッドの上でゴロゴロしていました。

 

 はい、とても暇なのです。

 一瞬はやてちゃんの家に遊びに行こうかとも思いましたが、今はいつも通り両親はおらず、家には私とツナの二人(リボーンさん含めると三人?)だけなので、そういうわけにもいきません。

 急に両親が帰ってきた時、家に一人取り残されているツナが見つかった日には私の命なんて一瞬で消えてしまうでしょうね。

 ならツナごと遊びに行けばいいとも思ったのですが、そう言えば彼に私がはやてちゃんと友達だと言うことを伝え忘れていましたね。

 まあ、いずれバレることですが、あれがはやてちゃんに余計な迷惑をかけるかもしれませんし、このまま黙っていましょう。

 

 結果、私はこのようにベッドの上のカタツムリになっているのです。

 ああ、暖かな温もりが私をつつ「姉ちゃん!」………………ちっ。

 

 煩い声がしたので、私は顔だけをそちらに向けます。

 

「何か用ですか、ツナ、今私はお昼寝に忙しいのです、命の危機に関わること以外なら後にしてください」

 

「いや、それだといつ声かけていいかわかんないよ! ……て、そんなことより!」

 

 荒い息で私に近づいてくるツナ。

 乙女の領域を無断で侵した挙句、なんで汗まみれなのですか?

 五歳児だからいいものの、元の年齢なら犯罪ですよ。

 

「ほら、死ぬ気時間が五分超えたぞ! これで稽古つけてくれるんだろ?」

 

 そう言って何かを私に突き出すツナ。

 私はサードアイを出してそれを確認すると、ただのストップウォッチのようでした。

 えっと、タイムは、

 

「…………五分二十七秒、確かにクリアしていますね」

 

 僅か一週間で終了するとは、最低でも一ヶ月くらいかかるかと思っていたのにとんだ誤算です。転生者は肉体もチートなのですか。

 

「仕方ありません、では今から準備するので先に道場の方へ行ってい「分かった!」、あの……」

 

 私の話を最後まで聞かずに走り去っていくツナ。

 修行の影響でナチュラルハイになっているようですね。一体何をどうしたらああなるのやら…………。

 

 そう若干ツナのことを心配しつつ、私は動きやすい服に着替える。

 

「えっと、今は春ですから半袖長ズボンでいいでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 私はゆっくりと道場の扉を開ける。

 現在の私の格好はポニーテールに体操服とかなり動きやすいものとなっています。

 

『おう、じゃあ第二段階始っか』

 

「ああ、ワクワクっすぞ!」

 

 もはやツナの原型がありません。

 さっさと済まして今日のところは寝かしつけるとしましょう。

 

「では、リボーンさん、死ぬ気弾をお願いします」

 

『ああ』

 

 彼はそう言うとペンダントから拳銃へと姿を変え、私の手に収まる。

 初めて持つ凶器の重さだけど、不思議としっくりとくる。

 少し考えた後、私は片手でそれを構え銃口をツナへと向ける。

 しかし、撃たれ慣れたツナからは怯えるような気配は感じません。……面白くないですね。まあ、それはさて置き、

 

「では、死ぬ気で私を倒してみなさい」

 

 私は引き金を引く。

 パンと軽い発砲音が響き、ツナが倒れる。

 ふぅ……、拳銃を扱うのは初めてだったのですがどうやらうまく当たったようですね。

 

復活(リ・ボーン)!! 死ぬ気で姉ちゃんを倒す!!」

 

 何やら場脱皮に似た音が響き、ツナの中からツナが現れる。

 

 これが死ぬ気モードというものですか、確かに気迫やパワーも桁違いに上昇するようですね。さっきから空気が震えてます。

 とりあえず、今のうちにリボーンさんを離して素手でお相手しましょう。

 

「おらららららららららら、おら!!」

 

 どこかで聞いたような連撃で私に遅いかかるツナ、とてもいいのですが。

 

「私には効きません」

 

 いくら早くとも所詮人間の腕は二本、見切ってしまえばかわすのは造作もありません。

 そして、

 

「いきなり全力でくるバカがどこにいますか、本当の死ぬ気は一瞬でいいのです、よ!」

 

 原作でのバジルのセリフをツナに言う、と同時に彼の胸に掌打を叩き込む。

 

「がぁっ!!」

 

 ツナは吹き飛び、激しく壁に体を叩きつけられる。

 

「なんの!!」

 

 けれど、彼は怯むことなく再び私に襲いかかる。

 打たれ強さは原作並みと、…………ん?

 

「うらららららららら!!」

 

 私はまた彼の拳を避けているのですが、威力が先ほどより下がっているように感じます。

 私の攻撃が効いているわけではない、とするともうコントロールをモノにし始めていると言うことですか…………、これは予定より早く彼専用の匣を用意するべきですね。

 まあ、それはそれとして。

 

「もっと、相手の挙動を一つ一つを観察して先を読むのです」

 

 今度は彼の右腕を掴むと、そのまま勢いを利用して投げ飛ばす。

 

「ぐわぁ!!」

 

 天井にぶつかり、床に落下するところで体勢を立て直し、三度私に襲いかかる。

 

「おららららららららららららららららら!!」

 

 はぁ、原作の時のように岩がないからか、早く終わりそうにないですね。

 

 そう思い先ほどようにかわそうとして、

 

「ん?」

『…………(にやり)』

 

 拳が一つ、頬をかすめた。

 彼の拳が触れた部分が切れ、血が頬を垂れ落ちる。

 

 私が避けきれなかった?

 いや、違う。

 彼が私の動きについてこれる様になったのでしょう。

 ………………まったく、驚くべき成長速度です。これでは私が教えることもすぐになくなってしまいそうですね。

 

 私は嬉しかった。

 たまたま拾った石が珍しい鉱石だった時のように、私は喜んだ。

 彼は私が教えたことをスポンジのように吸収して、自分のものにしている。

 この調子なら、A'sまでに転生者三人を相手にできるほどに成長するかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、この後彼の死ぬ気が解けるまで、彼を飛ばし続けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

~リボーン~

 

 オレは今、七海とツナの対決を見ていた。

 ただし七海は得意のは杖なし、ツナは死ぬ気と条件は圧倒的にツナが有利。

 だが、

 

「いきなり全力でくるバカがどこにいますか、本当の死ぬ気は一瞬でいいのです、よ!」

 

 ツナが七海にぶっ飛ばされる。

 当然だな、あいつとじゃ実力が違いすぎる。

 

「うらららららららら!!」

 

 ツナは懲りずにまた七海に殴りかかる。

 ん、額の炎が少し小せえってことはもう死ぬ気のコントロールが出来始めてんのか。原作知識があるとは言え、ここまで早いのは予想外だぞ。

 

「もっと、相手の挙動を一つ一つを観察して先を読むのです」

 

「ぐわぁ!!」

 

 今度は天井へと投げ飛ばされる。

 …………それにしても七海は容赦がねえな、もっと手加減するかと思ったが。

 

「おららららららららららららららららら!!」

 

 三度目の攻撃、七海はさっきと同じようにかわそうとするが、

 

「ん?」

 

『…………(にやり)』

 

 その内一つが七海の頬を掠る。

 ツナのやつ、攻撃の瞬間に死ぬ気を高めて速さを上げやがったな。

 それだけじゃなく、七海の動きを不完全ながら先読みもしてやがる、驚くべき成長速度だぞ。

 

 教え子兼マスターの成長に、オレは思わず笑みを堪えなくなるが、それも一瞬のことだった。

 七海の顔を見ると、嬉しそうな顔をしている。

 

『!?』

 

 それを見た瞬間、全身に悪寒が走った。

 あの笑みには何か、とても嫌な感じがした。

 狂人、そう例えるのが一番しっくりくる。

 あいつがツナを見る感じはもうただ弟じゃねえ、おもちゃを目の前にした子供に近いぞ。

 だが、子供はあんな笑みはしねえ。

 

 なんで、あいつはあんな笑みを浮かべてんだ?

 

 オレはあいつと初めて会った時のことを思い出す。

 あの時は今とは別の嫌な感じがしてたが、あれは七海と言うよりあいつが持っている「何か」の気配だったな。

 なら今オレが感じてるのは紛れもない七海自身の狂気ってことになる。

 

 一体、あいつは何を考えている………………。

 

 オレは考えたが、まだ家族になって一ヶ月も経たない相手のことだからか、結論はでねえ。

 とにかく、あいつはツナのことを鍛えてくれる。

 死ぬ気の到達点まではいかなくとも、ツナの力を限界まで引き出すことはできるだろう。

 

 

 なら、今はまだオレが動く時じゃねえな…………。

 

 

 


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