魔眼の少女   作:火影みみみ

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~とある電車内にて~ 16:00頃

「疲れたぁ、全く電車乗り継ぎ間違えるとか、ありえないしぃ……」

 とりあえず、適当にスマフォをいじる。

「お、お気に入りが800超えてる、すごい増えたなぁ、ランキングにでものったかな?」

 そう思い、自分の順位を確認する。




 1位 魔眼の少女








「…………………………ふぁ!?」




 結局十一時には12位に落ちていましたが、それでも十分すぎです!
 いろいろな偶然が重なったり、星辰が揃った結果でしょうが、とても嬉しかったです!
 今年の残り二回分、俄然やる気が出てきました!







……見間違いじゃなかった、と信じたいです


第9話

 

 

 

「…………なるほどね」

 

 私は瞳を閉じ、ジュエルシードをポケットにしまう。

 

 見稽古でよく「視た」結果、確かにこれは望みを叶える類のロストロギアのようです。

 しかし、経年によるバグが積み重なり、いつしかそれが歪みとなって現れ、歪んだ結果しか引き起こさないようになった、みたいです。

 

 まあ、これはこのジュエルシードの分析結果ですので、他のは知りません。もしかしたら、バグがない当時のままの物も、どこかに落ちているかもしれませんね。

 

 …………巨大猫とか。

 

 

 まあ、私のこれは完全に制御したので暴走はしないでしょうが、念のため肌身離さず持っていることにしましょう。

 ……机の中に隠しておいて、お母さんに取り上げられてはかないませんからね。

 一体何度、私がそれで痛い目を見たことか!

 私が拾ってきた石や、知らない人にもらった変な感触の本や、いつの間にかついて来た人形など没収された物は数知れず、なのです。

 

 今までは私の趣味の範囲内でしたので見過ごしていましたが、流石にこれを盗られるのは洒落になりません。

 今のうちにペンダントにでも偽装して、ずっと所持しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日ははやてちゃんと一緒にお出かけ。

 しかし、私の足取りはどこかおぼつかなく。

 はやてちゃんの車椅子を押しながらでないとすぐに倒れてしまいそうなほどなのです。

 原因は、私が服の中にかけているペンダントにありました。

 

「ねむぃ…………」

 

 ちくせう。

 まさか、目をつぶったままのペンダント作りがあんなにも大変だったとは、おかげで凄い寝不足なのです。

 

 さらに、よくよく考えてみればジュエルシードの機能を使ってペンダント型に変化させる、という手段があったのだから笑えません。

 それに気がついた時には既に鶏さんとてぃんだろすが鳴いていました。

 つまり、無駄に徹夜したのです。ちくせう!

 

「あはは、いくら七海ちゃんでも徹夜はこたえるんやなぁ」

 

 はやてちゃんには、面白いラジオを聴いていてつい徹夜したと伝えてあります。

 まさか盲目でペンダント作りなんて誰も信じないでしょうしね。

 実行するほうも、するほうなのです。

 

 …………何だか落ち込んできました。

 

 ま、まあそんなこと気にせずに、今はせっかくはやてちゃんがいるのですからお話しましょう。

 

「当たり前なのです、私はちゃんとした人間なのですよ、ちょっと無理をしたら疲れるのは当然なのです」

 

 狂人と神話生物との子供ですが、一応彼らも人間でしょう、多分。

 ……でなければ私のSAN値がピンチ! なのです。

 

「だってなぁ、七海ちゃんっていっつも冷静で、できない事なんて何もない、って感じがするんやもん」

 

 ほぉ、私は傍から見るとそういう風に見えるのですか。ちょっと意外です。

 

「ふふ、そんな人間は誰もいませんよ、人は誰しも得手不得手があるものなのです、それがないのは神様だけなのですよ」

 

「そうなんかな? 七海ちゃんなら何でも……ん?」

 

 ふと、はやてがどこかを見つめ始めました。

 

「はやてちゃん? どうかしました?」

 

 それが気になり、私は彼女に尋ねます。

 

「え? ああ、あの子ら楽しそうやなって思ってな」

 

 あの子ら?

 よくわからないので神経を集中させて遠くの音を聞き取り始めます。

 

 聞こえるのは、土を蹴る音、少年たちの掛け声、何か柔らかいものを蹴る音、そして、「ガンバレー、岐路君!」と言う声援、…………ああ、なるほど。

 

「サッカーですか?」

 

「凄い! なんでわかったん!?」

 

 どうやら当たりだったようで、はやてちゃんがこちらに顔を向けて尋ねてきます。

 

「ちょっと集中したらそんな感じの音が聞こえてきたのですよ、慣れれば誰にでもできます」

 

「いやいや、少なくとも私にはできへんよ、それ」

 

「むぅ、……そうなのでしょうか」

 

 私は気がついたら出来ていたのでそうかと思っていましたが……、もしかしたらちゃんとした訓練を行わないとできなのかもしれませんね。

 

「……サッカー?」

 

 はて、何か忘れているような、そうでないような?

 

「どないしたん?」

 

「いえ、何か忘れているような気がしましたが、きっと気のせいです」

 

 まあ、忘れるようなら重大なことではないでしょう。

 きっと大丈夫なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~高町なのは~

 

「ガンバレー、岐路君!」

 

 隣ですずかちゃんがそう叫ぶ。

 今日、私たちはお父さんが監督をしているサッカーチームの応援に来ています。

 岐路君や士郎君も参加していますが、すずかちゃんはさっきから岐路君しか応援していないの。

 

「すずかちゃん、少しくらいは士郎君のことも応援してもいいと思うの」

 

「え? してなかった?」

 

 どうやら気づいてなかったみたいのなの。

 

「あんた、ずっと岐路君岐路君ってしか言ってないわよ、いくらs「ダメェェェェ!!」、みゃがう!!」

 

「あ、アリサちゃん!?」

 

 何か言おうとしたアリサちゃんの口を、すずかちゃんが目にも止まらぬ速さで閉じる。

 けれど、ぶつかった時の衝撃が大きかったのか、アリサちゃんはそのまま後ろに倒れ、頭をぶつけちゃったの。

 

「うにゃぁぁぁぁ~~~~」

 

 急いでそばに近寄ってみると、アリサちゃんは目を回していて、頭には小鳥さんが飛んでる状態でした。

 

「あああ、ご、ごめんなさいアリサちゃん!」

 

 正気に戻ったすずかちゃんと一緒に呼びかけてみるけど反応はない。

 

「少し、このまま寝かしておいてあげよっか?」

 

「う、うん、そうだね…………」

 

 取り敢えず、さっきまで座っていたベンチにアリサちゃんを寝かせる。

 結果、私たちは立ったまま観戦することになったけれど、まあ仕方ないの。

 

 そう思っていた時だったの。

 

「あ…………」

 

 ちょうど川の向こう側、私たちとは正反対の方に見覚えのある女の子を見つけたの。

 

 白い髪で目が見えない、名前も知らない女の子、だけど綺麗で、優しくて、まさに「女の子」な女の子。

 

 彼女が、茶髪の女の子の車椅子を押して、河川敷を歩いていたの。

 

 今から走って行けば、間に合うかもしれない。そう思ったけれど、今は士郎君たちの応援もしなくちゃならない。

 

 今すぐ行く、今は行かない。

 この二文字が頭の中でぐるぐる回りだす。

 

 私はあの子の名前を知りたい。

 けれどそれは岐路君たちをほっておいてまでしていいことなのだろうか?

 

 でも、私はあの子の「なのはちゃん」も知らないし、どうしたら「なのはちゃん!」

 

 びっくりして、私は声の主を見つめる。

 

「なのはちゃん、今岐路君がゴールを決めたよ、見てなかったの?」

 

「にゃはは……、ごめん、ちょっとぼーっとしてたかも」

 

「そうなの? 何かあったの?」

 

「えっとね、あの辺りに……」

 

 私が視線を戻すとそこにはもう彼女たちの姿はなかった。

 

「あの辺りがどうかしたの?」

 

「ううん、何でもない、見間違いだったみたいなの」

 

 そう笑ってごまかす。

 

 けれど本当はわかってる。

 さっきまで彼女は確かにいた。

 今日は無理だったけど、次こそは名前を聞こう、そう私は心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~八坂七海~

 

 ブルッ!

 

 な、なんでしょう今の冒涜的な悪寒は!?

 まるでどこかの魔王にでも目をつかられたかのような圧倒的な恐怖を感じましたよ!

 ととと、取り敢えず周囲の状況確認が先決なのです!

 できるだけ平静を保ちつつ、はやてちゃんに尋ねます。

 

「はやてちゃん、今何かありましたか?」

 

「? 何もないよ」

 

 どうやらはやてちゃんには何も感じなかったようです。

 となると魔法関連ではありませんね。

 

 まあ、私の単なる気のせいかもしれないですし、あまり考える必要はありませんね。

 

「しかし、本当にこの辺に新しくできた喫茶店があるのですか?」

 

「ほんまやで、この前買い物帰りに寄ってみたらたまたま見つけたねん」

 

 はやてちゃん曰く、「おっちゃんがとても面白い喫茶店」らしい。

 

「そこのおっちゃんがな、本当にノリが良くてな! もうついつい長話してもうたんよ」

 

「はいはい、それはもう何度も聞きましたよ」

 

 そこまで言われると、流石の私も興味が出てくるわけでして。

 

「道はこっちで合ってますか? どうやら人気が多い方にビルが多い方に向かっている見たいですが」

 

「うん、こっちで合ってるよ、あと少ししたら左に曲がってな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして私は今日が何の日だったかも忘れて、被害予定現場に赴くのでありました。

 

 

 

 

 




・木場 士郎
転生者、肌は褐色
詳しいプロフィールはまた今度


2013/12/23
テレビをラジオに変更

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