プロローグ
目を覚ました私が目にしたのは、現実ではありえない空間でした。
「……わぉ」
天井も、床も、壁もなく、ただただ白い空間だけが広がっている。
ありえない。
あまりにも不可解なその光景に、私の中の常識が音を立てて崩れ去る音が聞こえた。
そんな体験をした私はSANチェック!
えっと…………、成功1D5、失敗1D10くらいでいいかな?
「さて、ダイスダイ「ねえよ」、……はい?」
急に声をかけられた私はすぐに、後ろに振り返ります。
「…………わぁお」
絶句、それはもう絶句しましたとも。
輝きを放つほど眩しい金髪。
吸い込まれそうになるほど澄んだ蒼色の瞳。
そして、曇りひとつもないピカピカな金属バット。
それさえなければまだ女神と断言できたでしょうが、その一点がその他を凌駕し、飲み込んでいます。
なんでしょうか、この残念系美少女は。
見た目だけなら傾国美女クラスなのに、おしいことこの上ありません。
「あ、私はあい・ゆ・・といいま、……あれ?」
おかしいです。
昨日出したダイス目から、今日作った探索者まで覚えているのに、自分の名前となると何かモヤがかかったように何も思い出せません。
「ああ、そりゃ無理だ、ここに来るやつは大体名前を失っちまう、本当なら記憶もなくなるはずだが、そんだけ覚えてりゃ十分だ」
そですか。
「まあそんなことはどうでもいい、さっさとこのチュートリアルを終わらせちまおう」
メメタァ!
今なんと言いましたかこの残念女!
私にとってのこの非現実的状況がチュートリアル!?
どう考えてもこの後何か起きますよね!
それもとてつもなく厄介なことが。
「まず、あんたはもう死んでる」
「は!?」
「死因は事故死、暴走車がベンチで寝ていたあんたに突っ込んだのが原因だな」
ショック! とてもショックです!!
私、もう既にゴーストでした!
「ああ、そうなのですか……」
「ん、もうちょっと騒ぐかと思ったが、意外と冷静なんだなお前」
「内心ではとっても驚いてますよ、ただ表情に出ないだけで」
驚きすぎて麻痺したとも言えます。
「この前来たやつなんかは面白いくらいに驚いてたんだがなぁ、まあいいか」
個人的にはとても気になりますが、今はそんな話をしている場合ではないでしょう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥とてもとても気になりますが!
「あんたにはこれから別の世界に転生してもらう、どこに行くかは逝ってからのお楽しみだ」
「それはまた、なんと言いうか、……唐突ですね」
あと、どう考えても行き先が秘密なのはあなたたちが楽しむためですよね。
……私たちの反応を見て。
「あの、よくあるパターンとしては、転生特典なるものをもらえると嬉しいのですが?」
「ああ、忘れてた」
このアマ!
「特典は基本何でもいいが、私が与えられる力は一つだけだ」
「一つ、ですか?」
「ああ、どんなにチートでも一つだけなら叶えてやる」
一つですか、これはよく考えなければなりませんね。
不老不死は論外として、行き先(逝き先?)がわからないのは厄介ですね。
戦闘系の世界か、それとも学園系の世界か、どちらにしても汎用性のあるチートにしないと。
「ちなみに、前の人は何をもらったのですか?」
「あ~、本当は言っちゃダメんなんだが、一目見たら分かるしな、…………
「……何があったのでしょうね」
どこに行くかも分かららないのに戦闘に前振りですか。
いや、戦闘方面の印象が強いだけで使える原型宝具もあるでしょうし、使えると言ったら使えるのでしょうか?
それにしても、王の財宝ですか…………、もしその人も同じ世界にいるとしたら惨殺されないように注意すべきでしょうね。
それはそうと特典ですが…………よし、あれにしましょう。
「決まりました!」
「で、何にすんだ?」
「魔眼みたいなのが欲しいです」
「魔眼つってもいろいろあるが?」
「取り敢えず特殊な目が欲しいです」
転生先の私の運動能力がどの程度かは知りませんが、前世が本当に紙性能だったので、あまり期待しない方がいいでしょう。
つまり、それをカバーできるほど特殊な能力→魔眼、となりました。
「んん~、まあいいか、こっちで適当に考えてやる、だからあんたは」
そう言って金属バッドを持ち上げる彼女。
「え? ちょっと、まさか!!」
「お休み」
そしてゴスっと何か嫌な音が響き、私の意識はここで途絶えたのでした。
~女神?~
「さて、あいつの特典だけど、……考えるのが面倒だなぁ」
まったく、他人任せが一番困るってのに……、あ。
「面倒だからそれっぽいもの全部でいいや」
不定期更新は一応です、時々ひどいスランプに陥ることがありますので。
感想待ってます!
2013/12/16
・女神の描写を追加
03/10
誤字修正