結城家のリビング。いい感じのソファに体を埋めながらリトのお父さんの漫画が乗っている雑誌を読んでいた。
「相変わらず親父さんの漫画は濃いな。毎回最終話みたいな熱量だ」
「可燃性漫画とか言われてるらしい」
「すげーよなぁ。設定的には古い感じなのに一周回って新しいもんなぁ」
「ほとんど男しか読んでないんだけど」
「いやこれはそうよ。この友情とか熱さとかライバルとの闘いとか男向けすぎるよ」
「漫画描いてる本人がそんなだもんなぁ」
休日の午前。することが無かったのでリトの所へ遊びに来た。ララは宇宙船の方で何かを開発しているらしく家にはいなかった。リトはゲームをしているので邪魔をしないように漫画を読んでいるというわけだった。
「はふー読み終わっちゃった。ねぇ暇なんだけど」
「あ、じゃあこれ一緒にやる?」
「なんのゲーム? なんか新しい感じしないけど」
「いや倉庫片付けてたら昔のゲーム機が出てきたんだよね。まだ動くか試したら動いたから遊んでたんだけど、二人でもできるらしい」
「へー、さすが日本製ってやつ。んでどんなゲームなの?」
「なんか爆弾を置いて爆発させて敵を倒したりアイテムを取って強くなるゲームらしい」
「面白そう。やろうやろう」
レトロゲームと侮るなかれ。分かりやすいゲームルールと脳に染み込むBGM。気づけば二人でハマってしまっていた。
「リトぉ! その爆弾オレが出したやつでしょ。何取ってんの」
「いや有里がさっき取ったから次は俺のでしょ」
「ひえーこいつブロック突き抜けて移動してくるんですけど!」
「だからってそこら中に爆弾置くなよ! ぎゃああこっちに炎きたあたったぁ」
そんなこんなで遊んでいるとその騒ぎを聞きつけたのか美柑が後ろに立っていた。
「二人してなに朝から騒いでんの」
「あ、美柑。お邪魔してまーす」
「有里さんこんにちは。倉庫にあったゲーム機? 動いたんだね」
「びっくりだよな。10年とかもっと前のゲーム機なのにな」
「美柑も一緒にやろうぜ。なんかみんなでやる対戦モードもあるらしい」
「そんなことよりお昼ご飯にしようよ。もうとっくにお昼だよ」
「そうなの? たっぷりやっちゃったなぁ」
「続きはまたご飯のあとで。私作るから食べちゃお」
「お、いーですねぇ。何ライス?」
「オムライス作れって?」
「やったな、リト。美柑がオムライス作ってくれるって」
「有里が来たときしか作ってくれないんだよなぁ」
「リト余計なこと言ってる暇あるならテーブルとか拭いてよね。有里さんは玉ねぎ切る手伝い」
「「了解です」」
3人でリビングに移動する。テレビを消して気づいたが結構目が疲れていたようだ。てきぱきと準備する美柑を横目に渡された玉ねぎを刻んでいく。
「いくぜ猫の手、にゃーん」
「……」
「無視された。ほら美柑もやって。にゃーん」
「は?」
「はいご一緒に。せーの」
「にゃ、にゃーん」カシャ
「撮ったでしょ! ちょっと有里さん写真撮ったでしょ! 消して」
「隙を見せるとは愚かな。ここが戦場ならば貴様は死んですみません、包丁がこっち向いてますよ?」
「有里さんマジ嫌い。あっちいって」
「すみませんすみません玉ねぎとんとーん」
ぷりぷり怒りながらも的確な包丁とフライパン捌きであっという間にオムライスを作ってしまう美柑。こうしてからかいたくなってしまうのはマイフェイバリット妹だからか。
「いただきまーす」
「んー、おいしい! さっすが美柑だよな」
「なー、うまいよなぁ。この前の卵焼きもさぁ、甘かったじゃん。オレ卵焼き甘い派なんだよね。美柑、オレと結婚して毎日味噌汁を作ってくれ」
「卵焼きじゃないのかよ。妹は貴様にやらん」
「有里さんマジ嫌い」
「ならば拳で語ろうぞ」
「そういえばゲームカセットの中に格闘ゲームみたいのあったな」
「あれなんでⅡなの。Ⅰはないの? なんでターボされてんの」
「さぁ? でもあれの新しいやつが今も出てるんだから多分面白いんだろうな」
「まぁあとでやろうか。オレはやっぱりあの金髪の人かな」
「俺は柔道着の人だなぁ。やっぱり日本人でしょ」
「したらお相撲さんいたじゃん。お相撲さんにしなよ」
「なんだそれ」
「話してばっかいないで早く食べちゃってくれない?」
そう言いながらいつの間にか零した水を拭く美柑。さっきのにゃーんでかなり怒っている様子だ。美柑の作ってくれたオムライスを奇麗に平らげ、お皿洗いをリトと二人でやってから再びゲームへ戻る。
美柑が仲間になりたそうな目でこちらを見ていたのでパズルゲームを二人でやった。スライムみないなものを4つくっ付けて相手に送るシンプルなゲームだったが、美柑が鬼つよで怒りをぶつける様にして大量のスライムが送られてきて8連敗もしてしまった。ちなみにリトは12連敗。
そしてまた別の休日。籾岡に呼び出されて気づけば電車で。何やら若者で賑わう場所で降ろされたと思ったら沢田と合流。あれよという間に2人の買い物に付き合うことになってしまっていた。
「別に付き合うのはいいけどさぁ。何かしらの旨味がないとさぁ、なんていうか足どりもそりゃ重くなるってもんで」
「こんな美少女2人の横を歩けるってだけでおいしいでしょ」
「自分で美少女って言っちゃわないタイプの淑女にときめくんですよ」
「あの……おにいちゃん。わたしね、あの……おにいちゃんのこと」
「そこまで尖っちゃうとあざとさしか味残らないね」
「いいからいいから。新しいスカートと折れちゃったから自撮り棒欲しいの」
「服を買うときに男子の意見って大事だもんね」
という訳で女性向けのショップへ。2人はお店を一通り回ると大量の服を持ち始めた。
「え、そんな買うの。こわ……これが女子高生ですか」
「そんなわけないでしょ。試着試着」
「覗いちゃだめだよ? あと感想ちゃんと言ってね」
「はぁ」
そう言い残し試着室へと消える2人。なるほど、今からファッションショーが始まるんですね。そしてオレは審査員ということか。よし、頑張ろう。それにしても
「試着室にあんな何着も持っていっていいんですか?」
「枚数制限のあるショップも確かにありますね。ですがうちは試着室のスペースを多めに取っていますので大丈夫ですよ」
「左様でございますか」
「お客様には吟味して選んでいただきたいですから。それにしても……」
「なんでしょう?」
「両手に花ですね、お客様」
暇を持て余したので店員さんとお話してみたが、なるほど他から見ると女子を2人侍らせるくそ野郎に見えるということだろうか。確かに2人は可愛らしい。
最近のファッションを取り入れつつ目立ちすぎない程度に化粧をしある意味一番女子高生らしい籾岡。
眼鏡をかけツインテール。誰とでも気さくに話をしいつも笑顔で天真爛漫な沢田。
2人でいればきっとナンパされること間違い無しだっただろう。なるほど虫よけ兼荷物持ち兼男性目線代表ということだろうか。合理的な判断って好きです。
「どう?」
「肌出しすぎじゃない? 布減るほど値段あがるって反比例すごいね」
「じゃじゃーん、どう?」
「そういうゴスロリってどんな時着るの?」
「どう?」
「さっき聞いたんだけど女性の試着室って化粧が服につかないようにカバー的なのがあるんだってね。これはカルチャーショックですよ」
「じゃじゃーん、どう?」
「布を1枚隔てた向こうに知り合いの女子が服を脱いでると思うとドキドキするよね」
「「もういい!!」」
勿論怒られました。よく分かんないけどポッピング何とかってジュースを奢らされました。可愛い子は何着ても可愛いので好きにすればいいと思います。