問題児たちと一人の神が異世界から来るそうですよ? 作:異山 糸師
暫くして落ち着いた頃、新たに加わった女性を踏まえ、話し合いが始まった。
新しい奴はタケミカヅチらしい。雷神であり軍神であるはずの彼女はさすがに俺のことは知っていた。
「それでだな、俺が知っているアマテラスはまた違うやつなんだ。つまりオオクニヌシの早とちりだ」
「す、すみません!!」
再び頭を下げるオオクニヌシ。俺が何者か知ってからこんな態度になった。
「いやいいから。あと、誰が誰なんだ?」
「そうでした! 私がアマテラスです!」
知ってるから。さっきから呼ばれてるじゃん。天然か?
「私はツクヨミです!よろしくお願いします!」
「おお~ツクヨミか~。俺も元々は月神なんだよ。お前は俺に敵対するツクヨミじゃあ、ないよな?」
「も、勿論です!」
ならいい。たまに俺を認めない、とか言いながら襲ってくるツクヨミが居るからな。勿論殺すが。
んで、ポニテがスサノオでセミロングの金髪で黄色の着物を着た最後に来た奴がタケミカヅチらしい。
「んじゃあ、俺から言うことはただ一つ……敬語は無しだ」
「「「「「え…?」」」」」
「聞こえなかったのか? 堅苦しいのは嫌いだから敬語は無し。破ったら罰を与えるぞ~」
「「「「「分かりました!!」」」」」
いい返事で。ていうか、また美女ですか。俺アウェーじゃん。男居ないのか。いや別に男が好きなわけじゃないけど。
「あの~……」
「なんだ? アマテラス?」
「はい…私は誰に対してもこの口調なのでこれでいいでしょうか?」
「ああ、構わない」
ホッとするアマテラス……俺のアマテラスの方がやっぱり美人だな、うん。
聞くところによると、高天原は3桁だけあって物凄い強いらしい。主要メンバーはこの五人で残りは部下。部下も部下で強いらしい。アマテラスがリーダーだとさ。
それからいろんなことを話し、打ち解けて行った。口調もすっかりいつも通りになっているらしいし。このコミュニティは本当はもっと強いらしいが、ここら辺が丁度いいから3桁に居るっぽい。まあ、アマテラスとか一般的には太陽の神格化とか言われてるしな。こいつがそうなのかは知らないが。
お茶を飲んでいたら、アマテラスが突然こんなことを言い出した。
「あの、零様…この高天原のリーダーになってくれませんか!?」
「は?」
いきなり何を言い出すかね?この娘は。
「オオクニヌシを抜いてこの四人の主である零様に、このコミュニティの主にもなって欲しいんです!」
「ああ、そういう事ね…言ってなかったな、俺は既にノーネームに所属しているから」
「「「「「なっ!?」」」」」
お前らからしたら、そりゃ驚くよな。
「零…なんでノーネームに?」
聞いてきたのはスサノオ。この子は結構大人しい子だった。逆にタケミカヅチは活発で明るい子。更にはツクヨミは大人の色気を醸し出す妖艶な女。ただ白夜叉みたいにスキンシップが激しいが。
「……ま、いろいろあるのさ」
「…そう。残念……」
なんか本気で残念そうにしている。しかも他の奴らも。
「………そうだなぁ」
俺が自由に動かせるコミュニティは確かに欲しい。その点に関してはここ、高天原は俺にとっては打って付けだろう。でもコミュニティに二つも所属するのは駄目。ノーネームには既に“月神零”が入っている。ならば………
「よし…いいぞ。ここに入ってやる」
「本当ですかッ!?」
「ああ。俺がリーダーになればいいのか?」
「はい! お願いします!……でも、ノーネームにも入ってるんですよね? それなら……」
「大丈夫だ。ノーネームに入っているのが“月神零”という俺。ならばここには“天城零”が入ればいいだろ」
「「「「「な、なるほど……」」」」」
所謂、反則技だ。一応、同一人物だが名前を変えることによって二つの存在みたいになっている。糞神がそんな感じにした。とんちを利かせたみたいな?
「さて、そういうことでいいだろう。後は此処に何時でも来られるようになんか転移系ギフトくれ。あと通信系ギフト」
連絡は自由に取り合えるほうがいいだろう。普段は神力を封印している“月神零”なのでその状態でも気軽に来られるように。
「あ、それなら私が幾つか持ってるよ~」
手を上げながら言ったのはタケミカヅチ。いそいそと着物の胸元からギフトカードを取り出した。
なんてとこに入れてるんだ。胸が見えたぞ。ていうか裾も短いよな…大胆にも白く肉付きのいい太ももが見えている。
「はい、これだよ! 転移系ギフトの“異動”だよ。最上位のギフトで行きたいと思った場所に必ず行くことができる異常なギフト。異界でもどこでも。一つしかないんだからね! それからこれが通信系ギフト“音吐労漏”。これは幾ら小さな声でも伝えたいと思えば必ず伝わるんだ~。このギフトは私達も着けてるよ!」
“異動”はネックレスで“音吐労漏”は耳殻にぴったり着けるタイプの通信機だ。よく見ると五人とも着けている。タケミカヅチがお揃いだね~、と嬉しそうに言う。
「ありがとう。早速着けとくわ」
二つを身体に着ける。あ、そうだ。此処なら神力解放しても問題ないだろうし、やる事やりますか。
お土産を出し、神力を解放する。突然の事に皆驚くが、事情を説明して落ち着いてもらう。
【思ったことを現実にする程度の能力】でアクセサリー達を一種のお守りみたいにする。別に神力を込めていないからばれやしないだろう。アマテラス達のは手紙つきで幻想郷に送っといた。今頃驚いているだろう。再び封印する。
「……吃驚した」
「凄かったね~」
「一体どんだけ強いんだい」
「さすが月神の始祖様ね」
「凄まじい力でした……」
五人が口々に言い出した。これでも気絶しないようにかなり抑えてたんだが。ツクヨミは何を言ってるんだ……。
アクセサリーは所有者が危険な目にあったとき、必ず役に立つだろう。その前に受け取ってもらえるかどうかだがな。
「さて、そろそろ本格的に眠い。寝床用意してくれるか?」
「は、はい! 少々お待ちください!」
アマテラスが急いで立ち上がり、襖を開ける。すると、そこには侍女達がこっそり居たらしくかなりの数の女が転がり出てきた。俺は知ってたけど。
「あ、貴女達! 何してるのですか!!」
「ア、アマテラス様…突然このお部屋から物凄い力が溢れ出て来たので気になって来てしまったのです……すみませんでした」
『すみませんでした……』
アマテラスが何をしているのかと聞くと、侍女の一人が申し訳なさそうに言い出し、他の侍女達もつられて謝った。ていうか、予想はしていたが全員女か…男が居ない。うわーいはーれむだー………はぁ。
「アマテラス、しょうがないって。それより俺の事言わなくていいのか?」
「すみません……これより重大な事を発表します。今現在より、このお方…天城零様がこのコミュニティのリーダーになりました。言う事はしっかり聞き、誠心誠意尽くすように。決して無礼が無いように!」
「ということだ。行き成りで悪いが、これからよろしく」
え? あのアマギ神様? とか言って驚いているが、後は五人に任せよう。ていうか、知ってるんだ。
「ツクヨミ。ちゃんとした説明よろしく」
「わかったわ。良い様に言いくるめるわね」
全てを放置し、割かしまともな侍女に案内してもらう。大きな和室に通され、そこに布団を敷いてもらった。
「ありがとうな。詳しい事は他の奴らに聞いてくれ。これからよろしく」
「勿体無きお言葉。……私は侍女長をしております、ルナと言います。これからアマギ様にお仕えすることになりました。アマギ様に出会えた事は大変嬉しく思います。どうぞこれからよろしくお願いします、主様」
ぺこりと頭を下げて銀色に輝く長髪を靡かせ、退室した。五人に負けず劣らずスタイルも良く、美人だった。
俺の事も知っているようだったし。
しかし、今日は自由にし過ぎたか? いや、いつもこんなものか。あと、俺が新しくリーダーになったことは伏せておくようにした。これでも結構有名だから。表向きアマテラスがリーダー。このコミュニティは滅多にギフトゲームしないらしいから大丈夫だろう。
それからはさっさと寝たが、朝起きたら布団の両端にタケミカヅチとスサノオが潜り込んでいた。