問題児たちと一人の神が異世界から来るそうですよ?   作:異山 糸師

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第3話 バームクーヘンは最強なそうですよ?

 

「そ、そろそろ行きましょう…。明日ギフトゲームがあるなら“サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹のこともありますし」

「“サウザンドアイズ”? コミュニティの名前か?」

「YES。“サウザンドアイズ”は特殊な“瞳”のギフトを持つもの達の郡体コミュニティで超巨大な商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

「ギフト鑑定ってのは?」

「勿論、ギフトの秘めたちからや起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が引き出せる力はより大きくなります。みなさんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

 別に気にならんよ。俺は自分の力全て知ってるし。で、そのコミュニティに行くことになり、行く先の道には街路樹が桃色の花びらを散らしていた。これは…桜とも違うな、なんだろ?

 

「桜の木……では無いわね。真夏に咲いているはずが無いものね」

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜がいてもおかしくはないだろ」

「………? 今は秋だったと思うけど」

「レティ居たし、チルノが喜んで飛び回っていたから冬だな」

 

 ん?っと噛み合わない四人は顔を見合わせて首を傾げる。

 

「パラレルワールドか?」

「さあなぁ…。皆バラバラの世界から来たらしいな」

 

 特別気にならないので、適当に流し十六夜と雑談しながら歩いて行く。それからちょっとしたら、どうやら目的の場所に着いたらしい。商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。あれが“サウザンドアイズ”の旗のようだ。

 

 今の時間帯は夕暮れ時、日が暮れて看板を下げる割烹着の店員に、黒ウサギがなにか喋る前に俺が喋ってしまった。

 

「お疲れ様で~す」

「あ、はい、お疲れ様です………って、ちょっと待ちなさい!!」

「あ、家は待ったなしなんですよ、お客様。もう時間なので帰って貰ってもいいですか?」

「え、あ、はい。すみません……」

 

 俺が店員を丸め込んでいる内に、全員を店の中に手招きして入れさせる。呆れたような顔で走りこんできて、全員が入ったと同時に帰ろうとしていた店員が気付いて、叫び振り返ってきた。

 

「って! 今度こそ待ちなさい!! 貴方達、何勝手に入ってるんですか!」

「お客様…そのように叫ばれては他の方々に迷惑がかかってしまいますので…すみませんがお静かにお願いできますか?」

「す、すみません……じゃなくて! 私が店員! 貴方がお客様! 何を言ってるのですか!」

「あ、俺達お客様だってさー。じゃ、お邪魔しま~す」

「あ、いらっしゃいませー……って、しまったぁぁぁぁ!!!」

 

 俺がバイト仲間に挨拶するように入り、流れに乗って店員がログアウト。それからは俺達が合法的に店に入る……フッ、完璧すぎて手応えしか感じない! だってあの店員、絶対に俺達入れるつもりじゃなかったぜ?

 

「零さん…貴方って人は……」

「凄い……! なんて業…!」

「零、お前詐欺師になれるぜ? いや、絶対詐欺師だろ」

「零さん、あの堅物の店員相手に…凄いのです! 黒ウサギも見習いたいですヨ!」

 

 いやいや、見習っちゃ駄目でしょ。それに耀が物凄いキラキラした目で見てくるのがなんとも……。

 

 さて、そんなこんなで入り込んだ俺達だが、なにかドドドドド! という音が聞こえてきて足を止めた。……まさか…新手のスタンド攻撃!?

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」

 

 俺の横を猛スピードで着物姿の真っ白いロリが走り抜け、黒ウサギがロリ共々街道の向こうの水路まで吹き飛んだ。せっかく店に入ったのに黒ウサギだけ元来た方向に戻っていった。店員がひょいっと避けていた。あ、立ち直ったんだな。それとそんなに見つめないで恥ずかしい。

 

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?俺も別バージョンで是非」

「ありません」

「なんなら有料でも」

「やりません」

「なら、逆に俺の胸に飛び込んでおいで、子猫ちゃん!」

「気持ち悪い、頭砕き割りますよ?」

「辛辣すぎねぇか!? ていうかさっき言ったのは俺じゃねえ! 零、ふざけんなよ!」

 

 俺の方を叫びながら睨んでくる十六夜を、しれっと顔を背けて無視した。子猫ちゃんがどうのこうのは、俺が十六夜の声を完全模倣して喋ったことだ。俺の数ある特技の一つ、他が出てくるかは皆目検討も付けておりませんが。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろう! フフ、フホホフホホ!! やっぱりウサギは触り心地が違うの! ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

 おっと、どうやら向こうも復活したみたいだな。しかし、なんておやじみたいな変態なんだ。腐ってやがる。ロリおやじか。お巡りさん、こいつです。

 

「し、白夜叉様! 離れてください!」

 

 その大変変態な白夜叉とやらは、黒ウサギに無理やり剥がされて店側…つまりは俺の方向に投げてきた。うっわ、こんな変態ならいらないわ。そらよ、十六夜やるよ。

 

「そいや」

「てい」

 

 俺がパスの容量で蹴り、十六夜が脚で受け止めた。どうやら十六夜もいらなかったらしい。ま、変態だもんな。

 

「ゴバァ!! お、おんしら、飛んできた美少女を足で蹴るとは何様だ!」

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

「美少女(笑)! 天g…おっと、零様だぜ。こっちもよろしくな変態ロリ」

 

 二人してヤハハ! と笑う。勿論十六夜の真似だけどな。それから俺達一同は店の中に案内された。店員? 白夜叉がなにか言ってたけど、知らね。

 

「生憎と店は閉まったのでな、私室だが勘弁してくれ」

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな、コミュニティ崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

「美少女(笑)」

「おんしはさっきからなんなのじゃ!」

「別に? 怒鳴るなって、ロリ。カルシウムが足りてないのか? だから小さいままなんだな」

「うぐぐ……ッ!!」

「し、白夜叉様! 皆さんに説明してあげなくては!」

「……わかった。ではまず………」

 

 反応があるとなんか止まらなくなるよなぁ……それより話だが、なんか階層の形が玉ねぎだかバームクーヘンだかの話になった。そうそう、バームクーヘンで思い出したんだけど、京都に行った時にさ、抹茶バームってのを食べたんだよね。あれが凄い美味しくってさ、俺の味覚にストライクど真ん中だったんだ。それ以来俺のお気に入りとして収納の腕輪の中に大量に入っている。

 

 あ、ちなみに買ってきたやつじゃなくて俺が自分で作ったやつな。

 あ~…考えてたら食べたくなってきたわ。皆には失礼だが、俺は一人お茶の時間にさせてもらおうかね。

 

 え~っと、急須と湯呑は……あったあった。お、緑茶かぁ…俺はお茶は緑茶が一番好きなんだよね。抹茶でもいいけど、今は時間が掛かるからいいや。じゃ、抹茶バーム出してお茶を用意して…頂きます。

 

「もきゅもきゅ……」

 

 あ~やっぱり美味い! さすが俺が作ったものだぜ。俺自身の作ったものって不思議なくらい美味いんだよな…何でだろう? 食った者が大絶賛、この世の真理が見えるとか言い出す。びっくりだ。

 

「ずず~……ふぅ…もきゅ」

 

 お茶もいいね…ちょっとお茶っ葉貰っていこうかな?

 

 味わいながら食べていると、気づけば周りは静かになり皆さん俺を凝視している。というよりも抹茶バームを。

 

「どうしたんだ?変な顔してさ」

「い、いや、おんしが蛇神を倒したんじゃろ?」

「蛇神…? それなら十六夜が倒したが?」

「おいおい、嘘つくなよ。お前が…ムグッ!」

 

 おっと危ない、十六夜が何か面倒になりそうなことを言いかけたので、抹茶バームを口にねじ込んだ。

 

「むぐむぐ……ゴクッ……う…」

「「「「う…?」」」」

 

 皆が伏せて呟いた十六夜を不思議そうに見る。どしたの?

 

「う、美味いッ!! な、なんだこれ!? 今まで食べてきたどんな物よりも美味い!! 零! これどうしたんだ!?」

「お、落ち着け。俺が作ったんだよ。まだ食べるか?」

「勿論だ! くれ! いや、下さい!」

「「「あの十六夜(君、さん)が敬語を使った!?」」」

 

 胸倉を掴んで迫ってくる十六夜に抹茶バームを丸々一本、ついでにお茶とナイフとフォークを渡す。それらを貰った瞬間、十六夜は尋常じゃないほどの速さで、しかし味わいながら行儀よく食べていく。

 

 しっかし、さすが『魅惑の料理人』と呼ばれた俺。美味しく健康的で超低カロリー。いくら食べても太らない、食べるだけ健康的になりダイエット要らず。幻想郷と神界に来た様々な世界の女性の神々に大人気。お一つ如何が? 今なら安くしときますよ?

 

「ふぅ…この世の真理が見えたぜ……」

 

 食べ終わった十六夜がお茶を飲みながら一息つき、俺が思ったような感想をドンピシャで当ててくる。

 

「零、ごちそうさん。また食わせてくれよ」

「まあいいぜ。今度は違うのでも食べさせてやるよ」

「マジか!? 楽しみにしてるぜ!」

 

 ヤハハ!と笑い、上機嫌鼻歌なんかを歌いながらお茶を飲んでいる十六夜。それよりさっきから睨んでくる女性陣の方々が怖いんですが……

 

「あ~…………お前らも、食べるか?」

「「「「食べる!!」」」」

 

 即答か。苦笑しながら人数分出してやり、渡すと先ほどの十六夜状態になった。女性は甘いモノに目がないと言うが……なんとまぁ、本当のことでしたな。ちょっと怖いね…でもこんなの見慣れてるし、大丈夫だろう。

 

「「「「ふぅ…ご馳走様でした」」」」

 

 これまた恍惚とした表情で食べ終わった。

 

「とんでもなく美味じゃったの……」

「ええ……黒ウサギは200年の中で一番幸せだったかもしれませんヨ…」

「最高だった……また食べたいな」

「でもこんなに食べて大丈夫かしら…? 太るんじゃあ……」

「「「うっ!!」」」

 

 あぁ…そう思うのも普通か。男なら気にしないんだが、目に見えて落ち込みだしたので一応フォローをしておくかね。

 

「あ~、それは安心しろ。俺が作るモノは美味しく健康的で超低カロリー。いくら食べても太らない、食べるだけ健康的になりダイエット要らずなモノだからな」

「「「「それは本当ッ!!?」」」」

「あ、ああ。本当だが…」

「「「「結婚してください!!!」」」」

「落ち着けお前ら!! 機会があれば食べさせてやるから!!」

 

 ホッと安心する女性人。だが、十六夜が爆弾発言をする。

 

「俺達はノーネームだから零と一緒だが、白夜叉は違うから食べられないよな」

「な…そうじゃったァァァァァァァァ!!!!!」

 

 叫び、ガックリと地に項垂れる白夜叉。なんかドンマイ。

 

「「「「ドンマイ!」」」」

「ふぐぅ…………」

 

 完璧に機能停止した白夜叉は、ペタンと倒れた。

 

 




あの店員が…!
零のせいでキャラ崩壊して少し壊れてしまった店員……気を確かに!
またこの遣り取りが何れあるかもしれませんねwww

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